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2008年10月30日(木)「しんぶん赤旗」

主張
「派遣切り」
大企業は雇用責任を果たせ


 アメリカ発の金融危機が世界的な株安や円高、輸出の落ち込みに波及する中で、自動車や電機などの大企業で、派遣労働者や期間従業員など非正規の労働者を削減する動きが広がっています。完全失業率も上昇し始めています。
 世界的な金融・経済危機の影響を受けているとはいえ、大企業は経営が行き詰まっているわけではありません。「派遣切り」などといわれる安易な人減らしはやめるべきです。大企業はいまこそ雇用の社会的責任を果たすべきです。

派遣拡大の正体見えた
 派遣労働者や期間従業員を狙い撃ちした人減らしの動きは、輸出の落ち込みなどを先取りして、秋口から始まっています。トヨタとその系列企業は、愛知や静岡、九州など全国各地の工場で派遣労働者の契約を中途解除したり、期間従業員を解雇するなどの動きを強めています。三洋電機など電機や精密機械の大企業でも期間従業員の解雇が動き出しています。
 派遣労働者や期間従業員は、満足に生活できないような低賃金で働かされてきたうえ、工場の近くに派遣会社などが確保した寮などに住まわされている例も多いため、解雇と同時に寝起きする場さえ奪われます。付近のコンビニの売り上げが急減するなど、地域にとっても大問題です。
 実際には、金融・経済危機の影響は出始めたばかりで、人減らしはあらかじめ労働者に犠牲を押し付け、大企業が大もうけを続けるためです。たとえばトヨタは輸出が落ち込みそうだと収益見通しを下方修正しましたが、それでもなお来年三月末までで一兆三千億円もの純利益を見込んでいます。
 大企業は正社員を減らし非正規の労働者を増やすことで生産コストを切り詰め、輸出を増やして、大もうけを続けてきました。金融・経済危機が始まり輸出が減りそうだとなると、一転、非正規労働者を狙い撃ちして人減らしを始めるのは、非正規を雇用の調整弁として使い捨てするもので、絶対に許されることではありません。非正規が狙い撃ちされるのは、正社員だと最高裁の判例でも確立し労働契約法にも盛り込まれた「整理解雇の四要件」が適用され、労働者との協議がないなど合理性のない解雇は強行できないからです。
 財界の雇用戦略のシナリオといわれる、日本経営者団体連盟(日経連、現在は日本経団連に合流)の一九九五年の報告「新時代の『日本的経営』」は、労働者を長期的に継続雇用する労働者と、雇用調整に柔軟に対応できる労働者に分けることを提言しました。最近の「派遣切り」などの動きは、こうした狙いを浮き彫りにするものです。

雇用守る国民的運動を
 企業は経営者だけ、株主だけのものではありません。資金をだすのは資本家や株主ですが、そこで働くのは労働者であり、商品を買うのは消費者です。経営者であれ労働者であれ、地域の支えがなければ存立できません。企業さえ大もうけできれば、労働者も地域も犠牲にしていいというのは間違っています。
 企業に雇用の責任を果たさせる国民的な運動が不可欠です。労働者派遣法の改悪など非正規の拡大を応援してきた政府には、大企業応援政治を転換し、大企業に社会的責任を果たさせるよう求めていくことが重要です。

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