2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

企業「金余り」87兆円  1年で5兆円増 小泉内閣で急増
家計は現金・預金減少   日銀統計で本紙試算


 民間企業(金融を除く)の手元に残っている「金余り」(余剰資金)が八十七兆三千億円に積み上がっていることがわかりました。国の一般会計予算を上回る規模です。日銀がまとめた資金循環統計の二〇〇五年十二月末速報をもとに本紙が試算しました。

 〇四年十二月末の企業の余剰資金八十二兆円(速報による試算、確報による試算では七十七兆四千億円)と比べ、約五兆円も増加しています。一方、家計の金融資産をみると、現金・預金は減少しています。
 企業の余剰資金は〇一年を境に、膨らみ続けています。小泉内閣(〇一年四月発足)の応援を受けて、大企業が人減らし・リストラで「V字回復」を図る時期と重なります。この間、トヨタ自動車の純利益が三期連続で一兆円を超えようとするなど、大企業は空前の大もうけを記録。その半面、「貯蓄ゼロ」世帯が急増し、四世帯に一世帯となりました。
 企業の空前の「金余り」状況が注目され、賃上げで労働者に還元すべきだとの意見や「法人税増税も選択肢」との論調が経済誌にも登場しました。しかし、〇五年十二月末の統計をみても、企業の余剰金が設備投資や配当、賃金など「前向きな支出に若干回り始めた」(エコノミスト)形跡が読み取れるものの、依然として労働者への還元はわずかです。
 ゆきすぎた法人税減税を見直すとともに、積み上がった余剰金を賃金としてさらに労働者に還元することなど、「大企業にその社会的存在にふさわしい社会的責任と負担」を求める(日本共産党第二十四回大会決議)ことが必要です。
 企業の余剰資金は、第一生命経済研究所主席エコノミストの熊野英生氏の手法を用いて計算しました。


2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

低賃金で夏季休暇もなし
「謝金職員」の実態


 全国の社会保険事務所で年金相談などを行う「謝金職員」(専門的な仕事を行う非常勤職員)の実態が問題になっています。
 約二万九千人の社会保険庁職員のうち非正規は約一万一千四百人、その半分近い約五千人が謝金職員です。ある社会保険事務所の年金相談コーナーでは正規職員一人、謝金職員四人。「年金に関する業務は増えていて、謝金職員は欠かせない」といわれています。ところが、午前八時半から午後五時まで働いても日給七千百円(五年経過すると七千七百円)という低賃金。夏季休暇もありません。
 しかも一部の謝金職員が道理のない処分を受けています。二〇〇四年に国会議員などの国民年金未加入が発覚したとき、個人情報を「業務外閲覧」したとされた社会保険庁職員三千二百七十二人(正規職員も含む)が処分されました。なかには閲覧を否定した人も含まれました。
 今月末には、「戒告」以上の処分を受けた謝金職員のうち百八十四人を契約更新しない「雇い止め」にしようとしています。
 年金保険料の個人情報は、担当する職員が持っているカードを機械に差し込むことで見ることができるため、カードを持っている職員が処分の対象になりました。しかし、社会保険庁が職員にカード管理を徹底させたのは、問題が発覚してから。職員たちは「社会保険庁の責任は重大」との声を上げています。
 「雇い止め」を言い渡された謝金職員は「見ていないのに処分されるのは納得がいかない。カードの持ち主というだけで処分されるのは矛盾している。まるで処分先にありきだ」と言います。この問題は参院厚生労働委員会で日本共産党の小池晃議員が追及。人事院に不服審査請求を提出している職員もいます。


2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

職業紹介 国が責任   厚労相「無料事業は重要」
高橋議員に


(写真)質問する高橋議員=29日、衆院厚労委

 日本共産党の高橋千鶴子議員は二十九日の衆院厚生労働委員会で、公共職業安定所(ハローワーク)の職業紹介事業について、厚労省の認識をただしました。
 高橋議員は、職業紹介事業は、憲法に保障された国民の勤労権、職業選択の自由を直接保障するものだと強調。ILO(国際労働機関)条約の第八十八号(職業安定組織の構成に関する条約)からいっても、身分を保障された公務員でなければならないこと、全国に格差があってはならないことを指摘しました。
 川崎二郎厚労相は、「国が責任をもつスタンスは変わらない。国が全国的なネットワークにより、無料の職業紹介サービスを実施する。雇用保険、職業紹介を一体的にやるという意味から極めて国の仕事として重要だ」とのべました。一方で「ハローワークが基本的な仕事をする前提で、民間委託した方がよい部分は民間開放する」とのべました。
 高橋議員は、四月実施の高齢者雇用安定法が、条文に各企業の実情に応じて基準を設けることを盛り込んだために、多くの企業が何らかの基準を設け、結局、再雇用にあたり、労働者を選別していると批判しました。
 ある社は「献血を二回以上おこなった」「ラジオ体操を意欲的に行う人」など十二項目もあげていることを紹介。定年を引き下げた上に非正規雇用にふりかえるなど、企業に都合のいいように労働条件が切り下げられている実例を示し、「基準が不適切な場合は指導すべきだ」と求めました。
 鈴木直和職業安定局長は「希望する者全員を雇用するのが原則。この趣旨を徹底していきたい」と答えました。


2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

仏・新雇用策
使い捨て自由化 “ノン”   60大学600高校でスト 統一行動300万人
学生・労組 共同のうねり


 フランスで若者の解雇を容易にする新雇用策「初採用契約」(CPE)の撤回を要求する学生・労働者のたたかいが広がっています。二十八日に行われた二月以来四度目になる労組と学生団体との共同行動には、労働総同盟(CGT)の発表によると仏全土で三百万人(パリ七十万人)が参加し、あくまで「CPE撤回」要求を拒否するドビルパン首相を追い込んでいます。(パリ=浅田信幸)

(写真)28日、仏政府の新雇用策撤回を要求する全国ストでパリのデモに参加した若者たち(浅田信幸撮影)

 「CPEは労働法典の根本的変更に手をつけるものだ。初めてすべての企業に、正当理由がないまま解雇する可能性を導入している」―社会問題の専門家であるベルナール・ブリュネ氏は語っています。
 ドビルパン首相が一月半ばに打ち出したCPEは二十六歳未満の若者を対象に、通常一―三カ月の「試用(見習い)期間」を二年間とし、この間、解雇を自由にすることで、企業の採用意欲を高めようという措置です。企業には社会保障費負担分が三年間免除され、新採用者の若者には住宅費融資や契約破棄の場合の失業手当受給資格を有利にする措置も盛り込まれました。
 フランスの二十九歳以下の若者の失業率は23%。ほぼ四人に一人が就職できないという現実が長く続いています。この問題の解決にドビルパン首相は、規制を緩和し市場に任せれば雇用は増えるとする新自由主義的な発想に基づき「二年間の解雇自由」という前例のない措置を打ち出したのです。

続く全国行動
 「若者だからという理由で二年間、経営者の勝手放題の解雇が認められるCPEが押しつけられるのは、若者への差別であり、若者を使い捨て労働者にするものだ」と、全国高校生連合(全高連)のステケル委員長は怒りの声を上げました。また労働者の権利を切り下げ、「不安定雇用を制度化するもの」として、労組もそろって反対を表明。最有力労組のCGTは「現代の奴隷制」とまで非難しています。
 CPEの提案直後から、学生団体と労組との共同闘争が組まれてきました。CGTをはじめ六労組と全国学生連合(仏全学連=UNEF)、全高連が一月二十四日、共同して「CPE撤回」を統一スローガンに、二月七日の全国統一行動を呼びかけたのが始まりとなりました。
 以来二カ月間に、労働者と学生の共同した全国行動は四回。ほかにCGTが単独で呼びかけ、学生たちが合流した全国行動一回、学生・高校生が呼びかけ、労働者も加わった全国行動が三回と、毎週のように全国的なデモが行われています。労学共同の行動を見ると、二月七日の第一波四十万人、三月七日の第二波百万人、同十八日の第三波百五十万人(いずれも主催者発表)と回を追うごとに参加者数も増加しています。この間、全国八十四大学のうち六十を超える大学で、また四千三百の高校のうち六百を数える学園で、学生ストや占拠・封鎖が広がりました。

「撤回」68%に
 世論調査を見ると、一月末には「若者の失業を減らす」と回答した人が過半数で、CPEに理解を示す人が多かったのですが、三月半ばには「CPE撤回」が68%になり、学生たちの行動への「支持」と「共感」も63%の高率に達しています。学校父母会も「子どもたちの明るい未来のために」と学生や高校生の行動に支持の立場を明らかにしました。

手法にも批判
 CPEへの批判は内容ばかりでなく、首相の手法にも向けられています。慣行となっている労組代表らとの事前協議を無視し、国民議会(下院)では審議打ち切りと表決なしの法案採択という憲法にもとづく政府の例外的強権を発動したことがそれです。
 このため「街頭デモより交渉を」の“改良主義組合”といわれる民主労働連盟(CFDT)も、はじめから「CPE撤回」を求めて共同行動に加わり、この期に及んでドビルパン首相が呼びかける「対話」にも「撤回が前提条件だ」との姿勢を崩していません。
 ドビルパン首相は来春の大統領選挙を視野に入れて「行動する指導者」として、CPE実施に政治生命をかけているともいわれます。「譲歩しない」その姿勢が保守支持の有権者の間で74%という固い支持を得ているのも事実ですが、二十八日のデモに示されたように、日を追うごとに世論の間で孤立を深めています。


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