●井上メルマガ('10/1/31)   施政方針演説

 井上さとしです。

    鳩山総理の初めての施政方針演説を29日の参院本会議で聞きました。前日の予算委員会での鳩山総理に対する初めての質問とあわせて感想を述べます。

    予算委での総理との論戦の内容は前回のメルマガや活動日誌でお伝えした通りですが、初めて対峙しての感想は、「いい人」だな、ということです。身近で向き合っても威圧感を感じさせませんし、小泉元総理のように、話を意図的にすり替えて反論したり、麻生さんのように皮肉たっぷりに答弁することもありません。「金持ち喧嘩せず」という言葉がありますが、そういう雰囲気のある人です。

   しかし、「政治とカネ」の問題で本質的に誠実なのか、国民の暮らしを守る総理として「いい人」なのかといえば疑問です。総理大臣として、問題の深刻さを理解していなのではないか、国民のやり切れない思いや怒りが分かっていないのではないか、と感じました。

    そのことをいっそう感じたのは施政方針演説。総理は演説の中で、インドのガンジー師が唱えた「七つの社会的大罪」を挙げました。まずは「理念なき政治」、続いて「労働なき富」。この瞬間、参院本会議場は失笑とともに、「あんたのことだろ」とのヤジで騒然となりました。私も思わず声を上げました。

      母親から毎月1500万円もの「こども手当」を貰いながら、税金も納めてこなかったことが国民の怒りを呼び、けた違いの金銭感覚に「これで庶民の暮らしの痛みがわかるのか」との声が上がっている時に、この言葉はないだろう、と率直に思いました。

    報道によれば、事前の閣議でも、「労働なき富」というのはやめておいたほうがよいという声がでたが、総理が押し切ったとのこと。「宇宙人だから」として、問題を小さくみせようとする論評もありました。しかし、あだ名は「宇宙人」であっても、鳩山さんは紛れもない「日本国の総理」なのです。その言葉の重みを理解されているのか。

    さらに痛感したのは、演説の最後の阪神大震災に触れた部分。総理は、先日の追悼式典に参加したことを紹介し、震災直後から住民が励ましあって復興に取り組み、全国からボランティアが駆け付け、「みんなで力をあわせ、人のため、社会のために努力したのです。あの十五年前の不幸な震災が、しかし、日本の『新しい公共』の出発点だつたのかもしれません」と述べました。

    これを聞いてあきれました。一番肝心なことが語られていません。私も当時、ボランティアに行きましたが、被災者も全国からかけつけたボランティアも直面したのは「冷たい政治」でした。「住宅の再建に公的支援を」との願いに「日本は資本主義の国だから」と冷たく背を向けたのは当時の自社さ政権でした。鳩山さんは、さきがけの一員ではなかったのか。

    多くの被災者がこの冷たい政治に苦しみ、仮設住宅で孤独死されたお年寄りも大勢います。今なお、生活と営業の再建のための苦しみが続いているのに、「空港より被災者支援を」の声に背を向けて神戸空港が作られました。しかし総理は「神戸の街には活気があふれている」とだけ述べました。何を見てこられたのでしょうか。

    住民の暮らしの現場まで踏み込み、政治の責任を明らかにし、その実行に全力を挙げる。一番肝心なことが抜け落ちています。それ抜きの「いのちを守りたい」という言葉に、空疎なものを感じたのは私だけでしょうか。

    今後の国会論戦でもこのことを問い続けたいと思います。


◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい
『スパーク』へ意見・コメントを送る