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2005年12月11日号「しんぶん赤旗」日曜版より

■世界のトップ企業・トヨタの本拠地である愛知県豊田市の法人市民税収入が120億円も減っていました。大企業がいると自治体は税収が豊かと思いきやの新事実。法人税率の引き下げが大企業をいかに優遇しているかを追いました。




市民仰天 トヨタ 3年連続1兆円の大もうけなのに
本拠地 豊田市 法人市民税120億円減収の怪





トヨタ自動車の本社=愛知県豊田市、円内はトヨタの奥田碩会長


 2月に建て替えられたばかりの青いガラス張りの本社ビル。本社工場。テクニカルセンター。テストコースーー愛知県豊田市トヨタ町一番地は、「3年連続純利益一兆円(連結決算)」といわれるトヨタ自動車(会長=奥田碩日本経団連会長)の本社などが集中しています。
 そのトヨタの「企業城下町」として知られる豊田市の法人市民税の税収が、ピーク時にくらべ120億円も減っているーーこんな耳を疑うような事実がわかりました。
 来年は米国のGM(ゼネラル・モーターズ)を抜いて世界一の自動車メーカーになるともいわれるトヨタ。足元の豊田市に入る税 金も世界一かと思えば、1990年度に334億円あった法人市民税は、04年度には214億円へと大幅に落ち込んでいるのです。
市内の工場の生産現場

 「えっ、そんなに減っているんですか!」。豊田市に住む鈴木泰江さん(41)=学童指導員=は、市の法人市民税減収に目をまるくします。
 「長女は今春、私立高校へ入学したのですが、市からの補助金はーカ月でわずか千円。市民病院もありません。道路だ、豊田スタジアムだなどといって税金を使うのはトヨタがたくさん税金を納めているから仕方がない、と思っている人も多いけれど。税金は市民のために使ってほしい」
 9月の総選挙で自民党が、トヨタ関連の業者らを集め、小泉首相を迎えて決起集会を開いたのが豊田スタジアム。トヨタの張富士夫副会長も参加しました。447億円をかけてつくったものの赤字つづきで、市は年間4億円もの税金を投入しています。
 箱モノ行政の破たんに加え税収減。トヨタの労働者、山下仁さん(52)は語ります。
 「市民病院の建設や巡回バスなど生活に密着した要求は強い。120億円あればこうしたことも可能です」
 トヨタがこんなにもうけているのに、法人市民税がなぜこんなことに?

豊田市の減収  国の法人税が連動

 豊田市の法人市民税の減収を突きとめたのは、日本共産党の大村義則市議です。
 法人市民税は、国税である「法人税」に連動します。つまり、法人税率が下がれば、法人市民税額も下がることになります。  1990年度、法人税率は37・5%でした。ところが、財界の圧力で自民党政府が税率を34・5%(98年度)に下げ、さらに30%(99年度)へ引き下げる大減税をおこないました。(表)
 その結果、豊田市の法人市民税はどうなったか。大村市議が、ことし9月の決算特別委員会で04年度の納税状況をただしました。法人市民税が214億円に大きく減ったその原因が、大企業の税負担が軽くなったためであること、その一方で零細企業の7割が法人市民税を納められないことが明らかになりました。
 税務当局に守秘義務があるために、どの企業がどれだけ支払ったかは明らかになりません。しか.し、「法人市民税の支払いの圧倒的部分はトヨタ」であると市関係者も認めます。
 実際、豊田市役所発行の市政ガイドも、トヨタという存在の巨大さをこう書いています。
 「豊田市の製造品出荷額等は、9兆6千億円(02年度)で全国でも第一位である。自動車関運は全体の95・5%を占める」
 トヨタのある下請けの社長(59)はいいます。
 「部品一個の仕事がたったの27円。法人市民税を納めたいが、赤字だ。末端はピーピーいっている。政府は、われわれのこ の苦しみを分かっているのか。トヨタさんにもっと支払わせるべきだよ」
岡清彦記者
今田真人記者

大企業寄りのゆがみ正せ
税理士 関本秀治さん


 法人税率引き下げは、法人市民税の減収に直結し、豊田市だけでなく全国の自治体財政を圧迫しています。
 99年度の法人税率の引き下げは、高額所得者優遇の所得税の最高税率引き下げや定率減税導入とセットでおこなわれ、小泉内閣はこのうち、定率減税だけを廃止し、法人税率は下げたままにするつもりです。
 過去最高益をあげている大企業の法人税率を元に戻さず、増税といえば庶民ぱかりを狙い撃ちするのは、税制のゆがみをいっそう大企業・財界寄りに拡大するものです。

大企業の法人税率  98年度水準に戻せば 増収は1兆5干億円
 99年度からおこなわれてきた"減税3点セット"@法人税率の引き下げ A高額所得者優遇の所得税の最高税率引き下げ B定率減税導入のうち、小泉首相は定率減税だけを廃止しようとしています。こんな不公平はありません。
 仮に法人税率を98年度の税率に戻し、ほかの大企業優遇税制もなくしたらどうなるか。
 トヨタの法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)を、04年度の同社の利益をもとに試算すると、実際の納税額より2149億円増えることになります。
 内訳は別表のとおりです。
 「研究開発減税」や「外国税額控除」は、税率をかけて算出した法人税額から、研究開発費や、子会社などが外国政府に納付した税額を基準に別途算出された額を差し引く減税です。
 「受取配当の益金不算入」とは、子会社から受け取る配当を親会社の利益(益金)とせずに非課税にする減税の仕組み。子会社からの配当が多いほど、グループの頂点に立つ大企業(親会社)の減税額が大きくなります。
 さらに、トヨタだけでなく、資本金10億円以上の大企業の利益(所得)をもとに、法人税率を98年度水準に戻して試算すると、法人3税で約1兆5千億円の税収増が見込めます。
 定率減税を半減から全廃した場台の庶民増税は1・64兆円(所得税・住民税合計)です。大企業優遇をやめれぱ庶民に負担を求めずにすみます。


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