●井上メルマガ('11/9/21) 距離感の違い
井上さとしです。
台風12号に続き、15号による豪雨被害が全国に広がっています。皆さんはご無事でしたか? 被災された方に心からお見舞い申し上げます。
さて、新しく誕生した民主党・野田内閣。衆参での代表質問を終えて総理が国連総会出席で訪米したため、26日からの衆参予算委まで国会質疑は小休止となっています。
参院本会議場で野田総理の所信表明演説と代表質問への答弁を聞いていての率直な感想は、「自民党となにが違うのか」ということでした。政策の中身も、いかにも官僚答弁という原稿をひたすら読み上げる点でも、まったく同じでした。民主党政権で三代目の総理ですが、もはや二年前の「自公政治ノー」の審判による政権交代とは何の連続性もないというのが実感です。
際立ったのが財界直結ぶり。鳩山、菅両政権と比べても財界との距離感がまったく違います。野党時代の民主党は、部分的とは言え大企業の横暴に一定の批判的な対応もしました。その中で誕生した鳩山総理は在任中、経団連を訪れることも官邸に会長を招くこともなく、経団連と民主党の政策対話の懇談会も開かれませんでした。
つぎの菅総理は、鳩山内閣の短命の原因が財界やアメリカの要望を聞くことに甘さがあったと教訓を引き出し、組閣の十日後、菅首相と経済三団体のトップとの初顔合わせが実現します。そしてここで、菅首相が、消費税増税や法人税引き下げを含む「新成長戦略」を説明し、財界側は全面的に支持を表明しました。
直後の参院選で菅内閣は、消費税増税と法人税引き下げを掲げて敗北したものの、選挙後の八月五日には、政権交代後初めて、経団連と民主党との政策対話の懇談会が開かれるなど、財界と民主との関係は、鳩山内閣時からは改善されていたのです。
ところが、菅内閣は財界が望むTPP交渉への参加を打ち出したものの、農林水産業をはじめ国民から反対の声が強く上がる中で判断を先送りします。さらに3・11の原発事故後、国民的に反原発の声があがると、菅首相は、「脱原発依存」を表明しました。ところが、党内や財界から強い異論がでると、菅総理は、「個人的見解」とのべるなど、無責任さをさらけ出してしまいます。
こうした中で菅内閣の末期には、経済界と菅内閣との関係はかなりぎくしゃくしていきます。基本的には財界中心政治の枠内にある政権でも、国民世論が大きくなると政策的に動揺するような政権では困るというのが財界の本音でしょう。
その点、野田政権は、ぶれることなく財界の要望を受け入れ、実行する姿勢を鮮明にしています。野田総理は、国会で指名をうけると、組閣する前に経団連の米倉会長に挨拶に訪れます。組閣前の訪問は自民党時代もなかったことです。席上、米倉会長に、小泉政権の経済財政諮問会議と同じような財界参加の司令塔を作ることを約束しました。
九月一二日には、経団連の米倉会長と経済同友会の長谷川代表幹事が相次いで首相官邸を訪れています。その際、同友会の長谷川代表幹事は、「野田新政権に望む」という提言を持参しました。それを見た野田総理は、「よくわかっている。(一三日の)所信表明演説にほとんど盛り込んでいる」とこたえたのです。事前に調整しなくても、財界の要望と首相の所信表明の中身は一緒だというわけです。
翌一三日には、輿石幹事長と前原政調会長が経団連と会談し、今後、定期的に政策対話を開くことで合意しています。二週間足らずの間に、首相が訪問し、財界が官邸に来て、かつ幹事長がまた会談をするという、鳩山、菅内閣と比べ格段の密接ぶりです。
文字通り財界直結・密着の野田政権。「自公政治のー」の審判を踏みにじり、被災者や国民の願いより、財界の要求を上に置く政治は、国民の厳しい批判に直面するでしょう。国民のみなさんとともに全力をあげます。
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