2006年3月21日(火)「しんぶん赤旗」

長崎・終結宣言 三井松島じん肺訴訟
謝罪し和解金30億円


 長崎市の池島炭鉱(旧長崎県外海町、二〇〇一年閉山)などで働き、じん肺にかかった元従業員や遺族らが、三井松島産業と松島炭鉱に対し、加害責任を明らかにし、謝罪と補償、じん肺根絶への取り組みを求めて起こした「三井松島じん肺訴訟」「西日本石炭じん肺訴訟」で二十日、それぞれ和解が成立。原告らは全体で二百六十四人、和解金は約三十億円余りです。
 原告、被告の関係者によって長崎市で「三井松島じん肺問題終結共同宣言」が調印されました。解決を待たず、亡くなった十七人の原告の遺影を最前列に、原告や支援者ら二百三十人が見守りました。
 席上、三井松島産業の米澤祥一郎社長は、「じん肺患者・ご遺族のみなさんに心から弔意とお見舞いを申し上げます。裁判で多大の負担をかけました」と謝罪と遺憾の意を表し、今後のじん肺防止を誓約しました。
 三井松島じん肺訴訟弁護団の熊谷悟郎団長は、「(被告は)いったんは和解を拒んだが、その後の長崎地裁判決(昨年十二月)を重く受け止め和解決断したことに敬意を表する」と評価、「『宣言』の誠実な履行」を求めました。
 引き続いて開かれた、三井松島じん肺訴訟原告団と弁護団、全日本建設交運一般労組長崎県本部による「全面解決報告集会」。井上久男原告団長は、「人間の尊厳をかけたたたかいだった。勝利は多くの支援者や弁護団との力の結集によるもの」とあいさつ。いまもたたかわれているじん肺訴訟勝利とじん肺根絶に積極的に取り組む「声明」が読み上げられました。


2006年3月21日(火)「しんぶん赤旗」

“空の安全”に役立つ ニアミス 管制官無罪判決
関係者ら「高く評価」


 「無罪」の垂れ幕を掲げた支援者が飛び出してきた瞬間、緊迫した空気に包まれていた東京・霞が関の東京地裁前は、一瞬にして拍手と喜びの声でわき上がりました。「よかった、よかった」と肩をたたき合い、涙する人も。「個人責任の追及では航空事故はなくならない」と書いたゼッケンを着けた支援者たち。二十日、日航機ニアミス事故の判決に、乗務員や管制官などの航空関係者ら約百五十人が駆けつけました。
 判決後、弁護団と業務上過失傷害罪に問われた二人の管制官が司法記者クラブで会見しました。
 事故の負傷者への謝罪と反省の言葉の後、判決への感想をのべた二人。蜂谷秀樹さん(31)は、この間、同様の事故が起きないよう技術的な改善がされてきたとして、「この判決が、さらなる航空の安全に寄与すると思う」と語りました。
 籾井(もみい)康子さん(37)は「うれしいというより感動した。二度とこういう事故が起こらないと確信している」。赤く目をはらし、時折、言葉をつまらせた籾井さん。二人の顔に笑みはないものの、「管制官の仕事に戻りたい」と語りました。
 主任弁護人の鍜治伸明弁護士は「私たちの主張がほぼ全面的に認められた。納得のいく判決です」とのべました。
 裁判を傍聴したパイロットの男性(56)は「個に責任を押しつけるのはあまりにも酷だと思っていた。仲間も皆、喜んでいる」と語っていました。
 裁判を支えてきた全運輸労働組合(全運輸)は同日、安藤高弘書記長名で談話を発表。複合的要因による「システム性事故」であるにもかかわらず、責任を管制官個人に負わせ刑事責任を追及してきた検察を批判。無罪判決を「高く評価する」として、「検察は事故の再発を防止し、国民の生命と財産を守る観点から控訴を断念すべきである」とのべています。
 同日夕、全運輸は判決報告集会を日本弁護士会館で開きました。

 TCAS(航空機衝突防止装置) 航空機同士の衝突を防止するための機器。自機の周辺を飛行中の航空機と電波を送受信し、相手機の方位、距離、高度などを自動的に計算します。衝突の危険がある約四十秒まえに接近警報(TA)を発し、約二十秒前に上下方向に緊急回避(RA)を指示します。


2006年3月21日(火)「しんぶん赤旗」

ニアミス 管制官無罪判決
解説
刑事裁判になじまず 背景要因の改善こそ必要


 航空機の運航は、さまざまな部門のシステムで成り立っている業務であり、管制という一部門のヒューマンエラーだけを刑事事件で問うこと自体、なじまない性格を持っていました。管制官が意図的に誤った指示をしたという事案ならともかく、事故発生時の作業環境に応じた人間の能力の限界について考慮しなければならない問題を抱えているからです。
 被告弁護団や航空安全推進連絡会議は、事故原因は「複合的要因によるもの」とし、運航の安全全般にかかわる“システム性事故”における過失を最大の争点としてきました。
 例えばTCAS(航空機衝突防止装置)は、互いの航空機が交差(衝突)する約二十秒前に、上下いずれかに緊急回避を指示する警報(RA)を発します。このTCASの作動や指示はシステム上、地上の管制官には乗員から連絡を受けない限りわかりません。
 乗員の方もニアミスの対応に追われて管制官に通報する余裕がありません。従ってTCASの指示を知らない管制官は、TCASと相反する指示を出してしまう場合もあります。
 このニアミス後、国土交通省は管制官にTCAS情報をリアルタイムで流す必要があるとしました。が、システム上の改善はなく、従来通りのままです。乗員については原則TCASの指示通りに従うことだけが決まりました。
 しかし、飛行高度や機種によって、航空機の運動性能は差がでます。
 このため、TCASの指示通りに従うことがかえって危険を伴う恐れがでてきます。今回のニアミス事故のように、機長の判断に委ねることで危機を回避できる場合もあります。判決がTCASの特性と限界を踏まえて予見性を否定したのは当然といえます。

 不幸にして発生したニアミス事故によって、管制部ではCNF(異常接近警報)が直線では従来の一分から三分前に改善されました。しかし、その一方で管制官を四年間で百七十人余を削減する計画が進行中です。一人で十数機を受け持たざるを得ないような過密業務の改善やヒューマンエラーを発生させやすい背景要因を少なくすることが運航の安全に寄与する道です。(米田 憲司)


2006年3月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張
高金利引き下げ
社会の「落とし穴」ふさごう


 自殺や自己破産者の増加など深刻な社会問題の背景になっている消費者金融(サラ金・クレジットなど)の規制を求める論議がひろがっています。最高裁は消費者の保護を重視する判断を相次いで下し、金融庁もこれを受けて、六月までに結論を得たいとしています。
 消費者金融の高すぎる金利の被害を根絶するために、暴利を規制する制度を早急に実現する必要があります。

グレーゾーン金利
 貸金業者の暴利を規制する法律は二段構えになっています。利息制限法は年15―20%を上限金利と定めていますが、罰則はありません。刑事罰がある出資法の上限金利は年29・2%です。この間の金利は「グレーゾーン(灰色)」と呼ばれます。貸金業規制法は、利用者が自分の意思で払うなどの条件で、“灰色”金利を有効としています。消費者金融はほぼ上限いっぱいで貸し付けており、グレーゾーンが高利を押し付ける仕掛けになっています。
 消費者金融業界の統計からは「一人あたりの借入額百四十五万円、借入先三・三社」という平均的利用者像が浮かびます。約三割の金利では、年間五十万円近い利息を払うことになります。高利に返済が追いつかず、借金が膨れ、複数の消費者金融を利用して返済困難に陥るというのが常態化しています。「破産予備軍」といわれる多重債務者も二百万人にのぼります。
 普通預金の金利がほとんど0%という異常な超低金利のなか、消費者金融はわずか1―2%の金利で大銀行から調達した金を25―29・2%の高金利で貸し付けます。まさに暴利としかいいようがありません。銀行や保険会社がもつ国民の貯蓄が、消費者金融会社にまわり、結局、国民に貧困と格差を広げています。
 銀行は、直接にも、消費者金融に手を出しはじめています。三井住友銀行―プロミス、三菱東京UFJ銀行―アコムと、大銀行が次々、大手サラ金を傘下におさめています。銀行系クレジット会社も高利の個人向けカードローンを拡大しています。グレーゾーンの異常な高金利で不当な高収益をあげる消費者金融を、グループ内に組み込んでいます。巨額の公的資金を受けた銀行の特別な社会的責任からも許されません。
 消費者金融の被害者、救済に取り組む団体、消費者団体は、少なくともグレーゾーンを無くすこと、さらに上限金利を適正な水準に引き下げることで、被害を根絶すべきだと強く要求しています。日本共産党の大門実紀史参院議員の質問(十五日)に、小泉純一郎首相は「高金利をむさぼっている業者に被害を受けないような対策を講じなければならない」と答えました。政府は、異常な高金利の被害を断つ、実効ある上限金利規制にふみだすべきです。

暴利を絶て
 消費者金融業界は、異常な高収益を支える高金利の「既得権益」を守ろうと激しく抵抗しています。出資法上限金利の引き上げ、グレーゾーン金利の適用条件緩和、はては「金利規制を廃止し、市場メカニズムに委ねるべきだ」と、その主張には際限がありません。
 業界をあげて自民党への献金攻勢をかけ、政界への働きかけも強めています。こんなことで政策が曲げられるなら、国民は救われません。
 高金利被害は、国民のだれもがいつ落ち込んでも不思議でない、日本社会に開いた「落とし穴」です。それをふさぐ改革は待ったなしです。


◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい

『スパーク』へ意見・コメントを送る