新聞に載った関連記事


2007年5月16日(水)「しんぶん赤旗」

主張
トヨタ利益2兆円
突出した競争力支える貧困化


 八百五十万台、二十四兆円、二・二兆円。トヨタ自動車が二〇〇六年度の決算で発表した世界での販売台数、売上高、営業利益の数字です。いずれも過去最高を更新しました。
 トヨタの〇七年度の業績見通しによると、七十余年にわたって業界世界一の座を占めてきた米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて、世界トップに立つ勢いです。
 製品の安全に対しても、環境や雇用など社会に対しても、トヨタの責任はいっそう重くなっています。

「中国コストに勝つ」
 日本企業で営業利益が二兆円を超えたのは初めてです。円安による輸出採算改善、欧米での販売増、「原価改善」の継続で利益を大幅に伸ばしました。好決算は現在のトヨタの国際競争力の強さの証しです。しかし、そこにはユーザーや社会との関係で重大な問題が潜んでいます。
 全体としては好調な販売を主要な地域別に見ると、北米と欧州で大きく増やした一方、日本で九万一千台、そのほかのアジアでも九万一千台のマイナスとなっています。
 日本の不振について渡辺捷昭(かつあき)社長は「何よりいい商品を出すこと」と答えています。欧米で激しい競争に打ち勝って売れ行きを伸ばした「いい商品」が、日本で売れないことへの答えにはなっていません。
 日本で販売が低迷している大きな原因が、家計消費の低迷にあることは明らかです。貧困と格差の拡大、とりわけ自動車の分厚い購買層になってきた中堅所得層の所得の低迷と将来不安の広がりです。
 トヨタの好決算を支える「原価改善」とは、「乾いたタオルを絞る」ように経費を削減してきたトヨタが、さらに「中国コストに勝つ」として近年進めているやり方です。二〇〇〇年からの三年で30%、〇三年からの三年でも30%、〇六年からの三年で15%もの経費削減にとりくみ、下請け企業へのコスト削減要求は激烈を極めています。
 下請け企業は相次いで部品単価の切り下げを迫られ、仕事は忙しいのに利益が上がらない状態です。ここ数年の原材料値上がりが追い打ちをかけ、経営を圧迫しています。トヨタが六年連続で営業利益の過去最高を更新しているのに、トヨタの地元愛知の中小製造業の業況は長期にわたってマイナスに沈んだままです。
 こうしたトヨタの姿勢、下請けの経営環境が非正規雇用とワーキングプアを急拡大し、法律違反の「偽装請負」まではびこらせてきました。
 トップ企業トヨタの徹底したコスト削減は「トヨタ方式」と呼ばれ、業界の枠を超えて産業界に浸透し、郵政をはじめとする公共部門にまで広がっています。トヨタの奥田碩・前会長は、日本経団連の会長として献金あっせんをテコに、また経済財政諮問会議の主要メンバーとして政府中枢で、弱肉強食の「構造改革」を推進しました。

社会的責任と両立せず
 トヨタの利益第一主義が貧困と格差拡大の推進力になってきたことは見過ごせない事実です。そういう意味でトヨタの日本での不振は、「身から出たさび」にほかなりません。
 ゆきすぎたコスト削減は、設計や作業の質を低下させ、ほかのメーカーと比べても突出したリコール件数の急増となって表れています。
 「トヨタ方式」は、大企業が果たすべき社会への責任と両立しません。大企業の高収益がつづくなか、トヨタのような利益第一主義を是正し、社会的責任を果たさせることは、重要な課題となっています。

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格差社会/ワーキングプア



2007年5月16日(水)「しんぶん赤旗」

排ガス被害者救済を 車メーカーと政府を批判
市田議員


 日本共産党の市田忠義議員は十日の参院環境委員会で、自動車排ガスによる被害者救済など政府の姿勢をただしました。
 市田氏は、この間の国と自動車メーカーが、PM(粒子状物質)大気汚染と健康被害に対する危険性と対策の必要性の認識がありながら、PM規制を遅らせてきた責任を厳しく指摘しました。
 さらに「たとえ因果関係が百パーセント明らかになっていなくとも、これまでの裁判所が国の責任を認めた判決や、被害者の深刻な生活実態を組み合わせれば被害者救済はできる。これまでの国の不作為、これ以上の国の不作為は到底容認できない。因果関係に固執して、被害者を放置する国の姿勢を改めるべきだ」と政府に迫り、東京高裁の解決勧告の中心点である被害者への謝罪と一時金、医療費助成の財源拠出に一歩でも踏み出すよう強く求めました。
 若林正俊環境相は「原告団の要望をしっかり受けとめている。和解協議が大詰めにきているなかで、直接かかわることについて答弁を差し控えたい」と、健康被害対策で慎重に対応していると答弁しました。(改正法は十一日成立)

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環境問題


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