2005年2月19日(土)「しんぶん赤旗」
経団連 なぜ!? 武富士「処分」解除
盗聴、違法取り立て 「反省ないのに」と被害者
日本経団連が会員企業であるサラ金大手「武富士」の活動自粛処分を解除していたことがこのほどわかり、同社による盗聴事件や悪質商法の被害者、弁護士らから強い批判の声があがっています。盗聴事件で前会長が有罪判決を受けた後も違法な取り立て業務などの問題が続き「反省がない」という声が強く、「自浄作用がない」と日本経団連を批判しています。
経団連会館=東京・大手町
日本経団連は2003年12月、盗聴事件での同社の武井保雄前会長の逮捕を受け、同社を「とりあえず」経団連活動の自粛処分としました。自粛処分は6段階ある処分のうち、除名、退会、会員資格停止に次ぐもので、奥田碩会長は「除名も考えている」とものべていました。
しかし、その後、何の追加処分もないまま、ことし1月26日付で武富士の活動自粛処分を解除しました。「武富士は企業倫理確立に向けた取り組みをすすめている」(日本経団連広報グループ)と理由を説明しています。
盗聴被害者のジャーナリスト・山岡俊介さんは「追放した、という話じゃないかと耳を疑いました」と驚きます。
盗聴事件で警視庁の家宅捜索をうける武富士本社=2003年12月、東京・新宿区
山岡さん宅を盗聴した武井前会長や法人としての武富士も昨年11月に有罪判決(確定)を受けたばかりです。山岡さんは「トップの有罪で処分せず、じゃあ一体何をやれば除名になるんでしょうか。会長企業のトヨタからして、いろいろな問題を抱えているので処分できないのではないのか」と指摘します。
弁護士らでつくる「武富士対策連絡会議」(代表・宇都宮健児弁護士)も抗議声明(15日付)を発表。同会議は、刑事裁判で検察官から盗聴とのかかわりを指摘された武井健晃氏(武井前会長二男)が代表取締役にとどまっていること、昨年12月にも違法な取り立て業務に関係して東京・錦糸町支店が業務停止処分を受けたことなどを指摘し、「武富士で企業倫理確立に真摯(しんし)な取り組みがされていないのは明らか」だと批判しています。そのうえで、「財界全体に自浄作用がないことを表しているといわざるをえない」としています。
サラ金被害者の相談・救済活動にとりくむ大阪市の「いちょうの会」の田中祥晃事務局長(全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会副会長)は、「財界自身が腐っていることの表れでしょう」と批判します。
田中さんによると、武富士の相談はいまも多く、大手のサラ金が無担保で200万円までの貸し付けを始めるなど、顧客数が伸びないなか貸付残高を維持するため融資額を増やしており、貸金業規制法で禁じられている過剰融資(50万円または年収の10%を超える融資)が横行しているといいます。田中さんは「金融庁も、貸金業登録を抹消するに値する組織ぐるみの犯罪をやった企業を処分していない。政府の甘さが影響していると思います」と指摘します。
2005年2月19日(土)「しんぶん赤旗」
主張
裁量労働制 年60万円もただ働き
日本IBMに是正指導 JMIU申告受け労基署
米IBM社の100%子会社で、情報通信大手の日本IBM(本社・東京)が3分の1の労働者に導入した裁量労働制について、労働基準監督署から厳しく指導を受けています。これまでもサービス残業(ただ働き)問題で指導された“前歴”がある同社。全日本金属情報機器労組(JMIU)日本アイビーエム支部は「無法をやめ、働くルールを確立せよ」と運動しています。
原田浩一朗記者
ビラを配るJMIU日本アイビーエム支部の組合員=1月21日、神奈川県大和事業所前
「際限のないただ働き残業をねらったものだという私たちの主張が通りました」。門池二次雄さん(57)は話します。同支部の裁量勤務制度対策委員を務め、改善運動の先頭に立ってきました。
裁量制は、実際の労働時間に関係なく、労資であらかじめ合意した時間を働いたものとみなして賃金が支払われる仕組みです。日本IBMでは、非民主的な選挙で選出された労働者代表と「労使協定」を結び、昨年3月から、約2万人の労働者の3分の1に当たる約6400人のシステムエンジニア(SE)に裁量労働制(専門業務型)を適用しました。
門池さんらは、SEの労働実態を丹念に調べました。ほとんどの労働者がプロジェクトの一員として仕事をしており、仕事のすすめ方について裁量の余地はないことが明らかになりました。
深夜まで勤務
「裁量制でSE1人平均月5万円、年間60万円の残業代が吹き飛んでしまう。会社側に事実を突き付け、団体交渉で追及した」と門池さん。
交渉で当初、裁量制の適用対象者とされた47人の組合員のうち、41人には適用させない成果を上げました。裁量制の実施以降も、出・退勤時間を記録し、ただ働きの強要は許されないとよびかけてきました。
Mさんは、顧客のシステムの開発・運用にかかわるプロジェクトの一員として、顧客の職場で勤務しています。チーム作業のため、個人の裁量で仕事を進めることは不可能です。トラブルへの対応もあって、深夜まで勤務せざるを得ないことがしばしば起こりました。
04年3月から9月までの7カ月間で、282時間余、金額で42万8千円の残業代が未払いとなっていました。
Kさんは、顧客のシステムの運用、保守、開発のプロジェクトの一員です。突発的なトラブルに対応するため、顧客のシステムの稼働時間帯は常時勤務せざるを得ず、裁量の余地はありません。04年4月から9月までの半年間で240時間余、31万6千円が残業代未払いでした。
支部は、未払い残業代を支払うよう要求。労基署にも申告し、労基署が会社を指導しました。追い詰められた会社は、Kさんを昨年10月から、Mさんを同12月から、裁量制適用対象者から外さざるをえませんでした。Kさんの昨年6月から9月までの未払い残業代を支払うと答えました。
大歳卓麻社長は4日、「適切な勤務時間管理および長時間勤務の防止の観点から」「勤務の実態にのっとり、正確に勤務時間を記録・申告してください」とした電子メール(別掲)を社員に出しました。
門池さんは「勤務時間をきちんと記録して迫れば、会社も是正に応じざるをえないということがはっきりしました。ただ働きの強要となる裁量制をやめさせるためにがんばります」と話します。
是正がすすむ一方で、運動に冷水を浴びせる動きが強まっています。
法改悪ねらう
政府は、今国会に労働時間を年1800時間に短縮する目標を掲げた「時短促進法」を廃止し、時短の数値目標を降ろして「事業主の自主的な努力」に委ねる法改悪をねらっています。ホワイトカラー労働者の労働時間を規制の対象外にして、青天井で働かせることができるホワイトカラー・エグゼンプション制の導入も検討しています。
同支部は、政府・財界の動きのねらいや本質を明らかにし、すべての労働者を対象に支部の職場新聞「かいな」を届け、運動を強化していくことにしています。
大歳社長が社員に出した電子メールから
裁量制の労働者が「恒常的に業務量が多く、個人では解決ができない」「管理目標時間を超えていることを理由に、申請した時間外勤務を受け付けてくれない」「自己の裁量による勤務時間の配分ができない環境にあるにもかかわらず、裁量勤務が適用されている」などの問題がある場合で、所属長に相談しても有効な改善策が取られないときは、直接、経営陣に問題提起する「オープンドア」や「スピークアップ」の制度を活用するようよびかけています。
2005年2月19日(土)「しんぶん赤旗」
自民・中山氏 “国民投票法案は年内成立” 改憲共同 民主を評価
中山太郎衆院憲法調査会長(自民)は18日、都内で講演し、九条改憲を狙った国民投票法案について「年内には国民のみなさんの主権者としての権利は保障されてくる」とのべ、年内成立に自信を示しました。民主党の枝野幸男調査会会長が17日の衆院憲法調査会で同法案に積極姿勢を示したのを受けた発言です。
中山氏はまた、「(5月の)連休前までに憲法調査会の最終報告書を出す」と表明。
衆院憲法調査会に法案審議権をもたせる国会法改定も「自公民が一致してやっていくから、必ず成立する」などとのべました。
枝野氏が、政権交代に関連して「政権がどちらの側にあったとしても共通のルールを憲法で規定する」と発言したことについても、中山氏は「日本の歴史を変えるようなものすごい発言だ」と称賛。「自民党や公明党だけでは改憲はできない。民主党がここまで動いてきた。公明党は加憲という立場。自民、民主、公明の共通項をどうするかという問題がこれからのわれわれの政治の舞台で大きな問題になる」と、自公民3党による共同改憲へ強い意欲を示しました。
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