新聞に載った関連記事


2006年4月11日号「しんぶん赤旗」より

徳島 トヨタ系(テクノ社)の非正規労働者

労組つくり1年半  雇い止め撤回/賃上げも

偽装請負やめ 直接雇用求める


 トヨタ自動車系列の部品メーカー、光洋シーリングテクノ(徳島県藍住町、六百人)に違法派遺されている労働者が労働組合をつくって一年半。一月に雇い止め(解雇)を撤回させ、春闘では時給五十円の賃上げを勝ち取りました。今、「労働者の使い捨てをやめよ」とテクノ社が直接雇用するよう求めています。(酒井憤太郎)

 「僕は派遭ですか?請負ですか?はっきりさせてください」
 徳島労働局で三日、矢部浩史さん(四一)の声が響きました。同僚三十人で昨年十二月、請負とされる勤務の実態は違法派遣(偽装請負)だと告発。当局はこの日も、「言えません」との答えを繰り返すだけでした。
 矢部さんらは、テクノと請負契約を結ぷ請負会社の契約社員として、テクノの生産現場で働いてきました。しかし、請負とは名ばかりで、矢部さんらに指揮・命令を出していたのは請負会社ではなく、テクノ。しかも、製造業への派遺は法律で一年しか認められていません。請負契約は、法違反を免れるための看板にすぎませんでした。

年収200万円以下
 「みんな雇用不安と低賃金に置かれています。僕はこの六年で、数カ月の雇用契約を約二十回も更新しました。昨年の年収は二百万円に届かないんですよ」と矢部さん。
 約四百人いる生産部門で、こうした派遣労働者は半数の約二百人。この一年で倍増しました。一兆円の利益をあげるトヨタは、彼らの犠牲の上に成り立っています。
 労働粗合を結成したのは〇四年九月。呼びかけた矢部さんはそれまで、一人でテクノに直接雇用を求めていました。テクノは「一人で何ができるか。うちは五百人の企業ぞ」といっていましたが、わずか二日間で二十数人がJMIU(全日本金属憎報機器労組)徳島地域支部に加入しました。
 勤続七年になる黒坂和也さん(二五)もその一人。
 テクノから、正社員に登用すると言われていた話は実現せず、辞めようと考えていました。しかし、「法律がある。自分らの力で正社員になろう」という矢部さんの言葉にかけました。
 「プライドを持って努力して働いても契約を切られたら終わり。将釆設計も立てられない。いちばん輝けるはずの時期をムダに費やしたくない」
 当局への告発直後の昨年十月、矢部さんら六十八人を派遣していた請負会社は「違法状態を是正できない」と全員に雇い止めを通告してきました。矢部さんらは、告発に対する報復だと撤回を求めてたたかい、別の請負会社に転籍させることで雇冊を守りました。
 昨年の春闘では、五円から三十円の時給引き上げや、作業服の無料支給などの成果を得ました。
 今春闘では、組合員のいる二社で時給の引き上げが五十円と二十円、それぞれ実現しました、転籍になった人は、以前に比べて平均八十円、月にすると一万二千五百円もの賃上げになりました。
 「行動を起こせばできるんだと思い、うれしかった」と黒坂さん。粘り強い取り組みが信頼を集め、組合員は結成時の倍近くまで増えました。
 勤続一年半の館(やかた)将史さん(二五)は、三月に加入したばかり。
 「組合に入れぼ会社に煙たがられるけど、自分だけかわいいではあかん」と自ら加入しました。
 「テクノには改めなあかんことがいっぱいある。団結し、みんなのために頑張っていきたい」

"正社員が望み"
 矢部さんたちはいま、偽装請負をやめ、テクノが直接雇用するよう求めています。派遣法では一年をこえた派遣労働者を派遣先の企業が直接雇用しなければならないと定めています。
 日本共産党の塩川鉄也衆院議員は三月、国会で「直接雇用を求める労働者の声にこたえよ」と質問しました。二階俊博経産相は「将来に希望の持てるような道を開いていくために、いかにすればいいか、経営者と相談していきたい」と答えました。
 「テクノと請負会社は請負の体裁だけ整え、違法派遣を続けようとしています。法律を守り、直接雇用すべきだ」と矢部さん。前出の館さんも「大阪でフリーター生活を五年したけどもうたくさん。正社員になるのが一番の望み」といいます。
 テクノには、正社員でつくる労組、JMIU光洋シーリングテクノ支部があります。丸山正晶書記長もこういいます。
 「労働者を使い捨てにする働かせ方は人権問題です。こんなやり方を続けていたらモノづくりを担う企業の将来も危うい。テクノはこれ以上、違法を重ねず、直接雇用に踏み切るべきです」
 全国でも彼らのたたかいに励まされ、青年たちが「無法な働かせ方は許さない」と労粗をつくるなどたたかいが広がっています。
 徳島労連の森口英明事務局長はこう話します。
 「このたたかいは彼らの一職場の問題でなく、全国で急増する非正規労働者の使い捨てを許さないたたかいです。世論と運動を広げて、直接雇用を勝ち取りたい」


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