線型代数学

川久保勝夫

リー群の話、リー環の話を読んで、壁に当たっていると感じはじめた。始めか ら壁には当たっていたわけでもあるが、数学の本を読んでみよう計画も 「加群十話」から始まって4年が経ち、物理学科時代に専門やききかじりで知っ ていた知識をもとに、数学専門書でも読めるはずさ、という楽観で読んできた が、ここに来て、ある程度読めるようになってきたと共に、基本がない、こと で読めなくなってきた。リー環の話の1回目はまったく何を言っているのかわ からなかった。2回目は良く判った(つまりその間に私の中で語彙が増えてきた のだろう)。でも、さらにここにきて数学の基本語彙が欠けていることが響き はじめた。ここで一度基本に戻る必要がある。基本と言えば線型代数と微積分 だ。

ということで、まず線型代数学だ。どうせなら現時点で評価の高い本を読みた い。数セミの数年前の「えんぴつを片手に教科書を読もう」の特集で線型代数 の本として取り上げられていたのがこの本。

すばらしい。大学1年のときに、この本にめぐりあっていたかった。証明はく どい。さすがにそれはあたりまえだろ、とか、前定理の直接の結果だろう、と いうことまで書いてある。それは、くどいんだけど、数学ってのはそこから始 めるべきだよな、という気もしてくる。くどいので読むのが時々辛くなるのだ が、でも最後まで無事読めた。

大学1年のときに使っていた教科書には書いてなくて、教授が黒板でだけ教え てくれた、固有値の簡単な求め方、や逆行列の簡単な求め方、について、ちゃ んと書いてある。ジョルダン標準形についてちゃんと書いてある。フィルトレー ションなんてのも、数学のおもしろさがただよっていて、読んでいて楽しい。

直交行列の固有値の話は、お仕事の場面で直接ばっちり役に立った。

ところで、再読して判ったのだが、線型代数ってのは大学の最初にやるので、 ジャンジャン新しい言葉が登場する。初めて勉強するのは大変だろうな。