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……樹を植えましょう。 何も無くなってしまったこの街の再生の証として。 ……樹を植えましょう。 かつてこの街の象徴であった、大樹となるように。 「こんにちわっ!!!」 元気な少女の声が聞こえ、セラは読んでいた本を閉じた。 玄関へと向かうと、明るい日差しの中そこにいたのは黒髪を肩の上で切りそろえた少女。 「あら、ジュリアさん、いらっしゃい」 セラは微笑んだ。 「母さんから、これを預かってきましたっ!!」 無意味に元気な少女。とても、セイルーン王家の、しかも第四王位継承権を持つとは思えない程に気さくであった。 「まぁ……」 少女が差し出したバスケットの中には、温かいシチューの入った鍋とパンが入っていた。 「セラさん、今日は一人だろうから持って行きなさいって。でも、一人で食事じゃ寂しいと思って、私の分も入れてもらったんです。ご一緒してもいいですか?」 「もちろんですわ。ありがとうございます」 そう言うと、セラはジュリアを家の中へと招き入れた。 「セラさん、これは何の本ですか?」 食事の準備をするセラに、ジュリアが問いかけた。 先程までセラが読んでいた本を見つけ、興味深そうにしている。 「あ、それは……歴史書みたいなものですわ」 手を休めずにセラが答える。 ジュリアはその本を手に取ってみた。 ぱらぱら……とめくってみる。 あまり厚くないその本は手書きのもので、きれいな文字が並んでいた。 「サイ……ラーグ?」 どうやら、その本にはサイラーグの事について書かれているようだった。 かつて数度にわたって滅びた事のあるというその街は、今では普通の街である。 だが、1度もその街を訪れたことのないジュリアは、すぐにその興味を失った。 「いっただっきまーすっ!!!」 「いただきます」 手を合わせた後、2人は食事を始める。 テーブルの上には、温かいシチュー、焼きたてのパン、そしてセラが作ったサラダが置いてあった。 ただし、その量は6人前はゆうにある。 ぱくぱくぱく……。 ものすごい勢いで食べているのはジュリアである。 それに対し、セラは静かにゆっくりと食べている。 ……どうやら、この大量の料理の割り当ては、ジュリアが5人前、セラが1人前といったところのようだ。 「ところでセラさん、シルフィールさんは一体?」 パンを食べながら、ジュリアはセラに尋ねた。 「母は、大切な用事があって出かけました」 おいしそうにシチューを飲みながら、セラが答える。 「へぇ。どちらに?」 「……サイラーグへ」 「サイラーグ?」 「ええ。あそこは、母が生まれ育った故郷ですから」 「そうなんですか。わたしはそこへ行ったことがないから、よく分からないんですけど」 「私は何度か行きました。あそこは特にこれと言ったもののない街ですが、静かないい所だと思いましたわ」 「へえぇ……。じゃ、シルフィールさん、お知り合いの方にでも会いに行かれたのでしょうか?」 「まぁ、そのようなものですわね。……あ、ジュリアさん、こちらのサラダもどうぞ」 「あ、それじゃ遠慮なく……」 2人は楽しい食事の時を過ごした。 ちょうどその頃、シルフィールは、サイラーグの街へと着いていた。 過去に数度も滅ぼされ、その度に復興してきた街。 決して大きな街ではないが、寂れた感じはまったくしなかった。 「……変わりませんわね……」 あたりを見回しながら呟く彼女。再び歩き始める。 「あら、シルフィールさん!」 道を歩くと、年輩の女性が彼女に気付き、声をかけてきた。 「お久しぶりです」 笑顔を返すシルフィール。 「お久しぶり!ここへはいつ来たんだい?」 「ええ、先程着いたばかりです」 「そうかい、そうかい。……しかし、シルフィールさん、セイルーンの神官長になったんだって?すごいねぇ」 「ありがとうございます」 「今日は……あそこに行くのかい?」 「ええ。神殿に行った後、そちらに向かうつもりです」 「そうかい。気をつけてね!」 女性と別れ、シルフィールは神殿へと向かった。 途中出会った人々、そして神殿の神官達と挨拶を交わすと、彼女は街の外れへと向かった。 10分ほど歩くと、そこにあったのは1本の樹。 かつてここサイラーグにあった神聖樹とは比べようもないが、枝振りのいい大きな樹であった。 雲一つない青空に眩しいほどの緑が映えている。 その樹は彼女自身が植えたものであるだけに、とても感慨深いものがあった。 さわっ…… その時、静かな風が吹いた。長い黒髪が風に揺れる。 シルフィールは樹に近付いた。 そっと手を触れると、しっかりとした感触が返ってくる。 (この樹は……生きている) 目を閉じると、かつての思い出がよみがえってきた。 |