2003年の読書を振り返る
ここ数年でもっとも充実していた。
積読を片付けたい、という目標が、積読を片付けると同時に新たに視界を広げ
ることとなった。
「加群十話」
今年を象徴する本は、なんと言っても「加群十話」だろう。実際には読み
始めたのは、2002年なのだが、この本からこれまで敬遠してきた「代数」
という分野への扉を開いたことになる。
「ヤング図形の話」
「環と体」
「環と体の理論」
などは、直接加群十話に影響されて読んだ本だし、
「群の発見」
は、そのつもりはなかったのに、結果的に関係していた本であった。しか
し、この本は、2年前の数セミで「加群十話」を推薦していた同じ人が推薦
していた本であるから、結局はその路線であったのだ。
「コホモロジー」
は、もう一つの私の知りたいことである、微分形式とかトポロジーとかの流
れから読んだ。微分形式という意味では、
「微分形式とその応用」
「Differential Forms with Applications to the Physical Sciences」
「微分形式による解析力学入門」
なども読んだわけだが、これらは、微分形式とベクトル解析との関係を整理
をつけたかった、という意味が強い。しかし「コホモロジー」では、初めてて
コホモロジー理論(の一部)が判った気がした。そして同時に、コホモロジー
というものが、代数で活躍することを知り、また代数への興味へと繋ってい
くこととなる。
「コホモロジーのこころ」
は、コホモロジーの代数的側面に重きを置いた本だが、この本は結局読み切
れてないが、カテゴリー論の雰囲気は味わえた。
実は、Ruby組やHaskell組との関係から、カテゴリー理論というものがあるの
は既に知っていた。そしてそれがまたコホモロジーの重要な武器となってい
るのを知り、プログラム理論からのカテゴリー入門ということで
「プログラム意味論」
へと繋がるのであった。
ということで、コホモロジーというキーワードを中心にして、代数と微分幾何
がつながり、そしてカテゴリー論で代数とプログラム意味論が繋がる。という
のが今年の読書の流れであった。
カテゴリー論
コホモロジー
/ \ \
微分幾何 代数 プログラム意味論
解析力学 環論 haskell
ということで、今年の読書は非常に一貫していたのです。自分の中では。
この他の
「双曲幾何」
「Morse理論の基礎」
は、私にとっては未知な数学の世界であったが、楽しめた。また、
「熱力学」
も新たな視点で熱力学を見ることができ、楽しいものであった。
今年、いわゆるコンピュータ本と呼べるのは、
「Rubyソースコード完全解説」
のみであろう。この本を冒険に例えた人がいたが、うん、楽しい冒険だった。
コンピュータの本は、初心者向けかプロ向けになってしまい、私のようなも
のにはつまらない世界になりつつある。Ruby256は楽しかったが終了したっ
ぽい。この本にはそのテイストが残っている。
仕事絡みでの2冊も直接に役に立っている。
ついに今年は、一冊の小説も読まなかった。マンガは、雑誌をほぼ完全に読ま
なくなったし、もともとコミックスはあまり読む方ではない。
2004年は、MOSの本で明けることとなった。
今年とりあえず読みたい本として、既に挙がっているものは
「Operation and Modeling of The MOS Transistor」
「プログラム意味論」
「The Haskell School of Expression」
「群の発見」
「Smalltalkベストプラクティスパターン」
あたりだろうか。圏論という楽しげなものをぜひ勉強したいのだが、どこ
からそれに近付けばいいのかわからない。岩波現代数学の基礎「代数幾何1」
はかなり手強そう。
群の発見は読みかけだし、読み終りたいが、ちょっと私の中で時間がたちすぎ
てしまって読み直すのが辛い。