デンソー「スパーク」より転載

"スパークNo249" (2006.10)



「トヨタ・デンソー過労うつ病裁判」傍聴記(連載第一回)
 ディーゼル製品の開発を担当していた、デンソー社員が業務による、パワハラと過労でうつ病になり、損害賠償の訴えを名古屋地裁に起こしました。今回から、本紙上でこの裁判傍聴記を連載していきます。第一回裁判は六月二十八日におこなわれ、本人が意見陳述をおこないましたので、今回はその骨子をお伝えします。

 原告意見陳述要旨
(1) 提訴に至った理由

@私が今回このような提訴に至った理由のひとつは、『泣き寝入りしたくないという事』です。
会社や上司の命令に背くこと無く従順に与えられた業務は自分の役割・使命だと考えて責務を全うすることを目標に体力の限界まで長時間労働もして頑張って来ました。
 しかし、過労によるうつ病を発症し休職を余儀なくされた時には、会社や上司はあくまで私病で自己責任だということで、それらを理由に人事査定を低くされたり理不尽な対応をされました。
A2つ目の理由は『トヨタグループ企業の労働条件の改善をしたいという事』です。
過酷な労働環境・条件を私が提訴する事により少しでも良い方向に改善され、従業員が健やかに生き生きと働ける労働環境を実現することが2つ目の理由です。

(2) 私の過重労働
出向した当初から過大な負荷と高度な業務を与えられていたこと、協力者がいなかったことで、毎日深夜まで一人で残業して対応していました。
 また、当時の上司からは業務が思うように進んでいない事を理由に度々叱責されたり、他の人のいる前で私の能力や人格を否定するようなパワハラ発言もあり、当時は長時間労働と過重な心理的負荷がありました。

(3) 人事査定の不公平・主観的評価
 私が過重労働の末、うつ病により会社を2ケ月間休職した翌年の2000年度の人事査定で低い評価を受けました。上司に理由を確認した所、上司は『2ケ月休んだから、その分他の人より成果が無かったということだ』と説明され、私は相当に長時間過密労働で働き、目標以上の成果を出したと自負していたので、その回答に納得できず、後日人事部に客観的な評価として妥当かどうかを調査依頼をしました。しかし、人事部からの回答は『休んだことは理由では無く、職能等級に照らし合わせて成果が無かった』という回答でした。

(4) 会社や労働組合の不誠実な対応
 また、本来は弱い立場の組合員を守るべきデンソー労働組合にも何度も相談や支援をお願いしましたが『個人的な案件には関与出来ない』と門前払いの状態で、会社側に対して何も言いません。誰の為の何の目的に為にデンソー労働組合が存在しているのか?存在の意義がわからないですし、我々組合員が毎月組合費を納めている意味が全くなくなってしまいます。

以上で意見陳述を終わります。



うつ病などの復職支援プログラム導入
 デンソーでもメンタル系疾病が増加する中、この七月から、短時間勤務からスタートする復職支援プログラムが導入されました。遅きに失したとはいえ、評価できるものです。今後は、より根本的対策として、このようなメンタルな病気が多発する労働環境の改善が強く求められています。



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