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そして、1ヶ月後。 「ない〜っ!!!」 「ないぞ!!!」 「……ありませんね」 アメリアの持つ特権を利用して、近辺の国の魔道士協会・養成学校から膨大な量の名簿を手に入れる事ができたレイティア達は、1週間かけて名簿を調べていた。 しかし。 どこの魔道士協会にも、魔道士養成学校にも、彼ら兄妹の名前はなかったのである。 また念のためにと、弟子をたくさん取っている魔道士にも連絡して確認を行ったのだが、誰一人として「そんな弟子はいない」との返事しかよこさなかった。 今日、最後の名簿を調べていたのだが、結局それにも名前が無かったのである。 「んも〜っ、どうなっているのよ!」 自分の事でありながら、キレつつあるレイティア。 「ひょっとして、レイティアさん達って、生まれたときから魔術を使っていたんですかね?」 少々からかい気味な口調でジュリアが言う。 ……彼女なりに、レイティア達を元気付けようとしているのであろう。 あまり表には出さなかったが、レイティア達は相当苦しんだ。 己の事がわからない苦しさ、それは実際に同じ立場になったものにしか分からないであろう。 足が地面についていないような不安感。 己がここにいるという実感すら危うくなる。 なのに、自分達が何者なのかわかる可能性はもはや低い。 大分諦めがついてきたものの、相当ストレスが溜まっているようである。 そしてそれを解消するためか、ガルフはいつもレイティアに殴られていた。 それは今日も同じ。 「痛て〜〜〜〜っ!!!!」 もはや恒例となった行為ではあるが、だからといって痛みまで慣れるわけがない。 頭をさすりながら、ガルフは怨めしそうな眼をする。 「治癒(リカバリイ)」 そして、その傷を治療するジュリア。これもまた、日常茶飯事となっていた。 「レイティアさん、双子とはいえ一応お兄さんなんですから、少しは労わらないと」 「……俺は老人かい……」 「ガルフだからいいのよっ!」 全然根拠の無い事を言い放つレイティア。 「それにしても、ジュリア、あんたはお城へ行かなくてもいいわけ?」 彼女の兄であるアストールはここしばらく家を離れ、王宮のほうへ行っていた。 一応王位継承者ということで、教育を受けたり雑務をこなさなければならないからだ。 しかしジュリアはずっとレイティア達の側にいて手伝ってくれたのである。 「いいんですよ。私も母さんと同じく、王家を継ぐつもりなんてありませんから。それよりっ! 正義のヒーローになるためには、困っている人を助けなければいけませんっ!レイティアさん、私はどこまでも付いていきますっ!」 「……」 ジュリアは、母親譲りの正義漢で、困っている人には手を差し伸べずにはいられない、優しい性格だった。 ただ、意気込みが強すぎて暴走し、反って迷惑を掛ける事も多々あったが。 とりあえず、「悪が徘徊しないように!」毎日山の見回りは欠かさないようである。 ……世話になっている以上、レイティア達も一緒に行くこととなっている。 ゼルガディスに頼まれたのだ……やはり娘の事が心配らしい。 それにしても、ジュリアのヒーローかぶれには、時々ついていけなくなる。 レイティアはそっとため息をついた。 (この人達に助けてもらえたのは、運が良かったのか悪かったのか……) 確かに、記憶無し、ついでに一文無しの彼らに、宿と食事を与えてくれるのは非常にありがたかったのだが。 「それにしても……」 結局、魔道士協会関連の情報では、自分が何者なのか分からなかった。 覚悟していた事とはいえ。 声に出さず呟き、レイティアはそっと瞳を閉じた。 その夜。 久しぶりにアストールが帰ってきた。 「お帰りなさい、兄さん!」 飛びつくジュリア。その様子は、アメリアそっくりであった。 「どうした?ジュリア」 甘えてくる妹に、何か裏があるなと見抜きながら尋ねるアストール。 「へへっ。あのね、今から山の見回りに行こうと思うの。兄さん、一緒に来て?」 にっこり笑って言う。 そこへアメリアがやってくる。 「ジュリア、今日はレイティアさん達とは行かないの?」 「レイティアさん、今お風呂に入ってますし。ガルフさんも、今日は疲れたのかもう寝てます。いっつも一緒に来てもらってるから、たまには休ませてあげたいなって思って……」 ガルフ達を気遣うジュリアを優しく見つめながら、アメリアは息子に向かって言った。 「帰ってきたばかりのところ悪いけど、行ってやってくれる?」 「……分かった」 「今日は、何だかすっごいものと出会いそうな気がするの!これは絶対に見逃せないわ!!!」 一人で盛り上がるジュリア。苦笑しながら、アストールは妹を連れ、夜の山へと繰り出した。 満月がきれいな静かな夜だった。 「ねぇねぇ兄さん、ほら!あそこでうさぎさんが寝てますよ!」 「こら、騒ぐな」 「あっ!あっちにも……!」 「そんなにうるさくしてると、見回りにならんだろうが」 「きゃぁ♪これはっ!!!」 ……静かな、夜だった……。 その時。 っどごおぉぉぉんっ!!! けたたましい轟音と、濃い瘴気があたりを埋め尽くした。 「……デーモン!!!」 2人の周りに、10匹近くのデーモンが現れていた。 何が起こったのか理解できず一瞬パニックに陥ったジュリアとは対照的に、アストールが冷静に呪文を唱える。 間髪入れずに多数の炎が2人を襲う! ばしいぃっ! しかし、アストールが張った風の結界によって、炎は2人に届く事はなかった。 「いくぞっ!ジュリア!」 「わかったわ、兄さん!」 2人はデーモンに向かい、走りながら呪文を唱える。 「魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)!」 「霊王結魔弾(ヴィスファランク)!」 剣に、拳に、それぞれの魔力を与え。 兄妹はデーモンに反撃を開始する! 「……はあっ、はぁっ……」 10分後。 息を切らした2人は、やはり10匹のデーモンに囲まれていた。 ただし、死体にである。 だが、2人はかなり疲労していた。 デーモンは、並の戦士や魔道士では、まるで歯が立たない存在である。 いくらアストール達がかなり腕に自信があるといっても、さすがに2人対10匹は苦戦したのである。 「……ったく、ジュリア、の……予言通りに、……なった、な……」 「まった、く、よね、……。ちょっと、すご、かった……ったら……。何で……」 「今、新手……が、来たら、まずい、な……」 地面に半ばへたり込みながら呟くアストール。 その時。 『お呼びかい?』 突然あたりに声が響く。 疲れきった体を無理矢理起こし、アストールとジュリアはあたりの気配を探る。 『くっくっくっ……さすがはセイルーン王家のものだねぇ……』 「!!!!」 闇を割って、それが姿を表す。 黒い肌、人間に似つつも何となく不自然な形の身体。赤い瞳。 ……魔族だった。 愉快そうに笑っている。 (何故、こんな所に魔族が!?) 驚愕が走る。 『まだ子供と思ってたら、そこそこはやるじゃない』 「お褒めにあずかって、光栄の至り……ってやつか?」 内心の恐怖を抑えながら剣を構え、唸るアストール。 『デーモンくらいじゃ、少々役者不足だったかしらねぇ』 「なんて卑怯な事をっ!」 ジュリアが魔族に指を突きつける。 「私達を襲わせるのはデーモンに任せ、自分は手を汚さず闇に潜んで見学するだけなんてっ!!!」 「……おい……」 「魔族の風上にもおけませんっ!」 意味不明なことを言うジュリア。どうやら驚きのあまりパニック状態となったようだ。 「……魔族にそんなこと言っても意味無いだろうが……」 すると、魔族はなおも笑いながら、 『なるほど……ならば私が手を下せばいいのだな?』 あっけなく最終宣告を告げる。 言うなり、黒い闇が衝撃となって彼らを襲う! 避けきれず、吹き飛ばされる2人。 そして、木に強く叩き付けられる! 「くっ……」 なおも立ち上がるアストール。 だが、この魔族相手に勝ち目がないのは目に見えていた。 『ふふふ……おまえの負の心は非常に美味しいねぇ……』 彼の焦り、恐怖心を喰っているのか。魔族は満足そうだ。 『このまま遊んでいたいけれど……こちらも事情があるのでね。このまま死んでもらうよ!』 そして再び衝撃が襲う! しかも先ほどよりも威力が大きい。 (避けられない!) アストールは死を覚悟した。 ……が。 (生きている……?) 思わず眼をつぶった彼は、自分を襲ったはずの衝撃が来なかったことを知った。 ゆっくり眼を開ける。 と、彼の眼には、男の後ろ姿が映った。 「おやおや、いけませんねぇ、弱いものいじめなんて。まったく、魔族の風上にもおけませんねぇ」 落ち着いた感じの声。 後ろ姿からは顔はわからないが、目の前の魔族におびえている様子は全くない。 肩でそろえた黒髪。マントに隠れてはっきりとは分からないが、肩から大きな鞄を提げているようだ。 『き……貴様はっ!!!』 魔族の声が慌てる。 「見たところ海王様の配下の方のようですが」 『貴様、何故邪魔をする!』 「少々訳がありまして。……申し訳ないんですけど、どうでしょう、ここはお引き取り願えませんかねぇ?」 あくまで口調は淡々としている。 しかし、アストールは、背中に強烈な悪寒を感じた。 自分を庇った男の口調に圧倒的な『気』を感じ、それに思わず恐怖したのだ。 『……くっ……、今だけは、引いてやる!』 やはり同じものを感じたのか。 そう言うと、魔族は闇の中に姿を消した。 「危ないところでしたねぇ」 魔族が消えた後。 2人を助けたその男は、にこにことした表情で言った。 ただでさえ細い目が、さらに糸のように細くなっている。 胡散臭い雰囲気がプンプンしているが、2人が助けられた事は確かだ。 「……とりあえず、礼はいう」 「あ、危ないところを助けていただき、ありがとうございましたっ!」 礼を言う2人。 しかし。 「いやぁ、本当は助けるつもりなんてこれっぽっちも、微塵も無かったんですけどねぇ」 やはりにこにこ笑ったまま言う。だが、言っている内容はとんでもない。 アストールとジュリアは思わず眼を丸くした。 「本来なら見捨てていくところなんですけど、今はちょっと間が悪かったんですよね。あの人達が近くにいますし。 見捨てた事がばれちゃったら、どんな仕置きをされるかわからないから、とりあえず助けてみました」 「……あんた、何者だ」 平気な顔でいけしゃーしゃーと恐ろしい事を言う彼に、怪訝そうな眼を向け尋ねるアストール。 「僕の名はゼロス。謎のプリーストです」 自分で「謎の」なんて言っているあたり、怪しさ大爆発である。 「あなたは、一体、何故ここに?」 ジュリアが尋ねる。しかし、ゼロスと名乗った男は、虚空を見つめたかと思うと、口元に指を当て、 「それは秘密です(はぁと)」 にっこりと笑う。 思わずげんなりとして眼を覆うアストール達。 しかし、次に眼を開けたときには、彼の姿は消えていた。 「……なんだったんだ、今のは……」 「……さぁ……?」 放心する2人。しかし、再び夜空に轟音が響き渡る! どっかあぁぁぁぁぁんっ!!!! そう遠くない場所のようである。 一瞬2人は眼を合わせたが、小さく肯くと、音のしたほうに向かって行った。 ……さっき、さんざん危ない目にあった事を忘れているのか……? 2人がそこに着いた時。 ひょっとしたらいるかもしれないと思っていた、魔族の姿は無かった。 変わりにそこにいたのは。 「ひっ、ひぃ〜っ!い、命だけは、助けてくれぇ」 恐怖におびえ、情けない声をあげる男と、 「……ぐだぐだうるさいわねぇ。さっさと吐くだけ吐きなさいよ!!」 男の襟元を締め上げ、脅している女の姿だった。 彼らの周りには、更に数人の男達が倒れ伏せている。 「あ、あれは罪無き旅人をおそう強盗ですね!早速成敗せねばっ!」 またもやジュリアが決め付ける。 だが。 「……あんた達に名乗る名前なんてないわっ!さぁ、あんた達の溜め込んだお宝をよこしなさいっ!!!」 どう見ても、彼女の言う通りとしか思われなかった……。 「火炎球(ファイアー・ボール)!!!」 ジュリアが女に向かって魔術を放つ! 自分に向かってくる火の玉に気付いた女は、ぱっと男の手を放し、後ろへと飛んで逃げる。 「んぎゃぁっ!!!」 当然、火炎球は逃げられなかった男に直撃。 男は丸焦げになった。 「なんてひどい事をっ!」 指を突きつけ、女に向かって叫ぶジュリア。 「今のはあんたのせいでしょうがっ!」 女が叫ぶ。栗色の長い髪が、爆風の余波を受けて揺れていた。 「いいえっ!旅人を襲い、金品を巻き上げようとするあなたのさもしい心が、彼をあんな目にあわせたんですっ!」 「違うわぁっ!!!」 「それはともかくっ!」 ……ともかく、ではないと思うが。 「あなたみたいな悪人を許すわけには行きませんっ!雷撃破(ディグ・ボルト)!!」 いきなり雷の魔術で女におそいかかるジュリア。 「ちっ……、虚霊障界(グームエオン)!」 女はとっさに結界を張る。 雷は霧散した。 (あれほど早くに防御呪文を完成させるとは!こいつは……ただ者じゃない!) 女がかなりの腕を持っている事に気付くアストール。 そこで彼は女の死角を狙って襲い掛かろうとする。 しかし。 「……おっと、おまえさんの相手は俺だ」 どこから現れたのか。 金髪の剣士がアストールの行く手を塞いだ。 戦ってすぐに、アストールは、目の前の剣士が己の技量をはるかに上回っていることに気が付いた。 何しろ、相手の剣の腕は天才的とも言えた。ガルフもアストールの上をいくかなりの腕であったが、この男はさらに強かった。 そこで彼は魔法をも用いて戦ったのだが、いかんせん相手に通用しない。 というのも、彼が呪文を唱えようとすると攻撃が厳しくなる。詠唱を邪魔するのである。 何とか詠唱を終え唱えたとしても、当たらない。 人間業とは思えないすばやさで、ことごとく躱してしまうのである。 そして、ジュリアも彼女の兄と同じように苦戦していた。 彼女が相手にした女は、とても強かったのだ。 ジュリアが呪文を放つと、まるで待ち構えていたかのように呪文で防御するのである。 そして間髪入れず、攻撃呪文を唱え、彼女に放ってくるのである。 ただし、それはあまり強力ではない魔法で、何とかジュリアにも避けたり防御したりできる程度のものであったが。 そこでジュリアは体術を用いて戦ってみたが、相手の女もかなりの腕らしく、ジュリアの放つ技を簡単に避けてしまうのであった。 (このままでは、勝てない……) そう思ったアストールは、急いで呪文を唱える。 剣士の攻撃を避けながら、『力ある言葉』を放つ。 「火炎球(ファイアー・ボール)!」 だが、その火の玉は相手に投げたものではなかった。 空高く登っていき、木々を越える。 「ブレイク!」 ばあぁぁんっ!!! 呪文のアレンジによって、火炎球は花火のようにはじけた。 呪文の構造と仕組みをしっかりと理解しなければできない芸当である。 (これで、父さん達が気づくはず……!) 先ほどの火炎球は、アストールの家からも見ることができるはずだった。 しばらくの間だけ持ちこたえれば、何とかなるはず……と彼は思った。 なにしろ、彼らの両親の強さは半端ではないのだから。 そして、また剣士に向かっていく。 ……いや、いこうとした。 が、アストールは気が付いたのだ。 (こいつら、本気で戦っていない……!?) 確かに彼らは自分たちと戦っている。 だが、殺気が無い。 すさまじく強いはずなのに、それを己の防御、あるいは相手の牽制程度にしか本気を出していない。 訝しく思って、思わず距離をとると、やはり相手は警戒を怠らないものの積極的に手を出してこようとはしなかった。 こちらの様子を伺っているようである。 アストールが妹の方を見ると……こちらは相手の女がキレていた!!! 「……っ加減に、しなさいよねっ!」 しつこく自分に攻撃してくるジュリアに辟易したのか。 ジュリアとの間をとると、呪文を紡ぎはじめる。 「アナク・ラクス……」 アストールは耳を疑った。 自分たちが普段使っている『混沌の言葉』とはどこか違う。 これは……この呪文は……失われし、神聖魔法! ……神聖魔法。 はるか昔、使われていたというこの呪文は、約1000年前の降魔戦争で失ったとされていた。 赤眼の魔王、シャブラニグドゥの5人の腹心のうち、4人による結界によって、神々の力がこの世界に及ばなくなったためである。 しかし、ここ20年ほど前に結界が破られ、再び神の力を使う事ができるようになった……筈だったのだが、 1000年という長い歳月を経て、人は神聖語を失っていた。 よって、現在、古代の文献から研究が進められ始めたところなのである。 アストールは幼いころから母親に連れられて神殿に出入りしていたため、そのことを知っていた。 しかし、普通一般の者が神聖魔法の存在を知るはずもなく、また使う事などできるはずがないのに! 「……オズル・イズル……霊縛符(ラファス・シード)!」 女の唱える呪文が完成した! とたんにアストールの体は、麻痺したかのように動かなくなった。 ジュリアも同じように、動きを止められてしまった。 「……ったく、何なのよこいつら!!」 怒ったような(いや、実際怒っているのだろうが)女の声が響く。 「おいおい……ちょっとは手加減してやれよ」 アストールと戦っていた剣士が、女をなだめている。 「じゅ〜ぶん手加減してるわよ!手加減してなかったら、こいつらとっくに死んでるわよ!」 ……恐ろしい事を言っている。 (今日は、厄日だな……) 魔法によってまったく身動き取れないながらも、アストールはのんきに考えていた。 何故だかわからないが、殺されるとは思わなかったのだ。 実際、彼らはアストールたちを魔法で動けなくしたものの、それ以上手出しする気は無いようだった。 「全く!こいつらのせいで、お宝手に入れ損ねたじゃないの!あの盗賊、火炎球で黒焦げよ!」 「まぁ、たまにはこういう事もあるさ」 「何のんきな事いってるのよ、このクラゲ頭!もう、手持ちはあんまり無いのよ!」 「へ?何でだ?」 「あーんーたーがーっ!マジックショップで商品ぶっ壊したからでしょ!!」 「……そんな事あったっけ?」 「今日のことでしょ、忘れるなド阿呆っ!だいたいあたしがどんな思いで……」 ……ほとんど漫才のような2人の会話であった。 2人の口論が続くそのうち。 「ジュリア!アストール!」 兄妹の名を呼ぶ声がすぐ側で響いた。 ゼルガディスとアメリアが、アストールの放った火炎球に気づき、ようやく駆けつけてきたのだ。 両親の姿を見つけたジュリアは、 (父さん!母さん!こいつらをやっつけて!) と思った。 確かにこの者達は強く、彼女たちは太刀打ちできなかった。 しかし、彼女の両親なら……と思えたのである。 だが。 両親は目を見開き、驚いた顔をして、女と剣士の方を見ていた。 女達も、ゼルガディス達の方を見たまま、動かなかった。 その場のすべての人間が凍り付いたかのように動かないまま、沈黙は流れ。 そして、やっと、アメリアがかすれた声で呟いた。 「リナ……さん……」 |