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2006年12月26日(火)「しんぶん赤旗」

残業代ゼロ導入要求 規制改革会議が最終答申
保育・教育の制度改悪も


 政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は二十五日、労働、保育、教育など十一分野の規制改革を盛り込んだ最終答申を決めました。

 何時間働いても残業代の出ない「ホワイトカラーエグゼンプション制度」の導入や、保育分野への民間企業の新規参入を視野に入れた「認定こども園」の活用促進などを求めています。政府は二十六日の閣議で、答申を受けた方針を決める予定です。
 答申は、労働法制の見直しについて「自律的な働き方を可能にする仕組みが強く求められている」と指摘し、一定以上の年収の労働者の労働時間規制を撤廃する制度を新設するために労働関連法制の次期通常国会への提出を求めています。
 ホワイトカラーエグゼンプション導入をめぐっては、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会で検討され、使用者側委員が導入を強く求め、労働者側委員は強く反対しています。規制改革会議の答申は企業・財界の主張を後押ししたものです。
 しかし、原案にあった労働組合の団体交渉権を制限する項目を盛り込むことは見送りました。
 保育分野では、保育料の値上げにつながる「直接契約」を認可保育所においても導入することなどを求めています。
 教育分野では、学校選択制、学校評価制の確立や、教育バウチャー(利用券)制度の導入を求めています。ただ焦点となっていた地方自治体の「教育委員会設置義務の撤廃」は見送りました。
 生活保護については、ソーシャルワーカーの外部委託を提唱しました。

解説
規制改革会議の答申
格差拡大・安全破壊に無反省

 規制改革会議の答申は「規制緩和」路線の破たんと行き詰まりを浮き彫りにするものです。
 規制緩和路線がもたらしたのは、耐震偽装や村上ファンド事件などに見られるように、大企業と資産家を肥え太らせる一方で、格差と貧困をひどくし、安全・安心をズタズタにしたことです。
 七月の中間答申は「規制改革が格差社会の要因となっているとの指摘から規制改革のすすめ方が問われている」と書かざるを得ませんでした。
 オリックス会長の宮内義彦前議長が任期途中で辞任したことは、自らも利益を得て「改革利権」などと指摘され、国民との矛盾が避けられなくなったためでした。
 しかし、今回の答申は反省もなく、残業代ゼロの「ホワイトカラーエグゼンプション」(労働時間規制の適用除外制度)導入など新たな規制緩和を盛り込みました。
 格差拡大、偽装請負など規制緩和による害悪が社会問題となっているのに、これに拍車をかけることは許されません。
 しかし、答申は、労働組合の団体交渉権の制限や教育委員会の設置義務の撤廃などは盛り込むことができませんでした。
 草刈隆郎議長は「後退ではない」「もっと書きこみたかった」と悔しがりましたが、憲法にもとづく国民の権利やサービスを根底から脅かす規制緩和を強引にすすめようとしても、国民との矛盾は深まらざるを得ません。
 同会議の設置期限は三月までで、日本経団連は後継組織の設置を求めています。しかし、規制緩和と称して国民生活を壊し、財界直結の利権政治をつくるための組織など廃止するしかありません。(深山直人)


2006年12月26日(火)「しんぶん赤旗」

労働法制改悪阻止へ運動 共産党闘争本部開く
市田書記局長あいさつ


(写真)「労働法制改悪阻止闘争本部」の初会合であいさつする市田書記局長(中央)=25日、国会内

 日本共産党労働法制改悪阻止闘争本部は二十五日、国会内で初会合を開きました。本部長の市田忠義書記局長は「ワーキングプアといわれる働く貧困層が増大する下で、立党以来の日本共産党の精神である国民の苦難の軽減のために大いに奮闘し積極的に役割を果たそう」とあいさつし、労働法制改悪阻止に全力を尽くす決意を表明しました。
 厚生労働省は、何時間働かせても残業代を払わない「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入などを盛り込んだ最終報告書を二十七日の審議会でとりまとめ、労働法制の改悪法案を来年の通常国会に提出する予定です。
 市田氏は会合後、記者会見し、本部立ち上げの理由について説明。「ホワイトカラーエグゼンプション」制度の導入について、「この悪法を絶対に成立させるわけにいかない。国会論戦、国民運動、『しんぶん赤旗』でのキャンペーンなど、全体を統括する闘争本部を確立した」と述べました。
 市田氏は、日本経団連は同制度の対象労働者に、年収四百万円以上のホワイトカラー労働者を想定していると指摘し、「試算によれば千十三万人に及ぶ。一人あたり百十四万円、総額十一兆六千億円もの残業代が消える。長時間労働合法化、残業代取り上げの悪法だ」ときびしく批判しました。
 市田氏は、闘争本部のもう一つの任務について「現にある法律を守らせるという問題も重視する」と強調。「わが党は、サービス残業と偽装請負という二つの無法を一掃することを呼びかけ、国会論戦でも一貫して取り上げてきた」として、「二つの無法を一掃し、直接雇用にさせていくたたかいを職場からおこし、国会論戦でも重視する。この課題にも闘争本部がとりくんでいく」と述べました。
 また市田氏は、「労働ビッグバン」と称して、経済財政諮問会議や規制改革・民間開放推進会議などで、さまざまな労働法制の改悪が検討されていると指摘。「最低限の労働者保護規定すらなくしていこうという動きに対し、単に労働者だけの問題ではなく、一大社会問題として、運動をおこしていきたい」と述べました。


2006年12月26日(火)「しんぶん赤旗」

ズバリわかる 派遣・請負・偽装請負(下)
本来なら職安法違反


請負って何?
 請負とは、本来注文主から独立して仕事の完成または業務の処理を行う民法上の契約のことです。たとえば、ビルの清掃・管理などをイメージすればわかりやすいと思います。
 この場合、注文主が作業に従事している労働者を指揮命令することはできません。ところがいま、請負契約なのに、注文主が請負業者の労働者を指揮命令するケースが横行しています。これが「偽装請負」です。請負なら労働法上の責任一切は請負業者が負い、注文主(ユーザー企業)はなんら責任を負わずにすむためです。
 厚生労働省が九月に出した「偽装請負」取り締まりの通達では、製造業の大企業で活用されていると特定し、防止・解消のための監督指導の強化を求めています。
 職安法施行規則は、適正な請負と違法な労働者供給事業(偽装請負)を区別するため「請負四要件」を定めています。
 四要件とは簡単にいえば、請負業者は注文主から独立してその業務を行う技術や資力をもち、労働者を指揮命令する能力が必要で、単に肉体労働的な作業は認めない。作業に必要な機材は自前または賃貸契約が必要であること。注文主が指揮命令することは許されないという内容です。
 契約名称が請負であっても四つすべてに該当しなければ、労働者供給事業または違法派遣とされます。該当していても、故意に偽装し真の事業目的が労働力の供給にあるときは、当然違法です。
 実際はどうでしょう。多くの請負会社には、請け負った業務を遂行する力はなく、労働力を提供する人材供給会社にすぎないのが実態です。製造現場では、注文企業から指揮命令をうけ、その企業の社員や派遣労働者と一緒になって作業するケースがめだっています。技術者の場合も、同様の労働者と一緒にプロジェクトチームに入り、注文企業の指揮命令をうけている場合がほとんどです。連合の調査でも六割が偽装請負でした。
 これは、本来、職業安定法違反で注文主、請負業者ともに罰せられます。しかし、現状は注文主(ユーザー企業)が処罰対象外となる派遣法違反として扱われ、コラボレートのように請負業者のみが処分されています。実際の使用者である大企業は名前も公表されないというひどさです。

政府・大企業の責任問う
 今日、こうした違法労働が横行する背景に、日本の財界・大企業のいちじるしいモラル低下があります。最近では、大企業の「偽装請負」が労働者の告発で摘発されていることにたいし、日本経団連の御手洗冨士夫会長は反省するどころか「法律が悪い」と居直り世間を驚かせました。
 そして経済財政諮問会議の民間議員として、派遣の直接雇用申し込み義務の撤廃を主張しています。いま「ワーキングプア」(働く貧困層)をうみだす要因となっている、低賃金・不安定な間接雇用を放置・拡大して労働者を使い捨て、企業だけはいっそうもうけるという許しがたい言動です。
 同時に、政府の果たしてきた役割が見逃せません。財界の要求のままに、働く最低ルールである労働法を改悪して労働者派遣法を制定し対象範囲を拡大させ、労働者に不利益な働き方を広げてきました。
 さらに、安倍内閣は、戦後の労働者保護法制を破壊する「労働ビッグバン」を政策課題の柱にすえ、財界の要求にこたえて本格的な労働法制改悪の動きをみせています。(おわり)

 請負四要件 請負業者は、(1)作業の完成について事業主として財政上および法律上のすべての責任を負う(2)作業に従事する労働者を指揮監督する(3)作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負う(4)みずから提供する機械、設備、器材もしくはその作業に必要な材料、資材を使用し、または企画もしくは専門的な技術・経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでない―としています


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