"904号法廷傍聴記"―― 連載@
904号法廷傍聴記
――前デンソー労組幹部の郵便局員贈賄事件の真相―― 連載@
釈然としない動機?
莫大な選挙費用、全ト労連は郵便局から被害金の返済をせまれるか?
事件のあらまし
去る2月15日、前全トヨタ労連副会長(デンソー労組出身)の安部修容疑者が、直嶋正行参院議員の選挙用郵便料金を不正に割引いてもらう代償に郵便局員にワイロを送ったとして逮捕されました。逮捕後、幸田製作所副所長だった安部容疑者は、起訴から一ヶ月の4月9日、会社から懲戒解雇されています。労働組合は、判決が出るまで、公式の態度表明は何もしないということですので、本紙上で裁判の内容を傍聴記の形でお伝えします。
5月9日午後、名古屋地裁904号法廷で審議が始まりました。収賄側の郵便局員は手錠と、腰に縄をつけられ、ジーパン姿で法廷にあらわれ、被告人席に着席しました。一方の安部被告は保釈されているので、家族らと共にさっぱりしたスーツ姿で法廷にあらわれ、同じく被告人席に着席しました。検察の起訴事実を両被告と双方の弁護士は、あっさり認めて、まったく争う気配はありません。裁判官に情状酌量の判決を求めるためでしょうか。起訴状朗読と冒頭陳述で明らかになった主な内容は次の通りです。
@割引率の大きい広告割引を選挙用郵便物に適用してもらうために安部被告は郵便局員に65万円渡した。このお金は本来払うべき郵便代金の2%であった。87万通もの郵便物に対して本来払うべき料金は.3000万円以上の大金で、このうちの1400万円を不正に減額してもらった見返りであった。
Aこのお金は郵便局員の個人口座に郵便料金と共に振り込まれた。
B動機は選挙にお金がかかるので、組合員から預かった大切なお金を少しでも節約したかったからと安部被告は説明。特にこの時は直嶋議員の所属政党の名前がコロコロ変わって余分な費用がかかったとのこと。一方で、弁護士の質問に答えて、選挙資金に上限はなかったこと、費用を節約しても、特に個人的な名誉なことや、得なことはなかったと矛盾したことを述べています。またワイロは自分自身で決断したと述べています。
C裁判官に、郵便局から全ト労連に対して被害弁償の要求はきているかと聞かれた阿部被告は知らないと答えています。全ト労組幹部との接触は選挙後ないとのこと。
傍聴感想
今回の事件のポイントはその動機と全ト労連の組織的関与の有無です。その点では検察の態度はあいまいで起訴状でも冒頭陳述でもまったくそのことにはふれられず迫力にとぼしいものでした。弁護士の被告人質問で少しだけこのことが明らかになる程度です。それから、1回選挙すると数1000万円単位のお金が簡単に何回も使われることがわかりました。これすべて我々の組合費なのです。郵便局員は、これに目をつけ、現岡崎市長の後援会からも400万円以上ものお金を横領していました。