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ルネサンスじだいのイタリア。 当時ここのトスカーナ地方にフィレンツェと言う一大自治共和都市があった。 当時その都市を治めていたのが大金融業を営むメディチという毒殺と暗殺で成りあがった家紋だった。それに対抗し市民のみの手で共和都市を成り立たせようとする敵対勢力のパッツィ家が争いを繰り返していた・・・。 その争いに巻き込まれる7人の男女の物語である。 アルノ川のほとりに座り込んだ一人の男。 誰もが振り返るほどの美しい金髪と端正な顔立ち。 腰に括り付けられている見事な剣からしてかなりの身分を持つ傭兵か傭兵団の所属であろう。 物憂げな顔が水面に映り金髪が太陽光を反射し輝く・・・・。 彼はそっと呟いた。 「ハラへったなあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 某月某日某曜日。 イタリアはトスカーナ地方の共和都市フィレンツェに入った傭兵ガウリイの路銀は見事に尽きた・・・・・・。 そして彼は・・・。行き倒れとなって野垂れ死にしかけた・・・・。 「と、言う訳だ。」 共和都市フィレンツェの一角に在る飯屋。 そこの4人の男女がいた。そのうちの一人の男が呆れたようにもう一人の男、つまりガウリイの食べっぷりを眺めながらのこり二人の男女に彼の行き倒れていた理由を説明した。 「で、今度はその人に頼むつもりですか?」 女の方が完全に呆れきった口調で男に尋ねる。 「ああ。アメリア。俺は完全にマークされてて動けないからな。」 事も無げに男は続ける。ガウリイも食べつづける。 「しかし・・・・。貴様も良くやるな・・・・。これで何度目やら。いい加減にあの女を自由にしてやったらどうなんだ?」 もう一人の男もアメリアに続き呆れ顔で言う。 「アメリアという婚約者が居るお前には俺の気持ちは解らないさ。ゼルガディス。市政庁長官のお前が居るからそんな事は無いと思って高をくくってローマから帰ってくれば俺の愛しいあの女が今日は嫁ぐ日と言うじゃないか!!どーしてそんな政略結婚とめなかった!?」 「個人の婚姻の権限にまで口出しできるほど市政庁長官の権限は強くは無い。それに・・・・、お前の愛情は単なるワガママだろ?」 言っても無駄だとしりつつも一応説教するゼルガディス。 まだ食ってるガウリイ。しかし、状況は一応把握した。 どーやら行き倒れの俺を助けたこの男、恋人の政略結婚を阻止すべく、嫁ぎ先に向かう騎馬隊を襲って欲しいと言うのだろう。 まあ、一食(普通の人にしてみれば5食分)の飯の恩義も在るし・・・・・。 「別に良いけれどもさ・・・・。お前サン、名前なんて言うんだ?」 食い続けながらガウリイは聞く。 少々の沈黙の後男が口を開く・・・。 「ケイン・・・・、とだけ名乗っておこうか。」 「ふ〜〜〜ん。下の苗字は?」 食い続けながらガウリイ。 「いずれ解るさ・・・・・・。」 呆れと言うか諦めと言うか・・・・。そんな顔と口調でゼルガディスが呟いた。 ガイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!! ヒヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイン!! 花嫁行列の行く手に剣と剣のぶつかり合う音と馬のいな鳴き声。 ケイン、アメリア、ゼルガディスは近くの建物の影に身を潜めている。 たかが行列のためのデモンストレーションのための仮装兵かと思っていたガウリイだったがドイツもコイツも一応腕利きのようである。 もっとも、彼の腕にかなうような者はいなかったが。 あっさりと馬車を残して退散して行く兵団達・・・。い〜のか?花嫁残してって? ガウリイが下らない事を思ったその直後だった。 バタン!!と内側から蹴り飛ばされ開け放たれる馬車の扉。 「いたああああああああああああ!!!も〜〜〜何時もの事とはいえ!!少しは手加減しなさいよねケイン!!思いっきり頭壁にぶつけたじゃない!!ま、何時もよりか早めに全員片付けた事はほめてあげるけれど。」 中から姿こそは見えないが女の声がする。恐らくケインの恋人だろう。かなり機嫌の悪そうな口調である。まあ、頭をぶつけたというのだから当然には当然だ。 「リナさん、だいじょうぶですか?」 物陰から出てきたアメリアが馬車の戸口に駆け込み中に居る人物が降りるのを助け出す。 出てきたのは赤褐色っぽい栗色の髪の小柄な娘だった。 白い肌に纏った真紅の衣装。同色の紅蓮の瞳。整った顔立ちに相反する軽い粗野っぽい動作。彼女は淑女らしからぬ動作で髪をぎしゃぐしゃと掻き揚げていた。 ガウリイは彼女から目が離せなくなった。 ・・・・・これがケインの恋人? いや、正直言って羨ましい・・・・・・・・・・。それが素直な彼の感想だった。 確かに今まで見たことの在る美女達・・・・。 英国貴族の娘、シルフィール、かの大国オーストリアハプスブルクのフィリアの洗練された物腰には到底及ばない。しかし。なるほど。ケインが人には渡したがらない何かを兼ね備えたこの娘・・・(確かリナとかいった)は兼ね備えていた。 本当に目が離せない・・・・。例え激怒して、出てきたケインに罵詈雑言を浴びせ掛ける姿でも・・・・・・。そんなガウリイの様子を察してであろうゼルガディスが話し掛ける・・・。 「無理も無いさ。あの女・・・・リナはこの街の花形だしな。本名カテリーナ・シモネッタ・ジュリアーノ・ド・メディチ。そう言えば解るだろ?」 ガウリイの驚きは二重だった。 「シモネッタ?フィレンツェ一の美貌を誇るあの『華のシモネッタ』か?それにメディチ家といえばここフィレンツェの共和都市を仕切る大銀行の家系じゃねーか!?」 「そうです。ついでに言っちゃえばあの人。ケインさんはリナさんの実兄なんです。」 続けて言うアメリア・・・・。 「じっじっじっじ、実兄!!!!???」 ガウリイの言葉にひたすら下を向いて沈黙するアメリアとゼル・・・。 「そーよ!!この人はアタシの兄貴にしてメディチ家現当主、ケイン・レオナード・ロレンツウォ・デ・メディチよ。」 唐突に威厳の在る声にガウリイは振り返る。 かの『華のシモネッタ』と詠われている娘のジト目がそこにはあった。 「ついでにいっちゃえばあ、ただのシスコン。これでアタシの政略結婚邪魔したの16回目よ。お陰でフィレンツェ中の殿方の良いゲームの材料よアタシは。だれがかのリナことカテリーナ・シモネッタを娶れるかって、ね。まったく。儀式とか言ってみんなでよってたかって新しい靴ふんでるよーなもんよ。」 それだけじゃないだろう・・・・。そう言いかけたがガウリイはぶしつけ過ぎる事を配慮して言葉を飲み込んだ。この娘は少しも自分の美貌を気にかけたいないらしい。健康的だが白く艶やかな頬が微かに微笑む。 「馬鹿!!可愛い妹を何所の馬の骨ともわからんヤローにくれれるか!!だいたいなあ、お前を欲しいと言う奴は正々堂々折れに果し合いを申し込んで勝ってからお前に求婚するべきなんだ!!そう俺が決めてるのに勝手に話を進めやがってどいつもこいつも!!」 「勝手な決まりをつくるなああああああああああああああああ!!」 リナの絶叫が響く。スリッパが実兄の頭を直撃した。 痛そうだが・・・・。ケインが何となく羨ましい。ガウリイはそう思った。 「ともあれさ、ガウリイさんよ。アンタにはこれからリナの護衛をやってもらいたいんだ。家で働いてもらえないか?どーもこのところフィレンツェは危ないんだ。アンタの腕を見込んでの頼みだ。」 頭をさすりながらケインが言った。 「・・・・・・。パッツィね・・・・・。」 「ああ。」 暗い口調でリナとケイン。 「・・・・。良くは解らんが・・・。俺で良いなら。」 ガウリイがアッサリと答えた。 「助かる。お前サンぐらいの身分の男が護衛じゃなければ手出しが出来ない相手なんだ。 ケインはそうとだけ言った。 かくして。リナとガウリイの命懸けの戦いは彼等の知らぬ間に幕を開けたのだった。 この頃。 リナはガウリイの護衛付でなければケインに外出を許されていなかった。 それなりに二人は仲が良かったしリナにしては珍しく依存が無かった。 しかし、ガウリイは・・・・・。 町を行く男ドモの視線が痛い・・・・・。そう痛感していた。 (しかし、嫌ではないのがミソである・・・・・・。) まあ、無理も無い。何せリナはこの街自随一の美女「華のシモネッタ」である。 ついでに言ってしまえば彼女と出歩くような男はアノ、シスコン男、現メディチ当主が認めている者に他ならない。護衛と知らない連中にはそう見えてもいたし方の無いことだろう・・・・。 「しかしよお、あのシスコン男、よくお前サンと俺を一緒に居させるよな。護衛とはいえ・・・。」 「まあ、メディチ家と言えばあんまり良い印象持たない人も多いしね。特に敵対している銀行、パッツィ家。冷戦状態が続いていつアタシもケインも殺されたっておかしく無い状態なの。」 「でも・・・。結構好かれてるじゃないかお前の兄貴。ついでに言えば『青年団』、も。」 「青年団」とはケインが編成するこの街の覇気のある若者が身分を問わず同様に語り合うサークルのようなものだった。ガウリイ自身新参の青年団の一人とし仲間のゼルガディスやアメリア、そしてやはり其処でも花形たるリナと過ごす時間が増えていた。 「ケイン一人の人徳じゃあ一族の印象まで変えられないわね。この街の事のほとんどの政治は家が仕切ってるのがげんじょうだし。それが面白くない連中だって居るのよ。」 「そ〜ゆ〜モノか?」 「そ〜ゆ〜モノよ。それだからアンタ護衛やらされてるのよ。」 「で・・・。その護衛つけて何所いこうっていうんだ・・・・ベッラ(美しい) シモネッタ?」 「・・・・そりゃひにくか・・・・。」 「ベッラ」とは程遠いジト目でガウリイを睨むリナ。 「イや・・・。別に・・・・・。」 鼻の頭を書きつつガウリイ。 「まあ、良いでしょう。世間一般じゃあ勝手にアタシの事そんな風に言って祭り上げてるみたいだけれども。美人って大抵早死にって相場が決まってるじゃない?悪いけどあたし120まで生きる予定なの。」 まったく不思議な娘である・・・・・・。 と、まさにそのときだった。 ダッ!! 走りこんできた子供がマトモにリナにぶつかった!! 同時にバランスを崩す両者。 本の一瞬の出来事であったがガウリイは見逃さない!! リナのウェストを支え、ヒールの高い靴の彼女がバランスを崩すことの無いようにすると同時にぶつかって来た少年の腕を逃げ出さないように軽く掴んだ。 「どういうことだ!!」 只単にぶつかって来ただけの子供なら幾ら主筋のリナに無礼を働いたとしても、こんな手荒な真似はしない。 ただ、許せないにはそれを逆手に取った少年の行為だった。 「これはどう言う事かと聞いているんだ!!」 半ば脅すような鋭い声でガウリイは少年の手に握られた高価な女物の財布について問い詰める。 気合に押され俯く少年。 「話をしている人間の目を見なさい!!誰が貴方の味方か解らないわよ!!」 唐突に威厳の在る声をあげた人物・・・リナの方にハッと目をやる少年。 「ガウリイもガウリイよ。こんな小さい子相手に気合を入れるなんて。」 ・・・・お前がらみじゃなければ俺だってこんな大人気無い事しなかったぞ・・・。 言いかけたが場所が場所だけに言葉を飲み込むガウリイ。 そんな彼に気付く事無く少年に近寄りそのヴァイオレットの瞳を身を屈め直視するリナ。 「どうしてこんなことするの?正直に言ってみなさい。」 威厳に満ちているが優しげな声・・・・。 「・・・・・・・。お兄さんが・・・病気で・・・・。お金が・・・・。」 泣きそうな声で少年が呟いた・・・。その目はリナの紅蓮の瞳を直視している。 「・・・・。そう・・・・。ゴメンナサイね。ガウリイその子を放してあげて。」 少年を放すガウリイ。泣きながらリナに財布を少年は返した。 「これを・・・・・・。」 財布を受け取るのとは逆の手で高価な髪飾りをはずし少年に手渡した。 信じられないと言った顔の少年ににっこりとリナは微笑みかけた。 少年は何度も何度もリナに有難う、と言いながら去って行った。 ・・・・「華のシモネッタ」・・・・。 改めてリナがそう呼ばれる由縁をガウリイは理解できたが今一つ腑に落ちない。 「いいにか?あんな事して・・・・。嘘かもしれなかったんだぜ?」 ぼそっとぼやくガウリイ。 「人の目を直視できる人間は嘘なんてついていないわ・・・・。」 何時になく感情の篭もらない声で応じるリナ・・・。 その肩は・・・・微かに震えている。 「ガウリイ・・・。まだお礼言ってなかったよね。政略結婚からアタシを助けてくれた事。ケインも粋な事してくれたわね・・・。死ぬほど嬉しかった。一瞬だけれども・・・。アノひとが来てくれたかと思った・・・・。」 「・・・・。アノひと・・・・?」 「・・・・・。アタシの婚約者だったひと。メディチとパッツィの争いに巻き込まれて・・・・。生死不明。今の言葉。人の目をみろって言ったのも彼なの。馬鹿よね。アタシ。その人ね貴方にそっくりだったのよ。最も彼の髪はブリューネットだったし目の色もヴァイオレットだったわ。」 肩と声をますます震わせリナが呟く。 「投影してたって訳か・・・・?俺にそいつを・・・・?」 慰めなければいけない・・・。解っていつつもガウリイの語彙は自然と荒く、鋭くなった。それが何故か彼にもわからない・・・。 うんう、とリナは首を横に振った。 「違う。アノ人はアノ人・・・。貴方は貴方よ。違うわ。目が、目の光が、意思が考えが違う。アノ人はアノ人でしかないし・・・。貴方は貴方でしかない。なるほど、最初は確かにそっくりだと言うだけの理由で貴方に彼を投影しかけたわ。でも・・・。違う。目にはね、その人しかない光があるのよ。ガウリイと彼、リュードリヒの目は違うもの。」 「気に入らない、か?俺の目。」 「うんう。とっても好きよ。良い光をしている。一目で気付いた。この人はアタシの『味方』だって。それにアタシ、人を投影して満足しているピュグマリオン症候群よろしくな間抜けじゃないわ。」 「・・・・。そうか。」 「ガウリイが居てくれて良かった・・・。こんなに心底ぶちまけるってことが気持ち良いとはおもわなかった。親友なら沢山居るけれど。ガウリイみたいな親友はいなかったみたいね・・・・・。」 泣くのを必死でこらえるリナ。 そっと抱きしめつつガウリイは思った。 親しい友としての抱擁、恋人としての抱擁・・・。 これの何所に違いがあるのかと・・・・。 「え・・・・。ナポリ王国へ?随分と又急ですね。」 スパゲティー・ナポリタンを頬張りながらアメリアがケインに言う。 「ああ。その間リナの事くれぐれも(滅茶苦茶強調)頼んだぞ。ゼルガディス、ガウリイ。」 「あ〜〜〜。解った解った。解ったからサッサトいってくれ。」 何時ものことながら世話が焼ける、と思いつつゼルがケインに言う。 「ねえ、ケイン、ナポリには何の用事でいくの?」 ボンゴレスパゲティーを食べ終えブルゴーニュ風アサリあえのクリームスパゲティーを食べ始めたリナが聞く。すきあらばケインの食べているペペロンティーノも拝借しようと言う魂胆で密かに彼の皿を狙っている。 だが、お構いなしでケインは続ける。 「ああ。と、ある貴族が融資を頼んできたらしいんだ。なんでもペルージャだかローマのお偉方とか・・・。」 話に没頭しリナが付け合せのセロリを奪い取った事に気付かないケイン。 そのリナがエスプレッソの効いたオーストリア風のコーヒーに口を付けながら憎まれ口を言う。 「ああ、借金の申し込みね。パッツィ家といい。貴族の家紋を掲げる奴なんてそんなものよ。借りるときばっかりへこへこして返す時になれば徳政(帳消し)しろだのナンだかんだいってくる。実際にスペインハプスブルク家の大公マクシミリアン様とイザベラ王女ご夫婦がメディチから借りたお金を返済できなくって結構今、家の家計、ヤバイって聞いたわ。本当なの?ケイン。」 さらにもう一つトマトを兄の皿から奪うリナ。 「誰にも言うなよ。メディチ銀行がヤバイってこと・・・。」 その一言をリナは肯定と受け取りさらにブロッコリーを奪う。 「・・・・・・・。別に良いけどさ・・・。俺、サラダ嫌いだし。」 ケインが妹の様子を見つつぼやく。 ・・・・・。バレテたか。 「で。何時頃までに帰って来れるんだ?」 状況を理解しているのかして居ないのか。 リナ同様ケインの皿からレタスを奪いつつガウリイがケインに聞く。 「そーだなあ。今度在る俺の誕生祝いの馬上試合の大会前後になると思う。」 「へ〜〜え。もうそんな季節なの。」 「そうですよ。それでね、リナさん。今年私ゼルガディスさんと婚約決まったでしょ。既婚女性とみなされて『槍試合の女王』やらせて頂けるんです!!」 嬉しそうにアメリアが言う。 「へ〜〜〜〜。スゴイじゃないの!!アメリア。」 「なんだ〜〜?その馬上試合と『槍の女王』って?」 ガウリイが今度は自分の皿のピーマンを選り分けながら聞く。 「毎年ケインの誕生日を祝してフィレンツェ中の貴族や名家の子息が槍試合と剣術の試合をするイベントなの。古代ギリシャでいう競技会みたいなものね。そのイベントで毎年1人花形の女性を既婚女性から決めるの。その人から優勝者は贈り物を手渡されるってわけ。」 うきうきしたようにリナが説明する。 「毎年ケインさんとゼルガディスさん、それに貴族家計のレイルさんって人に優勝しぼられちゃってますけれどもね。」 にこにこしながらアメリアが言う。まだあどけない顔のアメリアが女王ならさぞかし可愛らしい女王だろう。彼女の本名はアマーリエ。しかし母親が英国人で彼女自身ローマ人系の顔つきではなくアングロ・サクソン(イギリス系)の顔をしている。 従って誰もが英国式に「アメリア」と呼んでいた。 誰もが憧れている地位を貰ったアメリアは幸せそうだった。 「まあ、俺の青年部隊は全員強制参加させるつもりだし・・・。今年はガウリイもでるってことだ。わかんねーぞ。」 そう言ってケインは微かに微笑んだ。 「おい、リナナンだ、その食い方は。『華のシモネッタ』の名前が泣くぞ!!」 「い〜〜のよケイン!!美味しく食べる!!それがスパゲティーの醍醐味ってものでしょう!!」 「だからってなあ!!頬っぺたにミートソースつきまくってるだろ!!って、もうアサリあえのクリームチーズスパゲティー食っちまったのかよ・・・・。」 そっとハンカチを取り出して愛しげに妹の顔にくっ付いたミートソースをぬぐってやるケイン。 「じゃあ、ま。そう言う事だ。くれぐれも頼んだぞ。市政庁長官!!」 「はいはいはい。」 市政庁長官ことゼルガディスは‘このシスコン男を何とかしてくれ’と言わんばかりに頭を抱えた・・・・。 その日の夜遅くケインはナポリへと立って行った。 「リナ〜〜〜〜居る!?」 次の日の午後。リナ・ガウリイ・アメリア・ゼルガディスが紅茶を飲んでいたその時だった。突如二人の娘が尋ねてきた。 「ミリィにキャナルじゃない。どったの?」 ミルフィーユとチョコレートを食べながらリナが尋ねる。 「だれだ?この二人?」 リナに残りのチョコを取られまいと頑張りつつガウリイが尋ねる。 「メディチ家専属の絵描きのミリィとキャナルよ。」 フィレンツェでは芸術家の地位は高い。ましてや芸術を保護して止まないメディチ家でありリベラルな性格のケインとリナ。その二人が一般市民でしかないこの二人の娘を友達と扱ってなんら不思議はない。 そこが気位ばかり高いパッツィとメディチとの大きな違いだろう。 「今日はな〜に?ナンか面白い絵の話でもあるの?」 興味心身にリナが聞く。そう言うところは芸術好きのメディチ家の者らしい。 「アメリア、言ってなかったの?」 若輩の少女、キャナルが尋ねる。 「いっけない!!自分のことで浮かれてました!!締め切りきょうまででしたっけ?」 慌てたようにアメリアが言う。 「一応受けつけは私がすませといたわ。」 年長の少女、ミリィが言う。 「何のことだ?」 カップから顔を上げつつゼルガディスが尋ねる。 「今年はケイン様の二十歳の誕生日でしょ?そこで、アメリアの『槍の女王』の他に、もう一つの名誉花役『剣の女王』を未婚女性の中から募集してると言うの。その選考会『ラ・ジオストラ』(今で言うミス・コンみたいなもの)に参加して頂きたいの。その方が絵になるし。」 「リナなら絶対『剣の女王』になれると思うわ。」 キャナルとミリィがまくし立てる。 「・・・・・・・。なったら馬上試合で何かしなきゃいけないんでしょ?」リナ。 「そりゃそうだ。イベントの花形だしナ。」 ゼルガディスが言う。 「まあ、賞品を優勝者に捧げる役はわたしがやるようですけれど・・・。」 アメリア。 「いいじゃね〜か。リナ。出てみろよ。」ガウリイ。 「・・・・。五年前・・・・。ケインの15歳の誕生日を祝う競技会の時もこんな特設した役うをやった女の人、いたわよね・・・・。」 「ええ。いましたよ。」 「その人がした事・・・。覚えてる・・・・?優勝者に、そう、確かその年はレイルだったわね・・・。その人、レイルに『名誉の口付け』捧げてたじゃない!!嫌よ!!恥ずかしい!!!!!!!!」 しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん。 奥手な奴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 しかし・・・。ミリィが受けつけを済ました時点で「華のシモネッタ」たるリナは無条件で『剣の女王』に選ばれていたのであった・・・・・・・。 |