2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

単身赴任・未経験業務で過労 自殺男性に労災認定
福岡地裁


 兵庫県姫路市から福岡県筑後市に出向・単身赴任させられて過労自殺した故・金谷亮一さん(当時四十八歳)の妻一美さん(53)が労災認定を求めた訴訟の判決が十二日、福岡地裁(木村元昭裁判長)でありました。木村裁判長は「本件自殺は過重な業務による精神障害の発症によるものと認められる」とのべ、八女労働基準監督署が労災に認定しなかったのは違法として、原処分を取り消し、労災と認めました。
 亮一さんは、鐘淵化学工業(本社大阪、現カネカ)高砂工場から一九九九年、子会社の九州カネライトに出向・単身赴任させられました。長年自信を持っていた石油プラント関連の機械設備の設計管理業務から、未経験の機械のメンテナンスに従事。トラブルが多発し、休日でも呼び出される過重労働のなか、時間外にも新たな技術習得に励み、心理的ストレスから、赴任四カ月後の九九年十二月、自殺に追い込まれました。
 一美さんは判決後、「夫は死の直前まで懸命に仕事して、追い詰められた」と語り、涙で声を詰まらせました。夫の死から六年余。「やっと業務が原因だと認められた。主人にあきらめずにがんばったよ、真相が認められたよと報告したい」と語りました。
 弁護団は「厚生労働省の判断指針に照らしても、行政段階で労災と認められるべきだった。過労自殺認定行政に是正を求める判決だ」とのべました。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

労働時間の適用除外 厚労省がたたき台 労働政策審議会
解雇を金銭で解決


 厚生労働省は十一日、労働者と企業の雇用契約にかんするルールを定める「労働契約法」と、長時間労働の規制にかんする「労働時間法」について、「検討の視点」と題するたたき台をまとめ、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会に提示しました。

 同省の「今後の労働時間制度に関する研究会」などが出した労働法制の大改悪案をそのまま盛り込んだものです。二〇〇七年通常国会への法案提出を目指し、七月には中間の取りまとめをおこないたいとしています。
 たたき台では「(企業側が定める)就業規則によって労働条件が決定されることが慣習として定着している」とし、就業規則をそのまま労働契約として押し付けることを打ち出しています。
 労働条件の切り下げなど契約変更について労働者が争っても強行できる「雇用継続型契約変更制度」、企業側が金を払えば自由に解雇できる「解雇の金銭解決制度」の導入を提示しています。
 有期労働者が契約更新を繰り返し、実質無期限に使われている問題についても「一定期間(一定回数)」まで更新を認める方向を示しました。
 労働時間では、労基法が定める週四十時間の制限などの対象から外し、無制限に働かせる「自律的労働時間制度」の創設を掲げました。
 日本経団連が強く求めている米国の「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の除外)に倣ったものです。
 該当する労働者については「使用者から具体的な労働時間の配分の指示がされないこと」などをあげています。
 また、労働者の過半数が入る組合がない場合、労使の代表が労働条件の変更などを協議する「労使委員会」を設置することも打ち出しました。
 労使委員会は、労働組合と違って法律で保障された権利もなく、多数決で何でも決められます。労働条件の切り下げなどに「お墨付き」を与えることになりかねません。
 この日の分科会では、就業規則について労働者側から「慣習といっても合意などない」「まず労働契約とは何かをはっきりさせるべきだ」などの指摘や、「日程ありきではダメだ。七月の中間まとめを前提にするな」との意見が出されました。
 使用者代表は「エグゼンプションや金銭解決から議論してはどうか」と主張しました。

厚労省「検討の視点」の主な内容

 【労働契約】
▽就業規則について
 ・労働契約の締結や労働条件の変更は、就業規則を周知すれば、就業規則の定めるところとするとの合意が成立したと推定する
 ・過半数労組のない職場に「労使委員会」を設置し、労働条件を協議させる
▽労働条件の変更について
 ・企業内の配置転換と同視できる出向は労働者の承諾は不要
▽「雇用継続型契約変更制度」の導入
 ・契約変更について労働者が争う場合でも雇用を継続すれば実施してよい
▽「解雇の金銭解決制度」の新設
 ・裁判で解雇無効となっても、企業側が金銭を払えば解雇できる
▽有期労働契約について
 ・一定期間(一定回数)は契約更新を繰り返すことを認める

 【労働時間制度】
▽「自律的労働時間制度」の創設
 ・使用者から具体的な労働時間の配分の指示がないなど該当する労働者には労働時間法制を適用しない
▽時間外労働、年休について
 ・一定時間を超えた場合の休日付与、割増賃金の引き上げ、年休の退職時精算


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

実効ある均等法へ
全労連女性部など


 全労連女性部と新日本婦人の会、婦団連の代表は十二日、国会内で日本共産党の小池晃参院議員に、男女雇用機会均等法の実効ある「改正」を要望し、懇談しました。
 「交通運輸や建設関係の現場では、単価切り下げ競争で長時間労働がまん延し、女性が働き続けられない。技術職の女性が三十歳前に次々、辞めている」「自治体職場では、昇格するために試験を受け、合格後は各部署を転々と異動する。女性は昇格・昇進と、結婚、出産との選択を迫られる状況です」などの実情が語られました。
 小池議員は、同党が発表した修正提案の内容と、野党で修正法案の共同提出へ向け協議中であることを話しました。「男女ともに仕事と生活を調和させることができる環境をつくるとともに、均等法自体を現状を変えることができる法律とし、たたかいの武器にできるような法律に『改正』することが必要。そのためにも立場をこえて『一致して実効性ある改正を』の声をあげていきましょう」とのべました。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

女性の地位向上要求
婦団連


 日本婦人団体連合会(婦団連、堀江ゆり会長)は十二日、猪口邦子少子化・男女共同参画担当大臣と内閣府男女共同参画局長に「男女平等・女性の地位向上を求める要望書」を提出し、各省庁担当者から回答を聞きました。各団体の代表十八人が参加しました。
 二〇〇五年十二月に策定された第二次男女共同参画基本計画について、(1)男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革(2)雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保(3)生涯を通じた女性の健康支援など十一項目を要望、堀江会長が「政府は憲法の理念で、施策をすすめていただきたい」とあいさつしました。
 全商連の代表は、所得税法五六条で事業に従事する配偶者や親族への報酬が経費と認められない問題にふれ、「憲法に示されている女性の人権、労働の対価が認められていない」と訴えました。「米作農家の労賃は時給三百七十円。女性はパートに出、家事、介護も。自身の健康をかえりみる間がなく、腰痛や肩こりに加え、めまいやうつも増えている。実態調査実施を」(農民連)、「長時間労働、低賃金の職場で、女性は男性同様に働かざるをえない。仕事と家庭の両立ができず、仕事か退職か悩む若い女性も多い」(建交労)と発言が続きました。
 日本共産党の吉川春子参院議員があいさつしました。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

主張
若者解雇策撤回
規制緩和に突きつけた「ノン」


 フランス政府が、若者の解雇をしやすくすると国民から批判を浴びた「初採用契約」(CPE)の撤回を表明しました。
 年頭にドビルパン首相が突然提案して以来、すべての主要労組と高校生を含む学生団体が反対運動にたちあがり、世論の六、七割が導入に反対してきました。“解雇しやすくして雇用を増やす”という口実を付けた規制緩和の提案に、「ノン」の審判がくだされた結果です。

ルールの勝手な変更
 CPEは、企業が二十六歳未満の青年を雇用する場合、これまで三カ月以内に限られていた試用(見習い)期間を二年間に延ばし、その間は正当な理由がなくても一方的に解雇できるようにするという制度です。
 若年層の失業率が高いというのがその理由ですが、解雇しやすくすれば雇用が増えるという説明は、国民を納得させることはできませんでした。「若者を使い捨てにする」という批判が急速に広がりました。
 批判は若年層にとどまりません。労働者の中からも、これまでの解雇規制が骨抜きになるという批判が高まりました。
 働くものが雇い主の勝手な都合で解雇されないようにするルールは、働くものの権利の中核です。フランスでは長年の運動で、雇い主が無期限(正規社員)契約の労働者を解雇しようとする場合、事前通告や解雇理由を示す義務を課せられるなど、厳しい規制があります。
 財界などからは、「国際競争力の強化」やコスト削減を狙って、雇用・解雇の条件をもっと規制緩和してほしいと、労働力市場の「柔軟化」を求める動きが強まっています。無期限契約の労働者を減らし、有期限(非正規)契約の労働者を増やす傾向は強まっており、二十九歳未満の労働者では、三分の一以上が有期限雇用になっています。
 若年層での解雇規制の緩和が、労働者全体の権利を掘り崩すことになるという批判は、切実で根拠があると国民にうけとられました。
 勝手なルール変更は許さないと、労働組合と学生団体がCPE反対でスクラムを組み、全国的な共同行動を成功させるなかで、国民の中でも反対の世論が急速に広がりました。みずからの問題としてたちあがった若者や労働者は、「歴史的勝利」(高校生連合委員長)、「一致した行動による成功」(労働総同盟全国書記)と評価しています。
 CPE導入にあたってフランス政府は、ドイツの連立政府など世界各国でもこうした規制緩和が広がっていると宣伝しました。しかし、フランスの労働者・国民は、そうした宣伝もはねのけ、規制緩和では雇用は守れないという判断を下したのです。フランス国民のたたかいが、ヨーロッパなど世界的な規制緩和の流れに及ぼす影響も、決して小さくありません。

日本でも安定雇用を
 日本でも雇用問題とくに若者の雇用問題は、日本社会の未来がかかった重要な課題です。小泉内閣は「構造改革」の中で企業が正社員を減らし、パートや派遣などの非正規雇用を増やすのを応援する一方、国際的に遅れた日本の解雇規制などの制度をさらに緩和しようと「労働契約法」などの制定をたくらんでいます。
 安定した仕事・人間らしく働ける職場をという願いは、国を問わず、全国民の願いです。不当な規制緩和を許さず、雇用と権利を守り発展させるために、日本でも力をあわせることがいよいよ大切です。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

仏で勝利のデモ行進
政府のCPE撤回で数千人


 パリからの報道によると、若者の解雇を容易にする新雇用策「初採用契約」(CPE)を仏政府が撤回したことを祝う勝利のデモが十一日、首都パリやトゥールーズなどで行われ、数千人が参加しました。パリのデモには、警察筋によると約二千三百人が、トゥールーズでは二千五百人が参加しました。
 CPE反対運動を進めてきた学生・高校生の組織はこのデモを訴えるにあたって、CPEを盛り込んだ雇用機会均等法第八条が新しい条項に変えられるまで政府に対する「圧力を維持する」よう呼びかけていました。全国学生連合のジュリヤール委員長は「学生は政府がこの数日間やってきたこと、つまり、新しい法案を理解したいと思っている」と述べました。
 仏国民議会社会問題委員会は同日、第八条に代わる新条項案を採択。同日夜本会議で審議を開始しました。
 労働総同盟(CGT)のティボー書記長は、今後は、CPEと同様に解雇を容易にする「新採用契約」(CNE)の廃棄を焦点に運動を進めると語りました。CPEが二十六歳未満の青年を対象にしていたのに対し、CNEは従業員二十人未満の小企業を対象とし、二年間の試用期間に解雇を自由にするものです。
 一方、サルコジ内相は同日、仏ラジオ放送で「フランス人が改革を拒否したとは思わない。提案の仕方がフェアではなかったと思っているのだ」と述べました。パリのデモでは「われわれはドビルパン(首相)を捕まえた。こんどはサルコジだ」と書かれた横断幕も掲げられました。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

社会リポート
高速船事故 衝突時の安全確保に盲点
国と業者に重い課題


 「クジラの責任にするな! 天災じゃなく、人災だ」―。鹿児島県・佐多岬沖で九日夜、高速船がクジラとみられる物体と衝突した事故は、けが人百人を超す大事故となりました。今回の事故でわかった“盲点”は、高速航行で衝突した場合の乗客の安全確保です。公共輸送機関として民間事業者と国に重い課題をつきつけました。(西部総局・佐藤高志、鹿児島県・村山智)

ほぼ全員負傷
 「船が突然、壁に激突したような強い衝撃が体を貫いた」。事故を起こした高速船「トッピー」に西之表市から乗り合わせた六十八歳の男性客は事故の模様を疲れた様子で、こう振り返ります。
 あたりを見渡すと通路やいすにたたきつけられ、うずくまっている人々…。この日、乗り合わせた乗客のほぼ全員が何らかの傷を負いました。
 「幸いシートベルトが命を救いました。むち打ちと顔の打撲、手足の軽傷で助かりましたが…」。男性は、ことば少なに語りました。
 「トッピー」は鹿児島の方言で“トビウオ”の意味。その名の通り海面を飛ぶように時速八十キロ前後の高速で航行します。
 衝突事故を起こした鹿児島商船の森克俊営業部長は、「後ろから足をつかまれた格好で船は急停止した」と説明。何と衝突したのかについては「まだ特定できていない」といいます。
 今年に入ってクジラと思われる海洋生物と高速船の衝突事故はすでに五件目。国土交通省は「クジラなどの海洋生物は海を移動するため、衝突を100%回避することは不可能」と認めます。
 では、衝突時に乗客の安全をどう確保するか。
 船舶関係者の話によると、衝突時の衝撃緩和策として高速船の前方には緩衝装置が置かれ、数トン程度の物体にぶつかった時の衝撃は吸収できる構造になっています。しかし、側面や後方の衝突は“想定外”で後方には緩衝装置はありません。今回の衝突では、後方の衝撃が直接、船室に伝わり大事故につながったとみられます。
 側面や後方からの衝突に対応する緩衝装置の設置について、鹿児島商船は「国土交通省の対策待ち」としています。

抜本的対策を
 一方、国土交通省九州運輸局は、「航行時のシートベルト着用を乗客に周知徹底するようお願いします」とする一枚の通達文書を管内の運航事業者五社に送付しました。
 しかし、シートベルトの着用の徹底も運航事業者によってバラつきがあります。
 今回の事故でも鹿児島商船の担当者は、「シートベルトは係員が巡回して徹底していますが、トイレに立つ人や電話をかける人もいるので…」といいます。乗船から下船までの具体的なマニュアルづくりが欠かせません。
 高速船を運航する八社のうち五社が離島を多くかかえる九州地方に集中しています。今回、衝突事故が起こった鹿児島と種子島・屋久島間を結ぶ定期航路の年間利用者数だけでも、およそ七十五万人。韓国釜山と福岡市を結ぶ高速船「ビートル」(JR九州高速船)の利用者数も増加傾向にあります。
 大量の人員を運ぶ公共輸送機関での安全性の確保は国、事業者の最優先事項です。衝突回避策と同時に、衝突が起こった場合、技術的にどれだけ最小限の人的被害に抑えるのか。抜本的対策が早急に求められます。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

福知山線事故1年 多彩な催し
ボランティア募集


 JR西日本福知山線列車脱線転覆事故から一年にあたる四月二十五日を市民みんなで「追悼と安全」について考える一日にしよう―と取り組んでいる「思いをつなぐ連絡会」は、当日おこなうさまざまな催しを支えるボランティアを募っています。
 二十五日は、福知山線沿線で「空色のリボン」の配布、各駅前に、あの日を思いだし「忘れないで」の思いを伝える「メッセージボード」の設置、阪急宝塚駅コレクション前広場でのコンサートなど多彩な取り組みが企画されています。
 この催しは、市民の力で実施するもので、リボン作成、配布、会場案内など多数の要員が必要です。
 催しが予定されている駅は、新三田、三田(*)、道場、武田尾、西宮名塩(*)、生瀬、宝塚(*)、中山寺、川西池田(*)、北伊丹、伊丹(*)、猪名寺、塚口、尼崎(*)、同志社前(*)。各駅でリボンが配布されます。*印の七駅ではメッセージボードが設置されます。
 当日午前九時からアルカイック大ホール(尼崎市昭和通)で追悼式、夜は同中ホールで「追悼と安全の夕べ」が開かれます。
 思いをつなぐ連絡会事務局=0797(34)7748。


2006年4月13日(木)「しんぶん赤旗」

マイワシ 漁獲低迷
回復の見通しは?


 日本近海のマイワシは、漁獲量が激減したままの状態が十年もつづいており、「このままでは回復しないのではないか」と漁業関係者が心配しています。マイワシ回復の先行的な目安とされる増加率の最新データでも回復していないことがわかりました。
 太平洋側マイワシの漁獲量は、ついに五万トンを割りこみ四万八千トン(二〇〇四年)に落ち込みました。豊漁時の一九八八年は四百四十九万トン。近年は、その百分の一の漁獲量で推移しています。
 とくに深刻なのは東シナ海・日本海側の対馬暖流系のマイワシ。八九年の百九十九万トンに対し〇三年には千百トンまで落ち込みました。

漁業者まかせに
 水産庁漁業資源課では「マイワシ資源の状況は漁業者に知らせている。とくに禁漁にはしていないが、日本海側はあまりに少ないので漁業者も漁獲対象にしていない」と話しています。水産庁は漁業者まかせです。
 回復の見通しはどうなのか―。漁業資源の専門家・川崎健東北大名誉教授は、「回復の兆候はあるのだ」といくつかの事実をあげます。
 例えば、前回増加傾向に転じた時と同様に、マイワシが南下。土佐沖での産卵が確認されています。
 川崎さんは、実際にマイワシが前年より増えているのかどうかの増加率を調べてみました。
 この結果、増加率は一九九五年を境にたしかに上昇に転じたことがわかりました。ところが二〇〇〇年以降は、増加率が再び下降。速報値でもプラスに転じていないことが判明しました(グラフ参照)。
 川崎さんは「今、マイワシの資源はどん底だから、とりすぎれば立ち上がれなくなる」と心配します。カリフォルニア産マイワシが増加に転じたのは、禁漁の成果なのだと説明。「増加率の立ち上がり時期の禁漁は必要なこと。漁業者にしても元も子もなくなるようなことはしたくないはずだ。水産庁は傍観しているだけでなく生活補償も含めて漁業者とよく話し合う必要がある」と強調しています。

過剰漁獲の結果
 川崎さんはマイワシやマサバが立ち上がれないと魚種交代のサイクル(図参照)にも影響すると警告しています。
 マサバの漁獲量は九〇年を境に上昇に転じ、二〇一〇年ころにピークを迎えると予想されたのに九〇年代半ばから下降、立ち上がれない状況が続いています。
 川崎さんは「これはマサバの若年魚の過剰漁獲の結果と考えられる。マイワシへの影響は予測がつかない。自然の摂理である魚種交代サイクルの危機」と強調します。(松橋隆司)

 魚種交代のサイクル マイワシの増減と他の魚の増減にみられる関係。これには図のように二重の関係があります。一つは、カタクチイワシが増えるとマイワシが減るという関係。もう一つは、マイワシが減ると、サンマが増え、次はマアジが増え、最後はマサバという順序関係です。マサバがピークのころマイワシが増え始めます。


◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい

『スパーク』へ意見・コメントを送る