日本国憲法   

まるごと考えよう日本国憲法

第三部 戦争と平和について     F

国連決議があればいいのか
 "国連の制裁決議があれば武カ行使をしてもいいのではないか"という考え方があります。
 民主党憲法調査会が今年6月に発表した「憲法提案・中間報告」では、「憲法の中に、国連の集団安全保障活動を明確に位置付ける」としました。国連の集団安全保障活動には、武力制裁も含まれますから、民主党の考え方は、国連の下でなら日本も武カ行使をおこなうことになります。
 同党の岡田克也代表は7月末訪米し、「憲法を改正して国連安保理の明確な決議がある場合に、日本の海外における武カ行使を可能にし、世界の平和維持に日本も積極的に貢献すべきとの立場に立つ」と宣言しました。

憲法にそい
 この脊景には、”自民党のようにアメリカベったりではなく、国連によって正当化される武力行使だからいいではないか"という考え方があります。しかし、この考え方も、憲法9条を投げ捨てて、日本が武力行使できる国になることでは変わりはありません。
 よく考えなければならないことの一つは、国連自体、国際紛争を平和的手段で解決するために存在する機関だということです。平和的手段で解決できない場合に、制裁も選択肢にしていますが、その場合もまず経済制裁からです。武力制裁はその後の手段です。
 憲章のなかには、武カ制裁のための「国連軍」へ「兵カ提供」をすることも規定されていますが、これも国連と特別協定を結んでから行うものです。それぞれの国が自国の憲法規定にそって義務を果たせばいいのです。
 もう一つは、日本が1952年に国連加盟したときに、重要な留保を行ったことです。岡崎勝男外相(当時)が出した加盟申請書では加盟国としての義務は「その有するすべての手段をもって、履行するしとしました』これについて、当時の西村熊雄・外務省条約局長は、次のように説明しました。
 「日本のディスポーザル(利用可能)にない手段を必要とする義務は負わない、すなわち軍事的協力、軍事的参加を必要とする国際連合憲章の義務は負担しないことをはっきりいたした」
 日本は国連の集団安全保障の措置に非軍事で協力すればいいのです。
 いま世界では、紛争の平和的解決という「平和のルール」を守れという流れが大きくなっています。イラク戦争をめぐっても、世界の圧倒的多数の国は米英の武力行使に反対し、大量破壊兵器の査察によって解決するよう主張しました。

巨大な変化
 国連が創設されて60年近くの間に、アジア・アフリカの諸国が植民地を脱して独立。加盟国は51カ国(原加盟国)から191カ国へと増加しました。その多くが、非同盟諸国会議に加わり、軍事同盟のない世界をめざしています。
 「平和のルール」守れの流れは、この巨大な変化を背景に生まれているのです。この時代に、日本が憲法を改悪して、海外での武力行使を公言したらアジア諸国はもちろん、世界の疑念は深まるばかりです。


世界は非軍事を評価
 「世界は、日本が軍事面での国際貢献において制約を有していることを了解し、その範囲内で著しい工夫を行ってきたことを正当に評価している」。第一部でも紹介した前軍縮大使の猪口邦子・上智大教授が衆院憲法調査会で行った陳述です。
 猪口さんは、その一例として、紛争関連の死者のうち毎年50万人が命を落としている小型武器の軍縮で果たした日本の役割を紹介』この種の会合ではじめて議長国に選ばれた日本が国連小型武器会合で、無理かと思われながら、軍縮実施のための優先措置と方法を議長総括にまとめ、全会一致での採択にこぎつけた話です。猪口さんは「憲法9条にみる日本の平和への哲学を基本的には保持しつづ実行できることも多い」とのべています。

つづく

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