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セイルーンの王墓



「で、依頼っていうのは何ですか?」
ここはセイルーン王宮の一室、来客用に当てられた部屋である。
そこに天才美少女魔道士たるあたし、リナ=インバースが呼ばれていた。
もちろん呼ばれたのはあたしだけではない。
本能以外ののーみそが腐っているとしか思えない自称あたしの保護者、ガウリイ。
邪妖精(ブロウ・デーモン)と岩人形(ロック・ゴーレム)との合成獣(キメラ)であるゼルガディス。
そして、とてもセイルーン王家の一員とは思えない、正義が全て!の熱血少女アメリア。
あたし達四人は、アメリアの父親でありまたセイルーン王家第一王位継承者(決して『おうぢさま』と呼んではいけない)でもあるフィリオネル殿下に依頼を受けるべく、この部屋に集まったのだ。
「ふむ、それなのだが」
フィルさんが顎に手をやりながら言う。……いつ見ても盗賊団の親分とかドワーフにしか見えないぞ。
「もうじきセイルーンで、代々の王族に対する慰霊祭が行われるのだが……」
ふむふむ。
「その時に必要な祭具が王墓の中にあるのだが、お主達にそれを取ってきてもらいたいと思ってな」
「お言葉ですが、その程度の事であれば、わざわざあたし達を雇う必要は無いのではありませんか?」
そう問い掛けるあたしに、フィルさんはちょっと困った顔をしつつ、
「実は、王墓に最近モンスターが出没してな」
お゛い……墓の管理もちゃんとできていないのか?
とても先祖を敬う態度には思えないぞ。
「始めは我が手の者を送ったのだが、すぐに逃げ帰ってきてしまったのだ」
情けなさすぎないか、そいつ……。
「しかも、王墓には盗人対策に色々と罠が仕掛けてあって、並みの者ではとても祭具の保管してある最下層まで辿り着けそうにないのだ」
並みの者では辿り着けない墓って、いったい……。
「とにかく、あの祭具が無い事には慰霊祭を執り行う事ができないのだ。すまんが、行ってもらえないだろうか?」
「……わかりました」
そう言いつつそろばんを取り出すあたし。
……その後10分間ほど、あたしとフィルさんは報酬について熱く語り合ったのだった……。

そーいう訳で、あたし達4人は、王墓へと入っていったのだった。
「明り(ライティング)!」
あたしのショート・ソードの先にかけられた魔法によって、辺りがほのかに明るくなる。
「こうしてみると、普通のダンジョンと変わらないな」
ガウリイが呟く。
「そうね。……アメリア、あんたこの中がどういう構造になってるか知らない?」
「えっと、昔入った事があるんですけど、……その時は天井から槍が降ってきて先に進めなくなったから途中で引き返したんですよね」
天井から槍ぃ!?
思わず目を剥くあたし。
「で、その後もいろいろ罠を増やしたりとか改築されたらしいので、今どうなっているのかは分かりません♪」
いや、笑顔で言われても困るんだけど。
……何でわざわざンな事を……。
ひょっとしてここの管理人って、単なる罠マニアか……!?
「まぁ、そんな訳ですけど、大丈夫!私達の心に正義の炎が燃え上がっている限り、かならず最下層まで辿り着けますっ!!」
「……別に俺は正義に燃えている訳ではないが」
ゼルの冷たい突っ込みにアメリアの顔が引きつるが、
「さぁ!早速出発しましょう!」
すたすたと一人で歩いていった。
「ちょっと、アメリア!あんた、罠があるかもって……」

ずぼっ!

「ひぃ〜んっ!!!!」
慌ててあたし達が駆けつけると、そこには穴の縁に手をかけて必死にもがいている彼女の姿。
よくよく見ると、深い穴の底には剣の刃が天井に向けいくつも煌いていたりする。
……なかなか古典的だけど有効な罠かもしんない。
「リ……リナさ〜んっ!感心して見てないで助けてくださいよ〜」
目に涙を浮かべながら言うアメリアに、ゼルが深い溜息をつく。
「……お前なぁ……何のために魔法がある?浮遊(レビテーション)使えばいいだろうが……」
「あ。そうでしたね!」
ぽんと手を打つアメリア。……まて?「ぽんっ」!?
そしてあたしが想像した通り、
『あ〜れ〜……』
穴から手を放したアメリアが穴の底へと落ちていく声だけが、無常に響き渡ったのだった……。

「あ〜、死ぬかと思いました!」
ぼろぼろになったアメリアが言う。
……よくもまぁ生きていたものね……この話がギャグ編じゃなかったら、
あんた確実に死んでるわよ。
とりあえずあたし達は、最下層を目指して歩いていた。
途中、腐った生ゴミが天井から降ってきたり(いったいいつのゴミなのか想像するのも怖い)、壁から鉄砲水が吹き出てきて水浸しになったりと気が抜けそうになる罠から、大岩が転がってくるとか床から鋭い針が生えてくるといった危険な物まで、罠は多種多様に渡っていた。
ったく、本当にここの管理人って何を考えているんだか。
いいかげんにしろって。……戻ったら竜破斬(ドラグ・スレイブ)でぶっ飛ばしてやろっかな……。
「なぁリナ?」
ガウリイが何か言ってきた。
「ここにさー、『絶対に押してね(はぁと)』ってボタンがあるんだけどさぁ」
見ると、真っ赤なハートマークが目立つ、黒いボタンがあった。
「(はぁと)……怪しさ大爆発だな」
げんなりしながら答えるゼルガディス。
「あ、それは思いっきり罠ね。押しちゃ駄目よ」
「えー、リナさん、押しちゃ駄目なんですかぁ?」
「あんたねー。……ここまであからさまなんだから、罠に決まってるでしょ。さ、先に行くわよ」
「あ……それがさー」
「何よ、ガウリイ」
「さっき、押しちゃったんだけど……」
「い゛!?」
その時、ぱかっと床に穴が空き。
「くらげの馬鹿たれぇぇぇぇっ!!!!(←エコー付き)」
あたし達は奈落の底(?)へと落ちていった……。

ばっしゃ〜んっ!!!

激しい水音をたて、あたし達は地下へと落ちた。
「……みんな、大丈夫?」
「けほっ、けほっ!!!……ガウリイさん、何て事してくれるんですかっ!」
「全くだ」
「えー、でも『押してね(はぁと)』って……」
そう呟くガウリイを何故か持っていたスリッパの一撃で沈黙させると、
あたしはショートソードを掲げた。
まだ魔法の効果が残っているその剣に照らされ、あたりの様子がおぼろげに映った。どうやら、水路のような場所に落ちたようである。
水は膝までしかないが、場所によっては深い穴が空いている可能性もある。注意しなければならない。
……上の方には、先程落ちた穴は見あたらない。結構深くまで落ちたようだ。
とりあえず、あたりを探ってみるしかなさそうだと思い、一歩を踏み出そうとした時。

『くくくくく……』
怪しげな笑い声が聞こえた。
「誰っ!」
すると、あたし達の前方、やや離れたところに1つの影が浮かび上がった。
『お客さんとは珍しい……』
嬉しそうに笑っている。
「明り(ライティング)!」
アメリアが呪文を発動させると、あたしのショートソードのほのかな明かりよりも明るい光源があたし達の前に現れた。
そこにいたのは、やたらと顔色が悪く、やせていて、ずるずるした黒いマントの男。
紛れもなく、吸血鬼(バンパイア)であった。
「きゃぁっ!吸血鬼じゃないですかぁっ!!!」
叫ぶアメリア。
『最近、よく人間が紛れ込んで来るのだが、ここまで来たのはお前達だけだ……』
「確かに、あんな罠に引っかかる奴など、そうそういないだろうな」
ジト目でガウリイを睨み付けながら言うゼルガディス。
『途中に我がしもべ達がいた筈だが……?』
「えっと、あの弱っちいコウモリとかの事?ンなもん、とっとと倒したに決まってるでしょ」
そう。あの落とし穴に落ちるまでの間、あたし達は何度もコウモリと遭遇したのだ。
また、そいつらの弱っちいこと弱っちいこと。……なんであんなの相手に逃げ帰ったのかなぁ、フィルさんの手の者って……。
『しかし……なかなかの上玉が来たな』

ぞわっ。
体中に鳥肌を立てながら、あたしは思わず後ずさる。
「いくらあたしが魅力あふれる美少女だからって、あんたの好きにはさせないわよっ!!」
「それはちょっと違うんじゃないのか……うげっ!」
あたしに踏まれた足を抱えながらあたりをぴょんぴょん飛び跳ねている金髪碧眼のうさぎ。
しかし、吸血鬼は、
『誰がお前の事だと言った……?』
へ?
すると、奴はあたしの横にいる人物に向かい、血色の悪い頬をやや赤く染めながら微笑んだ。
『甲高い声!小さな身体!顔の半分はあるだろう大きな目!典型的なお子さま体型のくせにやたらと大きい胸っ!そのアンバランスさがたまらんぞっ!!!!!』
……そう、奴はアメリアに向かってそんな台詞をほざいていたのだ!!!
「げっ、こいつロ○コンかっ!?」
青い顔を更に深い色に染めながら、ゼルガディスも1歩後ろへと下がった。
「ロ○コンって何だ?」
ボケ男は無視無視。
「ちょっと!目の前にこんな美人がいるのに、何でアメリアなのよぉっ!」
『……薹のたった年増女になど興味はない。見苦しいからさっさと私の視界から去るがいい』
ぴきっ。
だ〜れ〜が〜、薹のたった年増女ですってぇぇぇっっ!!!!(怒)
あたしの中に、まごうことなき殺意が芽生えたのを、いったい誰が責めることができるだろうか。

「……いやですぅーっ!!!!」
アメリアは目に大粒の涙を浮かべ怯えている。……無理もないか。
『さぁ、我が下僕として、我に仕えよ!!!』
吸血鬼の赤い目が怪しく光る!
そのとたん。
彼女の目から生気が消えた。
「アメリアっ!?」
「アメリア!!」
あたしやゼルの呼びかけにも応えず、彼女はゆっくりと吸血鬼の方へと歩いていく。
切りそろえられた黒髪の下から覗くのは、首筋に残った2つの赤い斑点。
どうしてっ!?
『……不思議がっているようだな?』
嬉しそうに吸血鬼が言う。
『ふふふ……私の力を持ってすれば、噛まなくとも我が下僕にする事など造作もないことだっ!!』
げ……洒落にならんぞ。
こいつ……たかが吸血鬼って侮っていたけど、実はかなりの能力の持ち主かもしれない。
奴がその気になれば、あたし達全員を操ることだって不可能ではないのだ……おそらくは。
「さぁ……お前達には用はない。ここから去るがいい!!!」
アメリアの肩を包み込むように腕をまわしながら奴が言った。
「させるかっ!!!アメリアっっ!!!!」
ゼルが絶叫する。……が、アメリアは彼の方を向こうともしない。
「冥壊屍(ゴズ・ヴ・ロー)……うげっ!リナ、何をする!!」
「止めなさいって、ゼル!アメリアに当たったらどうするの!!!」
あたしの言葉にはっとするゼル。
……そう、アメリアは吸血鬼のすぐ側にいる。奴がその気になれば、彼女を盾にする事などたやすい事なのだ。
「……くっ!!」
心底悔しそうに、拳を水面にたたきつけるゼル。
激しい音を立てて、水があたりに飛び散った。
「さぁ……私はあまり気が長くない……今のうちに去れ!!!」
「アメリアを置いていける訳ないだろう!」
ガウリイも叫ぶ。
あたしは、油断無く奴の方を見つめていた。
アメリアを、何としても助けなくちゃ!あんなロリ○ン吸血鬼に彼女を渡すわけにはいかない。
……金を出せって言ったら、いくらかくれるかなぁ…………はっ!
頭の中に浮かんだ名案をなんとか理性の欠片で押さえ込み、あたしは再び彼らの方を見る。

そのとき、あたしはある事に気付いた。
……何で奴はあたし達を操ろうとしないわけ?
相手を噛まなくても操ることができるってのはアメリアの件で証明済み。
いくら彼女を盾にできるからといって、あたし達がおとなしく帰るはずのないことくらい分かるだろうに。
……まて?
奴は、年増女には興味ないって言っていたわよね…………まさか……。
「……一つ聞いてもいいかしら」
あたしの静かな声が辺りに響きわたる。
『何だ?』
「あんた……子供にしか興味がない、みたいな事言ってたけど…………ひょっとして、子供じゃないと操れないんじゃないの!?」
とたんに、奴の顔色が変わる。……どうやら、図星のようだ。
「何だと!?どういう事だ、リナ!?」
「だーかーらー。あいつ、いかにも自分は誰でも操れるってみたいな事言ってるけど、実は一定年齢以下のお子さまにしか効かないのよ、奴の能力は。だからアメリアだけ操って、あたし達を操ろうとはしなかったのよ」
ぱたぱたと手を振るあたし。
「何か変だと思ったのよねぇ。あたしとアメリアってさほど年が変わらないのに、あいつはアメリアしか興味ないふりしてるんだもん」
「……ただ単にお前に魅力を感じなかっただけとか……おわっ!!!」
ゼルに無言で蹴りを食らわすあたし。
『見破られたか…………しかし、この娘は我の手の内にあるという事を忘れるな!!!』
「くっ!」
そうなのだ。奴の元にはアメリアがいるのだ。
何とかして彼女の目をさまさないと……やはり奴を倒すのがてっとり早いんだけど……。
『さぁ……かわいい娘よ……奴らを、ちょっと懲らしめてやるがいい』
吸血鬼のその言葉に、アメリアは呪文を唱えた。
「正義の名の下に、あなた達を倒します!!青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!!!」
「ひえぇぇぇっ!!!」
慌てて横へ避けるあたし達。
……アメリア、それって正義じゃないぞっ!!!

そして、あたし達はアメリアに手を出す訳にもいかず、ひたすら彼女の攻撃を避けることしか出来なかった。
『くくく……どうした?もっと楽しませてはくれんのか?』
余裕綽々で笑う吸血鬼。……奴をさっさと攻撃してしまいたいのだが、いかんせんアメリアが邪魔をするのだ。
……その時の事だった。

ぱしゃっ。

「おい、今、何か音がしなかったか?」
ゼルガディスが言う。
「そういえば……確かに何か水音が……ひょっとして、水の中に何かいるのか?」
「……」
あたしは……何も言えなかった。
何故だかわからないのだが、強烈な悪寒があたしを襲っていたのだ。
「……おい、リナ?どうした?」
あたしの様子に気付いたのか、ガウリイが問いかけてくる。でも、あたしは
答えられなかった。

ぱしゃっ!

段々と近くなる水音。それと共に、あたしの悪寒はますます酷くなる。
何?何なの?
……ガウリイ達も、油断無く構えている。その「何か」に対して。

ざっぱーんっ!!!!

そして、水面を割って、あたしの目の前にそれは現れた。
あたしくらいの大きさはありそうな…………!!!!
「いっっっやああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!!!」
あたしは絶叫した!そこにあったのは世にも恐ろしい……!!
「な……な……な…………、なめ、なめっ……な、なめなめ〜っっっっっ!!!!」
そう、そこにいたのは、超巨大ナメクジっ!!!!
「……お、おい、リナ!どうしたんだ……狂ったのか!?」
「そういえば、こいつナメクジだけは駄目だったはず」
ゼルやガウリイの会話など、あたしの耳には届かなかった。
ただ、あたしの目の前にあるそれが、あたしをひたすらパニック状態にしていたのだ。
「いやぁぁぁっ!いやぁぁぁぁっ!いやあぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
だが、慌てて走って逃げようとするあたしの目の前に現れたのは、さらなる巨大ナメクジっ!!!
「ひっ……ひいぃぃぃぃっっっっ!!!!」
ぷつん。
あたしの中で何かが切れた音がした。
「……覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)!!……振動弾(ダム・ブラス)!!……黒妖陣(ブラスト・アッシュ)!!……地撃衝雷(ダグ・ハウト)!!!……塵化滅(アッシャー・デイスト)!!……破砕鞭(バルス・ロッド)!!!……獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)!!!……」
「わあぁぁっ!やめろっ!リナっ!!!!!」
「めくらめっぽうに魔法を放つなぁっ!!!」

……そして。
ガウリイの腕に抱きかかえられた形で押さえつけられていたあたしが気が付くと(即座にガウリイを殴り飛ばしたことは言うまでもない)、吸血鬼はいつの間にか消滅していた。
深いため息をつくゼル曰く、流れ弾が奴に当たったのだそうだ。
アメリアももちろん正気に戻り、操られている間の事は覚えていなかった。
「……幸せな子よねぇ……」
呟くあたしに、ガウリイが、
「お前もだろうが……」
げっそりとした顔で言った。

とりあえずあたし達は浮遊(レビテーション)で元の場所へと戻り、無事最下層までたどり着いた。
そして、フィルさんが言っていた赤い宝箱を手にした後、無事地上へと戻ったのだった。

「おお!これこそ我がセイルーンの祭具!リナ殿、よくやってくれた!!!」
宝箱を手渡すと、フィルさんが感激したようにあたし達に感謝の言葉を述べた。
……ったく、ろくな墓じゃなかったわよね。
とんでもない罠もいっぱいあったし。ロ○コン吸血鬼なんて住み着いてたし。
「で、フィルさん。その、祭具っていったい何なのですか?」
あたしの疑問に、フィルさんは笑って答えた。
「ふむ、お主達にはみせてやろう!これが、我がセイルーンに代々伝わる祭具じゃっ!!!」
そして得意そうに掲げたフィルさんの腕にあるものは……。
「あのー……それ、なんだか、泡立て器みたいに、見えるんですけどぉ……」
「そうじゃが?」
軽く笑顔で返すフィルさん。
「この泡立て器は、代々の慰霊祭に用意されるケーキを作るときに使われるのじゃ!これを使うと、ケーキの味が格段に美味くなるのじゃっっ!!」
……お゛い。
「……本っ当に、美味しくなるんですか?」
「これで作られたケーキはご先祖様に捧げられる故、誰も試食はせんが、言い伝えでは美味いと言われておるぞっ!」
「んな訳ないでしょうが〜っ!!!だいたいんなもん、墓の中なんかに入れとくなぁぁぁぁっっ!!!!」
思わず叫んでしまったあたし。
ぜーはー、ぜーはー。
「……で、フィルさん。ひとつお伺いしたいのですが。……あの王墓の管理人って誰ですか!!あんな訳の分からない罠を仕掛けた奴、許せないわっ!!!」
あたしの言葉に、フィルさんはちょっとだけ考え込んだ。
「……そういえば、昔は王墓もあそこまで罠をしかけていなかったな。いつからああなったのだ?……」
その様子をあたし達はじっと見つめた。
「そうじゃ!一度、墓荒らしが出没してのぉ。すぐに捕らえられたのじゃが、その時、王墓の罠を強化せよという話になってな。たしか、言い出したのは、アメリアだったのぉ」
…………。
ぎぎぎぎぎ。
ゆっくりと、首を彼女の方に向けるあたし達。
「え゛?あ゛!?……そういえば……そんなことも、あった、ような……あはっ☆」
「『あはっ☆』じゃないわよ、アメリアぁ……???」
「あ、やだぁ、リナさんったら…………目が笑ってませんよぉ……」
多分据わっているであろうあたしの目に、露骨に怯えの色を現すアメリア。
そして、あたしが思う存分彼女をどつきまわしたのは、そのすぐ後のことであった。

そして、……あたしは再度思った。
聖王都(セイルーン)……この国、ぜったい長くないぞ……。


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