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収穫期真っ盛りのゼフィーリアの葡萄。 その香りが鼻孔をむせかえらせるほどにくすぐった。 そう。 ゼフィーリア領ゼフィールシティ。 サイラーグで魔王と戦い、後味の悪すぎる結果を残 したその後に、ガウリイが行く場所を決めた場所。 そこにあたし達はたどりついた。 「へ?なんで?」 「なんでって……挨拶しないと……。」 「挨拶って、なんの…。」 「……その…ほら…な?」 ――…絶対“そのつもり”でここに来たな…コイツ…―― わざとわからないフリをして、その日はとりあえず 宿に泊らせて、自分だけ実家に帰ってみた。 久しぶりに見た家族は、父ちゃんも、母ちゃんも、 姉ちゃんも全然変わってなくて正直ほっとした。 「当たり前じゃない。なんでガウリイまで連れてかなきゃなんないのよ。」 「冷たいな〜。明日は絶対連れてけよ?」 「こだわるわね〜。じゃ、今日は寝てちょーだい。」 「ああ。おやすみ。」 「……おやすみ……。」 姉ちゃんはあたしが二体の魔王を倒した事を知っいた。 姉ちゃんは言った。あたしが明日人を連れてくると言った、すぐ後に。 『護りきりなさい。』と。 二体の魔王を倒したあたしが狙われるのは当然だから、と。 「……なに?寝たんじゃなかったの?」 「いや。ちょっと、いいか?」 「…………いいわよ。入って。」 あたしが狙われればガウリイにも当然、危険はつきまとう。 だからといって、あたしがたとえ離れたとしても、 ガウリイに危険がなくなるわけではない。 「一応、やっぱり言っておこうと思って。」 「何を?」 「オレがあいさつに行く理由。やっぱお前に先に言うのが道理だろ?」 「…めずらしい。いろいろ考えたのね〜。」 「まぁな。」 ガウリイ。 嘘つきって言わないでね? あたしはあなたを『家に連れてく』とは一言も言っ てないんだから。 一言も、あなたの言葉に承諾していないんだから。 「……………………。」 「……リナ?」 「…ばかね。今更言葉がいるの…?」 「……リナ…。…ありがとう…。」 恨まれてもいい。 憎まれてもいい。 むしろ、恨んで、憎んで。 あたしを忘れないで。 「…変なトコロでまじめね…あんた。初めてじゃないくせして………。」 「う゛…そこはそれ。健康な男がこの年になって初めてだったらそれこそヤバイだろーが。」 「でもって今更『結婚するまで待つ』とか言ってたわけ?」 「好きな女にはそーなるんだよ。……もう聞いてくれるなよ………。」 涙が知らず頬を伝う。 許して。その地にあなたを繋ぎとめてしまったあたしを。 何も言わないで。帰ったらお説教でも何でも聞くから。 今のあたしじゃ護れない。 でも、姉ちゃんなら、理由があってその場を離れら れないけどあなたを護る力がある。 姉ちゃんは言った。『魔族が体勢を立てなおす前に 代わりの増幅器を見つけるか、作るかしなさい。』と。 あたしが増幅器を手にして帰るまで待ってて。 ごめん。その地からはきっと出れないだろうけど。 生きて、会おう。 ――ENDLESSEND―――
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