新聞に載った関連記事


2004年2月12日 しんぶん「赤旗」


隔離部屋 組合差別 退職者増
仏労働者 トヨタとたたかう

販売台数で世界第2位になったトヨタが、欧州進出の拠点として北フランスのバランシエンヌ(リールの南東60`)に設立した工場の操業開始から3年。日本流の厳しい労務管理が持ち込まれ、労働者たちは組合差別ともたたかっています。
(リールで浅田信幸 写真も)

“日本の仲間と励ましあいたい”

企業委員会経営当局と選挙で選ばれた一従業員代表(民間企業では2年に1度の選挙)で構成される労使協議機関。特に雇用、福利厚生面で法的、協約的事項の完全実施を協議、奉現する・
従業員代表委員会労働条件の順守と労働者の要求を協議する労使協議機関。当該企業に組台があればく組台員が従業員代表選挙に立候補し、選ばれると組会代表ともなる'(民闇企業で2年に1度の選挙)。

欧州拠点で事故多発

 同工場に勤めるエリック・ピケール氏(38)とジェローム・イソン氏(33)は、平均年齢28歳という同工場ではベテラン労働者。ともに労働総同盟(CGT)に属し、従業員代表に選ばれています。
 「労働条件はますます厳しくなっている」。こういってエリック氏は、持ってきたファイルから鎌田慧氏著『自動車絶望工場』の仏文訳を引っ張り出し、「トヨタの経営者が何を考え、何をやっているのか参考になるから」と語りました。
バランシエンヌエ場は2001年1月に操業を開始し、現在労働者は2350人。一労働者の年闇生産台数は88台(ヤリス(日本名ヴィッツ)と欧州屈指の生産性・(欧州第3位)を誇っています。
 同工場の労働条件の厳しさを表す数字があります。三年間の退職者750人。2002年において何らかの治療を要する大小の事故2392件、うち労災認定200件。
「退職者が異常に多い。同じ産業の同規模工場では、これだけの退職者が出るには10年ぐらいかかるだろう」とエリック氏。
 労働時間も法定35時間にたいし、39時間10分“最近では着替えに要する時間も労働時間から除かれ、実労働時間が増加。体の不調を訴える労働者も少なく意いといいます。

活動家の自宅監視も

 トヨタは工場立ち上げにあたって、協調主義的傾向の強い民主労働総同盟(CFDT)などの組合支部を発足させ、企業内協定を結びました。最初からCGTを排除する意図があったこ.とは明白です。
 「CGTの発足はまったく違っていた。私の後をついてまわり、あいさつを交わす労働者を特定し、活動家の自宅まで監視する。会話しているところが見つかると、相手が上司に呼ばれ警告を受けるため、従業員仲間では工場の外で接触せざるを得ない」
 最悪なのは、彼らが「檻(おり)」と呼ぷ隔離部屋への配転です。これまでに3人の労働者が檻に"収容"されました。
 「無意味としかいえない仕事を2カ月から6カ月間もさせられる。それもCGTの組合員だからというだけで。労働者の誇りを傷つける〃見せしめ"にほかならない」
 しかし、CGTの活動家を見る目は、経営者と労働者では大きく違っていました。
 労働条件が厳しくなるにしたがって、エリック氏やジェローム氏のもとには毎日のように相談が持ち込まれています。

労働監督官から警告

 最近の大きな成果としてエリックク氏は、1枚のコピーを取り出して、見せてくれました。社会労働運帯省の労働監督官がトヨタのバランシェンヌエ場の経営陣にあてたもので、日付は昨年の9月22日。工場から出勤を促す手紙を受け取った病欠労働者の訴えに応え、エリック氏が労働監督署の介入を求めたことに回答を寄せたものでした。
 回答書は指摘します。「医師の診断にもかかわらず、労働者にその処方に従わず働くよう促.すのは、党働者の健康と安全を危険にさらしうる」「病気にかんする法的規定を享受しないよう促し労働者に圧力をかけることは、モラル・ハラスメント(精神的いじめ)行為とみなしうる」
 世界のトヨタの労働者いじめに対する厳しい警告でした。
 逆にこの事実は、組台と労働者を分断しようとする策動にもかかわらず、CGTが労働者の信頼を得ていること示しています。
 2002年の秋に行なわれた従業員代表の選出でCGTは、企業委員会代表選挙で42.5%を得て、7人中3人の委員を獲得、組台代表選挙では49.5%で11人中6人を選出させました。
エリック氏は「全国でも最高レベルの得票率だ。しかしこれでも職場は変わらない。本当に職場を変えるには60%は必要かもしれない」と指摘しました。
 最後に記者(浅田)は、1つのメッセージを託されました。
 「私たちは、イギリス、トルコのトヨタの労働者ともコンタクトをとっている。お互いの状況やたたかいの情報を交換しあっている。日本のトヨタの労働者ともコンタクトをとりたい。あなた方の新聞にぜひ、このことも書いてください」と。


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