●井上メルマガ('11/10/27)   公務中の米軍属は裁かれない!?

 井上さとしです。

   20日から始まった臨時国会。今週は、新しい閣僚の所信挨拶に対する質疑が衆参の各委員会で開かれており、今日は参院法務委員会で、平岡法務大臣に質問しました。

皆さんは、「公務中」に罪を犯した在日米軍の軍属(軍に雇用された民間人)は、誰からも裁かれないことをご存知でしょうか? 今日はこの問題をただしました。

 在日米軍関係者の裁判権などについて定めた日米行政協定は1953年に改訂され、その後、日米地位協定に引き継がれました。53年改定では、在日米軍の軍人も軍属も「公務中」に罪を犯した場合、第一次裁判権は日本ではなく米側にあると定められました。

 これに基づき、軍人の場合は米軍法会議にかけられます。ところが米最高裁は1960年、平時においては軍属を軍法会議に付することは憲法違反だという判決を下しました。その結果、「公務中」に日本で罪を犯した軍属は、日本では不起訴となり、アメリカでも軍法会議にかけられず、誰からも裁かれないことになっているのです。

 今日の質疑で、平岡法相はこの3年間で46人の軍属が「公務中」を理由に不起訴になっていることを明らかにしました。この46人は、日本でもアメリカでも裁かれていない。こんな不合理が許されるでしょうか。

 米最高裁判決から50年もたっていますが、この問題が国会で議論されたのは初めてだと思います。私がこの問題に気付いたのは、那覇検察審査会の議決書でした。

今年1月に沖縄で米軍属が19歳の少年を交通事故で死亡させたのに「公務中」として不起訴になり、遺族が検察審査会に不服申し立てをしました。同審査会は、不起訴は不当だとし、起訴相当を議決。その議決書の中で、米軍属は米最高裁判決に基づき軍法会議に付されないことを述べているのです。

 ですから、この事件の軍属は、五年間の運転禁止処分を受けているだけです。日米地位協定では、米側で裁判をうければ、日本が重ねて裁判をすることはできません。私は、運転禁止処分という行政処分でも裁判を受けたとみなすのかと法務省をただしましたが、「係争中」を理由に明確な答弁がありませんでした。

 調べて見ると、「駐留軍関係法に関するハンドブック」の中で、米軍の法務担当者がこの問題について書いていました。「連邦裁判所は、平時における米国人家族及び軍属に対する米軍の軍事裁判権を事実上排除した。米国人家族または軍属が接受国の法に違反する犯罪を犯した場合には、実質的に接受国がそれらのものに対する専属的裁判権を持つ」と明記されているではありませんか。

 接受国、つまり日本が専属的裁判権を持つ――公務中であれば軍属についても米側が裁判権を持つという日米地位協定は、アメリカが世界で行っている法運用と食い違っています。1960年に米最高裁の判決が出た時点で、日本が専属的裁判権を持つように日米地位協定を改定すべきだったのです。

 半世紀にもわたり、「公務中」に罪を犯した米軍属が誰からも裁かれていない――自民党政権のもとでこんな事態が放置されてきたのです。直ちにただすべきです。私は、法相と外務省に地位協定の改定を求めました。法相は外務省と協議して対応したいとの答弁でしたが、一刻も早い改定をさらに強く求めていきます。


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