ESPANSIVA! NIELSEN

オススメ曲紹介

 このコーナーでは、当HP主催のMsの個人的な判断によって、ニールセンの作品より「オススメ」なものをセレクトして紹介してゆきたいと思います。皆さんのニールセン探検の地図のような役割となれれば良いのですが・・・・。ただ、個人個人それぞれに趣味趣向が異なる訳ですから参考にならない場合もあるかもしれません。あしからずご了承のうえ、ご覧下さい。

交響曲
 やはり、ニールセンの作品の中核をなすのは、何と言っても「交響曲」です。彼の交響曲の存在をもって、彼の存在意義は大きなものとして認知されうるわけです。ということでまずは、「交響曲」のオススメから始めましょう。

 私のオススメは、やはり、第3番、第4番、第5番。です。
 この3曲をもって、彼の代表作としても問題はないと思います。ただし、この3曲の中でのオススメ順は特に提示しません。とりあえず、3曲聴いて、どれかに興味を持てたら、ニールセンを今後聴き込んで損はなさそうです。

 この中で、最も有名なのは、第4番「滅ぼし得ざるもの(通称「不滅」)」ですが、個人的な感想としては、単独でのオススメの第1位にはしにくいかな、と思いました。私自身、吹奏楽部で打楽器をやっていた高校時代、ティンパニ2人によるソロの存在に興味を持って、ラジオでこの曲を始めて聴いたのですが、正直かなり難解なイメージを受けました。お目当ての第4部のティンパニ・ソロが全く音楽的に把握できませんでした。楽譜を見れば3拍子で継続しているのですが、全くそれを感じさせない複雑なリズムです(CDでも楽譜通り叩いている演奏の方が稀です)。オマケにまだクラシックの作品をよく聴きこんでいない段階では、旋律にも親しめず、覚えにくかったように記憶しています。大学になって、マーラー、R.シュトラウスなど後期ロマン派を聴くようになってから、再度、第4番に戻ったところ、やっと曲の良さに気がつくことが出来たような気がします。当時の私の感想、「アルプス交響曲の太陽の主題に似てる」。
 曲は1楽章制。第1部の豪快な表現、そして循環主題「不滅のテーマ」の高らかな吹奏。一転しての木管群を中心としたのどかな牧歌的風景である第2部。さらに劇的な転換、第3部のヴァイオリンの悲痛な叫び。そして、弦の無窮動が第4部を導き、ティンパニの壮絶な乱打も交えつつ盛り上がって、最後の「不滅のテーマ」の大々的な再現。わかりにくい部分も多々あるかもしれませんが、とにかく、カッコイイですよ。

 続く、第5番、交響曲としては変則的な構成です。
 第1楽章第1部は、木管の田園的なのどかさが不気味な行進曲へと変質、第2部で安らぎを得たと思いきや、第1部の素材が回帰、緊張を孕んだ展開の中で、小太鼓がオケ本体とはまったく違うテンポ感で、アドリブで乱入。その葛藤が大きく解決するも最後はクラリネットの独白で淋しく閉じられます。
 第2楽章は、それ自体が4つの部分からなり交響曲的な形をしていますが、楽天的、躍動的な第1部、悪魔的なスケルツォの第2部、瞑想的な第3部、そして第1部を回帰させつつ大団円を形作る第4部、とこれまたスケールの大きな音楽を聴かせます。
 最近では、第4番よりも評価が高まり、他に類例のない発想、これぞニールセンの代表作、ということで今後一番の注目株です。鑑賞後の高揚感、満足感なども高いです(生演奏を聴いて痛感しました。)。やや抽象的、私的な感想ながらも、ベートーヴェンの「運命」の20世紀版、と形容したくもなります。第4番と同列、いやそれ以上に個人的にはオススメしたいですね。

 この2曲をもってニールセンの入門、とすることも出来ましょうが、あえて私は、それらに先立つ第3番「広がり」も、オススメしておきたく思います。通常の4楽章制ながらも、第2楽章のみに男女の声楽ソロが含まれるのが特徴です。ただし歌詞はなく、「アー」と歌うのみの母音唱(ヴォカリーズ)です。
 声楽付きというユニークさもさることながら、「広がり」の副題に象徴される曲全体の雰囲気がとても好ましく思われます。私が最もオススメするのは第4楽章の、幅の広い、懐の深い、やや通俗的な主題、ブラームスの交響曲第1番のフィナーレの主題に類似しながらも個性的なものです。また、第1楽章は躍動感溢れる3拍子の音楽ですが、これこそニールセンの得意とした、彼の個性でもある「競技的3拍子」なのです。3拍子を継続させつつも2拍子的なリズムを組み合せたり、不規則な拍子感を持ち込んだり、意表を突く断絶があったり、ととても3拍子の継続する音楽とは思えない変拍子的な性格を併せ持った彼ならではの感性に満ちたものです。この「競技的3拍子」は、第4番の第4部、第5番の第2楽章でも現われますが、それらに比べれば、まだ第3番においてはわかりやすい3拍子のビート感があり、まずはニールセン入門として最適だと私は思います。
 ニールセン自身、ブラームスへの尊敬の念を抱いていたと言われていますが、この「競技的3拍子」にしても、例えばブラームスの第2番、第3番の交響曲において冒頭楽章は3拍子を主体としつつ複雑なリズムを織り交ぜており、ブラームスの革新的なリズム感をさらに推し進めた結果が「競技的3拍子」であったのかもしれません。その他、木管楽器におおいに活躍の場が与えられる管弦楽法などもブラームスからの流れなのかもしれません。
 ニールセンの第3番においては、彼自身の個性もさることながら、影響を与えられたブラームスの影も、第4番、第5番以上に感じられるような気がして、なかなかに親しみやすい側面を持っていると言えそうです。

 この3曲、どれか、もしくは、どこかに興味が抱けたなら、もっとニールセン、聴いてみてください。
 交響曲なら、第2番、第1番、とさらにルーツを遡る旅もよいでしょう。
 ただし、残る第6番。これは、なかなかやっかい。当時のゲンダイオンガクの影響をもろかぶってしまったニールセン・・・・ちょっと覚悟がいります。ただ、私の感覚としては、ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」以降の特に、コミカルな作品を愛する方なら、かなり気に入っていただけるかな?また、ショスタコーヴィチの道化、自虐に笑ってしまう方、これもいけそう。特に、ショスタコの第15番との奇妙な類似、???謎です。

 とりあえず、交響曲編はここまで。続いて、管弦楽曲編です。

(2001.5.24 Ms)

 


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