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昼間のあの蒸した感じはまるでなく、涼とした風が流れている。 夜というより夜中だろう。そんな時間に、リナは宿のバルコニーで月を眺めていた。意味もなく。 ――セレンティアという街から少し離れた街の宿で―― 「リナ」 呼ばれた方向に目をやると、いつの間に来ていたのか、リナの背後にはガウリイが立っていた。 「寝れないのか?」 リナの隣に来て問いかける。 「…んー寝てたんだけど…ね…」 「どーかしたのか?」 「………夢…を…見たのよ」 「…夢?」 訝しげにリナを見るガウリイには当然の事だが、疑問の表情がありありと浮かんでいる。 それを無視してリナは続ける。 「その夢を見て、さっき起きたとき……少し昔の事思い出してさ。姉ちゃんに…言われた事……とか。」 「…?」 ガウリイにはまったくもってリナの言いたい事が解らなかった。ただ自嘲しているような顔で、リナは語る。 「昔…っていっても5,6年前なんだけど、あたし言われたのよ。姉ちゃんに。」 だがガウリイは次にリナの言いたい事も、ねむれない理由もわかることになる。リナの一言で。 「『ちゃんと復活は覚えときなさいよ』って。」 そう言われた。 だけど、その時リナはまだ世間をあまり解っていなかったから“復活なんていらない”とリナは思っていた。 ――“自分は強いのだから”と―― 「…リナ…」 「自惚れ…ってゆーのも少し入ってたんでしょうね。でも…自分の仲間の事も…自分に仲間というものが出来るってゆー事も考えてなかったのよ。あたしは…」 「リナ」 「…あたしが…その時にちゃんと覚えていればミリーナも…もしかしたらディラールとかアリアだって…っ!」 「リナ!」 リナの肩を強くつかむ。びくんっとして沈黙するリナに、ガウリイは静かに話し始める。 「…ルークには悪いかもしれないが…あれはリナのせいじゃないだろう?ディラール達の事だって…そうじゃないか。」 「…でも…」 「過去を振り返って後悔しないのがお前の信条だろう?そりゃ確かに、お前は日頃弱音をはかないさ。オレが悲しいくらいにな。だけど…前にも言ったが…全部一人で背負わないでくれ。お前が、どんなに筋違いだとしても、責任を感じてるんだったらオレも一緒にいるから。」 言い募るリナを諭す様に、宥める様にガウリイは言う。 「…だから…また一人で泣くのはよしてくれ……」 一回目はセレンティアの本院礼拝堂。そして、今。 リナも気付いていなかった涙を、優しく、それがまるで花びらについた露であるかのように拭ってゆく。 ―――――あったかい――――― リナは頬に触るガウリイの手の温もりが、そしてガウリイはそのリナの頬の温かみが、今は何より嬉しかった。 そして2人は改めて誓う。 この温もりをなくさないように護る事を――――― リナは思い出す。 先刻に見た夢の内容を。 それは日常 ルークが愛を詠い、不器用なミリーナの冷たい視線で射ぬかれる。 お互いにからかいあった、もう、遥かに遠くなってしまった日常…本当に…夢のような光景を… 〜fin〜 作者様からのコメント:
「この小説で書きたかったことといえば『ガウリイの前でもあえて涙を見せないリナのその背中を見て切ない思いをしてるだろうな』とかいう憶測のもとに考え出した事だけだったりします。
14巻買って読んですぐその後に書きました。だから文章も何もすごくめちゃくちゃですが、ここっまで付き合ってくださった方(いるのか?)ありがとうございました。」 |