新聞に載った関連記事


2003年1月6日(月)「しんぶん赤旗」

サービス残業代でた
アイシン精機、労働者ら告発で
約2千人に68,034時間分
 トヨタ自動車の中核部品メーカー・アイシン精機(愛知県刈谷市、10,800人)で、違法なサービス残業(ただ働き)があったとして、昨年12月の一時金支払日に総額1億7000万円の未払い賃金が労働者に支払われたことがわかりました。期間は昨年9月までの6カ月分、規模は2000人前後。総時間数は68,034時間にのぼり、一人の最高は100時間(推計100万円)でした。企業名が明らかになったうち、金額・規模ともに最高です。(畠山かほる記者)


職場新聞「へっどらいと」を配布する日本共産党アイシン支部のメンバー=アイシン本社前
この「へっどらいと」の内容は
「へっどらいと」No.225(2002.12.23)


1億7000万円 1社では最高
 「おはようございます。サービス残業代1億7000万円が支払われたことを知らせるビラです」
 是正直後の昨年末。アイシン本社前で、早朝から日本共産党職場支部のメンバーが、職場新聞「へっどらいと」を元気よく配布しました。
 白い息を吐きながら足早に歩いてくる労働者たちは、ポケットから手を出してビラを次々に受け取っていきました。食い入るように読まれたビラは、会社が用意した回収箱にはほとんど入らず、カバンにしまい込む労働者の姿が目立ちます。
 「へっどらいと」は、サービス残業を一貫して告発し、労働者に読まれています。今回は、職場の労働者、家族の訴えが実ったと紹介。長年にわたる労働者の告発と、八田ひろ子参院議員をはじめ日本共産党国会議員団の国会での質問、サービス残業根絶法案を日本共産党が提案して追及し続けてきたことが支払いの背景にある、と報じています。
 職場では「こんなに出とったんだな」と驚きが広がっています。ある技術開発系の職場では、一人最高400時間に「これは記録的」という声があがり、交代制勤務の刈谷工場などでは、ビラが休憩室に置かれ、夜勤者が回覧しています。
 設計技術者の男性(35)は語りました。「これ、すごい額ですね。会社も組合も報告してくれないので、共産党の『へっどらいと』は役立っているんです。みんなよく読んでいますよ」
 監督署に是正を求めてきた設計技術者の田村政志さん(51)はいいます。「サービス残業の是正は長年求めてきた問題ですが、未払い賃金が払われたのは初めてです。この画期的な成果を喜びたい。是正には不十分さもあり、今後も真の根絶を求めていきます」



2003年1月6日(月)「しんぶん赤旗」

払うならこの2年分も
アイシン精機のただ働き
是正勧告されても協定超える残業が
社長、「法順守」は口だけですか
 愛知県刈谷市に本社を置くトヨタの部品メーカー、アイシン精機のサービス残業が是正されたのは、労働者・家族からの訴えがきっかけです。
 一昨年のアイシン労働組合の大会で、組合役員から「サービス残業がある。とりくまないのか」と発言がでたほど、職場ではサービス残業が大問題になっていました。
 労働基準監督署に告発が相次ぎ、監督署は抜き打ちの臨検監督に踏み切り、昨年7,8月にはサービス残業がいくつもの職場で発覚しました。是正勧告を受けた会社は10月、労働組合と「残業実態調査」にとりくみ、その結果にもとづいて未払い賃金を支払いました。
 是正勧告を受けたにもかかわらず、技術開発研究所はクリスマスイブの夜も深夜まで明かりがともったままでした。
 午後11時。コートの襟を立て、裏門から出てきた30代半ばの男性は「ないものと思っていたので、喜びがあります」とほおを緩めました。支払われたのは、約50時間分の10数万円。「でも一部ですから。昨年は休みもなく働いたのに」と不満をにじませます。
 法の遡及(そきゅう)期間は2年間ですが、是正は6カ月間だけ。不十分な是正に、20代の労働者も「払うなら、前の分もちゃんと払ってほしい」といいます。
 「支払われたのは300時間弱」という30代前半の男性は「今後もきっちり払われるべきです」と、語気を強めました。
 「ちゃんと説明してくれたら…」と30代前半の男性。「上司から何の説明もなく、調査表に記載しなかった」といいます。残業代が支払われる上限は月約70時間までですが、「プラス月100時間はサービス残業した時もあった」と打ち明けました。
 今回支払われた残業代は、三六協定(時間外労働を例外的に認める会社と労組による協定)を超えたため、不払いとなったものが大半でした。
 協定内容(特別条項)は、原則年360時間を大幅に超える年840時間です。これは、厚生労働省の過労死認定基準も超える数値です。

工場はフル操業

 「今月は切らんといかんから貸しといてな」。現場では月半ばを過ぎると職制からこんな声が飛び交います。“貸し”とは、残業時間が36協定を超えたから、翌月まわしにするという残業代のツケまわしのこと。サービス残業そのものです。
 トヨタ自動車の好調を反映し“バブル期に匹敵する繁忙”というアイシン精機では、工場の多くが24時間フル操業。にもかかわらず、人員は本来の稼働時間である昼間8時間、深夜8時間にも足りない体制のため、ツケは毎月たまっていく一方です。
 とりわけ多いのが、生産数や品質の管理を行うオペレーターや現場の末端職制JP(旧班長)。通常でも毎日四時間残業が見込まれ、トラブルが発生すれば6時間の残業に。さらに休日出勤が月に4〜5回もあります。
 「休みの日は遊ばんと寝ている」という20代後半のオペレーターは、「現場には何の報告もないし、何も変わっていない」と指摘します。「だれかが言ってくれたようで貸しを返してもらえてよかった、とみんな思っている。監督署から是正されたなんてだれも知りません。去年の貸しはそのままだし、今月も貸しがある」と語りました。
 職長の多くは、土曜日出勤しても未払い賃金を請求していません。

姑息な「確認書」

 「いかなる理由があるにせよ法順守は徹底すること」。昨年10月に開催したアイシン精機労使懇談会で、豊田幹司郎社長はこう強調しました。
 また、会社の企業行動倫理委員会は、違法行為を社外に漏らさないため「相談窓口」の活用を社員によびかけています。「マスコミ、行政などに対して情報を提供することになってしまうと、会社にとっての信用失墜、収益ダウンなど大きなダメージにもつながりかねません」といい、対象の事柄は「職場ぐるみ、会社ぐるみの不法行為」などとし、具体例に「サービス残業」「資料改ざん」をあげています。違法なサービス残業を表に出したくないという企業の意図があらわれています。
 「『法順守』をいうなら、今回是正した6カ月間にとどまらず、2年間すべての不払い残業代を支払うことこそ、ただちに行うべきだ」と労働者たち。ところが、ある工場では、今回の精算のさい、労働者に精算金額の確認と、過去についてこれ以上は請求しないという“確認書”をとっています。職場では「こんな姑息(こそく)なやり方は撤回すべきだ」との声が広がっています。

◆e-mail address: ご意見・コメントは下をクリックして下さい

『スパーク』へ意見・コメントを送る