『トヨタ・デンソー 過労うつ病裁判を支援する会』ニュース No.14 ( 2009年5月10日発行 )

○ 現在進行中の労災認定行政訴訟裁判の取り下げを決定
原告、弁護団(声明文2面)

原告と弁護団は損害賠償勝利判決で大きな成果があったこと、
職場での会社のうつ病対策にも一定の成果がみられること、
原告の今後の負担など
を考慮して行政訴訟を取り下げることにしました。

○ そのため、当初5月26日に予定されていた弁論準備裁判はありません。

○ この決定を受けて総会を開催します。
  日時、場所:6月12日(金)6時半、
       刈谷市民会館、3F302会議室
  詳細は追って次号のニュースでお知らせします。

○ 2/15損害裁判勝利・交流集会の報告(3、4面)

事案の概要:デンソーの従業員であるKさんはトヨタ自動車へ出向した後にうつ病を発症し休職しました。いったん回復し、デンソーに復職しましたが、デンソーとトヨタ自動車の共同プロジェクトの中で、うつ病を再発。現在も療養中です。
刈谷労基署に労災申請しましたが却下されました。Kさんはデンソー、トヨタ自動車の業務が原因でうつ病になり、休職を余儀なくされたことに対して、損害賠償を請求する裁判をおこない、2008年10月30日、名古屋地裁で勝利判決を勝ち取りました。
更に国によって却下された労災認定を勝ち取るため、損害賠償裁判判決前の2008年9月16日に名古屋地裁に提訴し、現在まで裁判中でした。損害賠償裁判で大きな成果を上げたこと、職場でのうつ病対策にも具体的な前進がみられたことなどを考慮し、2009年4月に労災認定を求めるこの行政訴訟を取り下げることにしました。


2009年4月15日

トヨタ・デンソー過労うつ病裁判を支援していただいたすべての皆様へ

トヨタ・デンソー過労うつ病裁判原告

トヨタ・デンソー過労うつ病裁判弁護団

行政訴訟の取り下げについて

 2008年10月30日、トヨタ自動車・デンソーを相手に損害賠償を求めた裁判において、トヨタ自動車・デンソーに原告がうつ病を発症させた責任を認めさせ、損害賠償を認めさせる画期的な判決を勝ち取りました。これも原告の訴えに共感し、この裁判を応援していただいた多くの皆様の支援のおかげであると深く感謝し、あらためてお礼申し上げます。

 この裁判は、原告が2000年に発病してから8年間、2003年の労災申請から5年間にわたりトヨタ自動車、デンソーの過重な労働実態を訴え続け、2006年5月に提訴してからは、働きながら法廷でたたかった全国的にも貴重な裁判でした。

 そして、この裁判で、原告は、トヨタ自動車、デンソーが従業員を過重な労働をさせたためにうつ病を発症させたことを明確に裁判所に認めさせました。この判決は、過重な業務のためにうつ病を発症する労働者も多発している中、多くの労働者を励ます、すばらしい成果であったと思います。実際にも、デンソーが労働時間の管理をより徹底したこと、復職のプログラムをつくったこと、社内診療所の精神科医を大幅に増やしたことなど労働者に対する配慮を前進させる具体的な成果も現れています。2009年4月、厚生労働省は、精神障害等の労災認定の指針を改定し、「ひどい嫌がらせ又は暴行をうけた」ことなどを労災認定において考慮する通達を出しました。今回の改訂はいまだ不十分ですが、このようなハラスメントが指針に取り込まれたのも、本裁判のもたらした社会的影響のひとつといえます。

 ところで、原告は、うつ病発症の労災認定を求めて国を訴えるもう一つの裁判を、判決前の2008年9月に提訴し、うつ病の治療を続けながら、また、働きながら続けてきましたが、今後の闘いの方針を総合的に検討して、この行政訴訟を継続せず、訴えを取り下げることにしました。

 原告は、今後は、治療を続けながら、10月30日判決を職場、組合活動の中で、また地域の中で活かし、過重な労働による精神疾患の発病を防止する活動をしていきたいと考えています。行政訴訟の取り下げについてご理解をいただくとともに、10月30日判決をさらに活かすたたかいにこれからも協力していただきますようお願い申し上げます。


『トヨタ・デンソー過労・うつ病裁判 勝利報告・交流集会!』
2月15日『トヨタ・デンソー過労・うつ病損害裁判』の勝利報告・交流集会が労働会館にて約50名の参加者で行われました。

 @判決の要点と意義を岩井弁護士から、

 A経過と今後の課題を金田事務局担当幹事から

 B裁判勝利の意義を猿田会長から

報告がありました。

原告のKさんの挨拶の後、参加者皆さんで激励、連帯の交流を行いました。

写真(右 上)

左から  梅村弁護士
      原告
      岩井弁護士
      田巻弁護士

写真(左 中)

講演する 猿田正機会長
       (中京大学教授)

写真(右 中)

2/15 挨拶するデンソーKさんと
          支援者の皆さん

写真(左 下)

報告する 岩井弁護士

写真(右 下)

熱心に報告を聞く参加者


・猿田正機中京大学教授(支援する会会長)の講演 (要旨)
今回の判決でトヨタの負の側面が一気に噴きだした感がある。
デンソーは、発足時1400人だったが今は4万人、トヨタ以上に急成長した会社だ。
今もトヨタは過密労働を改めていない。うつ病は簡単な病気ではない。今回のことで労働組合の役割も問われている。
日本のサラ金なみの奨学金システム、卒業して就職すれば、サービス残業、あげくはワーキングプア、もっとヨーロッパのやり方を勉強しなさい。日本には200万人を.超える外国人が学び働いている。高校程度の知識学力は国の責任でつけさせるべきではないか。
なにより、なぜ目本は政権の交替がないのか、不思議でもあり、交替すべきと思つている。



・ 「大企業を相手に勝利できた」・・・・原告Kさんのあいさつ
損害賠償金を支払わせた意義は大きいと思う。提訴することはいろいろ迷ったが、晩年になって後悔はしたくなかった。トヨタもデンソーも労働環境は厳しく、ものが言えない雰囲気である。過労死家族の会のみなさんには、本当に励まされました。 なにより私は生きている。 @トヨタとデンソーという日本を代表する企業を相手に良い判例を残せた。 A多くの人とつながりができた。 Bデンソーに安全衛生対策をとらせることができた。これからは、労働環境改善のために、私自身もとりくんでいきたい。



・集会当日、会場で読み上げられた、メッセージ(要旨)を紹介します。
K さん、集会参加の皆さん
このたびは勝利判決、あらためておめでとうございます。
劇団員一同、たいへん喜んでおります。
今日は稽古のため、書面にて失礼します。
私たち希求座は92年の旗揚げ公演で「突然の明日」という過労死問題の作品を上演して以降、たびたび過労死・過労自殺、あるいは過労問題に取り組んで参りました。
その間、労働者をとりまく職場の環境は厳しさを増す一方に思える様相でした。中でも労働者の心までも蝕む状況が大きく広がってきたことにたいへん憂慮するものがあり、過労自殺の劇「あの子が死んだ朝」を上演するに至りました。
しかし他方では、労災にみまわれた当事者の皆さんを中心とした運動が、大きなカを発揮され、労働行政・企業を揺り動かしてきた歴史でもありました。
K さんのたたかいも、それをさらに押し進めてくださったものです。
本当にごくろうさまでした。
さて私個人も数年前、ハードワークがたたって、うつ病になってしまった一人です。
幸いにも、約1年の休養。職業訓練を経て、転職し今は無事に働いています。
演劇もやめずに続けてこれました。
なんとかこのまま再発しないようにと養生しながらの日々です。
辞めた職場は小企業で組合もなかったので、恥ずかしながらたいした交渉事も経ずに、逃げるような退職でした。
そんな私だからこそKさんが超大企業を相手にたたかいを挑んでおられる姿には、心底勇気づけられるのです。
きっと私のような思いの人は日本中にたくさん、たくさん、たくさんいます。
K さんのたたかいは本当にすごいのです!
2009年2月14日  劇 時伝人 「希求座」 小林希行







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