2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

アイフル業務停止命令 全1700店、大手初
違法・悪質取り立て


 財務省近畿財務局は十四日、サラ金大手のアイフル(本社京都市)に対し、貸金業規制法に違反する執拗(しつよう)な取り立て行為をしていたとして、全国で展開する約千七百店舗すべてで業務を停止するよう命令しました。サラ金大手の全店業務停止は初めて。

 同局は五件の規制法違反を認定。発表によると、アイフルの西日本管理センターは昨年五月、債務者の母親が住む実家に督促の書面を送ったり、数回にわたり電話するなど、返済させようと母親の不安をあおり、母親を困惑させました。
 同社カウンセリングセンター九州は二〇〇四年六月、債務者から勤務先への電話はやめてほしいとの申し出を受けたのに執拗に勤務先に電話。愛媛県新居浜店は同年十一月下旬から十二月はじめにかけ、第三者から返済資金を調達するように執拗に求めました。
 同局はこれらの行為が、「私生活、業務の平穏を害する言動で人を困惑」させる取り立てなどを禁じた貸金業規制法に違反すると判断しました。
 また、長崎県諫早店で顧客から委任を受けていないのに委任状を作成し、顧客の公的証明書類を取得。北海道函館市の五稜郭支店では、貸し付け契約を取り消す書面を受け取っていたのに取り立てをした同法違反があったとしました。
 同財務局は、アイフルでは「違反を未然に防止する適切な対応が講じられていなかった」と指摘しました。
 停止期間は違法行為のあった新居浜など三店が五月八日から二十五日間、諫早など二店が同日から二十日間、その他全店舗が同日から三日間。弁済の受領や債権保全に関する業務を除く全業務が対象となります。

共産党質問に首相も「対策を」
 最高裁がこの間、利息制限法(上限金利15―20%)を超える金利を認めない判決を相次いで出すなか、危機感を強めたサラ金業界は、規制強化を骨抜きにしようと政界工作を強めています。自民、公明、民主の各党は、サラ金業界の政治団体にパーティー券や機関誌を購入してもらい、業界の意向を代弁する議員を抱えています。
 日本共産党は、「サラ金被害をなくすために高金利の引き下げを」と関係者とともに一貫して追及してきました。三月十五日の参院予算委員会では、大門実紀史議員が、業界の圧力をはね返して金利規制を実現するよう求めると、小泉首相も「高金利をむさぼる業者に被害を受けないような対策を」と答えざるをえませんでした。


2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

アイフル 悪質な貸し付け・取り立て
借り手「自殺 考えた」


 「アイフル」の全店舗を業務停止――。財務省近畿財務局はサラ金大手に対し、過去に例がない重い処分に踏み切りました。経済・生活苦の自殺者が年間八千人にのぼるなか、増大する多重債務者を自殺にさえ追いやる悪質な貸し付け・取り立てが横行しています。アイフルの取り立ての実態に迫りました。(井上 歩)

 「死んだほうがましかな、楽なんや、と思いました。なぜここまでせなあかんのかと。でも家族あるし、とか思いながら…」
 京都市の自営業の男性(47)は、アイフルに強引な取り立てをされ、金策に走り回ったときの気持ちをこう振り返ります。

「知り合い回れ」
 男性がアイフルからの融資話にのり、自宅不動産を担保に四百万円を借りたのは二〇〇一年。仕事が減ったこともあり、男性は二〇〇三年八月ごろには返済不能になりました。
 同年十一、十二月ごろには、アイフルから厳しい取り立てを受けました。「どこか知り合いのとこへ行け」。夜、アイフル社員が自宅に取り立てにきて、友人知人から借金して返済にあてるように迫りました。男性は、バイクで雪の中を一時間近く走りまわり、友人宅の近くから友人に電話しましたが、借金は断られました。
 「だめでした」
 「もう一度いけ」
 午後十時を過ぎて取り立て人と電話が通じなくなり、男性は帰宅。「手が凍傷気味で、かなりひどくなりました」と男性。当時は家具を売って生活する状態で、自殺を「真剣に考えていた」といいます。男性は結局、自己破産し、いま生活再建中です。
 男性はこういいます。「アイフルのCMで『どうする? アイフル』っていうでしょ。自分がいわれるように感じるんです。『どうする?』って。きついですよ。この会社は許せない。できることなら訴えてやりたい」

7倍以上の請求
 愛媛県の四十代の男性会社員は昨年八月、アイフルの取り立てで精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を求める訴訟を起こしました。アイフルがこの会社員にかけた取り立て電話の内容がテープに記録され、弁護士がそれを公開しました。
 「工面してください。二万五千円。○○さん本当に。本当にちょっと! ちょっと恨み買わんほうがいいですよ、本当に」
 「今日いるんですよって言っているんですよ! お金ができんのは動かないからでしょ! だれが畳の上で寝ていてお金がふってくるんですか! お金を用意してくださいといっているんですよ!」
 二〇〇四年十二月ごろ、会社員は連日、こんな乱暴な言葉で返済を迫られたといいます。アイフルが返済を求めたのは百八十万円。しかし、利息制限法の金利で計算し直した、実際に有効な債務は二十三万円程度でした。
 昨年四月、多重債務問題にとりくむ弁護士らが「アイフル被害対策全国会議」を結成しました。同対策会議は、行政処分の申し立てや提訴、集会を重ね、アイフルの問題を告発してきました。
 その一つの集会で、アイフル元社員の女性が、自分の過去を告白する場面がありました。「多重債務者にも貸せるだけ貸し付け、その先にどうなるかなどみじんも考えることはありませんでした」「体調の悪い日、気分がすぐれない日などはストレスを発散するように顧客に暴言を浴びせました」
 「客が自殺したとの連絡に、最初は目の前が真っ暗になった。その後、幾人もの顧客の自殺の連絡を受けた時には罪悪感もなく、死ぬほど思いつめることはないとしか感じなくなった。一年余りでこれほど人間が変わるのが消費者金融なんです」

高金利を下げよ
 被害対策会議がとりくんだ訴訟提起や集会での告発では、悪質な事例がいくつも報告されました。
 ▽認知症の男性を病院から連れ出し、連帯保証人にした上、男性の自宅に根抵当権を設定。男性側が登記抹消などを求めた訴えをアイフルは認諾。
 ▽神戸市の七十代女性の家を訪れ、女性が「生活保護をもらっていて、お金がない。弁護士にお願いしている」といったのに五千円を取り立て。女性側が提訴。
 ▽入院中の末期がん患者の見舞金を病室から取り立てていったと鹿児島県の市役所職員が集会で報告――。
 同対策会議事務局長の辰巳裕規弁護士は「全店処分されたように、この問題は一店舗一従業員ではなく、アイフル全体が起こしている構造的被害だ」と話します。  貸金業をめぐっては制度見直し議論が金融庁の懇談会ですすめられ、今年中に制度と上限金利の見直しがされます。辰巳弁護士はこう指摘します。
 「アイフルに限らず、消費者金融は経済的に困窮した層を対象に高利・過剰融資をしており、多重債務に陥った人には過酷な取り立てを行うというサラ金『三悪』が、いまもあらたまっていないことを今回の処分は示した。消費者金融は利用者の生活の安定を前提にはじめて社会的に認められるもので、利用者の生活、生存を守る立場から制度設計を考えるべき。まずは高金利の引き下げが急務です」

その実態
・電話で「恨み買わんほうがいいですよ」
・認知症の男性を連帯保証人、自宅に根抵当権
・生活保護を受ける女性から5千円取り立て
・入院中の末期がん患者の見舞金を取り立て

 アイフル 一九七八年設立で東証一部上場のサラ金会社(本社・京都市、福田吉孝社長)。二〇〇五年三月期の貸付金残高は一兆四千七百十七億円、営業利益は三千四百六億円。アコム、武富士と並ぶ大手。グループ企業に信販のライフ、事業者金融のビジネクストなどがあります。融資原資となる借入金先には、住友信託、みずほ信託、UFJ(現三菱東京UFJ)など大手銀行が名を連ねています。米経済誌『フォーブス』の世界長者番付(二〇〇五年)で福田社長および福田家は八十位(日本人二位)に入っており、経営陣は大儲けをしています。


2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

春闘勝利・悪法阻止へ中央行動
2千人集う


 「もうひとつの日本をつくろう」。全労連と国民春闘共闘委員会は十四日、後半戦の春闘勝利、医療改悪法案や行政改革推進法案など悪法阻止をめざす中央行動をおこないました。約二千人が参加し、国会前での座り込みや議員要請、集会、銀座パレードをしました。
 国会前に座り込んだJMIU(全日本金属情報機器労組)エヌシーアール支部の松浦考委員長(56)。「二千円上積みの回答ですが、派遣労働者の時給引き上げを求めています。低賃金で出入りが激しく技術の蓄積も困難です」と話します。
 山口県高教組の船岩充副委員長(48)は「人間の発達を保障するのが教育の使命。その教育基本法に愛国心を盛り込むのは間違いです。しかも米軍基地を押しつけておいて愛国心を語る資格もない」と語りました。
 公務労組連絡会との共催で日比谷野外音楽堂で開いた中央総決起集会では、この日で全県を回った全国縦断キャラバンの報告もおこなわれました。
 あいさつした全労連の熊谷金道議長は「国民に愛情を持てない政府が教育基本法を改悪して愛国心を押しつける。絶対に許せない」と批判。「将来に希望の持てる平和な日本に向け、『もうひとつの日本』をつくる運動を大きく広げよう」と訴えました。
 日本共産党の井上哲士参院議員が連帯あいさつしました。


2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

労災補償 「不支給」取り消して
奈良交通 運転者の遺族が提訴


 奈良交通(本社奈良市)の路線バス運転者・中井頴さん=享年五十六歳=が二〇〇三年十月、乗務中に解離性大動脈瘤(りゅう)破裂でハンドルに覆いかぶさるようにして死亡した問題で、妻の千代子さんは十四日、国を相手取って労災補償の不支給処分を取り消す請求を奈良地裁に提訴しました。
 訴状では同運転者が、月に四、五回しか自宅に帰れない宿直を伴う勤務であったこと、渋滞などで長時間の連続運行を強いられたこと、死亡当日の朝、体調不良を訴えているのに、無理に乗務させられたことなどを指摘。「精神的・肉体的に過重な業務によって、大動脈解離を増悪させ、会社によって救命の機会を奪われたことによって、業務上死亡した」としています。
 会見した千代子さんは「ダイヤ改正のあと、からだが休まることがない状態が続いていた。夫の無念を晴らしたい」と胸中を語りました。中井さんの弁護団は「労災申請、不服審査請求、再審査請求を経て今回の提訴となった。路線バス運転手の労働条件改善になっていくよう、とりくんでいきたい」と話しています。
 奈良交通は〇四年二月に近畿運輸局から、過労運転の防止違反でバス四台を五日間運行停止にする行政処分を受けています。


2006年4月15日(土)「しんぶん赤旗」

大阪高裁 介護者の遠隔配転無効
2労働者勝利判決 “ネスレは命令権乱用”


 大手食品メーカー、ネスレ日本の姫路工場の労働者が、家族を介護しなければならない事情を無視した遠隔地配転の撤回を求めていた裁判の判決が十四日あり、大阪高裁は、会社側の控訴を棄却しました。昨年五月の一審判決に続き、労働者の全面勝利となりました。
 ネスレは二〇〇三年五月、姫路工場のギフトボックス職場の閉鎖を発表。六十人の労働者に茨城県霞ケ浦工場への配転か退職かを迫り、四十九人が退職、九人が配転に応じました。五十六歳の男性は病気の妻を介護し、五十歳の男性も母親を介護していたため、退職はもちろん、配転にも応じませんでしたが、会社は霞ケ浦工場への配転を命令。二人は、姫路工場への立ち入りを認められなくなり、同年十一月、神戸地裁姫路支部に提訴しました。
 一審判決は「配転命令によって受ける不利益が通常甘受すべき程度を著しく超える」「配転命令権の乱用」と会社側を断罪し、配転命令は無効としました。
 今回の控訴審判決は、一審判決を踏襲し、あらためて配転命令は無効とするとともに、会社側が、経営に責任を持たない裁判所が判断すること自体失当だと主張したことについて、「経営権への干渉であるかのようにいう方が失当というべき」だと、さらに厳しく批判しました。
 判決を受けて、五十六歳の男性は「ほっとしました。家族と子どもが心配していたので、喜んでくれると思う。同じような立場の人に希望を与える判決だと思います」と話しました。
 五十歳の男性は「母は三月三十一日に亡くなりました。介護ができることを裁判所に認めてもらったと、母に報告したい」と語りました。


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