2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」

底流・ほん流
均等待遇の実現めざす


 「正規職員と同じ仕事をしていながら差別を受けている。均等待遇が実現したらどんなにいいことか」―。
 連合が先月十七日に東京都内で開いた「パート労働者の集い」で、労働者が切々と訴えました。賃金のみならず有給休暇、交通費も支給されない差別的取り扱い、いつ「雇い止め」されるかしれない不安定な雇用実態を告発しました。

男女間格差も
 「すべての労働者に均等待遇を!」のスローガンを掲げたこの集会には、パートなど非正規労働者約五百六十人が参加しました。
 同日、全労連や法曹・女性団体でつくる労働法制中央連絡会は、男女雇用機会均等法の実効ある改正をさせようと「学習決起集会」を開きました。ここでも「正規、臨時職員、非常勤とみんな同じ仕事内容なのに賃金の格差がありすぎる」との報告が多数ありました。
 21世紀職業財団の調査(対象二千八百二十一事業所)によると、正規労働者と同じ仕事をするパート労働者に同じ賃金(基本給)を支払っている事業者は一割しかありません。賃金水準では52・8%の事業所が八割以下と答えています。
 民間だけではありません。政府や自治体の職場でも嘱託・非常勤職が急増し、半数が非正規の職場も出ています。
 厚生労働省の調査(〇四年)では、男性パート労働者の時間当たりの賃金は千百十二円で男性一般労働者の50・6%、女性パート労働者はそれぞれ九百四円で45・2%。女性の場合、正規とパートの格差に加えて、男女間格差との二重の格差を強いられています。
 ヨーロッパでは同じ仕事をすれば、時間当たりの賃金は正規もパートも同じ「均等待遇」が常識です。日本では一九九三年にパートタイム労働法がつくられたものの、「通常の労働者との均衡を考慮して」というあいまいな内容で、しかも努力義務であるため、賃金格差を是正する行政指導がおこなわれていないのが現状です。
 小泉「構造改革」路線のもとで非正規労働者への置き換えがすすみ、今や三人に一人が非正規労働者となり、千六百万人を突破。女性や若者は二人に一人が非正規です。貧困と格差拡大がすすむなか、非正規の待遇改善をはかることは国民的意義をもっています。

組織率復元へ
 しかも正規の非正規への置き換えが急速にすすむもとで、組合の組織率は18・7%まで落ち込んでいます。「労働運動を衰退の道から救うためには、組織率の復元をはかるしかない」(連合の高木剛会長)という危機的な状況に追い込まれています。
 非正規労働者を視野に入れた組織化と待遇改善を実現できるかどうか、労働組合の役割と存在意義が問われています。
 連合は〇六春闘で初めて「パート共闘」を立ち上げました。現在、十五産別が参加しています。「パートだから」という考え方に起因する差別的取り扱いを排除し、労資交渉によって、パート労働者などの均等・均衡待遇の実現をめざすとしています。

賃上げを要求
 時間給の改善では、時間当たりの賃金を1%または十円以上の引き上げを要求しています。
 全労連は以前からパート臨時労組連絡会を立ち上げ取り組んできました。「今年こそすべての労働者に賃上げを」と、全国一律最賃制度の確立をはじめ、最低賃金の統一要求基準として、「月額十五万円、日給七千四百円、時間給千円以上」を掲げています。
 「かつてはパートは家計の補助的な収入源だったが、今では多くが主たる収入源になっている。その意味でも均等待遇は当然の要求です」と同連絡会の井筒百子事務局長は話します。
 二極化と格差拡大が顕在化するなか、均等待遇の実現をめざした取り組みは、労働運動の立場の違いを超えて大きくひろがり、〇六春闘最大の特徴になっています。

10日に集会
 全労連は、均等待遇を求める統一行動として、十日午後零時十五分から東京・千代田区の日比谷野外音楽堂で「06春闘3・10青年・女性・パート決起集会」を開きます。全国各地の民間や公務職場から参加し、企業や各省庁との交渉・要請などをおこないます。


2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」

パート消防士の差別は違法 英最高裁判決
他職種での是正に道


 【ロンドン=岡崎衆史】英国の最高裁に相当する上院の上訴委員会は一日、非常勤消防士に常勤消防士と同じ年金や病欠手当を認める判決を出しました。
 同種の労働に従事する非常勤消防士が常勤消防士と比べて差別されているとの非常勤消防士の代表十二人と消防士組合(FBU)の訴えを認めたもの。
 原告側は「六十年間の差別終結に道を開く」として判決を歓迎し、他の職種でも同様の差別是正が行われることに期待を示しました。
 英国では二〇〇〇年七月、「パートタイム労働規則」が施行され、非常勤労働者に常勤労働者と同じ権利が認められたものの、非常勤労働者が同等の常勤労働者を特定する比較の基準が不明確なため差別が横行。裁判では、非常勤消防士の雇用条件が常勤と比較しうるのかどうかが焦点となっていました。
 全英に約一万五千人いる非常勤消防士は、ほかの仕事を持つが、消防署の近くに居住、勤労することが条件とされ、週百二十から最大百六十八時間を待機時間として非常呼集に応じる義務があります。
 原告は、非常勤消防士が常勤と変わらない過酷な条件で働いているにもかかわらず、常勤消防士の年金制度から締め出されていることや病欠手当に格差があることを挙げ、違法と指摘。上訴委員会の判決は、非常勤消防士の雇用が常勤と同じ「種類」の契約に基づくと認め、原告の主張を受け入れました。
 消防士組合のマット・ラック書記長は同日、「六十年間の差別終結に道を開く非常に重要な判決だ」と歓迎。同労組のリチャード・アーサー弁護士は、「この裁判は数多くのパートタイム労働者に影響を与えることになる」とし、判決がさらに多くの非常勤労働者の差別是正につながることを期待すると述べました。


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