2006年4月11日(火)「しんぶん赤旗」

雇用促進住宅の譲渡 「入居者理解が前提」 小林議員に厚労相
参院決算委員会


 三十五万人が居住する雇用促進住宅が政府の特殊法人改革で地方公共団体に譲渡、廃止されようとしている問題について、川崎二郎厚生労働相は十日、「入居者の方のご理解を得ることは重要」と約束し、現在、地方公共団体への譲渡という話がないことを明らかにしました。
 参院決算委員会で日本共産党の小林みえこ議員の質問に答えました。
 雇用促進住宅は、炭鉱離職者の就労支援を目的に国が一九六五年に設置し、現在は独立行政法人の雇用・能力開発機構が運営しています。
 小林氏は、低所得者層の居住を確保するという雇用促進住宅の意義はなくなっていないと指摘し、譲渡する場合でも、「入居者の理解を十分に得るべきだ」と質問しました。川崎厚労相は「雇用促進住宅が低所得者向けの住宅として一定の役割を果たしてきたことは事実」と認め、「現在、入居している低所得者への配慮は必要」とのべました。
 小林氏は、耐震診断で安全性に問題があるとして住民が退去を求められている大阪府八尾市の別宮団地の問題を取り上げました。同団地住民からは、「耐震補強して住み続けたい」という声がでており、納得できるデータが開示されていません。小林氏がこの事実を指摘し、「強制的退去はあってはならない」と迫ったのにたいし、岡田明久雇用・能力開発機構理事長は、診断のデータは示しているとのべ、データが不十分だという人には「いっそうの説明をしたい」と答えました。


2006年4月11日(火)「しんぶん赤旗」

若者解雇策を撤回 青年・労働者「運動の勝利」
仏大統領


 【ローマ=浅田信幸】フランスのシラク大統領は十日、ドビルパン首相との会談後、若者の解雇を容易にするとして強い反対運動が起きていた新雇用策「初採用契約(CPE)」の撤回を発表しました。大統領は声明で、CPEを「困難にある若者の就職を助ける規定」に「置き換える」決意をしたと表明しました。
 反対運動の一翼を担ってきた全国高校生連合(UNL)のステケル委員長は、「歴史的な反対運動による歴史的な勝利だ」と評価。また最有力労組である労働総同盟(CGT)のデュマ全国書記も、CPE撤回は「労働者と学生・高校生の一致した行動と労組の統一による成功」だと歓迎しました。
 一方、ドビルパン首相は大統領との会談後の記者会見で「青年の側でも企業の側でもCPE実施のための条件が整わなかった」とし、今後の自身の責任は「国民全員が前進」できるよう「わが国の未来を準備する」ことにあると表明しました。
 CPEについては二月の初めから主要な労組すべてと学生・高校生団体がそろって反対を表明し、五度にわたって全国スト・デモを実行。三月二十八日と四月四日には、いずれもデモ参加者が三百万人に達する記録的な規模となりました。
 三月三十一日に大統領はCPEを事実上棚上げし、労組、学生団体、経営者団体との協議で修正法案を作成するよう政府・与党に指示。協議は七日で終了し、結論が待たれていました。

 新雇用策「初採用契約(CPE)」 青年雇用を促進するためとして、労働者を新規に雇用する場合、企業に社会保障負担分の3年間免除などの特典を与える一方、自由に解雇できる「試験採用(見習い)期間」を通常1―3カ月から2年間に延長します。26歳未満の青年に適用。「不安定雇用を拡大する」として労組や学生団体は撤回を求めていました。


2006年4月11日(火)「しんぶん赤旗」

高速船衝突事故
海洋生物との相次ぐ衝突 避けるのが困難な速さ


 高速船とクジラとみられる海洋生物の衝突事故は、対馬沖などでも相次ぎ、今年に入って五件目になります。クジラとすれば、なぜなのか。
 クジラと船が衝突することは、一九九四年に新潟沖で佐渡汽船が衝突、船体に残っていた肉片と、数日後に打ち上げられたクジラの死がいのDNAが一致したことで判明しています。
 今回の一連の事故は、汽船よりもずっと速い高速船のためとみられます。博多港と韓国・釜山を結ぶ高速船が就航したのは、一九九〇年代前半。クジラの研究者は「この船を造る設計の段階で、こういうことが起きると問題になっていた」といいます。
 クジラの泳ぐスピードはせいぜい時速二十ノット(約三十七キロ)といわれています。それに比べ、時速八十キロという高速船は、クジラにとってみれば想定外の速さであり、種類によっては避けることがかなり困難なスピードです。
 クジラが嫌う音を出す装置(一台一千万円)を設置しているといいますが、同じ音の繰り返しでは慣れてしまいます。
 この種の事故が急増している理由に、日本近海でクジラが増えているのではという関係者もいます。水産庁では、「商業捕鯨の全面禁止から、二十年以上が経過しており、クジラ自身が増えているのは間違いない。あの辺だけふえているかどうかは分からないが…」としています。
 確かに、南極海ではミンククジラの急増がシロナガスクジラの頭数回復の障害になっているという研究もあります。
 いずれにしろ、事故を完全に防ぐには、高速船の運航中止しかないという声も出ており、公共交通機関の安全対策を高速船運航会社まかせにするのではなく、国も対策に乗り出すべきでしょう。(宇野龍彦、橋本伸)


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