シューマン
序奏と協奏的アレグロ (ピアノと管弦楽のための) 作品134

 ライン川への投身自殺をはかる1年前に完成した、シューマンの最晩年の作品です。精神錯乱の兆候を見せ始めた時期ではありましたが、作品を聴く限り、乱れは感じられません。彼のピアノ協奏曲や、チェロ協奏曲を愛する方なら、きっと気に入るはずです。

 さて、この作品での一番の鑑賞ポイントは、アレグロに入ってしばらくして登場する「第2主題」。えっ、そんな専門的なこと言われてもわからない・・・などとおっしゃらないで。とにかく、聴けば、「おやっ」と思うはず。日本人なら、誰でも知ってる、なんだか懐かしい気分になる、有名なメロディーがそっくりそのまま、聞こえてくるではありませんか。ひょっとして、その日本の代表的歌曲作曲家は、ドイツ留学時にこの曲を聴いて、帰国後こっそり盗作したんじゃなかろうか?とにかく、似ている、を通り越して、全く同じなんだから、偶然とは考えにくいな。

 シューマンは事実上、3曲のピアノ協奏曲を残していますが、単一楽章の2曲はほとんど顧みられません。精神病院送りになった、彼の最晩年の作品群は、不当にも未亡人クララ=シューマンらによって封印され、後世の人々から隔離されてしまいました。「日本的」な懐かしさ、淋しさをも感じさせるこの、最後のピアノ協奏曲の再評価は、ぜひ日本人が、世界に向けて行わねばならないような気がしてなりません。

(1999.1.28 Ms)


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