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2007年7月3日(火)「しんぶん赤旗」

東京大気汚染訴訟 和解で全面解決へ 原告側が受け入れ
メーカー7社も受諾表明


 東京都内のぜんそくなど慢性呼吸器疾患患者六百三十三人が国と都、首都高速道路会社、ディーゼル自動車メーカー七社を相手取った東京大気汚染公害訴訟で、原告側は二日、東京高裁が提示していた和解案を受け入れるとした回答書を高裁に提出しました。メーカー七社も同日午後、和解案の受諾を表明し、全面解決へ大きく動き出しました。これを受け、高裁は具体的な和解条項の作成に入ります。

 原告団の西順司団長らは、首相官邸で安倍晋三首相と面談し、和解案の受け入れを表明。安倍首相は「原告の治療について協力する立場になった」とのべ、原告団に敬意を表明しました。
 西団長は面談後、「医療費助成制度は国が動いたことで実現した。公害対策について積極的に取り組んでいただきたいとお願いした。こうなることを夢見てきた。ようやくここまでこれた」と話しました。
 原告団が千代田区で開いた記者会見で、鶴見祐策弁護団長は「全員一致で和解受け入れを決断した原告の志の高さに敬意を表したい」とのべました。
 原告団・弁護団と、支援者でつくる「勝利をめざす実行委員会」は同日、連名で「今回の成果は原告らの運動と、被害者救済を求める世論の力で実現したものだ。医療費助成制度を拡充させ、公害対策を徹底させるため、いっそう運動を広げる。メーカーは、過去の行為への見解と、今後の公害対策に向けた決意を表明すべきだ」との声明を発表しました。
 東京高裁の和解案は、(1)都が都内全域、全年齢を対象に自己負担なしの医療費助成制度(ぜんそく患者のみ)を創設する(2)国、都、首都高が公害対策を実施する(3)メーカー七社は解決一時金十二億円を支払う―ことを柱としています。
 原告団は、医療費助成制度で都内のぜんそく患者全体が救済される点を評価し、和解案の受け入れを六月三十日に決定。国、都、首都高も受け入れを表明していました。

「公害根絶へ前進」
原告団会見

 一九九六年の提訴から十一年。「救われる人が原告だけではないことに、大きな達成感がある」「いつまでも消えることのない誇りを胸に生きてゆきたい」。二日に記者会見した西順司・東京大気汚染公害裁判原告団長らは誇らしく、和解受諾の思いを語りました。
 西団長は「勝ち取ったのは解決一時金という小さなものではない。国、都、自動車メーカーなどすべての被告が費用を拠出する医療費助成を実現することは決して小さなことではない。都内には数十万人の未認定のぜんそく患者がいる。すみやかに新しい救済制度をつくることは、都民全体の願いだと思う。苦渋の選択ではなく、公害根絶のたたかいの土台となる前進だ」と語りました。
 石川牧子事務局長は「裁判長が和解の骨子を読み上げたときは、(低い解決金のショックで)原告はだれも立ち上がることはできなかった。でも、勝ち取ったものの大きさを知ることができた。都民の健康を守ることを成し遂げたんだと、誇りに思う。団結してここまでやってこれた」と涙ぐんで語りました。
 小沢広子・原告副団長は「都の十八歳未満の医療助成制度に入っている肺気腫と慢性気管支炎の救済など、今後の課題ものこっているが、一日も早く助成制度を実現するために和解をうけいれた」と語りました。
 ぜんそくで妻を亡くした繁野義雄・原告副団長は「原告のうち百二十一人が亡くなった。妻は二十四年間、ぜんそくに苦しめられ、子育てができない悔しい思いをしてきた。家族やまわりの人たちの犠牲もたいへんなものだったと思う。解決一時金に悔しい思いはあるが、誇りが持てる。公害患者救済のたたかいに展望が開けた」と語りました。


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