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「火炎球(ファイアー・ボール)!!!」 『うぎゃぁぁっ!!!』 「爆風弾(ブラム・ガッシュ)!!!」 『ぐええぇぇっ!!』 「氷窟蔦(ヴアン・レイル)!!!」 『……!!(←無言で凍っている)』 あたしの放つ魔法に、なす術もなくやられ、倒れていく盗賊達。 ふふん、ちょろいもんねっ♪ さ、さっさと探し物をしないと。 「き……貴様……」 おや、まだ生きてたのがいたか。 「覚えて……ろよ……」 「やだ」 即答するあたし。 こんな奴等の捨てぜりふいちいち覚えてられるかっつーの。 蹴りを一発食らわせると、あたしはその部屋を出た。 さて、お宝っ、おーたーかーらーはどこっ? と、いかにもって感じの扉のついた部屋を見つける。 ノブを回すと、鍵がかかっていた。しかし、あたしにそんな物は関係ない。 「封除(アンロック)」 ‘力ある言葉’と共に、ノブが軽く回るようになる。 ……ドロボーさんの魔法と言うなかれ。こう見えてもこの魔法、そんじょそこらで教えてもらえる物ではない。 呪文の構成と仕組みをしっかり理解している天才(←あたしの事よっ)でないと、開発することなんて出来ないのだから。 扉を開けると……金貨銀貨に宝石の入った宝箱っ!!! うっひょ〜っ!結構溜め込んでんじゃない、あの盗賊達。 あたしは、めぼしいお宝を集め始めた。 両手いっぱいにお宝をかかえアジトを出ようとするあたしに、先程の盗賊が声を掛けてきた。 「くく……く……貴様……終わりだから……な……仲間に……」 だが、奴の御託を聞いてやるつもりなどこれっぽっちもない。 無視して、アジトを出て行こうとする。 「伝えて……おくぞ……胸のないガキだったと……」 ぷちっ。 「竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!!!」 かくて、今日も悪がひとつ、アジトごと滅びたのであった……。 今朝の目覚めは最高だった。 ふっふ〜ん♪ 昨日の盗賊団、なかなかたくさん貯めこんでたじゃない♪ これでおいしいもの食べよ〜っと!!!! 思わず顔がにやけてしまう。 さ、あっさごはんっ! 「おっはっよぉ〜っ!!!」 朝食を取るため食堂に降りたあたしは、すでにテーブルを取り囲んでいる3人と出会った。 「ああ、おはよう」 「おはようございますっ」 「……」 ……ゼル、相変わらず無愛想だなぁ……。 一匹狼気取るのがそんなに楽しいのか?こいつ。 「……な〜にシケた顔してるかなぁ〜?」 ゼルの背中を思い切りどつく。 「うわっ!」 思い切り机の上に俯せるゼル。 あ゛……ちょっぴり勢いつけすぎちゃったかも……机に髪が刺さってる……。 …………。 ……ま、いっか。 「リナさんっ!何てことするんですかっ!」 とたんに、アメリアが文句を言ってくる。 「ごめん、ごめん。だ〜ってゼルがあんまり暗いから」 彼が暗いのはいつもの事かもしれないが、これはこれ、不幸な事故という事で。 あたしに向けられたゼルの冷たい視線をわざと無視して、早速料理を注文する。 「おばちゃーんっ!!!モーニングAセット10人前っ!あとBセット5人前もよろしくっ!!!」 「あ、俺も同じのを頼む!」 食事のたびに、その科白を繰り返すガウリイ。 たまには自分でメニューを考えろよ、このクラゲ。 「私はCセット3人前をお願いしますっ!」 「……」 ゼル、無言。 「ほらゼル、あんた何頼むの」 「コーヒーだけでいい……」 ぼそっと呟くゼル。 「えぇっ!ゼルガディスさん、ちゃんと朝御飯食べないと身体によくないですよぉ?」 アメリアが心配そうな声で言う。 「そうよ、ゼル。朝御飯ちゃんと食べないと、身体がもたないわよ?」 そうじゃないと、あたしの便利なアイテムその2として役に立ってくれないじゃない♪ 「……」 あたしの心を読んだのか、なにやらゼルがブツブツ呟いていたが、よくは聞こえなかった。 「お待ちどう様ぁっ!!」 そして料理が運ばれてきた。 運んできたのは中年の男性。……はっきりいって、ひよこ柄のエプロン着るのだけは止めて欲しい。似合わないから。 慌てて目を逸らすあたし。 (ここの宿ってウェイトレスさんがいないのかな?) そう思ったが、目の前の料理の誘惑の前にはささやかな疑問など吹き飛んだ。 ま、持ってきた人がおっさんだろーが何だろーが、料理に罪はないっ! 『いっただっきま〜すっ!!!』 ゼル以外の皆の声が響き渡った。 いつものようにガウリイと料理の奪い合いをするあたし。 そのソーセージはあたしのよっ、ガウリイっ!!おにょれっ! そりゃっ! よっしゃぁ、目玉焼きゲットぉっ!!!!! あぁっ!ベーコン取られたぁっ!! ゆ、許さん。ベーコンの恨み、晴らさでおくべきかぁっ! ……あたしがガウリイのチキンを奪おうと構えた時。 一瞬目の前が暗くなったような気がした。 そして、気が付けばあたしは一人荒れ果てた大地にいた。 確か、さっきまであたしはガウリイ達と一緒に、宿屋で朝ごはんを食べてた筈。 (何?何が起こったの?) けれども、誰もその問いには答えてくれなかった。 辺りを見回すと、建物があった。 あたしがよく見るタイプの建物。つい昨晩吹き飛ばした建物に似ている。 ……とすると、この中には……。 そのとたん、あたしの周りに気配が生まれる。 いかにも「盗賊A」って感じの奴らが3人、そこにいた。 気付かないうちに接近を許した自分を呪いつつ、あたしは油断なく構えを取った。 と、その時、盗賊の一人が氷の矢(フリーズ・アロー)を解き放った!! (なっ……こいつら、呪文を使うの!?) 慌てて左にステップし、氷の刃をかろうじて避ける。 どうやら、そいつが放った呪文は、仲間達をも襲ったようである。 別の盗賊が何やら盛大に文句を言っているのが見えた。 何と言っているかはよく聞こえなかったが。 (……敵味方まとめてふっとばすなんて、まるでどこぞの女魔術師とそっくりねぇ……) 高笑いがよく似合うかつての旅の連れを思い出しながら、あたしは口の中で素早く呪文を唱えた。 「火炎球(ファイヤー・ボール)!!!」 とりあえず、氷の矢を放ってきた盗賊に術を放つ! 他の二人が術を使えるかどうかは分からないが、とりあえず使える奴を確実に倒しておくのがいいと思ったのだ。 炎は見事に盗賊に命中!いぇいっ! おお、転げ回っとる転げ回っとる。 ……あ゛。火が消された。 浄結水(アクア・クリエイト)を使ったな。 何であれだけの水で火が消えるのかわからないが……うみゅみゅ、敵もなかなかやる。 さて、どうしたものか……。 あたしが呪文を唱えようとした時、あたしの中の時間が凍結した。 ……あたしが見た光景は、この世のものとは思えないほど気持ち悪かった。 ついさっきまで火だるまになって転がっていた盗賊が、別の盗賊へと向かっていき……いきなり押し倒したのだ!!! はっきり言おう。むさ苦しい盗賊達が地面の上で妙に絡み合っているところなど、どれだけ金を積まれても遠慮したいものがある。 確かに、世間一般には男同士でもにょもにょ……っていう風潮もあるらしい。 だがっ!せめて、こんな視覚的に暴力を与えるような光景を他人に見せつけないで欲しいっ!!!! 背中を強烈な悪寒に襲われたあたしは、動く事すら出来なかった。 せめて視線を逸らそうと3人目の盗賊の方を向くと、なにやら羨ましそうな表情で奴等を見ている。 おっ、お前もかいっ!!!! ……ったく、女にモテずに金もないから盗賊なんてやっているのかもしれないが……。 アメリアの言葉を借りる訳ではないが……この盗賊団、存在自体が悪だわ……。 と、その時。 地面でのたうちまわる2人に3人目が何やら声を掛けたかと思うと、いきなりあたしの方に向かってきた! (な……さっきの2人はカモフラージュか!?) 先ほどのショックからまだ覚めきれないあたしは慌てて呪文の詠唱を開始する。 ……間に合わない!!! こんな怪しい趣味をした奴等にやられてしまったら、郷里の姉ちゃんに腹抱えて笑われるっ!!!! それだけは絶対避けないとっ!!! 3人目を避けようとして足がもつれ、あたしは近くの壁に倒れ込む。かろうじて手で身体を支えたものの、盗賊はすぐ目の前に迫っていた。 まずいっ! 逃げたくても、この体勢ではすぐには無理である。 そして──。 盗賊はあたしの両腕をつかんで壁へ押し付けたかと思うと、いきなりあたしの胸に顔を埋めてきたのだ!!! げっ!!!ちょっと待てっ!!!!! あんた達男が趣味じゃなかったの!? ぢゃなくて、純粋可憐な乙女にこんな事して許されると思ってるの!? あたしはばたばた暴れようとするが、盗賊の力は強く逃れる事ができない。 こ……こんな奴に貞操奪われてたまるもんかぁっ!!! んな事になったら末代までの恥である。 あたしは必死になって呪文を紡いだ。 そして、術が完成する! 「風魔咆裂弾(ボム・デイ・ウイン)!!!!」 あたしの放った‘力ある言葉’に導かれるように、あたり一面で風が爆発した……。 爆風が収まった後。 あたしの視界に映ったのは、ズタボロになって転がっているガウリイ、真っ赤な顔をしたまま気絶しているアメリア、やはり服がぼろぼろで暗い顔をしているゼル、そしてほぼ全壊している宿屋。 何が起こったのか、はっきりいって分かる筈がない。 きょろきょろ辺りを見渡すと、「いかにも怪しいですっ!」と物語るような魔道士の姿。 「……ちょ〜っと来てくれるかしらぁ?」 あたしの声にビビって逃げようとする魔道士。 その時っ! 「影縛り(シャドウ・スナップ)!」 そこらに転がっていた肉切りナイフを投げつけ、ゼルが相手の足を止める。 な〜いすフォロー♪ 「さ〜あ、何をしたのか、とっとと白状してもらおうかしらぁ?」 おびえたように顔を青ざめさせる魔道士。 だが、容赦なんかしてあげるつもりはこれっぽっちもない。 あたしの方がよっぽど怖い目に遭っているのだ。腕に立った鳥肌は、未だ消えていない。 「あたしの機嫌がいいうちに、何もかも喋った方がいいと思うけど?……火の矢(フレア・アロー)」 彼の身体を掠るように火の矢を放ち、笑顔で、但し眼だけは笑わずに相手を問いつめる。 これぞ、どこぞの第一王位継承者直伝「誠意のこもった話し合い♪」っ!!! 「ひいぃぃっ!!!」 魔道士が声にならない悲鳴をあげた……。 ……これで、この魔道士がただの通りすがりだったら大笑いであったのだが、結局のところ。 こいつや、宿の主人は、昨日あたしが壊滅させた盗賊団の仲間のひとりで。 あたしに復讐するため、朝食の中に幻覚剤を入れるわ魔道士が「夢幻覚(イリュウジョン)」の魔法を使うわで、あたし達を同士討ちさせようとしたという事である。 何つー恐ろしい事をしてくれるんだこひつらは。 とりあえず、あたし達4人でこの魔道士と宿の主人をタコ殴りにした後、役人へと突き出し、わずかな報酬をもらったのは言うまでもない。 その後。 あの時何があったのか、誰も話そうとはしなかった。皆、知らん振りしていた。 あたしだって言いたくない。とりあえず、あの時あたしが見た盗賊3人組ってのがガウリイ達だってのは何となく想像つくのだが……。 …………やっぱり、何もなかった事にしよう。うん。あれは悪い夢ってことで。 多少ぎこちない空気を抱えつつ、あたし達は次の街へと向かう事にした──。 |