郭さん&ミロス

 郭(カク)さんとミロスは、2人とも故国では大学で体育学を教えているプロフェッサー。横浜で行われた国際学会に出席するために来日し、その期間我が家に滞在した。

 大人二人を同じ部屋に泊めるのは気の毒なので、いつも提供している客間(和室)のほか、東京で一人暮らし中の息子の部屋(洋室)の2つを提供する。和室、洋室どちらがよいか、2人に自由に選ばせたところ、ミロスはぜひ和室を使いたいという。

 初来日だが、空手をやっており、以前から日本に大変興味を持っていたというミロスは、誰に教わったのか、「君が代」の歌詞まで知っており、富士山にもぜひ登ってみたいという。我が家に来た早々から、東京にある空手の本部や、ユーゴにいたとき文通していたという相手(女性?)に電話して、学会終了後の滞在先の手配に余念がない。

 故国は動乱の渦中にあったが、本人は至ってのんきで、故国での生活ぶりを写真で見せてもらうと、大家族が平和そうに暮らしている光景ばかり。

 郭さんは、40才を超えた年だけあって、落ち着いて、いつもにこにこと穏やかな人であった。碁をしたいというので相手をすると、5、6級程度の腕前。私と差があって面白くないので、パソコンソフトの碁を勧めると、パソコンではイヤだ。私に相手になってほしいと言う。体育では郭さんは先生だが、碁では私が先生であった。

 いよいよ明日で滞在が終わるという日に、2人で我々夫婦にお礼の食事をごちそうしたいという。日本は物価が高いし、そんな気を使う必要はないと断ったが、是非というので、4人で東京のレストランで食事をする。

都庁にて

  ミロスからは今でもときおり手紙が来る。また、ごくたまに電話がかかってくるときもあるが、決まって、15、6秒もすると回線が中断されてしまう。

 郭さんからは、香港返還前に、台湾の大学に採用されたので家族で移住するという葉書が来た。