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2008年10月9日(木)「しんぶん赤旗」
人間“使い捨て”の大企業の横暴 政治の責任かけてただせ
衆院予算委 志位委員長の質問
日本共産党の志位和夫委員長が七日の衆院予算委員会でおこなった基本的質疑を紹介します。
派遣労働をめぐって一定の変化――労働者のたたかいが現実を一歩動かしている
(写真)パネルを示して質問する志位和夫委員長=7日、衆院予算委
志位和夫委員長 日本共産党を代表して、麻生総理に質問します。
二月の本委員会での質問に続いて、一千万人をこえて広がっている「働く貧困層」の問題、とくに、派遣労働をはじめとする不安定雇用の問題について、総理の見解をただしたいと思います。
この間、派遣労働をめぐっては、一定の変化も生まれております。規制緩和一辺倒だった政府・与党も、きわめて不十分ながら労働者派遣法の改正をいいだしました。一部の大企業の製造現場でも、派遣解消の動きが生まれております。労働者のたたかいが、現実を一歩動かしつつあります。
しかし、問題の解決は、緒についたばかりにすぎません。とりわけ私が、強い憤りを感じるのは、日本を代表する大企業が、正社員を減らし、派遣、請負、期間社員など非正規雇用に置き換え、そのことで大もうけをあげたあげく、人間をモノのように「使い捨て」にしていることです。そして、そのなかで、数々の違法行為が横行していることであります。
志位 違法な労働を強いられ、救済を求めたら職を失う――理不尽と思わないか
麻生首相 事実ならばきわめて不当な話だ
志位 具体的にただしていきます。
私の本会議での代表質問にたいして、総理は、「偽装請負などの法違反が確認された場合には、労働者の雇用が失われることのないよう必要な措置を取るよう指導している」と答弁されました。これは、偽装請負などの法違反が確認された場合には、違法行為の是正を行うことはもちろんですが、それだけではなくて、違法行為の被害者となっていた労働者の雇用を守るための指導をしているということですね。総理、端的にお答えください(首相、答弁に立とうとしない)。総理の答弁ですから。総理。総理の答弁ですよ。
舛添要一厚生労働相 お答えいたします。
衛藤征士郎予算委員長 簡潔に。
厚労相 偽装請負などの労働者派遣法につきましては、労働者の雇用が失われることがないよう派遣元、派遣先、双方の企業にたいして必要な措置をとるように指導しているところでございます。また、労働者派遣法第四九条の三、第二項において、派遣労働者が労働者派遣法違反の事実を申告したことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならないと規定されておりますので、厳正に指導することといたしております。
日亜化学――偽装請負からの救済求めた労働者から、仕事を取り上げ、雇い止めに
志位 雇用が失われることがないよう指導している、そして不利益な取り扱いをさせないようにしているという答弁でした。
しかし、現実はどうか。発光ダイオードで知られる徳島県の日亜化学では、偽装請負で働かされていた若者たちが、その救済を行政に求め、徳島労働局も偽装請負だと認定しながら、六人の労働者が雇い止めを一方的に通告され、九月末に職を失うという事態がおこっております。
私は、救済を求めた労働者の一人である島本さんにお会いして事実経過をうかがいました。島本さんは、ライン作業中にロボットに接触して、左手首を二十数針縫う大けがを負った。しかし、日亜化学と派遣会社は、労働災害の責任をすべて島本さんに負わせ、偽装請負を隠ぺいするための口裏合わせを強要しました。偽装請負のもとで大けがをさせられたうえに、その隠ぺいまで強要された島本さんは、仲間たちとともに、やむにやまれず偽装請負を告発し、救済を求めました。島本さんたちの訴えを、労働局も偽装請負と認め、いったんは千六百人の請負労働者全員を、順次、直接雇用とする合意が成立しました。ところが、日亜化学は合意をほごにし、さらに島本さんたちから、これまでの仕事を取り上げました。男性は野外での草むしり、女性は一日中清掃の仕事につけたうえ、九月末に雇い止めを一方的に強行しました。
これは総理に認識をうかがいたい。やむにやまれず、労働者が違法な働かせ方からの救済を求め、労働局も違法と認めながら、違法の働かせ方を強いてきた企業によって逆に職を奪われる。私は、こんな理不尽なことはないと思います。総理もこれは理不尽だとお思いになりませんか。
麻生太郎首相 あの、個別の案件には、お答え、その実態がよくわかりませんのでお答えいたしかねますが、偽装請負の話がありましたけど、労働者派遣法違反ということが確認をされた場合には、これは労働者の雇用が失われることがないように、派遣先もしくは、いわゆる派遣元、双方の企業にたいして必要な措置をとるように指導していくというのは当然のことと存じます。
志位 私が聞いたのは、これは理不尽ではないかということなんですよ。こういうことを理不尽だと言えないのは、私は情けないと思う。雇用が失われないように指導しているとおっしゃられたけれども、現に(雇用は)失われているんです。
キヤノン――直接雇用にしたが、パワハラをおこなったあげく、雇い止めに
志位 同様の事態は、全国各地で起こっております。私はキヤノン宇都宮光学機器で偽装請負で働かされていた若者たちからの訴えを受けました。この場合も、栃木労働局によって偽装請負だと認定された労働者が、期間社員になったものの、その一人、宮田さんはわずか十一カ月、八月末に雇い止めにされ、職を失いました。
宮田さんがキヤノンで行っていた仕事を聞きますと、半導体露光装置の最も重要な部分である、レンズを磨く機械の先端部分に装着する工具をつくることです。宮田さんは百万分の一ミリという精度が求められるレンズ製作の中でも、きわめて繊細で熟練を要する作業を行っていた。正社員の技術指導までまかされるほどの熟練した技術を持った人です。その宮田さんに、会社側は、「お前はばかか」とののしったり、頭を小突くなどのパワーハラスメントまで行った。この事実は会社側も認めています。そのあげく、ささいな「理由」を無理やりつくって雇い止めにしました。
これは、総理の認識を問いたい。今度は認識をはっきり答えていただきたい。認識を問います。やむにやまれず違法状態からの救済を訴えたら、自分の職がなくなる。日亜化学で、キヤノンで、全国各地で、これが起こっている現実なんですよ。こんなことを許しておいて、どうして企業の違法行為がなくなりますか。違法は横行するばかりになる。こう私は考えますが、いかがですか。
首相 個別の例につきましては、先生のご意見だけで相手側の話をまったく聞かず、一方的な話だけではなかなかお答えいたしかねる。当然のことだと存じます。また、この二つの例をもって、全国各地で起こっていると言われると、その全国各地の例を存じませんので、正直、これ以上お答えようのしようがありません。ただ、事実が事実だとするならば、それはきわめて不当な話だと思います。
厚労相 個別の企業について指導監督状況、これはお答えすることができませんが、法律に基づいて、つまり労働者派遣法違反が確認された場合は、たとえば今あったような申告者に対する不利益取り扱いなど、こういうことがあれば厳正に指導を行っているところであり、法律に基づいて厳正なる指導を行います。
志位 私の発言が一方的な発言であるかのように総理はおっしゃいましたけれども、これは、労働局も違法だと認めているんですよ。そして不当だと、もし仮に事実だとしたら不当だということをおっしゃった。これは重い発言だと私は思います。
モノを言わせず、モノのように“使い捨て”――雇用を守る断固とした措置をとれ
志位 私は、もう一つ、総理に認識をお聞きしたい。現場で起こっていることは、二つの例を示しましたけれども、違法な労働を強いられても、それにたいしてモノを言えば職が奪われるということなんですよ。これは二つの例だけではない。松下プラズマだって、あちこちで、そういう動きが起こっているんです。こういうことがまかり通ったら、派遣労働者がどんな働かせ方をされても、モノを言えなくなります。モノを言うなと言うのか。派遣労働者にモノを言わせず、モノのように「使い捨て」にする。私は、これは個別の例うんぬんではなくて、こういうことは許さないという決意を、総理は行政の最高責任者として、この場ではっきりお示しいただきたいと思います。
首相 さきほどの答弁と重なるようで恐縮ですけれども、個別の案で事実であればさきほど申し上げた通りです。それから全国各地でというのは、今度あちこちにかわっただけで、言っておられることは、さきほどと同じことを言っておられるのですが、私どもとして、そういったものが事実であるならば厳正に対応する、さきほど厚生労働大臣の答えと同じであります。
志位 事実でありますから、厳正に対応をお願いしたいと思います。
若者が勇気をもって偽装請負を告発したがゆえに、差別的な扱いを受け、職を奪われるなどという理不尽なことは、一人たりとも、絶対に許してはならないと思います。私は、総理に、労働者の雇用を守る、断固とした措置を、関係省庁に指示することを要求するものです。
志位 トヨタ車体の違法な派遣使いまわし――これでは派遣が永久化される
首相 現実に照らして、きちんと法の下に対応させる
労働者派遣法の2つの原則――常用雇用の代替禁止と、最長3年の期間制限
志位 つぎにすすみたい。大企業で横行している違法行為は、偽装請負だけではありません。
そもそも労働基準法、職業安定法では、人貸し業はきびしく禁止されています。そこで政府は、派遣労働を導入するときに、つぎの二つの条件を付けざるを得ませんでした。
第一は、派遣は「臨時的、一時的な場合に限る」、「常用雇用の代替――正社員を派遣に置き換えることはしてはならない」という大原則であります。
第二は、この大原則を担保するものとして、派遣受け入れの期間制限が設けられました。すなわち、派遣期間は原則一年、過半数の労働者の意見を聴取した場合に、三年までという制限があって、期間制限を超えて同一業務をさせることは違法行為になるということであります。
この二つの条件は、間違いありませんね。これは厚生労働大臣に確認だけいただければ結構です。
厚労相 いま、委員がおっしゃった、この臨時的、一時的な労働力の受給調整制度としてあるんだということと、常用雇用のうえの代替にしない、これもその通りでございますし、原則一年、最長三年ということも、これも委員のご指摘の通りでございます。
トヨタ車体での派遣激増――コスト削減を目的にした常用代替であることは明瞭
志位 確認いたしました。
ところが、現実がどうなっているか。
世界一の自動車メーカーとなったトヨタの実態を私は調べてみました(パネルを示す)。これはトヨタのグループ企業のなかでも中核をなすトヨタ車体――、プリウスとかエスティマなどの完成車をつくっている大企業が、この間、どれだけ派遣労働者を増やしてきたかの推移のグラフであります。
二〇〇五年の二千五百十六人から、二〇〇八年には五千七百三十九人にまで増やしています。二倍以上に増やしています。全従業員に占める派遣の割合は、16・5%から26・3%にまで増えています。私たちが入手した内部資料がありますが、ラインによっては派遣の割合が五割から六割、七割というラインもあります。トヨタ車体は、派遣の比率を高めることで、労働コストを削減し、利益を百八十六億円から二百二十四億円まで大きく増やしました。
私は、派遣労働者から直接話を聞きました。こういう過酷な実態が訴えられました。総理、お聞きください。
「車のドアやボンネットなど重いものでは二十キロから三十キロもの大型部品を段ボールにこん包する仕事をしています。多いときには一日千箱ものこん包作業となり、あまりの重労働のため腰痛で苦しめられています。作業は、正社員とまったく同じ仕事ですが、給料は手取りで二十万円、正社員よりはるかに低い。さらに派遣会社が借り上げたアパートに住むと五万円以上が引かれ、手元には十数万円しか残りません。アパートは、3LDKなら三人、2LDKなら二人の共同生活で、部屋はふすま一枚で仕切られているだけ、自分の部屋に行くにも、他人の部屋を通らないと行けないアパートもあります。六カ月ごとの短期雇用契約を、くりかえし更新させられています」
こういう訴えでありますが、こういう非人間的な労働と生活を強いられている派遣労働者が、トヨタ車体では、このグラフの通り、三年を超えて増え続けているわけであります。このグラフをみれば、派遣労働者の導入が、臨時的・一時的な生産調整ではなくて、恒久的なコスト削減で大もうけをあげることを目的としたものであり、さきほど政府もお認めになった禁止されているはずの常用雇用の代替――正社員から派遣への大規模な置き換えであることは明瞭(めいりょう)ではないですか。総理いかがでしょう。
厚労相 個別の企業にたいする指導監督状況は差し控えたいと思いますが、一般論で申し上げれば、最大三年の派遣受け入れ可能期間は、派遣先の就業場所ごとの同一の業務について判断するものでございますけれども、就業の実態から同一の業務であれば必要な指導を行うこととなります。今後とも厚生労働省としては、就業の実態を踏まえて厳正的確に指導してまいりたいと思っております。
トヨタ車体では、派遣労働者の奇妙な配置換えがおこなわれている
志位 このグラフからだけでも、私は常用代替は明らかだと思いますが、同一の業務かどうかの実態を踏まえてとおっしゃったので、つぎにすすみたいと思います。
私は、この九月に、愛知県にうかがい、トヨタで働く労働者と懇談した際、トヨタ車体で派遣労働者の奇妙な配置換えが行われているという訴えを受けました。あるラインでの配置換えを図にしたのがこのパネルであります。(パネルを示す)
これを見ながら聞いていただきたいのですが、トヨタ車体ではラインごとにA直、B直という二つのグループに分けて、昼夜二交代で仕事をしています。A直が日勤の週は、B直が夜勤になる。翌週はA直は夜勤、B直が日勤に入れ替わります。A直とB直は、働く時間帯が一週間ごとに交互に変わるだけで、つくっている車も同じなら、ラインも、工程もまったく同じです。つまりまったく同じ仕事をしています。
このパネルを見ながら聞いてください。赤い色が派遣社員、青い色が正社員など直接雇用です。この九月までは、A直にもB直にも正社員と派遣社員がいました。正社員が十八人、派遣社員が十四人です。ところが、これが十月から組み替えられて、B直にいた派遣十四人はすべてA直に移され、A直は派遣二十八人、B直は派遣がゼロとなりました。移された十四人の派遣を埋めるために、A直にいた正社員のうち十四人がB直に移されました。そして、三カ月と一日後の、来年一月からは、A直にいた派遣二十八人がまるごとB直に移され、A直は派遣がゼロになる。それを埋めるためにB直にいた正社員のうち二十八人がA直に移されるといいます。こういう配置換えは、全社的に行われているとのことでした。
総理、いったいなんのためにこんな複雑な配置換えをやっていると思いますか。
厚労相 さきほど申し上げたように、個別の会社でどういうことが行われている、そこにどういう監督指導を行っているかは差し控えたいと思いますが、就業の実態をふまえて就業の実態から同一の業務であれば必要な指導監督を法に基づいて行います。
もしこんなことを許したら、派遣労働の期間制限は全国どこでも意味がなくなる
志位 同一業務だったら必要な指導を行うということをいわれました。
この問題について、トヨタ車体で働く労働者に聞きますと、九月に会社側から、つぎのような説明があったといいます。もう一度パネルを見ながら聞いてほしい。
「労働者派遣法との関係で、法違反をしないために配置換えを実施する。最小の職場単位である『直』ごとに三カ月と一日、派遣を受け入れない期間をつくる。最初の三カ月と一日は、派遣をすべてA直に集めて、B直は派遣をゼロにする。続く三カ月と一日は、派遣をすべてB直に集めて、A直は派遣をゼロとする。これをやればクーリングオフが成立し、法律がクリアできる。これは全社(富士松、刈谷、吉原、いなべ)で実施し、来年五月までに全社で完了する予定だ」
こう説明したそうです。
さきほど確認したように、派遣法制では、どんなに長くても、派遣期間というのは三年までとなっております。ただし、期間制限いっぱいまで派遣を使ったとしても、三カ月と一日以上、派遣を受け入れない期間をつくれば、派遣受け入れを再開できるようになるとされています。これがいわゆる「クーリングオフ期間」といわれるものです。
トヨタ車体では、こうした配置換えを行えば、「クーリングオフ」が成立し、三年を超えても派遣労働者を使いつづけることができるとしています。私たちは、三カ月と一日だけ間をあければ、また派遣を受け入れることができるという「クーリングオフ」を認めること自体、問題であると考えていますが、仮にそれを認めたとしても、いったい、こんなやり方が合法的だと認められるのか。
さきにのべたように、A直とB直は、働く時間帯が交互に入れ替わるだけで、つくっている車も同じなら、ラインも、工程もまったく同じです。さきほど大臣は、実態をみて同一業務かどうか判断するといわれたけれども、まったく同じ仕事をしています。私は、現場で何度も確認しました。それを、こういう配置換えさえやれば、期間制限を超えても派遣の扱いをつづけさせることができるというんですよ。とんでもないことではないですか。こんなことが許されたら、派遣労働者は、永久に、派遣という低賃金、「使い捨て」の不安定雇用に苦しめつづけられることになります。
派遣法では最大三年という期間制限があり、それを超えたら直接雇用を申し出ることが義務づけられている。それが何の意味もなさなくなるではありませんか。
これはトヨタ車体ぐるみの明白な違法行為ではないか。直接雇用を逃れるための、“期間制限偽装”ではないか。こう考えますがいかがですか。
厚労相 さきほども申し上げましたように、実態をきちんとふまえて、法に基づいて、厳正、適格なる指導を行いたいと思います。
志位 総理にうかがいたいのですが、これはたいへん重大な問題ですよ。昼夜二交代で、働いている場所も同じ、つくっているものも同じ、仕事もまったく同じであっても、こういう配置換えさえすれば、「クーリングオフ」が成立して、三年という期間制限をこえて派遣のまま使いつづけることができるなどということが、もし仮に許されたら、いったいどうなるか。昼夜二交代というのは、全国どこでも製造現場で当たり前に行われていることであります。もしこんなことを許したら、派遣労働の期間制限は、全国どこでも何の意味もなさなくなるではありませんか。これはたいへんな問題だと思いますが、総理いかがでしょう。
首相 いま舛添大臣からもご答弁申し上げましたとおり、同じことしか申し上げられませんが、これが仮に現実ということになるのであれば、その現実に照らして、きちんと法の下に対応をさせていただくということになろうと存じます。
志位 それが現実であるとするならば、これは現実ですけれども、こういうやり方は許されない、こういう配置換えで「クーリングオフ」なるものが成立したとして、派遣労働者をずっと使い続けるというやり方は許されないと、はっきり言っていただきたい。総理、はっきり言っていただきたい。
厚労相 委員ご指摘の問題、いわゆる「二〇〇九年問題」といわれているものでございまして、最大三年の派遣可能期間満了後は、指揮命令が必要な場合は直接雇用に、そうじゃない場合は請負によるとすべきであるということでありまして、この基本的な考え方は、各事業主団体にたいしても、きちんと対応するように、九月二十六日、局長通知を発出して要請をしたところでございます。そういうことで、直接雇用または請負は、いわゆる、さきほどご指摘のありましたクーリング期間、三カ月を経過後、再度の労働者派遣の受け入れを予定することなく、適切に行われるべきものであると考えて、この方針を貫徹すべく、就業の実態をきちんと踏まえて、法に基づき的確な指導を行いたいと思っております。
志位 「クーリングオフ」の後に、再度の派遣労働者(の受け入れ)を予定することなくと、直接雇用あるいは請負に(すべき)というのが方針だというふうに言われましたけれども、現場はそうなっていないんですよ。現場は。
トヨタに調査に入り、違法状態があればただちに是正せよ
志位 トヨタは、世界規模の超巨大企業であります。総理は、経済財政諮問会議の「民間議員」にトヨタ会長の張富士夫氏を内定したとも伝えられました。そういう企業が、人間らしい雇用の責任を果たしていない。社会的責任を果たしていない。派遣労働、期間社員など、「使い捨て自由」の労働を大規模に導入し、正社員のなかでは「過労死」を生み出す長時間・過密労働を強制し、そのうえに年間二兆円もの空前のもうけをあげてきたことは、きわめて重大です。
今日の質疑でも、少なくともトヨタが、常用代替、期間制限違反など、違法行為を行っている疑い、重大な疑いが浮き彫りになりました。
総理に求めたいのですが、トヨタに調査に入ってください。調査に入って、違法状態があればただちに是正する、そのことを関係省庁に指示していただきたい。総理。
首相 内閣総理大臣の職務とはちょっと違うんじゃないかと思いますけれども。厚生労働省所管の話なんだと思いますんで、ちょっと私に言っていただくのはいかがかなものかと。まず、法律的、法体系としてはそう存じます。
それから、トヨタ車体とトヨタ自動車とはこれは別法人、トヨタ車体というのはよく知らないんですが、ちょっと個別で恐縮ですけれども、トヨタ自動車、トヨタ車体とは、どういう法体系とか、また、会社の法人格になっているかを、ちょっとよく存じあげませんので、ちょっと何とも申し上げられませんが、少なくとも、さきほど舛添大臣が申し上げましたように、法に基づいて、きちんと対応させていただくというのが正しい答えなんだと存じます。
志位 トヨタ車体というのは、トヨタが半分以上の株主の権利を持っているグループ企業ですよ。ですから、直接トヨタの本体との関係でも、トヨタの本体が直接の責任を負っているグループ企業です。しかも、その中核的な企業です。そういう中核的企業がこういうことをやっている。ですから、これは、少なくとも、重大な法違反の疑惑があるわけですよ。疑いがある。それに、あなたは、自分の仕事じゃないと言ったけれども、こういう重大な法律が違反されているんだから、そういう疑惑があるんだから、それを、舛添さんに調査しなさいというのは、総理大臣の当然の仕事ではないですか。調査をしろとも言えないんですか。もう一度聞きます。
厚労相 個々の企業にたいしてどういう指導監督をするかはつまびらかにできませんが、法律に基づいて、就業の実態をきちんと踏まえたうえで、厳正に、そして的確に対応したいと思います。
志位 調査に入るということを約束できないところが情けないですね。トヨタという言葉が出ると、みんなおびえて、調査も言えないのか。
志位 現に派遣として働いている労働者の状態を良くするという基本的姿勢で対応せよ
首相 派遣元・派遣先の双方に必要な処置をとるように指導する
無法による被害者にいっそうの被害をあたえることは、政治の責任にかけて許すな
志位 今日は、私は、大企業のなかでの違法行為にたいして、政治がどういう責任を果たすべきかについてただしてまいりました。違法状態の是正をはかることは当然ですが、総理に、私が強く求めておきたいことが二つあるんですよ。
一つは、違法状態を是正することで、逆に、現に働いている派遣労働者が職を失ったりすることを絶対に許さないことであります。日亜化学やキヤノン宇都宮光学機器では、偽装請負の是正はしたけれども、救済を求めた労働者は逆に職を失った。松下プラズマでも雇い止めが行われようとしています。無法による被害者に、いっそうの被害をあたえるようなことは、政治の責任にかけて許すべきではないと思います。
いま一つは、違法状態で働かせていた場合には、受け入れ企業は、期限の定めのない直接雇用――正社員にすることを原則とすべきだということです。
私が、二月の質問でとりあげた具体例のうち、日立のグループ企業で、期間制限を超えて五年間にわたって派遣で働かせられていた労働者の問題を、二月の委員会でとりあげました。そのとき舛添大臣はこれは違法だとはっきりおっしゃいました。質問の後、会社側からこの労働者に、女性の労働者ですが、正社員採用の申し出があって、正社員になりました。これが当たり前の姿だと私は思うんですよ。
ところが、私が二月の質問でとりあげたキヤノンは、その後どうなったか。六月末に、私が滋賀県・長浜キヤノンに直接調査に入ったところ、本社の専務取締役が対応し、「製造派遣は年内に解消する」と約束はしました。これは一歩変化です。しかし、「請負または期間社員に置き換える」ということが方針だという答えでした。期間社員はどうなっているかと聞きますと、最初は五カ月、その後は六カ月ごとの契約更新を繰り返したのち、最長でも二年十一カ月で雇い止めするという。これでは「首切り自由の使い捨て労働」という問題は解決しません。
どんな対策も、私が本当に求めたいのは、現に派遣として働いている労働者の労働条件が良くならなければ何の意味もありません。違法行為からの救済を求めた労働者の職を奪うことは絶対に許さない、違法状態で働かせていた場合には受け入れ企業の責任で正社員とする――そうしてこそ違法はなくなりますし、安定した雇用が保障されるのではないでしょうか。政府は、そうした基本的姿勢でこの問題に対応すべきだと私は考えますが、総理の見解をうかがいたいと思います。
首相 あの、たびたびこれはこれまでの方も答弁されたんだと思いますが、いわゆる派遣労働者の雇用が失われることのないように派遣元ならびに派遣先双方の企業にたいして必要な処置をとるように指導をするということでありまして、舛添大臣のほうからもたびたびお話を申し上げているとおりであります。引き続き適正な運用が行われるように指導していかねばならんと考えています。
労働者派遣法の抜本改正を求め、「働く貧困層」の解消までがんばりぬく
志位 日本共産党は、労働者派遣法は、一九九九年の原則自由化前に戻し、最も不安定な働かせ方である登録型派遣は原則禁止するとともに、違法行為があった場合は受け入れ企業に正社員化の義務を負わせる、抜本的法改正を求めます。
わが党の主張は、いまや立場の違いをこえた国民的世論になっております。十月三日、日本弁護士連合会は、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」を発表しています。そのなかで、「労働と貧困の現状は、本来人々が生まれながらにして享有している人権を侵害するものであり、もはや看過できる状況ではない」とのべ、「国は、非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するために、正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って、労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである」とのべております。総理は、日弁連のこの提言を正面から受け止めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
首相 あの、今のお話ですけれど、登録型の派遣というのはすでに二百三十万人ぐらいの方々に利用されていると理解をいたしております。いまのお話をうかがいますと、これを抜本的に改めるという話ですけども、これはかえって労働者の不利益にならせんかなという感じが率直な感じがいたします。平成十一年の原則自由化以前に戻すということは適切ではないのではないかと。これは前にも申し上げたと思いますが、そのように思っております。また労働者派遣法につきましては、労働者の保護を強化するという観点から、日雇い派遣を原則禁止するとともに違法派遣を受け入れた派遣先にたいし、その労働者の雇用を促す制度を創設するなどの改正を行うとしていると理解をいたしております。
志位 登録型派遣を原則禁止にするとかえって不利益になるといいましたけれど、さきほどのトヨタの派遣労働者の生活実態、あれがまさに登録型派遣という細切れ(契約の)派遣の実態なんですよ。この非人間的な労働をやめて、そして正社員に移し変えるべきだと(主張している)。
日本共産党は、派遣であれ、請負であれ、期間社員であれ、「首切り自由の使い捨て」労働を、日本からなくしていく。そして、「働く貧困層」という社会的大問題を解決するまで、国民と手を携えてがんばりぬくという決意を申し上げて、質問を終わりにします。
2008年10月9日(木)「しんぶん赤旗」
自由法曹団が国会議員に要請
派遣法の抜本改正を
自由法曹団は八日、労働者派遣法の抜本改正を求めて衆院第一議員会館で院内集会を開き、国会議員への要請をしました。弁護士や労働組合の代表など百二十人が参加しました。
松井繁明団長のあいさつの後、労働問題委員会の鷲見賢一郎弁護士が問題提起し、労働者派遣は間接雇用であり、雇用と労働条件の究極の劣悪化をもたらすものだという原点を明らかにする必要があると強調。労働政策審議会の派遣法見直しの建議について、日雇い派遣禁止の基準がゆるやかすぎ、登録型派遣を全面的に認めるなど極めて不十分だと指摘しました。各政党の動きにもふれ、世論を確信に、抜本改正まで粘り強く運動をと訴えました。
政党から日本共産党の小池晃政策委員長・参院議員、山下芳生参院議員、社民党議員があいさつ。小池氏は、労働政策審議会の建議は不十分であるが、労働者のたたかいが規制強化をいわざるをえなくさせているとのべ、いっそうの運動強化をと呼びかけました。
全労連の生熊茂実副議長、東京地評の伊藤潤一議長が連帯あいさつしました。
交流では、労働相談などに寄せられた深刻な実態がだされました。禁止されている建設業への派遣が「偽装請負」でまかり通っていることや、前借の形で労働者を「借金づけ」にし、いつまでも劣悪な労働条件で働かせ続ける会社の事例などが紹介されました。
議員要請では、労働者派遣は「臨時的・一時的なものであり、常用雇用代替にしてはならない」との原則を明記するなどの改正にするよう求めました。
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