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オレがまだ傭兵だったころ、数少なかった友人が言った。 ―――俺はもう傭兵を辞めたい――― 理由と言えば、今オレ達がいるこの街だ。 数年前、この街は反乱分子が横行し、ついには国王を暗殺した。 国王のいなくなった国は当然統制がなくなり無法地帯と化したのだ。 オレの友人は反乱分子に雇われた。 聞いた話によると、まだ年端もいかない少女を強姦し、廻し、 女のほとんどは奴隷のような扱いを受けたらしい。 その上、少しでも気に入らない事があると殺される、 一種虐殺のような場面もあったそうだ。 そいつは反乱軍から抜けた。 耐えられなくなって、逃げたのだ――。 しかし、他国の正規軍によってこの国が滅ぼされたのはその数日後。 復興が始まったのはその半年後だった。 そして、今日は何年目かの建国祭だ。 パレードで賑わう表通りを少し離れた小高い丘から眺める。 夕方にさしかかった時刻の寒々とした風が頬を凪ぐ。 『さて…そろそろ帰らないと怒られる…かな?』 その顔を頭に浮かべて苦笑しながら反転しようとした瞬間。 「だーーーーーれだっ♪」 甲高い声をあげて足に纏わりつく影一つ。 「お?だれかなぁ?声は聞こえるのにだぁれもいないなぁ。」 「ここだもんっ!ここっ!!」 からかうと少し膨れたのは娘のイリスだ。 ちなみに母親似でかわいい。 「ははは。悪い悪い。こんなとこまで一人できたのか?ママは?」 「いるよぉっ まぁ〜〜まぁ〜〜っ!!」 自分が走ってきた方向にまた叫びながら駆けていくイリス。 その先にいた母親の手を取りこちらに走って――っ! はしるなあぁぁぁぁぁっ!! 思った瞬間ものすごいスピードで駆け出したオレであった。 「……ご…ごくろうさま…ガウリイ…。」 「ぱぱはやいねーーっ♪」 「……ったくっ!…走るんじゃないっ!お前はっ!」 息を切らして言うオレにしどろもどろに答える母親。 「で…でもね…イリスが…」 「…イリス…。ママはな、大っ事な身体なんだから無茶させちゃだめだぞぉ?」 「ままだいじ?」 「そう大事。でもイリスも大事だぞぉっ!」 「イリスもだいじーーっ♪」 「……親ばか…」 「でもなんでここがわかったんだ?リナ。」 今までのイリスとの会話に頭を抱えていたリナが当たり前だと言うように答える。 「イリスがね、『ぱぱがこっちにいるのーーっ』って走ってっちゃうから…。」 イリスはオレのカンと視力を色濃く受け継いでくれたらしくかなりの的中率でカンが当たる。 「だいたい買い物済ませたら早く帰ってきなさいよねっ!夕ご飯作らなきゃなんないのにっ!」 「お前その身体で作るつもりかよ…。」 「あったりまえでしょっ! イリスも手伝ってくれるもんね〜〜♪」 「ねーーっ♪」 なんだかんだいいつつ親ばかだよなぁ…コイツも…。 「さ、戻ってご飯にしましょ♪」 言って足早に戻ろうとするリナ。 「おいおいっ転ぶなよっ!?」 リナの中にはもう一つの命。 家族――それは一つの国家。 家族が増えるたびに建国記念日はやってくる。 来年にはまた一つ。 あの時のような悲劇が起こらないように願い、 また起こったとしても悲劇を繰り返すわけにはいかない。 オレ達が住むこの街も、オレ達の国家も、 護りぬいてみせるさ。 なあ?リナ。 ――END―― 作者様からのコメント:
ついに出してしまいました。娘です。イリス。なんとゆーか…うちの設定なんかはいい加減なので 次出す時は名前も性別すら変わってるかも(汗) おそまつさまです…。 峰龍 紅でした。 |