2006年2月18日(土)「しんぶん赤旗」
主張
06国民春闘
労働組合運動前進の第一歩に


 民間大企業労組も数年ぶりに賃上げ要求をかかげるなど、今年の春闘は新たな様相を示しています。
 賃金が七年連続切り下げられる一方で、大企業は三期連続で最高益を更新し八十三兆円もの余剰資金をかかえているもとで、労働組合の存在意義が問われているからです。

■全労働者を結集し
 財界・大企業が「国際競争力論」などをタテにきびしい賃金抑制の姿勢を崩していないもとで賃上げをかちとるためには、なによりすべての労働者のたたかうエネルギーを結集することが大事です。
 まず、長期にわたる賃下げ・労働強化・雇用破壊と税制・社会保障改悪によって、貧困と労働苦、社会的格差の広がりが重大な社会問題となっていることを、職場の共通認識にすることです。マスコミも連日のように取り上げています。
 全労連は、「青年、女性、非正規に光をあてる春闘」を呼びかけています。連合もパートの均等待遇と時給の引き上げを要求しています。両者とも最低賃金闘争、国や自治体が発注する事業でのまともな賃金、下請け中小企業との公正な取引による賃金の改善を重視しています。
 二つのナショナルセンターが共通して重視しているすべての労働者の賃金の底上げは、日本社会の格差の拡大、「二極化」に歯止めをかけ、逆転させるうえで大きな意義をもちます。また、すべての労働者のエネルギーを結集して、個別企業の賃上げの前進にも結びつきます。
 すべての労働者の、しかも月づきの賃金を重視した賃上げは、輸出とリストラという不安定で労働者犠牲の基盤でなく、個人消費と内需という安定した国民的基盤のうえに、日本経済を発展させていくためにも不可欠です。
 自民党と民主党が競い合って打ち出している公務員攻撃とのたたかいも、今春闘の重大な課題です。
 公務員の賃下げは、民間労働者との賃下げの悪循環をつくりだすだけでなく、「官も血を流したから」と国民に「痛み」、すなわち大増税と社会保障改悪を押し付ける口実にもされます。
 これらは、個人消費を冷え込ませて、地域経済と国民経済に大きな打撃を与えます。連合も公務員攻撃に激しく反発しています。
 全労連も連合もともに、大増税と社会保障改悪反対など国民的課題をかかげていることは、国民的たたかいを結集する軸となる労働組合の決意と社会的責任を示すものとして重要です。
 対照的に、大企業の社会的責任、企業のあり方自体が鋭く問われています。
 コスト削減・利潤第一主義は、リストラによる雇用と労働条件の破壊と下請け中小零細への犠牲転嫁によって「現場の力」を著しく衰退させ、命を脅かす重大事故や不良品、企業犯罪を続発させています。
 また、リストラと「構造改革」がもたらした貧困と社会的格差の拡大は、日本の経済社会システムの根幹まで脅かすにいたっています。

■社会的連帯広げ
 こうしたもとで、あらゆる傾向の労働組合の間だけでなく、下請け中小企業や零細業者など国民各層・各分野で要求の一致がひろがっています。
 憲法改悪反対などの課題も含め、一致する要求での共同行動を広げ、06春闘を社会的連帯による社会的反撃の一大決起の場としましょう。それは、日本の労働組合運動の新たな前進の第一歩となるでしょう。


2006年2月18日(土)「しんぶん赤旗」

JR採用差別解決を
闘争団など総決起集会


 一九八七年の国鉄の分割・民営化の際、JRを不採用になった千四十七人の解雇撤回・職場復帰をめざすたたかいが二十年目を迎えます。十六日夜、国労闘争団全国連絡会議や全動労争議団などが一堂に会し、争議の解決をめざす総決起集会を東京都内で開きました。
 モニターを設置した第二会場も人があふれ、二千五百人が参加。決意表明やビデオ上映、合唱に拍手を送りました。
 鉄建公団訴訟の加藤晋介弁護士が講演。同事件が「国是に反抗すれば、国労のようになる」と国の負債を労働者・国民に押しつける手段で、「国民全体にかけられた攻撃だった」とのべました。
 全動労争議団の梅木則秋団長代行は「ハンドルをとりあげられてから二十年目を迎える」と悔しさをにじませ、訴訟の年内結審・判決めざしてたたかうと表明。共同の流れを大切にし、政府に解決交渉のテーブルをつくらせたいと語りました。
 国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長は、鉄建公団訴訟の地裁判決を機に大同団結の機運が生まれ、お互いに理解し合ってきたと紹介。
 この集会で勝利解決に向けた条件はできたとのべ、今後も大同団結し、大衆行動や世論喚起をはかっていくと表明しました。
 鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長は、同訴訟が千四十七人全員の解決に鉄建公団を動かす根拠になり、今日の集会が千四十七人がまとまる端緒となったと語りました。


2006年2月18日(土)「しんぶん赤旗」

なぜ プラス成長? 実感ないの? 大企業空前の大もうけ…家計に波及弱く
“勝ち組”政治で格差拡大


 「『構造改革』などにより、こうした成果が出るのは喜ばしい」。二〇〇五年十―十二月期の国内総生産(GDP)が四期連続でプラス成長になったことをうけ、安倍晋三官房長官はこう語りました。しかし、多くの庶民にプラス成長の実感はありません。「成功者をねたむな」(小泉首相)と“勝ち組”応援政治を続ける小泉内閣。発足後まもなく五年を迎える小泉政治のもとで、何が起きているのでしょうか。(山田英明)

(写真)商品を選ぶ女性ら=東京都内の商店街

■大企業優遇の政治
 一部大企業、大銀行は空前の利益をあげています。
 トヨタ自動車は、〇五年四―十二月期連結決算で最終利益九千六百八十億円を計上。同期では過去最高を記録しました。三菱UFJフィナンシャルグループも、同一兆二百六十四億円と、トヨタ自動車を上回る最終益をあげています。
 小泉内閣はこの間、税制上の優遇で、企業のリストラ・「合理化」を促進。大銀行の不良債権処理のために国民の税金をつぎ込んできました。その結果、二〇〇〇年から〇四年の間に企業の所得は約六兆円も増加しています。
 その一方、雇用者報酬は、低迷し続けています。大企業・大銀行の空前のもうけは、労働者には還元されていません。
 大企業はこの間に、政府の後押しをうけ、リストラ・「合理化」を推進。正社員からパートやアルバイト、派遣などの非正規雇用への置き換えを進めてきました。
 その結果、二〇〇〇年から〇四年の間に年収三百万円以下のサラリーマンが急増しました。〇五年十―十二月期のGDP速報では、雇用者報酬が若干回復したものの、依然低迷しています。
 リストラ・「合理化」と大企業優遇政治が、家計から企業への所得移動を促してきました。
■やむを得ず支出増
 「企業・家計部門とも好調。バランス良く(回復が)進んでいる」(与謝野馨経済財政担当相)。政府は、個人消費が「好調」という見方をしています。しかし、中身をみると家計の“やむを得ない”支出増が、個人消費の「好調さ」を演出しています。
 厳冬が冬物衣料や暖房器具の購入を促し、個人消費を押し上げました。さらに灯油価格の高騰が支出増に拍車をかけています。
 家計調査によると、住居費、光熱費、保険医療などは、三年連続で増加しています。
 小泉内閣は医療や介護など社会保障改悪を促進してきました。その結果、医療サービスや介護サービスにかかる費用が増加。家計を圧迫しています。
 所得が減る中で、貯蓄を取り崩して支出に回しているのが実際です。

■富裕層さらに富む
 富裕層の消費が、個人消費を押し上げている側面もあります。
 所得税の最高税率引き下げや、株式配当や譲渡益にかかる所得税の軽減など、政府は高額所得者を優遇してきました。
 二〇〇〇年から〇四年で、年収二千万円以上の階層の人数の増え方はわずかですが、収入も消費も大幅に増えています。
 例えば、この間に三千cc超の自動車をもつ勤労者世帯は、全体で0・5%しか増えていないものの、年収二千万円以上の世帯では、約2%も増加しています。
 企業は、こうした富裕層を対象にした事業展開を始めています。トヨタ自動車は〇五年八月から高級車市場にレクサスブランドの展開を開始。累計で約一万二千台の販売台数となりました。
 伊勢丹の広報担当者は、同メンズ館の売り上げについて、「真ん中のプライスライン(価格帯)のより高い方が多少膨らんでいる」(同広報)と分析しています。

■家計還元の政治を
 一部大企業や富裕層だけでなく、庶民が景気回復を実感できるためには、大企業のもうけをきちんと労働者に還元させることが必要です。
 小泉内閣は、医療改悪や所得税増税などで、庶民に連続的に負担増を押しつけることをたくらんでいます。こうした負担増が、回復しかけた雇用者報酬の増加すら帳消しにし、家計をさらに低迷させることになります。
 小泉内閣による負担増計画をやめさせ、大企業・高額所得者に応分の負担を求め、家計に還元する政治に切りかえることが求められています。


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