2006年4月25日(火)「しんぶん赤旗」
職場問題学習・交流講座への報告
幹部会委員長 志位 和夫
二十二、二十三の両日、日本共産党本部で開かれた職場問題学習・交流講座での志位和夫委員長の報告(大要)は次の通りです。
一、講座の目的――全国からの聞き取り調査をうけて
(写真)報告する志位和夫委員長
全国から集まられたみなさん、こんにちは。私は、この講座にたいする報告をおこないます。
党大会決定では、職場支部の活動の抜本的強化に、特別の力をそそぐことを確認し、「職場問題学習・交流講座」を系統的に開くことを決めました。この講座はその第一歩として準備したものであります。
講座の準備にあたっては、私たちは、職場支部のリアルな現実から出発し、ともに知恵と力をあわせて打開方向を探求するという基本姿勢でのぞみました。そのために、この講座にむけて、中央委員会として、また都道府県委員会の協力をえて、全国二百七十をこえる職場支部にうかがい、直接、面談の聞き取りをおこないました。その報告のすべてをつぶさに読み、検討を重ねて、この会議を準備しました。
私たちが、聞き取り調査をつうじて痛感したことがいくつかあります。
第一は、財界・大企業の職場支配と自民党政治の政治悪が重なって、正規労働者でも非正規労働者でも、民間大企業でも公務労働の現場でも、雇用と労働条件の異常な悪化がすすんでいるということです。それは労働者の精神と肉体をむしばみ、家庭を破壊し、希望を奪い、このまま放置するなら日本社会の前途を危うくする深刻な事態をひきおこしています。戦後日本社会の歴史のなかでも、こんなにも人間らしい労働のあり方が破壊されているときはありません。そのあまりに深刻な事態に、強い憤りをいだきながら、報告を読みました。
第二に、そうした困難な条件のもとで、日本共産党職場支部と党員が不屈で献身的な奮闘をおこなっており、その存在は日本の労働者と日本社会にとって文字どおりかけがえのない宝ともいうべきものであることを痛感しました。
埼玉の民間大企業の職場支部からは、徹底的な差別をうけ、職場労働者からあいさつ一つ拒否されていたところから出発し、どんなに無視されても労働者への朝のあいさつから一日をはじめようと努力し、職場支部での結びつきを広げ、党の陣地を守り抜いている経験が報告されました。
千葉の教職員の現場からは、さまざまな困難をかかえた高校で、そこでがんばっている教職員の言葉でいえば、「おぼれかけている生徒を右手で救い、さらに左手で救い、そして背中に背負い、最後は自分が沈んでしまうほど奮闘」している姿をつたえ、父母、地域とも連携して、高校廃校の動きをやめさせたというたたかいが報告されました。
日本共産党員ならではの不屈さ、献身性が発揮された奮闘を、どれも胸が熱くなる思いで聞きました。
第三に、多くの職場支部で、この数年のうちに、いわゆる「団塊の世代」が退職期をむかえるなかで、職場支部からも大量の退職者をだす状況があり、いま党建設を前進させること、とくに後継者をつくることの緊急性と重大性を、あらためて痛いほど感じました。「これまで苦労して守り抜いてきた党の陣地を、何としても次の世代に継承したい」――これは全国の同志から共通してよせられた声であります。
この講座の目的は、職場支部の活動を、一歩でも二歩でも前進させるために、すすんだ経験をお互いに学びあうとともに、困難をリアルにみて打開の方策をともに探求することにおきたいと思います。
二、情勢をどうとらえるか――大会決定の生命力に確信を
まず、情勢をどうとらえるかについて報告します。
大会決定と綱領を討議・学習した職場支部では、まずそこでのべられている日本情勢論、世界論、党の役割に確信を深め、新たな活力と展望をつかんでいます。
労働者は、職場の問題だけでなく、広く世界と日本の問題に関心をもち、政治のゆがみへの怒りや不満をいだいています。こういう労働者の気持ちにかみあって党をおおいに語るうえでも、世界と日本の情勢と日本共産党の役割を、大局でつかむことが大切であります。
大会から三カ月がたちましたが、このわずかな期間にも、大会決定の生命力が、浮き彫りになる情勢が進展しています。そのことを三つの点でのべたいと思います。
(1)「ルールなき資本主義」「新自由主義」の害悪が噴き出す
第一は、大会が全面的に告発した「ルールなき資本主義」と「新自由主義」の経済路線の害悪が噴き出していることであります。
とくに格差社会と貧困の広がりは、一大社会問題となりました。マスメディアも深刻な現実を伝えだしました。野党だけでなく与党も、格差問題に言及せざるをえなくなっています。小泉首相は、最初は、「言われているほど格差はない」といいましたが、それが通用しなくなると「格差が出るのは悪いことではない」と開き直り、それが批判されると「経済状況がよくなれば解決する」と責任のがれをはかっています。
しかし一九九〇年代末から急速に拡大した社会的格差と貧困は、自然現象ではありません。首相のいうように、「経済状況がよくなれば解決する」ものでもありません。政府が「景気回復」と喧伝(けんでん)しているのは、ごく一握りの大企業と大資産家が空前のもうけを手にしているということであり、それは圧倒的多数の国民から所得を奪い、膨大な低所得者層をつくりだした結果であります。
政府の統計をみますと、年収別にみて、この十年間で増えている階層が二つあります。年収二百万円以下という低所得層が24%増え、一千万人に達しました。その一方で年収二千万円をこえる高額所得層が30%増えましたが、この層は数では二十万人とごくわずかです。ごく一部の大企業と大資産家が富めば富むほど、貧困層が広がり、格差が深刻になるということが、いまおこっていることがらの真相なのであります。
その原因と責任は、「構造改革」の名でおこなわれてきた異常な大企業中心主義の政治にあります。すなわち、(1)非正規雇用の急増など人間らしい雇用の破壊、(2)年金、介護につづき医療大改悪など社会保障の破壊、(3)「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」という逆立ちした税制という三つの政治悪が、その根源にあります。
自民・公明・民主は、格差を問題にしても、この根源には触れられません。派遣労働の自由化など労働法制の規制緩和を競い合い、格差拡大においうちをかける消費税増税を当然視する政党では、この問題を解決できません。
格差社会を生み出した大企業中心主義の政治悪にたいして正面から根源をついた批判をおこない、打開の展望をしめせるのは日本共産党だけであります。党綱領がかかげている「ルールある経済社会」「大企業の民主的規制」「税財政・社会保障の民主的改革」という経済改革の方針が、情勢とこんなにかみあって生命力を発揮しているときはありません。
大会報告では、東南アジアとラテンアメリカにしめされているように、「新自由主義」の経済路線のおしつけは、世界ですでに破たんしたものであることを明らかにしましたが、それは大会以後の情勢の展開でも裏づけられています。
四月におこなわれたペルーの大統領選挙では、「新自由主義」を真っ向から批判する候補者が第一位を確保し、五月に予定される決選投票にすすむことが確実になりました。フランスでは、青年の解雇を容易にする「初採用契約(CPE)」に反対する、労働者、学生、高校生の共同行動が、二月から四月にかけて、繰り返し発展し、三百万人が参加する一大国民運動となり、ついにこの計画を葬り去りました。
フランスは、発達した資本主義国のなかでも、労働者の権利を守るルールづくりがすすんでいる国ですが、そういう国で、「新自由主義」の路線に厳しい拒否がつきつけられたことは重要であります。日本は、もともと「ルールなき資本主義」といわれる実態のうえに、「新自由主義」の路線がおしつけられているわけであり、矛盾はもっと深いものがあります。ほんらい、もっと大きなたたかいがおこって当然なのであります。
東南アジアとラテンアメリカにつづき、ヨーロッパでも、この路線には未来がないことがしめされています。大会がよびかけた「社会的連帯で反撃を」の見地にたって、あらゆる分野で国民生活を守るたたかいの先頭にたとうではありませんか。
(2)基地・憲法問題とアメリカいいなり政治、教育基本法改悪について
第二に、異常なアメリカいいなり政治の矛盾も、「米軍再編」と憲法改定を焦点として、いよいよ深刻になっています。
いますすめられている「米軍再編」は、世界に類例のない「殴りこみ」の基地機能の強化を、自治体と住民の意向を無視した乱暴きわまるやり方でおしつけようとするものであり、全国でこれに反対する自治体ぐるみのたたかいが前進しています。
山口県・岩国基地への空母艦載機移転に反対する岩国市住民投票の勝利、神奈川県・キャンプ座間への米陸軍司令部移設に反対する座間・相模原両市の自治体ぐるみのたたかい、鹿児島県・鹿屋基地強化に反対する鹿屋市をあげてのたたかい、宮崎県・新田原基地強化に反対する新富町の町民大会の成功など、全国各地でたたかいが広がっています。これらは、これまで「基地との共存」をしいられてきた自治体が、保守の首長を先頭に「これ以上の負担増と基地の永久化にはたえられない」とたちあがった、まさに歴史的意義をもつたたかいであります。
沖縄では、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への海兵隊新基地建設にたいして、島ぐるみのたたかいが前進しています。政府は、名護市長を屈服させ、滑走路二本というさらに巨大化した「新沿岸案」をおしつけようとしています。「住宅地の上を飛ばないようにするため」といいますが、米軍が飛行ルートを守ったためしがあるか。これは沖縄県民がみんなわかっていることであります。沖縄では県民世論の七割がこの計画に強く反対し、公約破りの「新沿岸案」受け入れの白紙撤回をもとめるたたかいが広がり、県民的な力関係は大きく前向きに変化しています。
わが党は、「米軍再編」にたいして、基地強化の実態の告発とともに、もっとも幅広い人々が団結できる共同の一致点を探求し、自治体ぐるみ、住民ぐるみのたたかいを発展させるためにひきつづき力をつくすものであります。
米国は、約三兆円と伝えられる「米軍再編」の費用負担を、日本にもとめてきています。そのうち、約九千億円は米領グアムの基地強化のための費用であり、残りも、沖縄の巨大新基地建設をはじめ、米軍基地強化のための費用であります。国民の血税を、米軍の「殴りこみ」態勢の強化に使うなどという言語道断の暴挙に強く反対してたたかいます。
「米軍再編」の動きは、憲法改定の動きに直結しています。「米軍再編」の目的は、米軍基地強化とともに、米軍と自衛隊が海外で一体になってたたかう態勢づくりにあります。その最大の障害になっている憲法九条を改変せよ――この圧力が、繰り返し米国から公然とのべられています。
ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長は、米軍再編合意の「履行には、現在の日本政府の集団的自衛権に関する政策を変えざるを得ない。日本の外相、防衛庁長官が合意したことは、集団的自衛権行使の用意があるとのシグナルを出したことになる。日本が今回の合意を履行できないとなると、日米安保は危機を迎える」と強調しました。「米軍再編」は、集団的自衛権に連動している、これをやらなかったらたいへんなことになるぞという、まさに強圧的発言です。
憲法九条改定が、米国とともに「海外で戦争をする国」づくりにあることは、「米軍再編」とのかかわりでも、いよいよ明りょうになっています。
「九条の会」の運動は、ひきつづき全国で力強く広がり、地域とともに職場での「九条の会」が広がりはじめています。住民過半数をめざす憲法擁護署名が各地でとりくまれ、高知県・土佐清水市など過半数を達成した自治体も生まれています。職場、地域、学園の草の根から国民多数派を結集する運動に、さらに力をそそぐことが強くもとめられます。
教育基本法改悪反対のたたかいを急速に強めよう
教育基本法改悪を今国会にも強行する動きが浮上しています。与党が合意した教育基本法改定案の内容は、現行教育基本法の第一〇条――「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」を改変し、現行基本法がきびしく禁じている国家権力による教育内容への介入を、公然とすすめる条文がもりこまれるなど、教え子たちを戦場に送った戦争教育の反省のうえにうちたてられた民主的原則を破壊する重大な内容となっています。
与党の改定案には、「教育の目標」に「国を愛する態度」がもりこまれました。わが党は、民主的な市民道徳を身につけるための教育の重要性を一貫して主張してきました。第二十一回党大会決定では、その内容として十項目を提唱し、その一つとして「他国を敵視したり、他民族をべっ視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神をつちかう」ことをあげています。同時に、「これらは憲法と教育基本法の民主的原則からみちびきだされる当然の内容である」と強調しています。
教育基本法を改定して、あえて「国を愛する態度」を書き込もうという動きは、憲法改悪がめざす「海外で戦争をする国」づくりと結びついており、その狙いは「戦争をする国」にふさわしい人間を育てあげる教育への変質にあります。こうした狙いをもって、教育基本法に「国を愛する態度」がもりこまれれば、基本法の第一〇条改定と結びついて、特定の政治的立場にたつ「愛国心」を教育現場におしつけ、憲法に保障された内心の自由を侵害する重大な危険をもたらすことになります。それは、「日の丸・君が代」問題で、国会審議の「強制はしない」との言明すらほごにして、全国各地で内心の自由を侵す乱暴な強制をおこなっていることからも明らかであります。教育基本法改悪を許さないたたかいを、急速に強めようではありませんか。
「米軍再編」の名による基地強化、憲法改悪、教育基本法改悪の動きにきびしく反対し、それぞれの問題で、平和と民主主義を守り抜く多数派をつくるうえで、日本共産党のがんばりどころの情勢だということを強調したいと思います。
(3)政党状況の新たな展開と、日本共産党の役割
第三に、政党状況の新たな展開と、日本共産党の役割についてのべます。
この間、民主党は、「偽メール問題」で深刻な混迷におちいったもとで、小沢新体制を発足させました。
小沢新代表は、「政権交代」を呼号し、「対立軸路線」を掲げています。しかし「対立」の中身、「対立」する足場がさだかでありません。たとえば、小沢氏は、小泉政治が「格差の問題」をつくりだしたと批判していますが、それをつくりだした規制緩和路線については「規制の撤廃はやっていかなければならない」とのべ、代表選にあたって発表した八項目の政策の第一に「年金、介護、高齢者医療は基礎的部分を消費税でまかなう」とのべるなど、格差拡大においうちをかける消費税増税を公然と主張しています。
憲法をめぐっても、国連の決定があれば、海外での武力行使を認めるというのが、小沢氏のいっかんした主張であり、これは「海外で戦争をする国」づくりという自民党の立場と同じ流れのものにほかなりません。
公務員削減をすすめる「行政改革」関連五法案の衆議院採決にあたって、民主党は、政府案をうわまわる規模での公務員削減を推進する「対案」を出すとともに、公共サービスを民間まかせにする「市場化テスト」法案など四法案に、賛成の態度をとりました。公務員削減を競い合う姿勢が、鮮明になりました。まず小沢執行部の姿勢が最初に問われた重要法案で、「対立軸」どころか、自民党と「同一軸」の政党だった――このことが明らかになったのであります。
このように「対立軸路線」をいうが、言葉だけで中身がない。中身がない「対立」を、あたかも内実があるものであるかのように繰り返し、幻想をあおりたてるというのが、「二大政党づくり」の常とう手段であります。ここをしっかり見抜いて、この動きにたちむかうことが大切であります。
繰り返される党首交代、「偽メール問題」などに象徴される、民主党の不安定性、不確かさの根底には、この党がアメリカ・大企業中心という自民党政治の古い枠組みでは、自民党との違いが少しもない立場にたっているという問題があります。
自民党政治を根本から改革する綱領路線をもち、どんな問題でも国民の立場にたって奮闘する「たしかな野党」としての日本共産党の役割が、いよいよ重要になっています。
いま、暮らしでも、平和でも、政党状況でも、自民党政治の古い枠組みが深刻なゆきづまりに直面し、私たちの奮闘いかんでは新しい前進をつくりうる激動的情勢――党の出番の情勢が展開しています。ここに確信をもって、広い労働者・国民のなかに打ってでて、たたかいの先頭にたつとともに、おおいに政治を語り、党を語ろうではありませんか。
三、職場の現状をどうとらえるか――現状打開は日本社会の切実な要請
つぎに、職場の現状をどうとらえるかについて、報告します。
日本は、「ルールなき資本主義」といわれるように、もともと人間らしい労働のルールが、解雇規制、残業規制、有給休暇、雇用保険、男女平等、均等待遇など、どの問題をとってもないか、あってもごく弱いという異常な特質を特徴としています。
これにくわえ、一九九〇年代後半から、財界・大企業による大リストラの推進と、それを後押しする自民党政治の「新自由主義」の経済政策のもとで、労働と雇用のかつてない悪化がすすみ、日本の社会と経済の前途を危うくする事態をひきおこしています。
財界・大企業の職場支配の戦略は、大きくいってつぎの二つの柱を特徴としています。
(1)低賃金・無権利の非正規雇用労働者の急増
第一は、低賃金・無権利の非正規雇用労働者への大規模な置き換えがすすんでいることであります。
この十年間に、正規労働者は三百九十五万人減少し、非正規労働者は五百九十三万人増加しました。その結果、労働者の三人に一人、青年と女性の二人に一人は、パート、派遣など、非正規雇用のもとで働いています。非正規雇用への置き換えは、民間大企業はもとより、自治体の職場、教職員のなかでも、急速に広がっています。
非正規労働者は、極端な低賃金、差別、無権利状態のもとで苦しんでいます。政府の調査でも、非正規労働者の八割近くが年収百五十万円以下という、最低限の生計費も保障されない異常な低賃金で働いています。正社員と同じ仕事の責任をもたされながら、忌引き休暇も、年休も保障されず、社会保険にも加入できず、たえまない解雇の不安にさらされ、昼食の食事代補助すら出されないなど、非人間的な差別をおしつけられていることも、耐え難いことであります。
人間をモノのように使い捨てにする劣悪な労働条件の最大の特徴は、その大多数が違法・無法を土台にしていることにあります。東京労働局の調査では、労働者派遣事業所の81・2%、業務請負関係事業所の76・5%で、何らかの法令違反が見つかり、是正指導をおこなったとしています。
人材派遣業界のトップで、大企業にも多くの労働者を派遣しているクリスタルグループの社長の経営指針では、「大競争に勝ち残り業界ナンバーワンになるには、違法行為が許される」「第三者に迷惑をかけない違法、ウソは許される」などと公言しています。今回の聞き取り調査でも、深刻な無法状態のまん延という実態が、全国いたるところから報告されました。
低賃金・無権利の非正規労働者の急増は、格差社会と貧困の新たな広がりをつくりだす根源となっています。それは、年金、医療など社会保障の支え手を破壊し、少子化の傾向をいっそう加速させるなど、将来を展望しても、日本社会と経済のまともな発展を不可能にする、深刻な事態をつくりだしています。
(2)成果主義賃金を根源にした深刻な状態悪化
第二に、正規雇用の労働者では、成果主義賃金を根源にした、労働者の命も健康もすりつぶす状態悪化が深刻になっています。
成果主義賃金は、一九九〇年代中ごろから導入が本格化し、すでに上場企業の九割が導入し、公務労働、学校現場にも急速に広がっています。管理職だけでなく、一般の労働者にも成果主義賃金のおしつけがすすんでいますが、一般労働者にもこの労務管理をおしつけるというのは、米国でもおこなっていない異常なものであります。
今回の聞き取り調査では、全国各地から成果主義労務管理のもたらしているすさまじい害悪が、いっせいによせられました。その特徴は以下の諸点にあります。
賃下げ
成果主義賃金では、目標を100%達成したとしても「並」の賃金にしかならず、ほとんどの人は達成できず賃下げという結果がおしつけられています。年齢にかかわらず、賃金が下がるシステムとなっています。これは、成果主義賃金が、もともと総額人件費の削減を目的として導入されていることからくる必然的な結果であります。
長時間過密労働
労働者は「成果」を出すために残業をしいられます。しかし、残業を申告すれば、残業をしなければ「成果」が出せないのは能力が低いからだとされ、「評価」が下がる。だから申告したくても、申告できない。こうして「サービス残業」がまん延する最悪の温床となっています。
成果主義賃金が裁量労働制と結びついたときには、際限ない長時間過密労働をしいるもっとも深刻な結果を労働者にもたらしています。
命と健康の破壊、メンタルヘルス問題
成果主義賃金は、耐え難い長時間過密労働にくわえて、労働者への個別管理が強められ、労働者間の競争があおり立てられることによるストレスをひきおこし、労働者の体と心をむしばみ、在職死、過労死を増やしています。まともな人間関係が破壊された荒涼たる職場で、メンタルヘルス(心の健康づくり)の障害が、すさまじい勢いで広がり、どの職場でも大問題になっています。
公務労働と教職員での矛盾
この職場管理が、公務労働や教職員の現場に持ち込まれた場合には、労働者自身の状態悪化にくわえて、公共性をもった仕事自身がなりたたなくなる、住民や子どもに目が向かなくなるという問題を引き起こしています。
神奈川の公務労働の現場からは、「保育所の民営化や福祉関係の切り捨てなど、市民生活に直結する分野のリストラを推進すればするほど高い評価になる仕掛けになっている」という告発がよせられました。
福岡の教職員の現場からは、「『不登校生徒を○○%削減する』という目標をたて、その達成を競い合わされる。目標設定、自己点検、上司への報告などに時間をとられ、子どもに向き合うことが困難になっている。『目標』も子どもにではなく上司にむきがちになり、教員間の共同意識は細くなり、教員間の競争が強まっていく。その結果、ますます教育現場は荒れていく」という深刻な実態がよせられました。
聞き取り調査をつうじても、この道をつづけるなら、日本の経済も社会も破壊されることになることを痛感しました。財界・大企業の身勝手な雇用破壊――非正規雇用、成果主義が、国民生活のあらゆる分野に深刻な問題を引き起こしていることを社会的に広く告発し、社会的な反撃で包囲し、無法・横暴な職場支配を打開することは、日本社会の切実な要請となっています。わが党は、そのために全力をあげて奮闘するものです。
(3)職場の矛盾をどうつかむか――三つの観点でとらえる
以上のべてきたように、今日、労働者の状態悪化はきわめて深刻なものですが、こうした職場の矛盾をとらえるさいにいくつか大切な観点があります。
財界の職場支配をみずから掘り崩す深刻な矛盾が
第一は、これらの攻撃が、労働者・国民との矛盾を深めるとともに、財界・大企業の職場支配をみずから掘り崩す深刻な矛盾をつくりだしていることであります。メンタルヘルスによる損失は年間一兆円にのぼるとの試算もあります。労働事故・労働災害の多発も深刻です。技術の継承ができないことによる品質の劣化が重大問題になっています。トヨタや三菱など自動車のリコールの急増、JR西日本の尼崎での大事故、日本航空の事故の続発など、社会を揺るがす事態が繰り返されています。
日本経団連では、毎年、『経営労働政策委員会報告』という報告書を出していますが、これをみますと、財界の危機感がリアルにのべられています。
その二〇〇四年版では、「従来ほとんど起こらなかった工場での大規模な事故が頻発している。……一連の事故は、高度な技能や知的熟練をもつ現場の人材の減少、過度の成果志向による従業員への圧力が原因ではないか、との指摘もある」とのべています。いったい「人材の減少」をすすめ、「成果志向」をあおり立ててきたのはだれなのか、といいたくなるわけですが、こういうことを自らいわざるをえないのです。
また二〇〇六年版では、「職場内のメンタルヘルス問題は、従業員本人のみならず、職場の作業能率・モラールの低下を招き、経営上の重要な問題となる可能性がある」「よい人間関係が存在しない荒涼たる職場に、高い生産性は望めないし、問題解決能力を期待することはむずかしい」などとのべています。これも、自分で「荒涼たる職場」をつくりながら、よくもそんなことが言えるなというものですが、彼らの危機感が伝わってくる記述であります。
政府の調査でも、成果主義賃金の導入後、「うまくいっている」と評価している企業は、15・9%にすぎず、手直しをはじめる企業も生まれてきています。過酷な労働者支配が、自らの支配を掘り崩す――この矛盾を正面からとらえることが大切であります。
労働者・国民のたたかいによってこそ、現状打開がはかられる
第二に、それにもかかわらず、政府・財界は、人間らしい労働の破壊による搾取の強化という道を、自らただそうとはしない。この面もみておく必要があります。それどころか日本経団連の指揮・号令のもとに、労働法制のいっそうの改悪の動きがおこっていることを直視しなければなりません。
大会報告では、昨年九月に発表された厚生労働省の「今後の労働契約法制のあり方に関する研究会」の最終報告で、労働条件の一方的な切り下げを可能にする「労使委員会」の設置、解雇の金銭的解決制度の導入による労働者の解雇の自由化、ホワイトカラー労働者の残業代をただにする方向での労働時間規制の緩和など、現行労働法制の事実上の解体に導く重大な法改悪がくわだてられていることを告発し、労働組合の立場の違いをこえた団結で、このくわだてを打ち破ることをよびかけました。
その後、この最終報告にもとづいて、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会で、論点整理の審議が開始され、来年の通常国会には法案として提出しようという動きがおこっていることは、きわめて重大であります。
財界・大企業は、自らの職場支配がどんなにゆきづまっても、また、それが自らの職場支配を土台から掘り崩す矛盾をつくりだしていても、自らそれをただそうとはしません。ここには、マルクスが『資本論』のなかで、「資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない」とのべた法則が働いているのであります。労働者・国民のたたかいによってこそ、職場の状態悪化の打開をはかることができる。このことを銘記して、奮闘しようではありませんか。
政治を変えることと、職場を変えることは、一体の問題
第三に、財界・大企業による労働者への攻撃と、自民党政治の果たしている役割との関係が、こんなに見えやすいことはないということを、強調したいと思います。
この間、自民党政府は、一方で企業分割、営業譲渡、事業持ち株会社など企業法制を改悪して、解雇・リストラを後押ししてきました。他方では、派遣労働の拡大など労働法制の連続改悪によって、ただでさえ貧困な働くルールをいっそう破壊してきました。
派遣労働を専門職から一般業務に原則自由化する大改悪がおこなわれたのは、一九九九年の法改悪でありましたが、このさいには、わが党以外のすべての諸党――自民・公明、民主などの賛成によって改悪が強行されました。
いまおこなわれている公務員攻撃も、自民・民主が競い合ってのものであります。政府・与党が、「五年間で国家公務員の5%、地方公務員の4・6%を削減する」法案を提出すれば、民主党は、「国家公務員の総人件費を三年で二割削減する、能力評価制度を構築し、不適格な職員には適切な処置を取れるようにする」という、政府・与党案をさらに上回る削減をすすめる「対案」を提出しました。
いまの生活と労働の苦しみの根源に、こうした自民党政治の政治悪があること、政治を変えることが、職場を変えることと一体の問題であることを、労働者に広く語ろうではありませんか。
日本の階級構成の八割をしめる労働者階級がおかれている深刻な現状を打開することは、日本国民の現在と未来にとって重大な意義をもつたたかいであります。日本共産党と、その職場支部の果たすべき役割はかけがえないものがあることを、強調したいと思います。
四、職場支部の活動をどう強化するか――「政策と計画」をもって
つぎに、それではこういう状況のもとで、職場支部の活動をどう強化するか。
職場支部の活動を発展させる基本は、党大会がうちだした方針――「政策と計画」をもった活動にとりくむことにあります。どうすればすべての職場支部が「政策と計画」をもった自主的・自覚的な活動にとりくめるようになるか。聞き取り調査で私たちが学んだすぐれた経験、また全国のみなさんから解決がもとめられている問題にもふれながら報告したいと思います。
(1)労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくる
まず最初に強調したいのは、労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくるという問題です。
「政策と計画」という場合、それを難しく考えないことが大切です。その土台は、労働者と日常的に結びつき、人間と人間との信頼関係をつくることにあります。
大会決議では、このことについて、「支部と党員がまわりの人々と日常的に広く深く結びつくことは、あれこれの党活動の手段ではなく、それ自体が党の活力の根本にかかわる問題であり、党の基本的なありかたにかかわる問題として、重視されなければならない」と強調しました。この見地は、資本の労働者支配によって分断がもちこまれている職場では、とりわけ大切だと思います。
全国のすぐれた経験では、例外なく、労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくることを、党活動の根本に位置づけています。聞き取り調査から大切だと感じたいくつかの経験を紹介したいと思います。
出発点はあいさつから
一つは、出発点はあいさつから、ということであります。
東京の出版関係の職場支部からこういう報告がよせられました。「党大会での『お茶を飲んでいきな』『野菜を持っていくけ』という言葉をおろそかにしてはなりませんという発言の報告を『印象的だった』と聞いた同志が、人間的結びつきで自分自身が変わらなければと思い、これまで会釈しなかった人には会釈を、会釈してきた人には『おはよう』と声をかけ、『おはよう』といってきた人とは会話する努力をし、これからは選挙での支持を広げ、読者も増やせるようにしたいと決意をのべている」。
北海道の民間の職場支部からはこういう報告がよせられました。「支部では『実践する三項目』を支部の『政策と計画』として確認した。(1)職場に入ったら元気よくあいさつすること、(2)会議を欠席するときは必ず連絡すること、(3)月一回の宣伝紙を活用すること。これを実践してみたら、『合理化』で党員もくたくたになっていたが、半年たったら党と労働者の関係がよくなった。この積み重ねが支部の団結につながっている。こつこつ増やしてきたら、結果的には日刊紙で130%を達成し、日曜版もあと少しで130%目標に達するところまできた」。
ここでも「元気よくあいさつする」ことが冒頭にすえられていることが、たいへん印象的でした。支部会議についても、「会議に100%出席」といわないで、「欠席するときは必ず連絡する」というところが、柔軟でリアルな知恵が働いていると感じました。
労働者の全生活にわたってつきあう
二つ目は、労働者のすべての生活にわたってつきあうということです。
大阪の民間大企業の職場支部からは、こういう報告がよせられました。「労働者の全生活にわたってつきあう姿勢をつらぬいている。労働者との懇談会を二〜三カ月に一回の割合で開いている。バーベキュー大会や花見、釣りなどもおこなっている。そこに、これまで結集していなかった党員も誘っている。この集まりに三回参加した青年が、昨年、入党してくれた」。
同じような努力は、全国からたくさんよせられました。
党員の苦しみは、労働者みんなの苦しみ
三つ目は、党員と労働者の結びつきの基礎はどこにあるかという問題です。
聞き取り調査で印象的だったのは、成果主義管理のもとでの長時間過密労働、メンタルヘルス問題などに、党員も同じように苦しみ、傷ついていることでした。党員の苦しみは、労働者みんなの苦しみでもある。ここに党員と労働者との結びつきの基礎があるし、団結の土台がある。ここを前向きにとらえた活動の発展が大切ではないでしょうか。
(2)「政策」について―どの問題でも「切実な要求」を出発点にして
つぎに、「政策」についてのべます。
まず、「政策」をつくることは難しい話ではないということを強調したいと思います。どの問題でも、労働者の切実な要求を出発点にすれば、道が見えてくる。これは聞き取り調査でも実感されたことでした。
大阪の医療関係の職場支部からは、こういう報告がありました。「『次の会議までにまわりの労働者一人と対話してその結果を持ち寄ろう』と意思統一した。対話の結果を持ち寄った会議では、医療現場での要求とともに、子育ての問題、息子・娘の就職と賃金の問題など、さまざまな要求が出され、支部の活動の方向性がみえてきた」。こういう活動をつうじて、「政策と計画」づくりの展望が見えてきたという報告でした。「次の会議までにまわりの労働者一人と対話して持ち寄ろう」――これならば、どの支部でもとりくめるのではないでしょうか。
大会報告では、「『政策』では、職場の切実な要求をとりあげることが出発点となりますが、そのさい、すべての労働者を団結させることができ、労使協調主義の労働組合も、企業側も否定できない具体的な現実の問題をリアルにとりあげることが大切であります」とのべました。
労働者がどこに不満をもっていて、どういう要求ならみんなが団結できるか、それをみつけてとりあげることが、「政策」をつくるということであります。
聞き取り調査をふまえて、全国のみなさんが、「政策」をつくるうえで参考にしていただきたいいくつかの問題を、報告いたします。
成果主義の職場支配とどうたたかうか
第一は、成果主義の職場支配とどうたたかうかという問題です。
聞き取り調査で、この労務管理のもたらしている害悪とともに、「成果主義の職場支配とどうたたかったらいいのか」の悩みが多くよせられました。ぜひこの講座でも深めていただきたい問題ですが、私は、ここでも出発点は、成果主義がもたらしている現実の労働苦、現実の矛盾、そこからうまれてくる生きた要求をとらえ、それにもとづくたたかいをすすめることにあると思います。
化学関係の民間大企業からは、「がんばれば報われる」と宣伝して導入された成果主義にたいして、組合の役員選挙で、「ガンバッたみなさん! 何かいいことありましたか」と問いかけ、前進をかちとっているという経験が報告されました。
成果主義導入にさいして、企業側は幻想をあおるわけです。しかし、それはすぐに現実に裏切られます。「賃金が上がるといわれていたのに下がった」、「評価というが公正にされていると思えない」、「長時間労働で健康が心配」などの不満が、職場に充満しています。そういう労働者にむかって、「何かいいことありましたか」と問いかけると、不満が具体的な声となってかえってくる。そうした声をとらえ、要求の実現のためにともにたたかうことが、たたかいの基本だと思います。
一律賃上げの要求は、この賃金体系を是正させていくうえでたいへん重要だと思います。電機関係の民間大企業では、連合系労組が今年の春闘で賃金改善分を労働者に一律支給することを要求した。このことを重視して、職場の集会で党員が、「この方針に賛成だ。がんばってほしい」とのべたところ、組合役員は「いつも方針に反対しているのに、支持してくれた」とびっくりし、職場の労働者にも共感を広げているという報告がありました。
成果主義とは、差別と分断の賃金体系であり、正規労働者のなかでも賃金格差が急速に拡大していることに、批判が広がっているもとで、格差の是正につながる一律賃上げ要求は、労働者の気分・感情にあったものだと思います。そして、成果主義賃金を是正し、空洞化させていくことにつながっていくと思います。
「評価を開示せよ」という要求も重要であります。そもそも成果主義における「評価」というのは、本質的に主観的・恣意(しい)的なものとならざるをえず、開示をすればその非合理性がきわだたざるをえなくなります。個々の労働者の開示をてがかりに、職場労働者が団結しながら、本人だけでなく全労働者の全面的開示を要求し、本人の異議申し立て権と労働組合の関与を認めさせ、評価基準をできるだけ客観的で公正なものとしていくたたかいも重要であります。
自治体の職場では、成果主義が、いかに住民サービス切り捨てと結びつき、「全体の奉仕者」としての仕事を否定するものであるか、学校の職場では、成果主義が、いかに一人ひとりの子どもの成長に目をむけた教師の仕事をねじまげるかを告発し、「よい仕事がしたい」という要求に依拠したたたかいをすすめることが大切であります。
職場を基礎に要求にもとづくたたかいを前進させるためにも、成果主義管理がもたらしている社会的害悪――賃下げ、長時間過密労働、健康破壊、メンタルヘルス問題、労働災害と事故などを、職場でも国民的にもリアルに告発していくことは、きわめて重要であります。国会でも、「しんぶん赤旗」でも、その論陣をおおいに強めたいと思います。
社会的告発と反撃で大きく包囲すること、職場での要求をかかげた運動をすすめることを、統一的に前進させ、この賃金体系の抜本的是正をはかるために、力をつくそうではありませんか。
非正規労働者をどう結集するか
第二は、非正規労働者をどう結集するかという問題です。
非正規労働者の異常に劣悪な労働条件は、その大多数が違法・無法を土台にしているだけに、何よりもここに着目してたたかいを組織・前進させる――職場から無法を一掃するたたかいが大切であります。
NHKテレビが毎朝放映している「生活ほっとモーニング」という番組があります。この番組では、二月と四月の二回にわたって「年収二百万円で暮らす・広がる格差社会」という特集を放映しました。そのなかで、年収百八十万円で契約社員として働く若い女性の深刻な生活実態が、紹介されました。この女性は、大学を卒業し、ドイツ語も身につけ、旅行代理店で働いている。しかし異常な低賃金のため、住む部屋は風呂なし、トイレなしの六畳一間。光熱費を抑えるために部屋には暖房器具は一つもありません。友人からもらった服を着込んで寒さをしのいでいるという生活です。
しかしこの女性は一人ぼっちではない。首都圏青年ユニオンに参加しているという場面がつぎに出てきます。そしてその活動に注目し、こう紹介していました。「正社員、非正社員をとわず、どんな雇用形態でも、どんな職種でも個人で加入できる組合です。組合には年間百五十件ほどの相談がよせられます。……残業代が支払われない、有給休暇がとれないなど、あきらかな法律違反が数多くあります。去年一年間では四十四社と団体交渉をおこない、90%以上待遇改善をかちとってきました」。
二月の番組には大きな反響がよせられ、四月には第二弾の番組が放映されたとのことでした。職場の無法を一掃するたたかいに、青年たちが自らたちあがっている。私は、この運動には大きな未来があると確信するものです。
この問題では、正規労働者から非正規労働者への働きかけが大切であります。聞き取り調査でも、正規労働者が中心の職場支部が、非正規労働者の悩みに心をよせて、現状打開のとりくみをともにすすめている経験が、全国各地から報告されました。多くの非正規労働者は、不安定な雇用に置かれているために、会社、職場で、不満があってもモノがいえない状況があります。「いやならやめろ」「文句をいったら契約更新されない」というもとで、労働条件の改善はもとより、仕事の手順がおかしいと感じても、改善の提案すらできない。派遣労働者で、「上司より英語が上手だった」というだけで、雇い止めになったというひどいケースもあります。そのなかで、職場の党員が、「何かいいたいことがあったら、代わりに言うから何でもいっておいで」と話して、実際に、改善させ信頼をえている経験が生まれていることは、たいへん重要であります。
兵庫の民間大企業の職場支部では、非正規雇用の青年労働者が「有休がとれない」「残業代が支払われない」と相談してきたのをとりあげ、職制労働者もふくめた正規労働者の多数が「技術の伝承にとって、この会社の労働条件が障害になっている。なんとかしないと製品の品質にもかかわる」と声をあげ、労働基準監督署に申告し、改善を実現しています。こうしたとりくみを全国ですすめたいと思います。
そのさい、非正規労働者の労働条件の改善の問題を、職制もふくめた一致した職場要求にしていくことにしていく努力はきわめて重要であります。非正規労働者の労働条件をよくすることは、正規労働者の労働条件をよくすることに直接つながります。差別と格差をただすことは、職場の人間関係をよくしていくことになります。製品の品質をよくしていくうえでも、労働災害や事故をふせぐうえでも、職制労働者からも「派遣労働者を正規雇用にすべきだ」という要求が出されています。これらに注目して、職場ぐるみのたたかいにしていくことが大切だと思います。
さらに「職場でも、地域でも」という立場で、職場と地域が連携したとりくみを前進させることも大切であります。聞き取り調査のなかでも、「二つの連携」――一つは、党機関や地方議員・地域支部、青年支部と民青同盟がおこなっている労働・生活相談活動と職場支部との連携、いま一つは、全労連の地域労連と職場支部との連携をはかっていくなかで、非正規労働者の雇用の安定、労働条件の改善をかちとっている経験が、数多く生まれていることが報告されました。
いまや労働者の三分の一をしめるにいたった非正規労働者の労働条件を抜本的に改善し、無法を一掃し、雇用の安定をはかり、均等待遇のルールの確立をすすめることは、日本社会の前途を左右する大きな意義をもつものであり、労働者党員と職場支部、党機関があげてとりくむべき、重大な任務であります。
公務員攻撃とどうたたかうか
第三は、公務員攻撃とどうたたかうかという問題です。
大会決定が強調したように、公務員の大幅削減、賃下げの動きなどの攻撃を許さないたたかいは、労働者階級をめぐる政治的・経済的対決の重大な焦点となっています。この攻撃とたたかううえで、何よりも重要なのは、それが公務員労働者への攻撃のみならず、住民の暮らしと安全への攻撃だということを広く伝え、住民・国民との連帯でこれを打ち破るという立場をつらぬくことであります。聞き取り調査では、この立場にたった勇気あるたたかいが、各地で生まれていることが報告されました。
全国各地の自治体ですすめられている公立病院の統廃合・民営化の動きにたいして、党員が労働組合や住民とともに、さまざまな形で「地域医療をまもる会」をたちあげ、計画の中止・見直しに追い込んだたたかいも少なくありません。
公立保育園の民営化の動きも、全国ですすめられていますが、党員が労働組合や、保護者、地域住民とともに「よい保育をつくる会」を結成し、市民とともに運動を広げるなかで、自治体の姿勢をかえさせた経験も各地で生まれています。
学校給食の民間委託提案にたいして、党員が労働組合や、保護者、アレルギーで苦しむ子どもをかかえる親のネットワークなどとともに、「学校給食をよくする会」を結成し、「手づくりの、温かくておいしい栄養のある安全な給食は、私たち給食調理員の誇りです」と運動を広げ、撤回においこんだ経験も報告されました。
東京で公務労働の現場で働く同志が、地区党会議で、つぎのような発言をしたということを、私はたいへん印象深く聞きました。
「『公務員一般』という人はいません。一人ひとりの公務員が、私のような学童保育指導員であったり、保育士であったり、教育や福祉の仕事に具体的な形で携わっています。その具体的な仕事の果たしている役割と、一人ひとりの住民の方々の切実な要求とのつながりが生きた形で見えるなら、公務員攻撃をはねかえす大きな力になると確信します」。
私も、まさにここに攻撃をはねかえすカギがあると感じました。公務員攻撃をすすめる勢力は、公務員を「公務員一般」として、すなわち「数」でとらえ、「優遇されている」「財政を圧迫している」と攻撃し、「数を減らせ」と叫びます。しかし削減されようとしている一人ひとりの公務員は生身の人間であり、その具体的な仕事、住民との生きた接点に目をむければ、そこには住民の利益のために働く生きた人間の姿があります。「全体の奉仕者」としてのこの仕事を破壊していいのかということを、そういう見地で広く問いかけ、国民とともにこの攻撃をはねかえそうではありませんか。
労働者・国民に苦難をおしつける誤った考え方を打ち破る
第四に、これらのたたかいを発展させるうえで、労働者・国民に苦難をおしつける誤った考え方を打ち破ることは不可欠であります。
「新自由主義」に共通するのは、国民のなかに「対立」をつくり「分断」をはかることですが、すでにみてきたように労働者への支配ではこの常とう手段がフル動員されています。正規労働者と非正規労働者に差別と分断をもちこむ。正規労働者のなかには成果主義管理という差別と分断をもちこむ、民間労働者と公務労働者に対立をもちこむ。「努力すれば報われる」という幻想をあおって、競争にかりたてる。競争から「脱落」したものは「自己責任」をおしつける。この労働者分断の攻撃を打ち破って、すべての労働者の連帯と団結をつくりあげるために、日本共産党の果たすべき役割はきわめて大きいものがあります。
大会報告では、「社会的連帯で反撃を」を合言葉にたたかおうとのべましたが、労働者階級こそ、すべての日本国民が広く社会的連帯をつくりあげていくうえでの要(かなめ)となることが求められていることを、強調したいと思うのであります。
(3)「計画」について―後継者づくり、あらゆる労働者に根をおろして
つぎに、「計画」についてのべます。
「計画」をもつとは、それぞれの職場支部での政治目標の実現、労働者の要求実現のうえでどういう力をもった党が必要かを目的意識的に明らかにし、党を質的に強め、党員と読者を増やすとりくみをすすめることであります。「計画」のなかには、後援会の強化と、後援会員と力をあわせての活動の方針ももりこむことが大切であります。
どうやって後継者をつくるか
まず、どうやって後継者をつくるかという問題です。「何としても支部を継承し、発展させたい」ということは、多くの職場支部の痛切な願いであります。青年の結集を重視しつつ、三十代、四十代もふくめ、条件と可能性をくみつくし、執念を燃やしてかけがえない職場支部の継承をはかりたいと思います。
「どうやってすすめたらいいのか」の悩みが多くだされました。この講座でも交流で深めていただきたい問題ですが、聞き取り調査から私たちが学んだ点をいくつか報告したいと思います。
ここでも要求から出発すること――若い世代の仕事、人間的連帯、平和の要求から出発し、悩みに心をよせた活動が大切だと思います。とくに党大会の結語でものべたように、いま若い世代は「二重の苦しみ」――人間らしい雇用が破壊されていることにくわえ、それが「自己責任」だと強制され思い込まされている――のなかにあります。その苦しみ、悩みに心をよせるところから、若い世代との心の交流がはじまるのではないでしょうか。
教職員の職場から、「お手本になれなくても、悩みの聞き役ならできる」という姿勢で接しているという報告がありました。「お手本になれなくても」というところが、柔軟でリアルなところだと思います。いまの教育現場にはさまざまな矛盾や困難があり、「私がお手本だよ」とはなかなかいえない状況もある。しかし、そういう教師であっても、「悩みの聞き役」にはなれるでしょう。こういう姿勢で接し、「悪いのは君たちではない。政治の責任だ」というだけで、相手は何人も涙を流し、対話になるということでした。「あの先生の一言で立ち直れた」、「あの先生のようになりたい」と人間的信頼関係を築き、党に迎え入れています。
とりわけ、「よい仕事がしたい」という若者の願いにこたえて、自らの仕事への誇り、働きがいを語り、仕事の知識や技術をつたえていくことが大切であります。これも教職員の職場ですが、「先生のがっこう」という連続講座を組合が開催したことが、「どうやって教えたらいいのか」という不安をもつ新任教員の要求とぴったりかみあい、青年教師の結集が前進しているという報告もありました。
自治体の職場からも、「組合が新入職員からアンケートをとると、多くが『住民のための仕事がしたい』とこたえる。ここに依拠し、共感することで青年と心がつうじる。党員拡大では、徹底して『党を知る会』を重視するなかで、入職二〜三年の若い人が入党している」という報告がありました。
どうやって後継者をつくるかという問題は、みなさんが苦労してとりくまれている問題だと思いますが、ぜひこの講座で深めていただくことをお願いするものです。
労働組合の違いをこえ、あらゆる労働者のなかに根をおろす
つぎに強調したいのは、労働組合の違いをこえ、あらゆる労働者のなかに根をおろすということであります。
職場支部は、労働組合運動の前進のために積極的役割を果たすとともに、党として独自に、すべての労働者を視野に入れて結びつき、あらゆる労働者のなかに根をおろす努力をはかるという見地が大切であります。党と労働組合は性格も目的も違います。党づくりと、労働組合の前進は、もちろん関連はありますが、区別したとりくみがもとめられます。
すなわち、連合系の組合でも、全労連系の組合でも、未組織労働者のなかでも、組織労働者のなかでも、正規労働者のなかでも、非正規労働者のなかでも、党をつくったら、つくったところに根をおろして、党組織を発展させる。そして党組織のネットワークが、職場労働者全体の連帯のネットワークになっていくようなとりくみが大切であります。
職場での「九条の会」、職場革新懇も、同様の見地で、党として、それぞれの性格にふさわしく位置づけてとりくむようにしたいと思います。
いま多くの職場で、労働組合の違いをこえ、また管理職もふくめて、「九条の会」がつくられ、職場から平和を守る共同が大きく広がりつつあることは、きわめて重要であり、この流れを太く発展させるため力をつくしたいと思います。
職場革新懇のとりくみも、きわめて重要であります。すでに全国で百七十をこえる職場革新懇がつくられ、多彩な活動を展開しています。革新懇は、労働組合的な組織ではありません。そのときどきの国民・労働者のあらゆる要求にこたえた活動を展開するとともに、日本共産党と無党派との共同で革新三目標にもとづく統一戦線をつくることを目標とする組織です。だから革新懇は、その職場の労働組合がどのような流れに属していようとも、職場のなかで、労働条件の問題から、日本の政治の問題、世界の問題にいたるまで、どんな活動でも自由闊達(かったつ)にとりくむことができます。
組合が全労連に参加している場合でも、革新懇は重要であります。全労連は革新懇に参加していますが、だからといってその組合の労働者が革新的な立場にたっているかといえば、さまざまです。ここでも革新三目標での合意づくりをめざす革新懇の役割は大きいものがあります。
ぜひ職場革新懇のとりくみを、職場支部の「政策と計画」のなかに位置づけていただくことを訴えるものです。「一つの職場支部では、つくる力がない」という悩みも聞きますが、条件におうじてさまざまな形態がありえます。たとえば神奈川県では、産業別と地域別に職場革新懇をつくる動きがすすんでいます。川崎市では、市内のNEC、東芝、富士通、ソニーなど電機職場から労働者が参加して「川崎・電機職場革新懇」が発足しています。藤沢市では、市内の民間大企業や自治体などで働く労働者が、地域横断の職場革新懇をつくって、新鮮な視点で活動を開始しています。これらも教訓的だと思います。
職場の深くに根をはった党をつくる
つぎにのべたいのは、職場の深くに根をはった党をつくるという問題です。
聞き取り調査のなかで、党員拡大にたいするためらいのなかに、「こんな苦労は味わわせたくない」という声があることが報告されました。これにたいしては、二つの見地が大切だと思います。
一つは、やはり、自らの日本共産党員としての苦労に誇りをもち日本共産党員としての生き方を正面から語る――労働者党員魂を語るということです。埼玉の大企業の職場支部からは、「いまの若者を、党に入れて、差別のなかに巻き込んでいいものか」という議論がされたが、「自分の生き方に誇りをもっており悔いはない。働きかける側の“内なる壁”を突破することが大切だ」という議論となり、「政策と計画」のなかに、次期総会までに一人の党員を増やそうと決めたという報告がよせられました。
同時に、いま一つ、強調したいのは、党員の活動は一律ではないということです。党員と公然と名乗って、あるいは事実上名乗って活動する同志もいれば、公然と名乗らなくても、さまざまな形で党活動をになうこともあります。それぞれの条件におうじて、みんなで荷をわかちあう。そういう意味で、視野を広げ、職場の深くに根をはった党をつくるという見地が大切だと思います。
「しんぶん赤旗」の活動をしっかり位置づける
聞き取り調査のなかで、党の「職場新聞」を定期に発行する努力をつづけ、これが労働者からたいへん歓迎され、労働者の団結の要となっていることが、数多く報告されました。この努力はきわめて貴重であり、ひきつづき発展させたいと思います。
同時に、職場支部の活動のなかに、「しんぶん赤旗」の活動をしっかり位置づけることを訴えたいのであります。
東京で民間大企業・中央官庁が集中する千代田地区の委員長は、「率直にいって、いま党組織が継承できるかどうかという事態にあり、機関紙まで手がまわらないという気分も支部のなかにある。そのなかで、職場の実態との関係で『赤旗』はなくてはならないということを話しあっている」と語っています。すなわち、(1)政治を変えることが職場を変える力であり、そのカギは「赤旗」読者を増やすことにある、(2)職場のたたかいとの関係では、政府・財界が流してくる誤った考え方に立ち向かって打ち破るうえで、「赤旗」は最良の媒体になるなどを、みんなで話し合っているということでした。
この地区のなかのある民間大企業の支部では、「政策と計画」の柱に、「毎月、読者を拡大する」ことを位置づけて行動し、六十五カ月連続で拡大の成果をあげていると聞きました。ここでは二つのスローガンが重視されているそうです。一つは、「政治を変え、職場を変えよう」。いま一つは、「全国は一つ。あらゆるつながりを生かした拡大を」。日本の階級構成の八割は労働者階級ですから、「全国は一つ」で増やせば、全国でも増やしてくれて、いわば“相互主義”でお互いの連帯で職場に読者がつくられていく。こういう見地でとりくんでいるということでした。
これらのすすんだ経験に学び、職場支部での「しんぶん赤旗」の活動を強めることを、心から訴えるものです。
(4)学習と党生活の確立 ――職場支部でこそ日本共産党らしい党づくりを
つぎに、学習と党生活の確立についてのべます。
職場支部は、自民党政治の政治悪とともに、資本による職場支配という、二重の矛盾のなかにおかれ、困難も二重にかぶさってきます。それだけに、職場支部でこそ日本共産党らしい党づくりが大切であります。
綱領学習と支部会議こそ困難打開のカギ
そのカギとなるのは、綱領学習と支部会議です。聞き取り調査でも、長時間過密労働、職場の多忙化のもとで、支部会議を開催すること自体に大きな困難をともなうことが共通して出されました。同時に、苦労はあるが、ここから党をつくることの重要性も多く語られました。
北海道の民間の職場支部からは、こういう報告がよせられました。「週一回の支部会議は、人間性を取り戻す貴重な時間となっている。ある党員は『支部会議があるから、また一週間がんばれる』といっている。顔をあわせて元気度を確かめあう活力の源になっている。週一回の会議は、体はきついけれど心が求めている」。
どうやって定着をはかるか。聞き取り調査のなかでも、一つは、支部長さんが「何があっても会議を開く」という立場にたつことが大切だと思います。これは数年前のことですが、「すすんだ支部の経験を聞く会」というものを持ちました。その時、ある職場支部の支部長さんが、「最初は一人から支部会議をはじめた。一人だけでも支部のセンターに行って、支部会議の時間はそこにすわって、学習をして、どうやって支部活動を前進するかを考える、そこからはじめて参加者を広げていった」と発言したことを、印象深く思い出します。
もう一つは、支部会議の中身を「元気が出る」ものにすることであります。労働者への分断攻撃のなかで、党こそは社会変革という共通の志で結ばれた温かく強い人間集団として発展することが強くもとめられています。そのために絶対不可欠なものが定期の支部会議です。ここに参加すれば、仲間との連帯のなかで、仕事や活動の展望を見いだすことができる、明日への希望をつかむことができる、「元気が出る」ものにしていくことが大切であります。
支部会議は、「困難だから開けない」でなく、「開かないことが困難の原因にもなる、困難打開の第一歩が支部会議」の見地で、これを定着させようではありませんか。
「仕事も、労働組合も、党活動も」の立場で
聞き取り調査のなかで、支部の中心幹部の同志が労働組合活動に忙殺され、党の独自活動が弱まる問題をどう解決するかという問題がだされました。
どの任務についている同志も、組合活動と、党独自の活動という二つの任務をもつ、それを一体にすすめる最大の保障が、「政策と計画」である、ここに大きな答えがあるのではないでしょうか。埼玉の民間の職場支部からは、「仕事があり、組合活動があり、党活動があると思っていたが、『政策と計画』をつくれば一体となることがわかった」という議論となったという報告がありました。
「政策と計画」をつくり、「仕事も、党活動も、組合も、一体に前進を」の見地で活動の前進をはかりたいと思います。
職場支部に在籍している退職者の同志について
今回の聞き取り調査のなかで、職場支部に在籍している退職者の同志が相当数にのぼるということが明らかになりました。これは実情にそくしたとりくみが必要であります。
退職者の同志のなかには、職場支部の活動の要になって奮闘している同志も少なくありません。そういう同志は、職場支部の指導部や地区機関などに所属して、その経験を生かした活動をおこない、後継者にひきついでいく活動をすすめていただきたいと思います。それは職場支部の現状からみて、大きな積極的な意味をもつと思います。
同時に、そういう任務をもたない同志は、支部や機関と話し合って地域支部に転籍し、これまでの経験と知恵を、地域支部の活動のなかで生かしていただくことを訴えるものです。現にいま、地域支部の支部長や支部指導部の多くは、職場で長年にわたって奮闘してきた同志がにない、労働者党員ならではの不屈さを発揮し、素晴らしい役割を果たしています。「第二の人生」を、地域支部のみなさんとともに、これまでの経験を生かしてがんばりぬくところに、党員としての新たな生きがいを見いだして、そういう道に踏み出していただきたいと思います。
五、党機関の指導と援助について
報告の最後に、党機関の指導と援助についてのべます。私は、聞き取り調査をふまえて、職場支部にたいする党機関の指導と援助の基本姿勢として、つぎの三つの点を強調したいと思います。
一つは、職場で困難な条件のもとで不屈に奮闘してきた同志に心からの敬意をもって接し、苦労に心をよせ、実情を聞くこと、謙虚に学ぶことから、お互いにこの仕事をはじめていこうということであります。聞き取り調査の中で、党機関への要望として一番多かったのは、「苦労を知ってほしい」「悩みを聞いてほしい」というものでありました。知恵は現場の中にあると思います。そのことは、今回の聞き取り調査で、私たちが痛感したことでありました。それを学び、一緒に実践の道を探求する。このなかから支部との信頼関係をつくりあげていくことが大切であると思います。中央委員会も都道府県委員会も地区委員会も、この姿勢を堅持してとりくみたいと思います。
二つは、職場支部を、直面する課題に役立つかどうかという短期の目でみずに、長期の目で職場支部を強め、継承していくための手だてを、一緒になってとることであります。日本革命の事業にとって、ここでの党の陣地を強めることの戦略的意義をしっかりととらえて、職場支部の活動強化にとりくみたいと思います。
三つは、職場支部の活動をはげます党機関としての独自のとりくみをおこなうということであります。職場問題を、国会はもとより、地方議会の場でもとりあげ、改善のためにたたかう。党機関が地方議員団と連携して、独自に労働・生活相談へのとりくみをおこなう。地域と職場が連携して非正規労働者の結集をはかるうえでのイニシアチブを発揮する。これらの党機関としての独自の活動を展開し、職場支部の活動を励まし、促進する。これも大切だと思います。
党機関がこうした姿勢で職場支部への指導と援助を強めるためには、体制の強化が不可欠であります。党大会決定をうけて、多くの都道府県で、職場援助委員会が確立しました。埼玉県党では、県に三名の専従者(うちOB二名)を持ち、八名で構成し、援助委員と職場支部担当地区委員の合同学習・交流会議、産別ごとの学習会や会議を開くなど実践的な援助をはじめているとの報告がありました。
職場援助委員会の活動を系統化することを強く訴えるものであります。とくに、職場支部の交流の場を、系統的にもつことは、どの機関でも必ずおこなうべき活動に位置づけてゆきたいと思います。
おわりに―労働者階級の歴史的使命と日本共産党
わが党の規約には、日本共産党は「日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党」だと規定しています。
労働者階級は、日本国民の圧倒的多数をしめ、日本社会と経済の動向を決定的に左右する階級であります。労働者階級の地位と権利の向上をぬきに、日本国民の生活条件の改善はありえません。
また労働者階級は、日本共産党がめざす社会主義・共産主義への前進を、歴史的使命としている階級であり、人類史的視野でみても未来社会を担う階級であります。
労働者階級のなかで多数者となってこそ、民主連合政府への道は開かれてきます。この展望をもって、この分野でのとりくみの前進をはかるために、ともに奮闘する決意をのべて、報告を終わります。
2006年4月25日(火)「しんぶん赤旗」
線路隆起 首都の足混乱 工事ミスか あわや大惨事
JR東
二十四日午前十時半ごろ、東京都新宿区大久保のJR湘南新宿ライン池袋―新宿間で、大船発宇都宮行き普通電車(十五両編成)の運転士が走行中、異常な音を感じました。JR東日本が点検したところ、線路の一部が長さ約二十五メートルにわたり、最大で高さ約五センチ盛り上がっているのを発見。同様の異常が隣接して走る山手線の線路でも見つかりました。超過密ダイヤで、あわや大惨事となる可能性もありました。JR東は山手線内回りと外回り、湘南新宿ラインのほか同ラインと同じ線路を走る埼京線も運転を見合わせ、首都圏の交通が大きく混乱しました。このトラブルで三百二本が運休、三十二万人以上に影響がでました。
湘南新宿ラインは終日運休。池袋駅で折り返し運転していた埼京線は午後六時半ごろ池袋―大崎駅間の運転を再開。都心の大動脈、山手線は午後四時すぎまで約五時間四十分にわたり全線で運転を見合わせました。
JR東によると、異常が見つかったのは高田馬場駅から新大久保駅寄りに約六百メートルの地点。真下にあたる第一戸塚ガードで道路の拡幅工事のためのコンクリートの打ち込み作業によって軌道が盛りあがったのが原因とみて同社が調べています。
山手線は内回り電車が高田馬場―新大久保駅間に停車。乗客約二千人が約一時間以上電車に缶詰め状態となり、高田馬場駅まで歩いて移動しました。けが人はありませんでしたが、東京消防庁によると、女性五人が気分が悪いなどと訴え、病院に運ばれました。
2月にもトラブル 原因不明のまま工事
五時間半以上にわたり山手線などがマヒした線路隆起トラブルの原因は、ことし二月にも山手線外回りの新橋―浜松町駅間で線路の沈下を発生させた同じ工法でした。線路の上下五センチもの変形は、電車脱線につながりかねない重大なトラブルだけに、JR東日本の安全過信が問われています。
JR東日本によると、今回の線路隆起は線路下の道路を拡幅する工事で、東京都の委託をうけたJR東日本が実施。鉄建建設と西武建設の共同企業体が請け負っていました。
JR東日本は「二月のトラブルはパイプを打ち込むときに発生した。今回はすでにパイプは打ち込んであり、安全だと思っていた。二月のトラブルの原因は究明中」と説明。原因が明らかにならないまま工事を続けていたことを明らかにしました。今回のトラブルを受け、同社は「(同じ工法で工事中の)六カ所中二カ所でトラブルが発生した以上、同じ工法の工事は中止する」と語りました。
2006年4月25日(火)「しんぶん赤旗」
山手線の線路隆起 「ドーン」 激しい衝撃
2千人、車内に1時間半
都心の動脈、山手線が五時間半にわたりストップしたJR東日本の二十四日の事故。同日午前十時半すぎ、高田馬場―新大久保間で停車した山手線内回り列車に乗っていた乗客約二千人は、その後約一時間半も車内に閉じ込められました。
二両目の連結部分近くに座っていた男性(58)は「ドーンと車両が浮き上がるような衝撃で、上下に激しく車体が揺れた。電車が壊れたんじゃないかと思うほど、ガチャンッとすごい音がした」と話します。
三両目に乗り合わせた男性(39)も、「ドーンとジャンプするような激しい縦揺れの後、電車がゆっくりと止まった。置き石かと思った」と。高田馬場駅を発車して間もなくのことでした。
停止してから一時間ほどたったころ、ようやく「線路が盛り上がっているのが発見された」という車内アナウンスが。乗客は全員降車することになり、ドアにかけられたはしごから順番に線路に降り、高田馬場駅まで三十分ほどかけて歩きました。
JR東の職員に支えられながらつえをついて歩くお年寄りや、大きなおなかを抱えた妊婦、がまんできずに線路で子どもにおしっこをさせている親子づれも。「線路はガタガタして障害物も多くて歩きにくく、お年寄りやハイヒールの女性は大変そうだった」と前出の男性(39)はいいます。 ようやく駅にたどり着いた後も、周辺は人であふれ、ホームに上がるのに時間がかかりました。救急車のサイレンが聞こえ、途中、線路脇でしゃがみこんでしまう若い女性も。同男性は「線路が盛り上がっていたなら運転は不可能。JR東日本はもっと早く判断し、対応してほしかった」と話しました。
道路拡幅工事で特殊な工法採用
都心の大動脈の山手線や埼京線の四本の線路を持ち上げることになった、線路下の道路拡幅工事。二〇〇三年三月から着工したもので、西武線、山手線、埼京線・湘南新宿ラインが並ぶ線路下に二車線の都道を四車線にするトンネルを掘るために特殊な工法が採用されました。線路下のトンネル上部(図の施工部)の鉄枠の中にコンリートを高圧を加え流し込むもの。このため山手線など四本の線路は隆起し、「西武線は盛り土が厚かったため影響が小さかった」(JR東日本)といいます。
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