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2007年3月15日(木)「しんぶん赤旗」
春闘 2年連続賃上げ
自動車電機など 企業内最賃アップも
二〇〇七年春闘で自動車、電機など大手各社の回答が十四日出されました。財界が春闘解体・賃金抑制を叫ぶなかで要求額には及びませんでしたが、昨年実績を上回る企業も出るなど、大勢としては二年連続の賃上げ・賃金改善になりました。
自動車は、トヨタが空前の利益をあげながら、千五百円の要求に対し昨年と同額の千円。厳しい抑制姿勢を示しました。ホンダは千円要求に対し昨年を上回る九百円。日産は要求を三百円下回る六千七百円(定期昇給分含む)でした。
労組が二千円を掲げた大手電機は、松下電器、東芝、富士通、NEC、シャープなど十二社が千円(賃金体系是正分などを含む)。松下は子育て手当にあてます。
電機十六社は企業内最低賃金(月収)の千円引き上げでも妥結。時間給約九百七十円となり、貧困と格差解消のため労働側が一致して求めている「時給千円」に近づくものです。
中小企業が多いJAMも、ヤンマーが全従業員最低賃金を八円引き上げ九百六十円など企業内最賃引き上げを獲得しました。
金属労協(IMF・JC)は、勤労所得向上や格差拡大の是正に背を向ける回答だと指摘したうえで、「全体として賃金改善を実現し、二年連続で賃金改善の流れをつくり出すことができた」と強調。引き続く中堅・中小労組の交渉に力を注ぐとしています。
解説
社会的責任に背を向ける財界・大企業
自動車、電機など製造大手の回答は、要求額には及ばなかったものの、全体として賃金改善を実現し、昨年に続いて有額回答となりました。
今春闘は、企業業績が最高益を更新し、五年連続増益が見込まれる一方、労働者の賃金は八年連続下がり続け、貧困と格差拡大が社会問題となるなか、政府でさえ賃上げを財界側に求めるなど、賃金引き上げは国民的課題となっていました。
労組側は「企業の支払い能力は十分ある」として、下がり続ける労働分配率の反転・引き上げを主張し、中小やパート労働者などへの波及効果の大きい月例賃金の引き上げを重視して交渉に臨んできました。
しかし、日本経団連は「国際競争力強化が最重要課題であり、一律のベースアップはありえない」と春闘の終えんを叫び、各社とも「国際競争力を低下させる」「業績反映は一時金で」との主張を繰り返し、厳しい姿勢に終始しました。
二兆円もの営業利益をあげるもうけ頭のトヨタは、千五百円の要求にも「競争力をそぐ」などとして、昨年と同額の千円に抑え込み、相場形成に否定的な役割を果たしました。
今春闘で初めて職種別賃金方式に移行した電機連合では、子育て支援手当など組合員一律に支給されない「賃金体系是正分」を加えた回答となりました。経営側が昨年実績を上回る賃金改善を拒否するなか、要求水準に最後までこだわった組合側の方針転換でした。
松下は給与水準が電機連合の要求する基準を上回っているとして、賃金改善を見送り、手当など賃金体系是正分のみを上積みしました。
電機連合は「賃金体系是正分を含んだものとはいえ、大半の組合が昨年実績を上回る回答を引き出したことは評価できる」としましたが、今後に問題を残しました。
昨年を上回ったところでも五百円程度。大企業の身勝手さと社会的責任が改めて厳しく問われる結果となりました。
こうしたもとでも、二年連続で賃金改善を勝ち取り、電機連合では産業別(企業内)最低賃金千円(月額)の引き上げを実現しました。JAMのヤンマーでは、時給九百六十円(八円増)となり、千円水準に近づきました。未組織労働者を含む全労働者の賃金底上げと格差是正をはかる力になるものです。
「膨大な利益は、下請けへの過酷なコスト削減の強要や、過労死するような長時間過密労働、期間工など増加する非正規労働者の犠牲の上に築かれたものです」
トヨタで働く労働者が話すように、トヨタはじめ各社の史上空前の高利益は、労働者の過酷な労働強化と賃金抑制や下請け・中小零細企業への犠牲転嫁によってもたらされたものです。
こうした利益を社会的に還元することが企業の社会的責任であり、個人消費拡大で内需主導型の日本経済に転換させるためにも、社会的に還元すべきです。
中小やパート労働者の賃金引き上げのたたかいは、これから本格化します。賃金底上げでは、全労連、連合ともに一致して「時給千円以上」の要求を掲げています。
すべての労働者の賃金底上げで、ワーキングプア(働く貧困)をなくすことは日本経済の再生にとどまらず、日本社会の前途を切り開く極めて大きな意味を持ちます。
JC共闘の枠組みを超えて中小組合を多く抱える連合加盟の六産別が社会的影響力をもつ相場づくりをめざそうと、「有志共闘」を立ち上げるなど、新たな共闘体制が構築されるなど、たたかいの広がりが注目されます。(中村隆典)
主要自動車・電機の春闘回答
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賃金改善 |
年間一時金 |
【自動車】 |
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トヨタ自動車 |
1,000( 1,000) |
258万 ( 237万) |
日産自動車 |
6,700( 7,000) |
6.0カ月( 6.2カ月+3万 5,000) |
ホンダ |
900( 600) |
6.6カ月( 6.65カ月) |
マツダ |
700(実施せず) |
5.8カ月( 5.7カ月) |
トヨタ自動車 |
1,000( 1,000) |
258万 ( 237万) |
【電機】 |
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日立製作所 |
800( 500) |
4.7カ月( 4.85カ月) |
東芝 |
1,000( 500) |
業績連動(業績連動) |
NEC |
1,000( 500) |
業績連動(業績連動) |
富士通 |
1,000( 1,000) |
(業績連動)(業績連動) |
三菱電機 |
1,000( 500) |
5.5カ月( 5.1 カ月) |
松下電器産業 |
1,000( 500) |
業績連動(業績連動) |
シャープ |
1,000( 500) |
5.3カ月( 5.25カ月) |
(注)単位は円。カッコ内は06年実績。日産の賃金改善額は平均賃金改定原資。電機の07年賃金改善額は「水準改善額」と手当配分原資などの「賃金体系是正分」の合計額
2007年3月15日(木)「しんぶん赤旗」
国民春闘共闘
前年上回る回答
全労連などでつくる国民春闘共闘委員会が十四日までに引き出した回答状況では、多くの職場で昨年の初回回答を上回っています。全体としては低額回答で、十五日に回答の上積みや引き出しなどを求め、全国の職場や地域でストライキ、職場集会、デモ行進などを繰り広げます。
JMIU(全日本金属情報機器労組)は、賃上げ要求を提出した二百二十九支部・分会のうち、前年同期を上回る百十七支部・分会で回答を引き出しました。
一万円以上の回答があった六支部・分会を含め、組合員一人あたりの賃上げ平均額は五千六百七十六円となっています。JMIUは「切実な要求からかけ離れた極めて不当な低額回答」と批判。職場では「(業績にかかわらず)職場は大変、忙しい。労働者の頑張りに応えていない」と怒りの声が広がっています。
建交労の先行グループでは、二十五の支部・分会で回答がありました。一次回答は、一万円の一職場など、ほとんどの職場で昨年と同額か、上回る賃上げ水準の回答を引き出しています。
パートの時給の引き上げでは、全印総連が企業内最低賃金を東京都内の二職場で時間額千円に増額。JMIUの六支部で五円から四十円を引き上げたほか、みやぎ生協労組では初任の時給を七百円から七百三十円へと三十円引き上げる回答を得ています。
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