2005年8月23日(火)「しんぶん赤旗」

10万人減らし1千億円減税 「産業再生」法で大企業
自公が成立させ民主も改悪賛成 異常なリストラ支援


 リストラすればするほど減税の恩典が与えられる「産業再生」法の適用をうけた大企業が十万人の人員削減を計画・実行し、約一千億円もの減税をされていたことが分かりました。これは、日本共産党の塩川てつや前衆院議員(衆院比例北関東ブロック候補)の調査で判明したものです。

■塩川前議員が調査
 「産業再生」法が施行されたのは一九九九年十月。それ以降、二〇〇五年七月末までに同法に認定された件数は三百七十二件に達します。認定された「再生」計画の人員削減数は九万九千六百八人。会社設立や増資などの場合に課税される登録免許税の減税金額は合計で九百八十億七千五百万円にのぼります。人員削減一人当たり約九十八万四千六百円の計算になります。
 「産業再生」法は、大企業のリストラを応援するため、経団連(現・日本経団連)の要望を丸のみする形で小渕内閣が制定した法律です。自民、公明などの賛成で〇三年三月末までの時限立法として成立しました。〇三年には、小泉自・公内閣のもと、同法の適用範囲を拡大した上で五年間延長しました。延長・改悪には、民主党も賛成しました。
 塩川前衆院議員は「小泉首相は『官から民へ』といいますが、その本質は少数の大企業応援です。民間大企業のリストラ計画を『官』が認定・支援する法律など世界に例のない異常なものです。同法にきっぱり反対してきたのが日本共産党です。日本共産党が前進してこそ、大企業応援政治を転換し、『民』の中心である国民・労働者の生活と権利を守ることができます」と指摘します。
 ▼「産業再生」法 正式名称は、「産業活力再生特別措置法」。一九九九年八月に制定、十月に施行されました。リストラを予定している企業がリストラ計画を作成し国に申請します。一定の基準を満たせば国がその計画を承認し、登録免許税などの減税や金融支援などの恩典を与えます。

解説 大企業支援政治の典型/債権放棄でもリストラ減税
 リストラすればするほど減税の恩典をうける「産業再生」法は、政府による大企業支援政治の典型です。一兆円の純利益をあげるトヨタ自動車も二〇〇〇年五月に認定を受けました。三千二百五十九人の削減計画にたいし、三億五千五百万円減税されています。トヨタ自動車は、日本経団連の奥田碩会長が会長を務める大企業です。
 同法は〇一年四月に発足した小泉自・公内閣に引き継がれました。小泉内閣発足以降、同法の適用を受けた企業の人員削減の計画・実行数は七万七千三百九十一人。減税額は六百十八億九千五百万円に達しています。
 同法は、〇三年四月に五年間延長されましたが、その狙いは、「競争力ある強い企業を伸ばし、競争力のない企業の市場からの退出または強い企業への参入を円滑にする」(〇二年五月に産業構造審議会の新成長政策部会に提出された文書)ことでした。
 業界ごとの共同リストラや合併・買収(M&A)、「不良債権処理」の加速化のため、公的資金を注入された銀行などから債権放棄(借り手にとっては借金棒引き)を受けた企業にたいしても認定の対象を拡大しました。同法の延長・改悪には民主党も賛成しました。
 認定を受けた企業への債権放棄の件数は四十件、金額は一兆四百二十三億円です。債権放棄を受けた企業による人員削減の計画数は六千五百五十四人に達します。登録免許税の減税額は十五億三千万円です。
 債権放棄額がもっとも大きい企業はダイエーです。四千四億円の債権放棄を金融機関から受けています。ダイエーは、小泉自・公内閣が財界と銀行業界の意向を受けて設置した「産業再生機構」の支援も受けています。「産業再生機構」には十兆円の政府保証枠がついており、「再生」に失敗すれば、税金で穴埋めされることになります。(金子豊弘)


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