2006年4月28日(金)「しんぶん赤旗」
均等法改正案を可決 「雇用区分」で差別温存 参院厚労委で小池議員指摘
厚労相「大きな課題」
参院厚生労働委員会は二十七日、男女雇用機会均等法改正案を全会一致で可決しました。改正案は、妊娠や出産を理由とした解雇の禁止・無効などを盛り込む一方、表面的には性別を理由としない「間接差別」を一定程度禁止するものです。
(写真)質問する小池晃議員=27日、参院厚生労働委
採決に先立つ質疑で、日本共産党の小池晃議員は、男性を総合職、女性を一般職とするなど、「雇用管理区分」を用いた間接差別が温存・拡大されていると、具体的な事例をあげて指摘しました。
小池氏が示したのは、名古屋銀行で二十七年間、パートとして働く坂喜代子さんのケースです。
坂さんは、二十七年間で時給アップはわずか三百七十円。勤務時間は、朝九時から夕方五時までと、ほとんど正社員と変わりません。職務内容も同一です。
小池氏は「同年齢の男性正社員の月収が五十六万六千円なのに、勤務時間が一時間十五分短いだけの坂さんは八万三千円。賞与は八十九万円に対して一万八千円。パートのなかには男性は一人もいない。さらにフルタイムパート制度まで導入された」と指摘。実態の背景には、均等法の指針に「雇用管理区分」の考え方を明記していることがあるとのべ、指針からの削除を迫りました。
川崎二郎厚生労働大臣は、「パートでも正規職員と変わらない形で働いていながら、大きな差がついてる問題は、大きな課題だ。考え方がまとまれば、国会で方針を示したい」と答弁。フルタイムパートの募集が女性限定で行われていれば、均等法違反だとの認識も示しながら「チェックしていかなければいけない」と述べました。
共産・社民が修正案 自公民の反対で否決
日本共産党と社民党は二十七日、参院厚生労働委員会で男女雇用機会均等法改正案の修正案を共同提案しました。
修正案は、性別による間接差別を原則禁止とした上で、禁止する差別の対象に「賃金」を明記。全国転勤が可能か否かなど、女性が実際には満たしにくい条件を課すことで実質的に行われる差別を禁止し、それに伴う賃金格差を是正できるようにしています。
このほか、▽基本理念に仕事と生活の調和を加える▽労働者の婚姻を理由とする不利益取り扱いの禁止▽賞与、退職手当の支給を行う場合、産前産後休業期間を出勤扱いにする―などを盛り込んでいます。
日本共産党の小池晃議員は賛成討論で、「現に問題となっている事例のほとんどは、間接差別に伴う賃金格差の是正が課題となっており、その解決のためには間接差別の禁止の対象に賃金を加えることは不可欠」と主張しました。
修正案は、自民党、公明党、民主党の反対で否決されました。
2006年4月28日(金)「しんぶん赤旗」
女性差別なくなるよう変えて 弁護士 坂本福子参考人が
均等法改正案にたいする意見陳述
二十六日の参院厚生労働委員会でおこなわれた均等法「改正」法案に対する参考人質疑で、坂本福子弁護士の陳述(要旨)を紹介します。
◇
一九六〇年に弁護士となって以来、多くの女性差別裁判にかかわってきました。徹底した男女平等を守る均等法がつくられることを期待したのにがっかりしています。
四点を求めたい。第一は、基本的理念に仕事と家庭の両立を明記することです。長時間労働のもとでは、女性は働き続けられません。
第二に間接差別の問題です。法案は三つに省令で限定しました。直接であれ間接であれ、基本的人権を侵す差別は許されないのに、なぜ三つに限定したのか。例示列挙であれば、例示に当てはまらないものでも、次々と拡大できます。
審議会の建議では、確立した判例でもって(省令拡大を)考えるといいますが、法律上、省令で限定された三つ以外の問題について、間接差別として訴訟ができるのでしょうか。
私は岡谷鋼機、兼松という商社での男女差別を問う裁判を争いました。当時の均等法は、定年解雇以外の男女差別について「使用者の努力義務規定」であったため、憲法一四条(国民は法の下に平等)の趣旨に反するが公序には反しない、との判決が出されました。
限定列挙は絶対に通してはなりません。
三番目にポジティブアクション(積極的格差是正措置)を使用者に義務づけることです。
四番目は、性による賃金差別の禁止を明記すること。性による差別が最も現れるのが賃金です。
私は差別を受ける者がどんなに苦しいか身にしみて感じてきました。十年続く裁判もあります。本当にいい法律があったらと何度思ったことでしょう。一つでも二つでも女性差別がなくなるよう均等法を変えていただきたい。
2006年4月28日(金)「しんぶん赤旗」
高校生の就職1割決まらず 地域・男女で格差/不安定雇用3.9%
日高教・私教連 29道府県で調査
日高教(日本高等学校教職員組合)と全国私教連(全国私立学校教職員組合連合)は二十七日、「二〇〇五年度高校生の就職決定実態調査」を発表しました。就職希望者の就職決定率は91・2%にとどまっており、深刻な就職難は変わらず、地域・男女格差が広がり、不安定雇用が増えていることがわかりました。
両組合の各県組織を通じて三月末現在の状況をまとめました。二十九道府県五百三校から回答があり、卒業生八万九千五百人余の実態を反映しました。就職希望者は二万八千四十三人(全生徒数の31・3%)で、決定したのは二万五千五百六十八人です。
不安定雇用が増えていると答えたのは百九十三校です。「製造業ではアウトソーシング(外注)しかない」などと就職決定者のうち九百九十六人、3・9%が不安定雇用に。正規雇用でも「手取り十一万円」「早期離職を懸念」と低賃金で劣悪な労働条件が心配されています。
地域別では北陸・中部・東海ブロック95・6%が最高で、最低の北海道・東北ブロック87・5%との差は8・1ポイント。男女別では男子94・2%、女子87・3%と依然として大きな開きがあります。
就職も進学もせず進路未決定のまま卒業したのは全生徒数の7・9%、七千五十六人でした。
両組合は(1)採用増を大企業に求める(2)公務分野で正規採用を増やす(3)就職できなかった人への就職訓練の無料実施―などを求めています。
日高教の工藤毅副委員長は「就職決定率は九〇年代半ばの水準に戻ってきましたが、非正規雇用が増え、正規でも賃金や労働条件が悪くなっています。正規で安定した雇用保障を社会的合意にして、高校生に希望を持たせたい」と語りました。
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