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2005年6月1日(水)「しんぶん赤旗」

48時間労働制の適用除外 政府の労働政策を批判
心臓病、ストレス… 残業手当不払い6割 英労組が小冊子


 【ロンドン=西尾正哉】英労働組合会議(TUC、七十労組約六百四十万人)は三十日、長時間労働の健康に及ぼす悪影響などを告発する小冊子を発刊し、「オプトアウト」と呼ばれる欧州連合(EU)の労働時間に関する上限規制の「適用除外」を継続させようとする英国の産業界、政府を批判しました。

貧困な食生活に
 オプトアウトは、個々の労働者と雇用者の合意があれば、労働時間をEUの法定時間四十八時間を超えて延長することが可能とする例外措置です。英国や東欧諸国が採用してきました。しかし欧州議会は労働組合の強い要請もあり、労働時間に関する新指令(EU法)に関しオプトアウトを撤廃する修正案を可決しました。
 しかし産業界の意向を受けた英政府は、「競争力を維持するため」として修正案に反対し、マルタ、ポーランド、スロバキア政府などとともにオプトアウト条項を継続させるように欧州理事会などで新指令を阻止する構えを見せています。
 小冊子の中で、TUCは“長時間労働は健康・安全問題に影響を及ぼさない”との政府・産業界の主張に対し、国際労働機関(ILO)や英政府貿易産業省(DTI)の統計資料などをあげて「週四十八時間以上の労働は心臓病やストレスからくる病気、心の病気、糖尿病などのリスクを増加させる」と反論。また、「飲酒、喫煙を増やす傾向にあり、貧困な食生活になりがちだ」とのべました。

産業界にも反論
 また、TUCは、“労働者が喜んで長時間労働を選んでいる”とする産業界の主張に対し、DTIの資料を基に「長時間労働に従事する労働者の66%が、法律で求められているにもかかわらずオプトアウト契約にサインしていない。これらの労働者のうち四分の一が長時間労働を雇用者に強要されたと述べている」と指摘しています。
 また“労働組合は労働者が望んでいない規制を設けようとしている。雇用者は長時間働こうとする労働者の権利を擁護しているだけだ”との産業界の主張には、「長時間労働者のうち六割(二百二十万人)は、超過時間分の残業手当を受け取っていない」「百四十万人の長時間労働従事者のうち、百万人が労働時間短縮を求めている」と反論しました。
 欧州労連(ETUC)によると、約三分の二の英労働者は、EUの労働時間規制週四十八時間について認識していないといいます。
 ブレア首相は総選挙後の初の記者会見(十一日)で、「欧州経済は、世界の新興経済国との競争に直面しており、われわれは柔軟性を単純に放棄することはできない」とオプトアウトを擁護。その廃止は「完全に間違いだ」と主張しました。
 新指令は欧州議会では修正案が可決されましたが、各国首脳からなる欧州理事会の合意も必要です。新指令の行方に大きな影響を持つ欧州連合の雇用相会議が六月二日に開催されるのを前に、英国では産業界、労働組合双方が政府への働きかけを強めています。


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