2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」

職場復帰 解決金支払い 奈良・野迫川村 労組敵視の排除に
社協職員が勝利


 奈良県野迫川村の社会福祉協議会職員・山本秀成さん(57)と妻和子さん(58)が、解雇を理由に住居から実力排除された問題で、村当局と山本さんの間で団体交渉が二十七日行われ、高田幸篤村長、中本完治同協議会会長が謝罪して「職場に復帰してほしい」とのべ、解決の示談書が取り交わされました。
 村・同協議会側が、三月末の三割カットの賃金引き下げ提案と解雇を撤回し、従来通りの賃金での職場復帰と、解決金を支払うことで合意しました。
 村当局は、山本さん夫妻が、労働組合に加入し、団体交渉を求めてきたことを敵視し、一方的に解雇してきました。そのうえ、四月一日朝、村職員ら二十数人が、住み込みで働いていた福祉施設「ゆうゆう苑」から家財道具一式を運び出し、強制退去させてきました。家財類は同施設内の敷地に野ざらしのまま放置されました。
 山本さん夫妻と、加入する奈良自治体労働組合総連合、奈良県労働組合連合会は、村当局ぐるみの不当解雇と人権侵害は許さないと県労働委員会などに申し立てを行い、二十五日には同村内で山本さんを支援する集会を開くなど、解決に力を尽くしてきました。


2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」

違法株商法で多額の被害 家族にも言えず自分責める日々
「エイワン」80億円持ち逃げ


 「この株はかならず値上がりします」「新規公開株を10%引きでお売りします」――。こんなうたい文句で、無登録の違法業者から未公開株や投資信託を持ちかけられ被害にあうケースが増えています。背景には、小泉内閣のすすめる「貯蓄から投資へ」の金融規制緩和で、急速に盛り上がっている株投資ブームがあります。十分な知識のない個人投資家を食いものにした被害は深刻な広がりを見せています。
 株式売買の代行を口実に資金を集めていた貸金業者「エイワン・コミュニケーションズ」(東京都中央区)をめぐる被害の訴えが本紙に相次いで寄せられています。同社には、二十六日、埼玉県警が証券取引法違反と出資法違反の疑いで強制捜査に入りました。
 エイワンは証券業の登録をしていないにもかかわらず、無許可で株の売買や運用をしていましたが、今年二月末、突然事務所を閉鎖。以後連絡がとれなくなりました。インターネットなどで全国一千人以上から八十億円以上を集めたとみられています。

虎の子の貯金
 九州地方に住む村上恵子さん(41)=仮名=は、昨年六月以降、エイワンに約五千万円を預けました。株の雑誌に付いていたアンケートはがきを出したのがきっかけ。規模の小さい証券会社だと思い込んでいました。
 子どもの学資のために、親から譲られた虎の子の貯金を運用したいと考えていた村上さん。
 「手数料ゼロ。元金は保証され、半年後には11%を預託金利として支払う」という巧みな勧誘で、〇五年六月、一千万円を預けました。毎週「いち押し銘柄情報」などが郵送で届き、実際に買った株の配当が十万円、二十万円とつきました。
 もうかっていると錯覚した村上さん。取引を重ねるごとに預ける金額も増えました。
 ライブドア事件を機に不安を覚えた村上さんは、二月十日、解約、返金を申し入れました。ところが、何かと理由をつけて引き延ばされ、二月二十七日には電話も通じなくなったといいます。元金を持ち逃げされた疑いが濃厚です。
 四月二十九日に取材で同社を訪れると、郵便受けの表札はそのままですが、荷物が運び出され、人影もありませんでした。
 村上さんはいいます。
 「だまされたほうが悪いのかと自分を責める毎日。家族にも言えずに、ストレスで身体もきつくなります。少しでも取り戻したい」

最初は確実に
 顧客を信用させて預託金を集めるために、最初は値上がり確実な株を紹介するのも手口です。
 長野県の岡田史子さん=仮名=も被害者の一人。三年前から友人に勧められインターネットでの株取引を始めました。
 エイワンとの関係は昨年九月から。友人の紹介でした。
 「確実に10%の利益を保証」という話に半信半疑でしたが、実際に大きな利益をあげているという友人の話を聞いて心が動きました。
 エイワン側は、「株価が低い時にあらかじめ買ってある株を提供する」「預かった金で信用買いをするので、高配当が可能」という説明でした。
 「株価があがっているなかで、株を持っていないと乗り遅れているような気になりました。銀行も金利がゼロなので、少しリスクがあっても分散投資と思っていました」
 夫にも勧め、被害は合計約八百万円に。
 「今から思えば、最初からお金を集めて持ち逃げするつもりだったのではないかと思います。絶対に許せません」


2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」

大銀行、サラ金と提携強化 高金利でおいしい分野
債権回収ノウハウ欲しい


 違法な取り立てでアイフルが業務停止命令を受けるなどサラ金被害が広がっています。そのサラ金業界と銀行が資本提携を強め、事実上の一体化が進んでいます。(矢守一英)
 「お財布感覚で出し入れ自由。いつでもどこでもあなたの強い味方です」―。三井住友銀行のATM(現金自動預払機)コーナーで手にしたサラ金の入会申込書。銀行内だけでなく全国のコンビニなどに設置されているATMでも契約できることを宣伝しています。
 三井住友銀がサラ金のプロミスと事業を開始したのは昨年四月です。
 例えば、同行でお金を借りる場合は、借り手のリスクに応じて次の三種類のローンが用意されることになります。
 金利年8―12%の銀行のカードローン。15―18%と利息制限法の制限金利内のアットローン。18―25・55%のプロミスの三つです。20%を超える金利は利息制限法の上限金利を超えており、同法違反です。
 しかし出資法では29・2%が上限金利であるため、その間の金利は罰則規定がなくグレーゾーンと呼ばれます。
 こうした提携について銀行側は、「双方の培ってきたブランド、顧客基盤、ノウハウ、経験などの融合によってサービスを提供する」と説明。貸し出しの際の審査、債権管理、回収はプロミスが「支援」することもうたっています。
 アイフルは、地方銀行や信用金庫などの金融機関と個人、事業者向けの無担保ローンの保証業務で提携を結んでいます。
 サラ金各社に2%前後の低金利で資金を供給し、そのボロもうけを支える銀行が、ここへきてサラ金との提携を強めるねらいはどこにあるのでしょうか。
 ある地方銀行関係者は「生き残りを目指す地方の銀行にとっては、新しい顧客を開拓し確保することが目的。サラ金側も銀行の看板を最大限に利用できる」と話します。
 三菱東京UFJ銀行の現役行員はこういいます。「銀行がほしいのはサラ金の持つ与信(審査)や回収のノウハウです。それらを活用しながら、高金利で、おいしい分野に手を伸ばしたいということでしょう」

政府が後押し
 銀行とサラ金業界の“蜜月”の関係には、政府の後押しがありました。
 金融相の私的な懇話会「日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会」が出した報告書(二〇〇二年七月)はこうのべています。
 「消費者金融や商工ローンは、これまで金融機関において必ずしも主流の資金仲介チャネルとして位置付けられてこなかったが、リスクを的確に評価し管理する仕組みを独自に構築して収益を上げる点は、今後の金融業の目指すべき姿勢であり、積極的に評価する意識の転換が必要である」
 サラ金や商工ローンの経営が銀行経営の模範だというのです。


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