2006年3月1日(水)「しんぶん赤旗」

「持ち帰り残業」は業務 北洋銀行 過労死訴訟で認定
札幌地裁


 業務中に倒れ、亡くなった北洋銀行野幌支店(北海道江別市)の営業課長・斉藤久江さん(二〇〇〇年七月死亡)=当時(56)の夫、斉藤幸雄さん(一月三十日急逝)が、「妻の死は過労死」と訴えていた「北洋銀行斉藤過労死裁判」で札幌地裁は二十八日、原告の主張する持ち帰り残業を業務上と認め、「斉藤久江さんは過労死である」との勝利判決を下しました。
 この不幸な事件は、一九九七年十一月に北海道拓殖銀行が経営破たん、翌年十一月に北洋銀行が営業譲渡することになり、二〇〇〇年五月に旧拓銀のコンピューターシステムに統合させるという短期間の難事業を遂行する過程で発生しました。裁判の焦点は、久江さんが、システム統合のためのマニュアルを覚えるため資料を持ち帰っていた、いわゆる「持ち帰り残業」を業務の延長、労働時間と見なすかどうかでした。
 伊藤誠一弁護士は、閉廷後の記者会見で、「持ち帰り残業を認定基準の月四十五時間を超える残業と認め、総合的に考えると業務による死亡だという画期的な判決だ」と述べました。


2006年3月1日(水)「しんぶん赤旗」

保険金を遺族補償に 口頭弁論で原告主張 来月11日に最高裁判決
「団体定期」訴訟


 企業が従業員に掛けた団体定期保険をめぐり、遺族が保険金の引き渡しを求めた二つの訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二十八日、遺族側と会社側の双方から意見を聞く口頭弁論を開きました。

 二つの訴訟は、いずれも住友軽金属工業(本社・東京都港区)に働き亡くなった社員の遺族が同社に保険金の引き渡しを求めて争っているもの。両訴訟の判決は高裁段階で遺族側勝訴と敗訴に分かれており、同時に弁論が開かれたことで、最高裁が初の統一的な判断をする見通しになりました。
 口頭弁論では、原告代理人の水野幹男弁護士と岩井羊一弁護士、原告を代表して近藤弘子さん(58)がそれぞれ陳述。
 水野弁護士は「従業員の死によって、企業が保険金を得るという異常な事態に対して、最高裁が断固たる判断を下すか否か、国際社会が注視している」とのべ、「きぜんたる判断を国の内外に示されることを切に願っている」と訴えました。
 近藤さんは「団体定期保険を名実ともに遺族補償とする判決を下していただきますよう、心からお願い申し上げます」と結びました。
 団体定期保険は、従業員が死亡した際に企業が遺族の生活補償のために掛けるもの。実際には企業側が保険金の大部分を受け取るケースが多く、遺族側から「不当」だとして、各地で同様の訴訟が起きています。
 近藤さんが約六千七百万円の支払いを求めた訴訟では、一審・名古屋地裁判決が「一定部分を遺族に支払う合意があった」と認定し、約千七百万円の支払いを命じましたが、二審・名古屋高裁は「合意はなかった。会社が不当な利益を得ているわけでもない」として、請求を棄却しました。
 川本信子さん(60)ら三人の遺族が計約一億八千三百万円(一人当たり約六千百万円)の支払いを求めたもう一つの訴訟では、同地裁、同高裁ともに、「遺族補償として社会的に相当な額を引き渡すべき」だとして、計約五千六百万円の支払いを命じていました。
 同社は、団体定期保険を一九七三年に導入して以来、百二十人以上の従業員が亡くなり、五十五億円の保険金を取得しています。二十三年間も加入の事実を従業員に知らせずにいました。
 最高裁判決は四月十一日に決まりました。初の判断が注目されます。


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