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2007

2007 TURKEY


タイヤトラブルへの疑念
ブリヂストンの浜島裕英は、ハミルトンにチャンキング(タイヤ表面のトレッドが剥離)が起きたという。長いコーナーのターン8でアンダーステアが出たハミルトンはそれを修正するためステアリングをより大きく切った。ここでチャンキングが起き、ターン9のブレーキで予期せぬ力がかかって剥がれてしまった。東京・小平に持ち帰ってさらに原因調査中だが、ほかのチームにも多少起きていたそうだ。
浜島著「世界最速のF1タイヤ」(新潮新書、2005年)によると、「ワンメイクで起こりがちなのは、みな同じタイヤなので、よりグリップを得ようとタイヤの内圧を私たちの指定より下げてしまうチームが出ることです。当然タイヤはひずみが大きくなるので、トレッドの剥離が起こりうる。」という。
思い出されるのが1999年ドイツGP(改修前の超高速ホッケンハイム)、マクラーレンのハッキネンがリアタイヤをバーストしてクラッシュしたシーン。当初リアウィングが破損してタイヤをカットしたと言われたが、ブリヂストンの調査の結果、否定された。マクラーレンは原因不明と発表した。だがライバルチームはマクラーレンが内圧を下げすぎたのではないかと推測した。本当のことを発表できなかったのだと。BSワンメイクの当時、マクラーレンはフェラーリの追い上げに焦っていた。前戦で負けたマクラーレンはメルセデスの地元で絶対に勝つために無理をした。
2007年、マクラーレンはフェラーリに比べて不利なイスタンブールでまた無理をしたのだろうか。トラブル直後、チームはアロンソに無線で無理するなと言ったという。だがアロンソは30秒差の単独3位もあって大して関係なかったと冷静に語った。ここでもうひとつの疑念も生じる。ハミルトンがより内圧を下げたのだろうか・・・。彼がカナダ以降アロンソより速くなった理由がわからない。今、言えるのは、次のモンツァは無理したら危険すぎる超高速コースということ。レースでハミルトンとアロンソの速さが同じか違うか見ものである。

冷めたライコネン
レース後、ライコネンは予選がすべてと語った。チームメイトより軽い燃料で後ろに位置したら、前に出ることは不可能と思ったのだろう。唯一のチャンスは37周目にマッサが小さなミスしたところだった。しかしライコネンは第2スティントの間ずっと2.5秒差を保っていたのでそれを生かせなかった。ライコネンは第1スティントで1秒差以内に詰めていたが、第2スティントは飽きたのか離れてしまっていた。忍耐強く、執念深く、ずっとぴったり後ろについていればチャンスを生かせたかもしれない。ライコネンは第3スティントでさらに飽きたのか3→4→5秒差と開いていった。最後に意地のファステストラップを出したが、後の祭り。

ほかに気付いたことは、ルノーのコバライネンがBMWより良いレースペースで走っていたこと。これは第2グループの戦いが面白くなるかもしれない。

マッサ3勝目、フェラーリ1-2
アロンソ3位、ハミルトン5位タイヤバースト(5点差)

スタートで偶数列が遅れる。2番手ハミルトンは3番手ライコネンに抜かれて3位、4番手アロンソはBMW2台に抜かれて6位。
レースはフェラーリ1-2体制で単調に進む。1回目のピットでアロンソはBMW勢を抜く。第2スティントで3位ハミルトンはフェラーリに離され始める。4位アロンソはハミルトンと14秒差前後での攻防が見られる。
2回目のストップが近づいたとき、ハミルトンの右フロントタイヤがバースト。アロンソとハイドフェルドに抜かれる。バーストの原因がわからないが、ハミルトンの走りで痛めたとすると今後に不安。
フェラーリはそのまま1-2フィニッシュ。マッサ2年連続勝利。やはりこのサーキットはフェラーリ優位だった。アロンソ3位。ハミルトンはコバライネンの追い上げを抑えて5位。ハミルトン84点、アロンソ79点、マッサ69点、ライコネン68点。
次のモンツァでもフェラーリ1-2なら、差は縮まる。問題はその次のスパと富士といった天候が左右しそうなコース。9/30の富士は今シーズンの行方を決める場になるかもしれない。

マッサ今季5度目PP
ハミルトン2番手ライコネン3番手アロンソ4番手

セクターベスト合計では1位ライコネン1:26.839、2位アロンソ1:26.841、3位ハミルトン1:26.936、4位マッサ1:27.039の順。しかしQ3結果は逆になった。フェラーリ優位かと思われたサーキットで、マクラーレンが互角に持ち込んでいる。

ベストタイム セクター1 セクター2 セクター3 Q2 Q3
マッサ 32.275 30.692 24.072 1:27.039 1:27.329
ハミルトン 32.191 30.690 24.055 1:26.936 1:27.373
ライコネン 32.076 30.730 24.033 1:26.902 1:27.546
アロンソ 32.107 30.633 24.101 1:26.841 1:27.574

 

オーバーテイク改善にチームが合意
F1チームはハンガリーGP後にオーバーテイクの改善に合意した。オーバーテイク作業部会(マクラーレン:パディ・ロウ、ルノー:パット・シモンズ、フェラーリ:ロリー・バーン、F1空力専門家:ジャン・クロード・ミジョー)はディフューザの設計で2009年導入に合意。構成は来年6-7月の風洞テストで確認される。部会は空力規定の2010年改訂に向けてフラップ、チムニー、ウィングレット、およびバージボードを非合法化することを検討する。部会の次の焦点はリアウィングである。部会は空力の優位性がオーバーテイクを困難にしていることを認めた。一方でオーバーテイクのために後続車がフロントウィングの状態を変更可能にすることも考えられる。(Autosport.com)

※今では抜けないコースのひとつになったハンガロリングも、かつては印象的なオーバーテイクが見られたものだった。1986年のセナ対ピケ(1コーナーでピケがドリフトしながら抜く)、1988年のセナ対プロスト(1コーナーでプロストが抜いたがセナが抜き返す)、1989年のセナ対マンセル(周回遅れに詰まったセナをマンセルが抜く)。それらは勝負のポイントになり、その年を代表するオーバーテイクとして語られたものだった。
しかしいま、ハンガロリングは渋滞する高速道路みたいになってしまった。他のサーキットも同様に抜けない。ギヤシフトなど車もミスをしにくくなった。かつての時代を知らない人はピット戦略がF1の順位変動の主要因と思っているかもしれない。そのピットも変動は少なくなりつつある。スタートだってそうだ。われわれですらつまらないレースで寝てしまうときがある。ましてや一般人はチャンネルを合わせもしなくなるだろう。F1が再びかつての面白さを取り戻すためには、オーバーテイクによる順位変動は必要である。さすがに危機感を感じたチーム関係者も動き始めた。
 

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