●井上メルマガ('08/9/18)   とてつもない!?本だ

  井上さとしです。

    10月26日投票で総選挙が行われるのがほぼ確実な情勢になり、わが活動も選挙モードに突入し、地方遊説と国対や本部の会議で移動続きです。この一週間は、京都→福井→石川→富山→東京→京都→東京→京都→東京→長野→新潟→京都と移動します。今日は京都と東京の間を一往復半しており、このメルマガも23時東京着の新幹線の中から発信しています。

    自民党の総裁選挙は麻生氏が圧勝の流れと報道されています。「勝ち馬に乗る」流れが自民党内で一気に広がっているようですが、その総裁選挙のなかでやはり飛び出したのが麻生氏の失言。先日の豪雨被害で「岡崎や安城だからよかったが、名古屋なら大変」という発言です。

    死者もでており、被災住民が復旧作業におわれているさなかの発言に、両市の市長が抗議文をおくったのとも当然のことです。あまりにもひどい。

    なぜこんな発言がでるのか。新幹線の移動中に麻生氏が昨年7月に出した『とてつもない日本』という著書を読んで、これは失言ではない、彼の政治姿勢から必然的に出てくる発言だと思いました。

    なにしろこの本は、「はじめに」からひどい。インドを訪問した際に、同地の地下鉄建設に派遣された日本人技術者が時間や納期を守る仕事ぶりに感謝されたという話から始まります。そして麻生氏はこう書いています。

    「日本ではよく『カローシ(過労死)』を例に挙げて、日本人は働き過ぎだ、日本人の働き方は間違っているという人がいる。だがそれはあまりにも自虐的で、自らを卑下しすぎていないだろうか。『ノーキ』を守る勤勉さは、私たちが思っている以上に、すばらしい美徳なのである」

    なんという認識! 問題は「働き方」ではなく、「働かせ方」ではないですか。過労死するほど残業しなければ仕事が完成しない程ぎりぎりまでリストラ・人減らしをし、サービス残業すら強いてきた企業。そして、それを野放しにするどころか、推進してきた自民党政治が問われているのです。そのことへの自覚のかけらもありません。

    誰も、過労死するほど働きたいと思っていません。愛する家族や恋人を残して死にたいなどと思っていません。過労死するような働き方を強いておいて、労働者の「勤勉」さにすりかえ、それを「美徳」と持ち上げる――本の最初がこの話ですから、庶民の生活実態、気持ちがわからない人です。

    もう一点。外務大臣もつとめた麻生氏ですが、その外交哲学の貧しいことにも驚きました。麻生氏はこう書いています。

    「学級のクラスを想像してほしい。一番大きい顔をしているのは誰か。もちろん喧嘩の強いA君だ。一方B君は、腕力はそれほどでもないが、カッコよくて頭もいい。一目置かれる存在だ。そして、C君は、腕力もないし、身につけている服や持ち物は個性的で良質なのにカッコよくないけどお金持ちの子」

    そして、麻生氏はA君はアメリカ、B君はフランス、C君は日本にたとえ、C君はいじめられないためにどうすればよいのか、と問いかけたうえで――

    「従来どおりアメリカと同一歩調をとることを基本姿勢とするのが、日本にとって得策と考えていいのではないか」「身の安全を自力だけで守ることができないのであれば、ケンカの強いA君と仲良くするというのは、子供でも知っている生活の知恵ではないだろうか」

    いや〜これにはあきれ果てました。軍事力で脅して他国に身勝手な言い分を押し付けるようなアメリカのやり方をなんの批判もなく肯定するものです。今の世界を相変わらずアメリカの一極支配中心に見て、南米や東南アジアで広がる平和と自主的外交の新しい流れは眼中にないようです。国連憲章の精神や日本国憲法をどう生かし、世界の平和と安定を作り出していくかという哲学のかけらも感じられません。

    よくもまあ、こんな考え方で国連の常任理事国にしてほしいなどというものですね。世界からアメリカの子分が増えるだけと見られているのはなぜか、よく考えてほしいものです。

    しかも、これは教育論としてもひどい。「いじめられないためには、喧嘩の強い子と仲良くするのが生活の知恵」と子どもたちに教えたらいいと思っているのでしょうか。クラスで話し合いをして暴力やいじめをなくすために努力している子供たちも少なくありません。そんな子供たち以下の「生活の知恵」しかないとすれば、情けない。

     二点だけ書きましたが、これが総理候補の著書なのかと思いました。自民党が麻生氏を総裁に選び、わが国の総理になることは数の力のもとでどうしようもありません。しかし、はっきりいえることは、この人物が総理に居座り続けるならば、わが国は「とてつもない日本」ではなく、「とんでもない日本」になってしまうということです。

    なんとしても、総選挙で勝利し、政治の中身を変えなくては。


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