●井上メルマガ('07/6/26) 福祉の心は何処へ
井上さとしです。
このお役所はいったいどうなっているのか。今日、つくづく思いました。今朝の赤旗の1面で報道した「国保交付金 国が算定ミス」の問題で、党議員団として厚労省の担当者から説明を受けたときのことです。
問題になっているのは市町村の国保財政格差を是正するための「特別調整交付金」。厚生労働省の算定ミスで、本来なら那覇市の国保財政に入る交付金が10年間で5.5億円不足していたことがわかったのです。昨日、同市議会で不足分の補てんを求める意見書が全会一致で可決しました。この決議を受けて赤嶺衆院議員が厚労省に説明を求めたことにより、全国に波及する重大問題であることが明らかになりました。
今日のレクは、さらに詳しい経緯や責任、今後の対応などをただすため行なったもので、マスコミも多数詰め掛けました。
そこで明らかになった事実は――
○今回の問題は、特別調整交付金の算定ソフトの誤りによるもので、現在使用しているソフトだけでなく、前のバージョンから間違っていた可能性もあり、間違った算定期間は10年以上にわたる。
○厚労省の担当者が昨年の秋に間違いに気がついたが、上司にも、自治体にも報告しないまま昨年度末の特別調整交付金は訂正した金額で交付した。
○那覇市は不足した特別調整交付金のままで国保会計の計算をし、06年度国保財政の赤字を見込んで2月に国保税を値上げした。新年度になって黒字に転化し、おかしいと思って調べたら、特別調整交付金が前年度より増えていることがわかった。
○そこで6月の初めに厚労省に問い合わせたところ、厚労省の担当者がミスを認めた。
○同じような特別調整交付金の不足は全国605自治体に及ぶ
――というもの。つまり、厚労省は間違いを知りながらこっそり訂正し、那覇市が気づかなかったら、この間の不足分は明るみにならなかったということです。ひどい。ひどすぎます。高い国保料にあえいでいる国民の気持ちが少しでも分かっていたら、とても出来ないはずです。
我々の質問に、担当者が省内でも報告しなかったため、厚労省としてこの問題を認識したのは6月22日に沖縄の地元紙が報道した時が初めてだというのです。そんなことが信じられるでしょうか。昨年度末の特別調整交付金は、算定ミスを是正して交付したために前年度より大幅に増えています。そんなことを担当者の一存でできるとは考えられません。
ましてや、6月の初めに那覇市からの問い合わせに対してミスを認めながら22日まで上司に報告していないというのも、ありえない話です。組織ぐるみで事実を隠蔽し、責任逃れをしていたと疑われても仕方がないではありませんか。
しかも、当初、厚労省は那覇市に対し、「制度上、過去の補てんは困難だ」と返答していました。これもひどい話です。我々の追及に厚労省は、全国的な状況調査をしており、今年度中に不足分に対して一定の補てんを行なうことを約束しました。党議員団として、さらに徹底的に追及していきます。
それにしても、自分たちのミスでありながら、責任をもって補てんや給付をしないという点で、この問題も「消えた年金」の問題もまったく同じではないでしょうか。それだけではありません。介護保険を食い物にしたコムスンの事件も、厚労省を相手取った原爆症認定訴訟をはじめ、行政訴訟で次々敗訴しているのも私には同じ問題に見えます。
国が責任を持つべきことを営利企業にやらせる、国民の立場で行なうべき年金や国保行政なのに、役所の責任逃れを優先する。つまり、憲法で定められた生存権を守るという社会保障行政の土台――「福祉の心」を忘れてしまっている、ということです。それは行政の退廃をもたらします。
この政治をかえなくては。もう、待ったなしです。
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