2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」

日本の未来開く大事業の前進を 職場の活動豊かに交流
学習・交流講座終わる


(写真)討論のまとめをする志位和夫委員長=23日、党本部

 日本共産党の職場問題学習・交流講座(会場・党本部)は二十三日、前日に続いて討論をおこなったあと、志位和夫委員長が討論のまとめをおこない、二日間の日程を終了しました。志位氏は「みなさんの奮闘で大きな成果をおさめた。これは第一歩であり、引き続きこの事業の前進に力を尽くそう」とのべました。
 討論では、前日の志位委員長の報告を受けて、労組を動かして非正規労働者の要求を実現させた私鉄職場でのたたかい、保育園民営化に住民と連帯して立ち向かっている自治体職場の運動、そのなかで模索しながらも粘り強く党建設に取り組んでいることなど各地の経験が紹介されました。
 門前配布の職場新聞を掲げたり、ユーモアを交えた発言にたいして、笑いや共感の拍手がしばしば起こり、「地元に戻ったら、職場支部のけん引車となりたい」(群馬県)「労働者階級の使命をになう気持ちがわいた」(長野県)など、講座を力にして職場に戻って新たなたたかいに挑む決意が語られました。
 二日間で三十六人が発言した討論のまとめにたった志位委員長は「感動的で豊かな教訓があふれるばかりに語られた。すべてが教訓的でした」とのべ、講座の成果を全党にしかるべき形で伝えることにしたいとのべました。
 「党中央として発言から学んだ点」として、「労働者の利益の守り手として奮闘する不屈性」や「自らの知恵と力で前途を切り開こうという自発性と創意性」をあげ、「国民の苦難の軽減という立党の精神が労働者党員と職場支部に脈々と流れている」「これがほんらいの党支部のあり方だと感動して聞いた」と語りました。
 また、労働者との人間的な結びつきから出発し、要求に心を寄せることがあらゆる活動を前進させる土台になっていることも共通の教訓になっていると強調しました。
 報告で提起した非正規雇用への置き換えや、成果主義、公務員攻撃による状態悪化を打開する方向が発言で深められたとのべたうえで、自動車や銀行職場など巨大企業の中枢部で変化をつくりだしているたたかいにふれて「職場支配が揺らぎ、職場の情勢が変わり始めている」と指摘し、財界・大企業の無法・横暴をただす運動を広げようとのべました。
 党建設・党勢拡大では、「何としても」という意識性、党勢拡大を握ってはなさない独自の追求が大事であり、職場支部こそ大いに学ぶことを、党活動のなかにしっかり位置付けることが大切であることがうきぼりになったと語りました。
 最後に志位氏が、二十四回大会が掲げた労働運動の前進と職場支部の強化について、「党と日本の未来がかかった大事業。知恵と力を寄せ合い、学び合って、この事業の前進のために力を尽くそう」と訴えると、参加者は大きな拍手でこたえました。


2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」

心にひびいた 創意、不屈さ 職場でがんばる力得た
学習・交流講座から


 二十二、二十三の両日、党本部で開いた日本共産党職場問題学習・交流講座は、志位和夫委員長の報告をうけ三十六人が発言しました。職場と労働者の置かれている深刻な実態を紹介、その打開に向け、不屈に明るく運動し、党づくりに知恵を発揮している経験、教訓が悩みも含め、報告されました。感動で涙ぐむ姿も見られ、共感の拍手が何度もおきました。

成果主義賃金 断念させた経験も
 志位さんが提起した成果主義賃金を根源にした労働者の状態悪化とこれへのたたかいについて多くの発言がありました。
 西日本の教職員党組織の代表は「教育委員会が導入しようとした教職員評価システムへの賃金リンクを断念させた」と報告しました。最大の要因は、評価者である校長や日教組組合員も含めて「このシステムは教育をゆがめる」と教育現場の全体の合意をつくりだしたことにあるとのべました。
 NTT職場支部の代表は、成果主義賃金制度が導入され五段階評価の最下位になると、一時金が25%カットされ年間四十万円も賃下げになる実態を告発。「高い評価を受けるため、地域会社では本来業務のほかにハイウエーカードやコメ、空気清浄機など、なんでも販売させる」とのべ、25%カットを逃れるため自腹でカード類を買い金券ショップに売りに行く労働者の追いつめられた状況を訴えました。ある事業所の主査はトップ評価を維持するため、ライバルをけ落とす策略をはかり露呈して退職するなど、モラルの低下が起きているとのべました。
 東日本の民間職場支部の代表は、三年前に成果主義賃金制度が導入される際、成果主義を考える会を職場につくり、たたかってきた経験を紹介。同制度は強行され、賃金の最高ダウン額は十万円以上から五万円以上が百人近く、あわせて数百人の賃下げが行われています。しかし、いまも大幅賃下げを許さず改善を求めてたたかい続けていることに、労働者が信頼を寄せ、複数を党に迎え入れたと報告しました。

非正規雇用 労働者に心よせて
 非正規労働者への大規模な置き換えが急速にすすむ職場の実態と、低賃金と無権利状態に置かれている非正規労働者の苦しみに心をよせ、待遇改善と組織化に取り組む活動報告も相次ぎました。
 非正規労働者が半数近くを占める私鉄の支部では、賃金が正社員の半分しかない非正規労働者を対象にアンケート調査を実施。「早く正社員になって安定した生活がしたい」という要求が圧倒的多数にのぼりました。
 支部は連合系の組合に待遇改善を繰り返し申し入れ、給食費を正社員と同等にさせたのをはじめ、正社員への登用制度や時間給の四十円加算も実現させ、党への大きな信頼をかちとりました。
 大手自動車の各支部からも職場によっては非正規労働者が半数を超える実態を報告。どの報告も、非正規労働者の賃金は正社員の半分以下、しかも短期の契約更新でいつ解雇されるかしれない無権利状態に置かれている実態を話しました。
 ある自動車支部の代表は、四十三歳の派遣労働者に「しんぶん赤旗」日曜版を購読してもらった経験を報告。一週間置きの夜勤と月二回の休日出勤、しかも月十八時間半も残業しながら、手取りが十四万円しかないその派遣労働者が快く購読してくれたその心情にふれ、「党への期待があってこそ。誠心誠意その期待に応えていきたい」とのべました。
 非正規労働者が半数近い関西の郵政職場の代表は、一日五時間労働、賃金は八万円程度しかない非常勤の青年たちに「困ったことがあったら何でも相談にのる」といって結びつきを深めていると発言。青年たちが郵政民営化反対の取り組みに毎月のように参加するまでに変わり、「青年たちは一番良かったことは仲間と知り合ったことといっている。非正規労働者に心をよせられるかどうか党の真価が問われている」と強調しました。

公務員攻撃 住民に知らせ反撃
 志位さんは、報告で公務員攻撃にたいして、それが「公共サービスの切り捨て」だとして住民と連帯して反撃することが大事だと提起しました。
 愛知県の自治体職場の代表は、住民と共同して保育園の民営化や国保証取り上げとたたかっていることを紹介、「住民が主人公となる運動こそ反撃の主体。住民に実態を知らせ、住民が怒り、それを組織することが重要だ」とのべました。
 また、小泉内閣による合併押し付けや地方交付税削減など“地方切り捨て”のなかで全国の自治体訪問にとりくみ「憲法を忘れている」と首長から批判や共感の声が寄せられたことが紹介されました。発言者は「どんな町をつくるのか住民と自治体労働者が話し合って運動しているところで前進している。地方自治体の変化を確信にたたかいをすすめていきたい」とのべました。
 困難を抱える教育現場で新人教員や臨時教員の願いにこたえる取り組みも報告されました。
 ベテラン教師が新人教師に教える教職員組合の「先生のがっこう」を成功させた経験が紹介されました。
 教育困難が増大するもとで、新人教員のなかに指導力を高めたいとの要求が高まっていることにこたえたもので、「指導力が高まり、悩み事も相談できる」と評判を呼び、のべ九百人が参加。
 関東の教育現場では、「子どもの前ではみんな先生」だとして、差別的待遇を受けている臨時教員の正規採用の願いをとりあげ、一部試験の免除や不採用理由の開示を実現させたとりくみが語られました。
 採用試験対策ゼミも開き「ともに学び励ましあうことができる」と喜ばれ、成果主義が持ち込まれている教師集団の新たな団結をつくりだす力になっています。

党建設 職場に根をはって
 「国民の苦難を軽減する」日本共産党の立党の立場にたち、どんな困難な条件があっても労働者の利益の守り手として、不屈にたたかう職場支部、党員の姿が示されました。
 大リストラに直面した民間大企業の支部の男性は、「この悔しさをバネに」して、労働者の移動先となった二つの職場で、非正規労働者の要求にも目をむけた活動を広げ、党支部を結成した活動をのべました。
 九州から参加した青年労働者は、会社の清算・解散で不当解雇された若者たちが、労働者の人権無視は「絶対に許せない」と解雇撤回を求めてたたかっている経験を紹介し、「若者が未来に希望をもてる社会にするためにがんばる」と発言を結びました。
 「教育構造改革」の波が押し寄せるなか、学校現場の困難さが増大していることがリアルに示されました。発言した教師のクラスには、発達障害の子どもがいます。不安定な状態になったとき「オレは不良品だ」という子どもに「違うよ、君はすごくいい子だよ」。こう抱きしめながら、必要な人員も配置せず、子どもの発達を保障しようとしない教育行政に心の底から怒りが込み上げてくると語りました。

「政策と計画」これなら
 自民党、財界・大企業の複雑な攻撃にたいして、職場支部が、「政策と計画」を持ち、自発性、創意性を発揮してたたかっています。
 経営統合による大リストラを推進した民間企業の職場支部の男性は、職場新聞で企業危機宣伝を打ち破り、職場の世論を変えた活動を発言しました。リストラを食いとめられなかったものの党支部は、たたかいのなかで信頼を高め、新入党員を迎えています。
 ある医療関係の職場の支部長は「ここにくるまで『政策と計画』を難しく、面倒くさいことと思っていました。しかし志位委員長が『政策と計画』について『労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくること』というのを聞き、それなら支部でやってきたことだと理解できました。『政策と計画』とはいま私が発言したことをまとめて、後継者づくりなどを明らかにし、みんなで活動することなんですね」と発言しました。
 職場の後継者づくりの問題で、ある自治体党組織は、半年間で十八人に働きかけ四人を党に迎えた経験を報告しました。党委員長は、昨年十二月、「入党対象」と見ていなかった男性を党に迎えた経験から、「いかに対象者を狭くとらえていたかを実感させられた。言葉では『まじめな人はだれでも』といいながら、実際には『あの人はどうも』などといって、働きかける相手がいなくなっていた」と語りました。
 青年を中心に二十一人を迎えた党組織の責任者は、「青年の要求と悩みを親身になって受けとめ、本気で呼びかけることが大切です」とのべました。
 別の自治体の党組織は「党員拡大こそ正面に据えるもの」と、十年前から「党を知る会」にとりくみ、毎年二ケタ前後の人を党に迎え入れている経験を報告しました。
 鉄鋼関係の支部は、全労働者への訪問活動や職場新聞の発行と結合して党建設を進める「政策と計画」を決めました。関連会社や派遣や外国人労働者がいる複雑な職場で労働者を訪問し、切実な要求を聞く活動を続けています。〇四年九月から二十八回の行動で百四十九軒を訪問し、六十一人と対話しています。七十七軒目に初めての日曜版読者となった青年は、七カ月後に入党しました。労働者訪問を通じて党と労働者の「ネットワークづくり」をすすめています。
 埼玉県委員会、札幌中央、東京・足立両地区が職場支部を援助した経験を報告しました。「電話で援助はできない。行って話を聞くことが出発点だ。苦情はチャンス。約束したことは必ず守る。即効は期待せず、半年、一年後を展望してやってきた」(埼玉)との発言が共感をよびました。
 東京の地区労働部員は、長時間労働や成果主義で疲れきり、「赤旗」を読む時間もないなかで確信を失いかけている党員がいる実情を紹介。「学習し確信を持ってもらうしかない」と綱領の学習講座を五回開き、読了率は83%になりました。労働時間問題の連続講座も開き、これが力となって際限のない労働時間を短縮する運動がはじまりだしたとのべました。

“リアルな志位報告” 解決のヒントいくつも
 講座は、二百七十を超える職場支部から、具体的な職場の実態や悩みを直接聞き取り、準備されました。こうした内容に参加者は共感。「(報告は)理屈でなく、生きた現実、たたかいにもとづくものであって、本当に得心がいくものであった」(静岡)「よくここまで支部や職場の実態をリアルにつかんで分析、報告したなと感心した」(栃木)との感想が寄せられました。
 東京都板橋区から参加した党員は、「一人ひとりの発言のなかに、職場支部の悩みを解決できるヒントがいくつもあった」とのべました。
 東京都で職場支部を援助している地区役員は、発言のなかで「報告を聞き、『政策と計画』づくりのイメージがわいた」とのべました。同時に、報告が「労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくる」「党員の苦しみは労働者みんなの苦しみ」と提起したことに「ここにキーワードがある。単に手の問題でなく、労働者が差別、分断、対立させられている状況を突破していくうえで決定的だとつかんだ」と発言しました。
 教員の参加者は、「日ごろの疲れた体を引きずり会場にきましたが、こうして終了し、まったく予想をはるかに超えて元気になっている自分に驚きます」と感想を語り、四国から参加した党員は、「講座に参加して“よかった、よかった”で終わらせてはいけないと感じたところです」と、これからの活動への決意をのべていました。


2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」

JR西脱線事故あす1年
人べらし続行 今も安全軽視


 百七人の死者をだしたJR福知山線の快速電車脱線・転覆事故は、なぜ防ぐことができなかったのか。この問いかけは、二十五日で事故発生から一年を迎えるいまも、JR西日本と国土交通省につきつけられたままです。

 鉄道事故史上、屈指の大惨事となった同事故は昨年四月二十五日午前九時十八分ごろ起きました。塚口―尼崎駅間で、七両編成の上り快速電車が制限速度を超えて右カーブに進入し脱線・転覆し、マンションに衝突。乗客百六人と運転士=当時(23)=が死亡、乗客五百五十五人が負傷しました。
 航空・鉄道事故調査委員会は中間報告をまとめましたが、なぜ運転士がブレーキを掛けなかったのかなど、心理面の解明はまだで、最終報告書提出にはさらに一年以上かかるとみられます。
 兵庫県警尼崎東署捜査本部は、業務上過失致死傷容疑で捜査中です。
 JR西日本の三労組が三月上旬から四月上旬に実施したアンケート調査は、JR西日本の安全対策を検証したものになりました。
 JR西労組アンケート調査では、三人が死亡したことし一月の鳥取県の伯備線事故のように列車との接触事故で「けがをしたことがある」労働者が十一人もいました。「あわや接触事故といった経験がある」が八百八十人、「待避不良」も五百四十人、あわせて四割以上が検査や工事中に危険と隣り合わせだったことがわかりました。
 その原因として、もっとも多かったのが「要員配置」の問題(73%)、ついで「警報など機器のバックアップ」(53%)、「作業工程の時間的余裕」(45%)の順。
 車両の検査・整備などで安全確保に障害となっている理由の第一も「要員が少ない」(54%)、ついで「技術力が低下している」(51%)。
 国労西日本本部のアンケートでも「安全にたいする取り組みが変わっていない」は16%で、「要員不足による業務遂行上の問題がでていることや、技術継承にも要員不足が大きく影響している」(国労西日本本部)と分析しています。
 これらの結果は、国鉄分割・民営化以降、JR西日本がすすめてきた人員削減、効率化の弊害が、公共交通機関の安全を揺るがす深刻な「事故の芽」になっている事実を、現場の労働者の声で裏付けた形です。

問われる再発防止策 国も安全規制緩和の責任
 JR西日本の福知山線脱線事故の直後からJR西と国の責任を追及し、再発防止策を求めてきた日本共産党の穀田恵二国会対策委員長・衆院国土交通委員に聞きました。

穀田恵二衆院議員に聞く
 あらためて亡くなられた方々とご遺族にお悔やみ申し上げるとともに、負傷者の方々にお見舞い申し上げます。一周年を迎え、事故を風化させず、いかにしたらこのような事故を防止することができるか徹底して明らかにすることが重要です。
 日本共産党は当初から一貫して「事故は防げなかったのか」「事故の根本原因は何か」という角度で追及してきました。
 一九八七年の国鉄民営化で誕生したJR西日本は、並行して走る私鉄より速いスピードで集客競争に勝ち、利益をあげることを至上命令にしてきました。車両の軽量化を進め、事故があった福知山線ではトラブルによる遅れを回復するための「余裕時分」なしの快速が三割を占めるまでになっていました。
 そして“「稼ぐ」が第一「安全安定輸送」は第二”―の大阪支社長方針に象徴される、もうけ第一主義の方針に忠実なもの言わぬ労働者をつくるために「日勤教育」を利用してきました。
 一方国は、国鉄民営化以降、安全規制を次々に緩和してきました。
 速度制限型ATSについては、国鉄時代は大手私鉄に設置を義務付ける通達を出していたのに、民営化と同時にその通達を廃止し、JRには設置義務をなくしました。
 ダイヤ変更は国鉄時代の許可制から届け出制になりましたが、国土交通省近畿運輸局は、二〇〇〇年三月からあと九回のダイヤ変更の届け出を列車の走行状態をグラフにした「運転曲線図」と照合せず、安全な運行のための「余裕時分」のあるダイヤかどうかの確認もなく受理しました。
 安全のための基準も事業者まかせになり、JR西では車両などの検査周期の延伸や、検査・修理の外注化も進みました。

実効性問われる安全性向上計画
 事故後、JR西は再発防止策として「安全性向上計画」を策定、実施しています。しかしそれが末端まで徹底されていないことが問題です。
 典型例が今年一月、鳥取県江府町のJR伯備線で起きた事故です。
 ところがこれに先立つ昨年七月、「安全性向上計画」の一環として行われた本社役員との緊急ミーティングで、施設労働者が「伯備線は曲線区間が多い。ヒューマンエラーを一〇〇%なくすのは困難。ハード面でカバーを」と提起しました。本社側は「お金の制約は当然あるが、列車接近警報装置は検討すべきだ」と回答していたのです。
 しかしJR西は装置をつけませんでした。そればかりか、驚いたことには米子支社長は事故後、「『人間はミスをするもの』ということを基本にしたことはなかった」と発言していたのです。私が三月の国土交通委員会で追及した問題ですが、「ヒューマンエラーはおこりうる」という認識を自ら徹底するとした「安全性向上計画」の中心ポイントがおざなりになっていたことが明らかになりました。
 JR西が人員削減計画を撤回していないことも問題です。JR発足時、五万一千人が〇四年度には三万人台へ。さらに〇九年度までに五千人減らす計画です。「安全は人」。人減らしによって利益を上げようとする姿勢を変えない限り、安全第一になりえません。

規制緩和万能の小泉「改革」路線
 運輸の安全をめぐるトラブルが頻発しています。背景には、航空や自動車など一連の規制緩和、コストダウンによるもうけ第一主義を野放しにし、加速させてきた小泉構造「改革」路線があります。政治の要諦(ようてい)は、安心・安全です。いまこそ安心・安全の総点検をおこない、大企業のもうけ第一主義を改めさせるために行政の監視・監督責任を果たさせる必要があります。


2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」

主張
福知山線事故1年
「安全より効率」を改めよう


 二〇〇五年四月二十五日午前九時十八分――。多くの人生が断ち切られ、あるいは暗転しました。
 死者百七人、負傷者五百五十五人にのぼる史上最悪の鉄道事故となった兵庫県尼崎市のJR西日本福知山線脱線事故から一年。事故を風化させることなく、その痛切な教訓を深く受け止め、生かしたいと思います。

「稼ぐ」が第一の風土
 兵庫県の調査では、負傷者の44%に強い心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が出るなど、後遺症に苦しむ人も少なくありません。仕事を失い経済的に苦境に陥った人もいます。事故の傷跡はあまりにも大きいものです。
 半径三百メートルの急カーブに制限速度を三十キロも上回る時速百キロで進入したことによる転倒脱線―事故の直接の原因は、運転士の無謀な運転にあったとされます。しかし、それにとどまらぬ背景や要因が次々明らかになりました。
 ▽余裕のない運行ダイヤや定時運行の強要▽速度を監視し、異常なスピードの列車を減速させるATS(自動列車停止装置)の未設置▽懲罰的な日勤教育など運転士のあせりを生む人的・組織的要因▽車体そのものの軽量化による列車の強度不足―などなど。
 事故でかけがえのない家族を奪われた遺族の願いも、背景にまで立ち入って原因解明を深くすすめることであり、二度と事故をくりかえさない対策を明らかにすることです。
 事故の大きな背景は、JR西の過剰な収益・効率主義でした。日本共産党が国会で明らかにしたように、JR西大阪支社の〇五年度支社長方針が、第一に「稼ぐ」をかかげていたことは、安全より利益を優先する同社の体質の象徴でした。
 国鉄の分割・民営化で八七年に発足したJR西の「経営理念」の前文に「安全」の文字はありませんでした。「同業他社をしのぐ強い体質」をかかげ、大幅な人員削減の一方、安全投資を抑制。競合する私鉄との競争にスピードで打ち勝つ戦略で、危険な列車運行を続けていました。
 JR西は事故後の「安全性向上計画」で、企業の「風土・価値観の変革」をいっています。しかし、国労西日本がおこなった社員アンケート調査では、「計画策定後職場は実際に変わったか」という問いに、七割以上が「まったく変わらない」と答えています。現場の声に耳を傾けた、抜本的な対応が不可欠です。
 この背後で、国が安全への指導を緩めてきたことも重大です。
 政府は六七年に大手私鉄に出したATS設置義務付けの通達をJR発足時に廃止し、JRには義務付けませんでした。鉄道事業法などによる規制緩和で、制限速度も、車両の軽量化もJRまかせにし、行政は違反をとがめません。極端に余裕時分のないダイヤも、認可制でなく届け出制だとチェックをしていません。

命と安全まもる政治を
 いま、規制緩和万能の小泉「改革」の矛盾と破たんが、社会のあらゆる分野で噴き出しています。JR各社で事故やトラブルがあとをたたず、航空業界でも重大なミスが相次いでいます。ルールなき市場競争のなかで「安全より効率」がまかり通っていることが、大きな問題です。
 大量交通機関の安全の確保のために、安全規制、監視・監督を強めることは国の責任です。国民の命と安全を守るためにあらゆる手立てをつくす、まともな政治をつくることこそが、犠牲者の無念に報いるいちばんの道ではないでしょうか。


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