『トヨタ・デンソー 過労うつ病裁判』の判決に関する新聞記事

2008年10月31日(金)「しんぶん赤旗」

うつ病、激務で発症 トヨタ・デンソーに賠償命令
名古屋地裁


 トヨタグループで国内最大の自動車部品メーカー、デンソー(愛知県刈谷市)従業員の男性(44)が、トヨタ自動車に出向中、うつ病を発症し休職を余儀なくされたことについて、トヨタ自動車、デンソーの両社に損害賠償を求めた裁判の判決が三十日、名古屋地裁(多見谷寿郎裁判長)でありました。
 判決は、両社に対し、うつ病の予見は可能であり安全配慮義務を怠ったなどとして連帯して約百五十万円の慰謝料を支払うよう命じました。
 トヨタでのエンジン開発の仕事が長時間労働の激務であったことや、上司のパワハラが症状を悪化させたことなども認定しました。
 弁護団の岩井洋一弁護士は、「トヨタやデンソーの過酷な働かせ方を断罪した画期的な判決」と報告しました。
 原告の男性は、涙で声を詰まらせながら「現役社員で日本を代表する企業を相手に、病気を治療しながらの裁判で、つらかったがくじけずに頑張った。多くの方の支援に支えられた」「仕事でのうつ病に苦しむ人を励まし、トヨタだけでなく多くの企業の労働条件改善につながることを願っている」と述べました。
 男性は、一九九九年八月にトヨタ自動車に出向し、翌年四月ころにうつ病を発症して八月に休職。その後回復してデンソーに復職しましたが、二〇〇二年六月ころからデンソーとトヨタ自動車の共同プロジェクトの仕事をし再発、現在も療養中です。
 また、二度のうつ病の休職について刈谷労基署長が労災の休業補償給付を不支給にしたことについて、国を相手取り労災認定裁判を行っています。




2008年10月31日(金)「中日新聞」

「出向でうつ病」に賠償命令 トヨタ・デンソーに150万円
2008年10月31日 朝刊

損害賠償を求めた訴訟の判決後、記者会見で涙を見せるデンソーの男性社員=30日、名古屋市中区で

 出向先のトヨタ自動車(愛知県豊田市)でうつ病になったのは長時間労働や上司による厳しいしっ責が原因だとして、自動車部品大手のデンソー(同県刈谷市)に勤務する愛知県の男性(44)が両社に約1880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、名古屋地裁であった。多見谷寿郎裁判長は業務とうつ病との因果関係を認め、両社に計約150万円の支払いを命じた。
 多見谷裁判長は「緊急度や労働密度が高い業務による負荷に、上司のしっ責などが相まって、最初のうつ病が発症した」と認定。その上で、「両社は男性から相談を受け、うつ病になる可能性を把握できたのに配慮を怠った」と述べた。
 同裁判長は、出向先のトヨタにも男性の健康を守る義務があると指摘した。しかし、男性側が「徹底的に無駄を省くトヨタの生産方式が過重な負担となった」と主張した点については、判断を示さなかった。
 判決によると、男性は1999年8月からトヨタに出向。ディーゼルエンジンの開発や不具合の対応を担当した。選ばれて出向したという緊張感の中、トヨタの上司から受けた「使い物にならない人はいらない」などのしっ責や長時間労働などがストレスとなり、うつ病を発症。翌年8月から2カ月間休職した。
 復職後、2002年7月にうつ病を再発。現在は残業のない部署に異動し、通院と投薬治療を続けている。
 男性は刈谷労働基準監督署に労災の適用を申請したが退けられたため、今年9月、国を相手に提訴している。
 トヨタとデンソーは「今後の対応は判決内容を検討して決める」とコメントした。


◆原告の男性「職場環境改善を」
 名古屋市中区内で会見した原告の男性は「うつに苦しむ人の励みになればうれしい。会社は判決を真摯(しんし)に受け止め、職場環境の改善と心からの謝罪をしてほしい」と話した。
 約2年半の法廷闘争。その間、トヨタ社員の過労死訴訟などトヨタ成長の原動力といわれたQC(品質管理)活動を業務と認める司法判断もあり、トヨタをめぐる労働環境がクローズアップされた。
 今回の裁判でも無駄を排除し、納期厳守が徹底される「トヨタ生産方式」によるプレッシャーや部品会社からトヨタへの出向という事情が、心理的負担となっていたかという争点に対する判断も注目された。
 判決は明確に述べなかった。だが、男性の業務を「労働密度と緊急度が高い」と認めたことをとらえ、代理人弁護士の1人は「判決の背景にはトヨタとデンソーに特有の事情があった」と分析する。
 相手は日本を代表する企業。男性は「提訴して不利益を受けることよりも、職場環境を改善しなければならないと考えた。泣き寝入りしないでよかった」と時折、涙を見せながら振り返った。


2008年10月31日(金)「朝日新聞」

デンソーからトヨタに出向し、うつ病 両社に賠償命令
 出向先のトヨタ自動車での過労やパワハラなどが原因でうつ病になり、休職を余儀なくされたとして、大手自動車部品メーカー「デンソー」の男性社員(44)が、両社を相手に休業損害や慰謝料など計約1900万円の賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁(多見谷寿郎裁判長)は30日、請求を一部認め、両社に連帯して約150万円を支払うよう命じた。
 判決はまず、デンソーと出向先のトヨタのいずれも、男性に対して健康上の安全配慮義務があったと指摘した。
 さらに、うつ病の発症は、男性の出向後の勤務時間が大幅に増えたことや、業務内容が大きく変わって労働密度が高くなったことに加え、男性が精神的に弱かったことなどの複数の要因が重なったことが原因だと認定。男性がデンソーに戻ることを求めたのに、デンソー側は約束に反して出向を延長させたことから、うつ病を発症させたと認めた。
 そのうえで、判決は「負担を軽減しなければ、うつ病を発症・悪化し、休職するおそれを予見できたのに、両社は業務を軽減するなどの義務を怠り、さらにデンソーは出向延長に配慮するなどの義務を怠った」と結論づけた。
 一方、トヨタ社員の叱責(しっせき)については「表現は過酷でパワハラと評価されても仕方ないが、うつ病の直接の原因とは言い難い」と判断した。
 判決によると、男性は99年8月から1年間トヨタに出向し、エンジン開発を担当。この間にうつ病となり、00年8月から約2カ月間休職した。 男性は判決後の記者会見で「うつ病で苦しんでいる人の励みになると思う。私のように苦しんでいる人が一人でも少なくなるよう、会社には改善してほしい」と話した。

     ◇
 原告の男性の弁護士は「雇用主のデンソーだけでなく、出向先のトヨタの義務や責任を認めた点で意義のある判決だ」と評価した。
 デンソーは「当社の主張が認められず遺憾だ」、トヨタは「今後の対応は判決文の内容を検討して判断したい」とのコメントを出した。


2008年10月31日(金)「読売新聞」

出向社員のうつ病「仕事負担も一因」…トヨタとデンソー敗訴

 トヨタ自動車に出向中、上司からパワーハラスメント(職権による人権侵害)を受けるなど、仕事が原因でうつ病になり休職を余儀なくされたとして、自動車部品大手「デンソー」の男性社員(44)が、両社に約1880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、名古屋地裁であった。
 多見谷(たみや)寿郎(としろう)裁判長は、仕事の負担もうつ病の一因と認め、「負担を軽減する安全配慮義務を怠った」として、両社に休業補償や慰謝料として計約150万円の支払いを命じた。上司の発言については「パワハラとされても仕方がない」としたが、うつ病の原因とまでは認めなかった。
 判決によると男性は、1999年8月にトヨタ自動車に出向。新型ディーゼルエンジンの開発を担当したが、同年11月の会議で、上司から「もうデンソーに帰っていい。使いものにならない人はうちにはいらない」と厳しい叱責(しっせき)を受けた。男性は2000年6月にうつ病と診断され、2か月間休職した。
 判決は、仕事内容が出向後に大きく変わったことや、周囲の手助けが少なかったことで精神的負担を感じたと指摘し、「仕事の負荷と精神的に弱い性格が相まってうつ病が発症した」と認定した。会議での上司の発言については「パワハラとされても仕方がない」と述べたが、うつ病の原因とまでは認めなかった。

 トヨタ自動車の話「今後の対応は、内容を検討した上で判断したい」


2008年10月31日(金)「日本経済新聞」

トヨタなどに賠償命令 「業務でうつ病」、名古屋地裁認定

 長時間労働などが原因でうつ病を発症したとして、トヨタ自動車グループの大手自動車部品メーカー「デンソー」(愛知県刈谷市)の男性社員(44)が、同社や出向先だったトヨタ自動車に計約1800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、名古屋地裁であった。多見谷寿郎裁判長は業務の一部と発症との因果関係を認めたうえで、両社に計約150万円の賠償を命じた。
 判決理由で、多見谷裁判長は1回目の発症について「業務上の過重負荷が発症を招来した」と認定。「業務の軽減など何らかの援助を与えなければ、心身の健康を損なうおそれがあると判断できた」とし、安全配慮義務違反を認めた。
 2回目の発症との因果関係は認めなかった。
 二回目の発症との因果関係は認めなかった。うつ病にならなければ昇給できたとして求めていた逸失利益も認めず、賠償額を減額した。
 判決によると、男性は一九八五年にデンソーに入社。ディーゼルエンジンの燃料噴射装置の設計などを担当していた。九九年八月、トヨタ自動車に出向。二〇〇〇年八月から約ニカ月、うつ病で休職した。
 デンソーに復帰後の〇二年七月ごろ、再びうつ病を発症。約六カ月休職した。その後、職場復帰している。

 両杜は「今後の対応は判決文の内容を検討し、判断したい」(トヨタ自動車)、「主張が認められず遺憾。判決内容を詳細に確認した上で今後の対応を検討する」(デンソー)などとコメントした。


2008年10月31日(金)「毎日新聞」

損賠訴訟:男性うつ病「業務軽減義務怠る」 トヨタなどに賠償命令−−名古屋地裁

 出向先での過重労働やパワーハラスメントなどが原因でうつ病を発症したとして、愛知県内に住む男性(44)が、自動車部品製造のデンソー(愛知県刈谷市)と出向先のトヨタ自動車(同県豊田市)を相手取り、約1880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、名古屋地裁で言い渡された。多見谷寿郎裁判長は「業務の軽減や援助する義務を怠った」と因果関係を認め、両社に休業損害や慰謝料など約150万円の支払いを命じた。
 判決によると、男性は85年にデンソーに入社、エンジンの設計業務を担当した。99年8月〜00年8月にトヨタへ出向した際、新型エンジンの開発に就き、担当者から「使い物にならない人はいらない」などと他者の面前で叱責(しっせき)された。男性はうつ病を発症、00年8月から約2カ月休職した。
 弁護側は、男性が発症前に月90時間を超す過重労働やパワハラ発言を受け、企業側に過重労働を伝えていたにもかかわらず何の対策も講じなかった安全配慮義務違反があったと主張。企業側は「原告の労働時間、健康管理は権限の範囲外」(トヨタ)「業務は精神疾患を発症させるほど過重なものではない」(デンソー)と反論していた。
 判決はトヨタに対し「信義則上、安全配慮義務を負っていた」と判断したほか、過重労働について、男性が発症前に月80時間を超す時間外労働をしていたと認定。「それだけで発症の危険性を高める程度ではない」としながらも、男性の性格面などを総合的に検討し予見可能性があったとした。パワハラ発言については発症に直接寄与したことは認めなかったが「パワハラと評価されても仕方ない」とした。【式守克史】

 ◇トヨタ自動車の話
 今後の対応は判決文の内容を検討したうえで判断したい。

 ◇デンソーの話
 主張が認められず遺憾。判決内容の詳細を確認したうえで対応を検討します。






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