『トヨタ・デンソー 過労うつ病裁判を支援する会』ニュース No.9 ( 2008年9月8日発行 )

事案の概要:デンソーの従業員であるKさんはトヨタ自動車へ出向した後にうつ病を発症し休職しました。いったん回復し、デンソーに復職しましたが、デンソーとトヨタ自動車の共同プロジェクトの中で、うつ病を再発。現在も療養中です。
刈谷労基署に労災申請しましたが却下されました。Kさんは現在デンソー、トヨタ自動車の業務が原因でうつ病になり、休職を余儀なくされたことに対して、損害賠償を請求する裁判をおこなってきました。 いよいよ10月30日(木)午後3時半、名古屋地裁で判決が言い渡されます。
判決日決まる:10月30日(木)3:30、於名古屋地裁 1103法廷

・判決日に向けて運動を強めるため 第2回総会を開催します。多くの会員、支援者の皆さんの参加をお待ちしています。
    日時:9月21日(日) PM2時〜4時
    場所:刈谷市民会館3F302会議室
(地図参照)

・7月28日の結審日はいくつかの書類の確認、裁判官からの質問の後、原告Kさんの最終意見陳述がおこなわれました。満席の傍聴者を前に、しっかりとした口調でおこなわれたこの陳述は参加者に感動を与えるものでした。
   ==>2,3ページにこの陳述書の全文を掲載します。
   この日、地裁玄関前でおこなわれた報告集会には支援者約40名が参加しました。
   (写真は3ページに記載)

・「支援する会」に団体加盟している愛労連から1万円のカンパが寄せられました(2回目)

・労組支援要請行動おこなう。(7月9日)
原告Kさん、愛知健康センターの鈴木事務局長、近森理事(支援する会・幹事)、金田さん(支援する会・事務局幹事)の4人は車に同乗し、名古屋市内の主な労働組合を訪れ、この裁判への支援を要請し、懇談しました。各労働組合担当者の方々は快く応対し、支援を約束して頂きました。訪問した労働組合は次のとおりです。
名古屋市環境局支部、愛高教、名古屋市高教組、名古屋市労連、自治労連愛知県本部、 愛労連名古屋地域協議会、愛知県国会共闘会議、アスベスト連絡会議

原告Kさんの最 終 意 見 陳 述 書       2008年7月28日

 最初にこのような意見陳述をさせて頂ける機会を与えて下さったことに感謝いたします。2006年5月11日に提訴してから、2年2か月が経ちました。うつ病を患いながら仕事と裁判の準備は本当に大変で、辛く長い道のりでした。それでも倒れずに毎回裁判に出席し、こうして無事に結審の日を迎えることができました。
 私は2000年と2002年に過労とパワハラによるうつ病で会社を休職していた当時は、気力も体力も消耗しきって、顔の表情も無くなり、身も心もボロボロ状態になりました。何もやる気がおきず、毎日寝たきり状態で、家族との会話も無くなり、先が見えない長いトンネルの中にいるような思いでした。
 最初の発症から既に8年が経過していますが、未だに完治せず、通院、投薬治療を余儀なくされています。うつ病は『心の風邪』とよく表現されますが、風邪のように1週間程度で治るような軽いものでは決してありません。少なくとも数年、長い場合10年、20年以上にわたって治療を続けている人もいますし、最悪は自殺にも繋がる本当に怖い病気です。
 私は入社以来、ディーゼルエンジンの噴射装置の設計技術者として、機械式ポンプ、電子制御式ポンプ、コモンレールと時代の変化に即した新しい高度な技術、システムの設計担当をしてきました。それは、会社が進むべき方向性を理解し、新しい製品分野に挑戦する人が必要と考え、自らもステップアップしていかなければ上司の期待に応えることができないと思ったからです。
 1999年8月からトヨタ自動車へ長期出張した時は、人員不足の中、最新鋭のコモンレールの学習をしながら突発的な品質不具合業務の対応など睡眠時間や休憩時間を削りながらも何とか対応していました。しかし、上司の藤村主査から早急な対策を迫られ、周りに支援者も無く、心理的に追い込まれる状態でした。
 また、デンソー側も藤村主査からの理不尽な叱責の際も全く私ひとりの責任にし、その後も配慮がありませんでした。過労うつ病になって倒れてからは自己責任を押し付け、人事査定を下げました。デンソー側の設計ミスで私が長時間労働で対応しているのに、裁判では、私の職務怠慢だと言っているのです。こんなことが許されるのでしょうか。
 私が当時相談した時に希望通り帰任させてくれさえいれば、私はうつ病にならなくて、こんな不利益も被らずに今現在も生き生きと働いていたと思います。健康な身体を返してほしいと思います。
 トヨタ・デンソーでは、36協定の趣旨は無視し、少ない人員で対応するために恒常的に長時間労働を行わせてきました。本来は労使協定を結んでいる労働組合が長時間労働を防止する役割を担っていますが、使用者側の言いなりで締結されています。組合員の健康を守るべき労働組合の役目が全く果たされていない状況です。
 デンソーに勤める金田さんの発行している職場新聞『スパーク』には長時間労働や上司からのパワハラによる過労死、過労自殺を疑わせるような職場の在職死亡の記事が多数あります。これらはデンソー社内でも全く表面化せず、隠蔽されています。労働組合すら取り上げることをしません。これでは再発防止も行われるわけがありません。
 デンソーでは、3か月以上休職している従業員が相当数おり、その中でうつ病などの精神疾患の人もたくさんいると聞いています。休職まで至らないまでも、その予備群はもっとたくさん存在すると思われます。また、メンタルヘルスの相談件数も多く、産業医の数も不足しているようです。
 真面目に一生懸命に働いている優秀な社員が次々に過労やうつ病で倒れていき、休職や退職に追い込まれています。
 私は上司に対し、体調が悪くなったり、メンタル不全で業務上の配慮を求めていた時も、仕事を減らすこともせず、新しい仕事をあるだけ与えるという状況でした。会社側は私に対し、毎日のように早く帰るよう指示したと言っておりますが、これは全くのは嘘で事実ではありません。当時、裁量性の無いたくさんの仕事があり、到底早く帰れる状況になかったのです。それは同僚の横山の証言からも明らかです。それで私のうつ病は増悪していきました。これでは職場の人間の健康が守られることはなく、管理職の資格がないと言わざるを得ません。
 社内の問題点は、その中で実際に働いている社員が一番よくわかっていると思いますが、『自分が言ったところで何も変わらない』と諦めたり、『何らかの不利益を被る』ことを恐れ、目の前にある問題に目を背けることが多い中、私は毅然と内側にいる社員として、声を上げることが大事だと考え、今頑張っております。
 過去の準備書面や口頭で申し上げてきたことが事実であることが前回の証人尋問で裁判官の皆様にはご理解頂けたと思います。私がうつ病になった原因がトヨタ、デンソーでの過酷な仕事であることは明らかです。
 今後、仕事やパワハラでうつ病になる人がひとりでも少なくなるようにどうか公平な良い判決をお願いいたします。
                以上

「トヨタ・デンソー過労うつ病裁判」傍聴記 その3    デンソー社員 ToKa
 7月28日、名古屋地方裁判所第1103号法廷でのKさんの裁判を傍聴した。
この日は結審ということで、原告Kさんの最終意見陳述だった。傍聴席はほぼ満席で、司法研修生というのが7人来ていたが傍聴席から追い出されて弁護士や書記官のいる前の方に座らされたほどだ。
 Kさんは最終陳述のなかで、2年にわたった裁判を振り返り、またデンソー社員として入社以来業務に取り組んできた考え方も示しながら、「トヨタ長期出張中の多忙な業務負荷とパワハラ発言によって過労うつ病になってからの会社の対応に納得がいかず、休業から復帰したKさんへの人事評価についても納得がいかず、同じような社員が多数いることを考え、自分だけの問題ではなく、会社全体の問題として訴えた」と言う。
 実は、今日の結審では、原告側、被告側から先の証人尋問の結果を踏まえて最後の主張をするかなと期待していたところ、何もなく、ちょっと期待外れの感じだった。特に被告側の弁護人がどんな主張をするのだろうかと期待していたのだが・・・
 さて、次回は判決で10月30日(木) 15:30pmから名古屋地裁1103号法廷。3人の裁判官たちがどのような判断を下すのか、数百人いるといわれるデンソーのうつ病・長期休職者たちへの光明は期待できるのか、楽しみだ。


「内野さんの労災認定を支援する会」
総会で会の解散・報告集発行を確認
 6月22日(月)午後1時30分から刈谷市民会館において第5回総会が開催されました。
80名を超える出席者があり、準備された椅子が不足するほどでした。
 第5回総会の目的は、@支援する会の活動の最終報告と総括、A支援する会の解散の提案、B報告集の作成についての提案の三点でした。
 また、闘いの成果として以下の点が、山下事務局長から報告されました。
@「小集団活動は業務」とした名古屋地裁判決は画期的でありその意義は大きい
A国に控訴を断念させた地裁判決の確定
B判決に基づいた残業時間を遺族年金に反映させた大きな意義
C厚労大臣に「判決にしたがって労働行政を見直す」と答弁させ、トヨタ自動車にQ Cサークル活動の賃金支払いの見直しをさせたこと

「刈谷市職員、倉田さんの過労死認定を求める会」  妻の倉田利奈さん、名古屋地裁に提訴(7/8)
 愛知県刈谷市の市立美術館に勤務していた倉田康弘さん=当時(30)=の死亡を公務外の災害と認定した処分は不当として、妻・利奈さん(37)=高浜市=が八日、地方公務員災害補償基金を相手取り、処分取り消しを求める訴えを名古屋地裁に行いました。

トヨタのチーフエンジニアの過労死認定   開発責任者、残業続き豊田 労基署
 二〇〇六年に死亡したトヨタ自動車(愛知県豊田市)のチーフエンジニアの男性=当時(45)=について、豊田労働基準監督署は八日までに、過労が原因だったとして労災と認定しました。
 同労基署の決定などによると、男性は〇四年十一月に中型セダン「カムリ」のハイブリット型の開発責任者となり、デザインや原価計算だけでなく広報対応まで統括。〇六年一月二日未明、豊田市の自宅で就寝中に虚血性心疾患で死亡しました。

キャノン研究者の過労自殺、 労災認定される
 キャノンの研究者が鉄道に飛び込んで自殺しました。厚生労働省はこの6月、過労自殺として労災と認定しました。
 研究所で電子写真の技術開発をしていたAさんは06年11月、研究所に近いJR御殿場線に飛び込みました。37歳でした。死亡前の半年間、Aさんはすざましい残業を続けていました。
▽108時間(06年6月) ▽106時間(7月) ▽79時間(8月) ▽212時間(9月) ▽183時間(10月) ▽263時間(11月)ー。54日連続勤務もあります。

今後の日程

・ドラッグスギヤマ 杉山裁判(損害賠償)
2008年9月17日(水)13:30 判決 名古屋高裁大法廷



このページへのコメントはこちらへ!
◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい

『スパーク』へ意見・コメントを送る